|
イラン戦争は英国系潰し、グローバリズムの破断策
2026年4月26日
田中 宇
トランプ米大統領は、停戦交渉でイランに振り回されている。4月25日、イランと米国の代表団が交渉地のパキスタンに再集合したが、イラン代表のアラグチ外相は米国側と交渉せず、パキスタンと話し合っただけで帰国してしまった。
イランは米国を馬鹿にしている。トランプやイスラエルは、怒ってイラン攻撃の戦争を再開するかと思いきや、停戦を維持している。
米マスコミは「米イスラエルは、イランの大型兵器類の半分しか破壊していない。イランはまだ大量の大型兵器を隠し持っている」と喧伝している。
ほらみろ、イランが勝っているじゃないか。米イスラエルは負けそうで追い詰められているから、イランに馬鹿にされても停戦を維持せざるを得ないんだ。トランプもネタニヤフももう終わりだ。ざまあみろ。米欧日の左翼リベラルやイスラム主義者たちが喜んでいる。
(War without end? How Israel became trapped in its own security doctrine)
そうなのか??。私には、トランプやイスラエルが「弱いふり作戦」で、意図的にこの状況を作っているように思える。ネタニヤフはこのタイミングで、2年前から隠してきた前立腺癌を発表した。自分を弱く見せている。
トランプは、マスコミを集めた大統領府での宴会中に撃たれそうになった。これまた、以前の暗殺未遂と同様、自然な事件なのかどうか疑問がある。ネタニヤフは癌だし、トランプは撃たれそうで弱っちい。そういう風に見せる意図でないか。
(イラン強硬派政権を弱めた上で永続させる?)
イラン戦争は、イスラエルがトランプを動かしてやらせている。イスラエル(リクード系)は911以来、世界最強の米諜報界(米覇権の運営担当組織、戦争機関)を支配していた英国系(グローバリスト)を追い出して乗っ取り、その諜報力を使って、トランプの返り咲きが決まった2023年からイラン傘下のレバノンのヒズボラやシリアのアサド政権を潰した後、本丸のイランへの攻撃を繰り返してきた。
ガザ戦争の巨大な人道犯罪も、これまでの英国系覇権が立脚してきた人道主義をシステム的に破壊する意図がある(人道主義を信奉するマスコミやリベラル派は英国系の道具)。
四半世紀続いたイスラエルと英国系の暗闘で、英国系はトランプ以前の時代に、中共やロシアを誘導してイランに兵器類を大量供給させ、イランやヒズボラがイスラエルを潰そうとする流れを作っていた。
(アラブ産油国の没落)
イスラエルは2期目のトランプ政権と当選前から合体し(傀儡化というよりも、トランプが積極的に乗っている)、2023年以来、英国系とそれに動かされた中共、イラン、ヒズボラ、アサドなど、イスラエル潰しの構造全体を猛烈な勢いで破壊してきた。
2024年後半の、ヒズボラの破壊とアサドの転覆を見ると、イスラエルがそれ以前よりも大幅に強くなったことが見て取れた。イスラエルは、米諜報界とその下にいる米政権(トランプ)を乗っ取ったので強くなった。
本質はイスラエルとイランの戦争でなく、イスラエルと英国系の諜報的な果たし合いだ。イスラエルが勝ち、英国系が負けている。それはウクライナ戦争を見てもわかる(プーチンは、トランプやイスラエルと裏で組んで英国系を自滅させている)。
このイスラエルの台頭をふまえた上で、今回のイラン戦争、とくに停戦後の交渉難航の動きを見ると、米イスラエルが負けているふりをしつつ、イランによるホルムズ閉鎖や、フーシ派による紅海封鎖を扇動している観がある。
その目的は、英国系が立脚してきた経済のグローバリズム(世界単一市場)や、地政学的なシーパワー(地中海からインド洋、東シナ海までの、英国系の米覇権機関による一体支配、ユーラシア包囲網)の破壊だろう。
(Against US Dominance: Europe's Hormuz Mission And The Illusion Of Geopolitical Power)
イランはハメネイ殺害後、好戦派の革命防衛隊が現実派の聖職者や実務者を押しのけて権力を握ったが、米イスラエルは革命防衛隊が潰れない限りイランと和解しない。
国内の反政府派による政権転覆の可能性は低下しており、防衛隊政権は延命し、ホルムズ閉鎖はずっと続く。グローバリズムやシーパワーの破断がひどくなり、英国系の世界体制が壊れ衰退していく。
軍事的には、諜報界が弱いふり作戦でマスコミに「イランはまだ大型兵器の半分を持っている」とリーク報道させたことと裏腹に、米イスラエルは、諜報力を駆使してイランの大型兵器のほとんどを破壊したと考えられる。
イスラエルは、もうイランが軍事的脅威でないので、イランを攻撃する必要がない。だからトランプが停戦を延長している。
英国系は、米諜報界をリクード系に乗っ取られるまで、冷戦型の体制で世界を支配し、米欧G7としてロシアと中共を敵視していた(露中敵視の名目でG7やNATOを結束させていた)。
だがリクード系に乗っ取られていく中で、英国系は、表向き露中敵視を続けつつも、巻き返しのためにロシアや中共に隠然と接近し、露中がイランなどを支援してイスラエル(リクード系)をへこます流れを作ろうとした(シリア内戦とか)。
リクード系は、英国系と露中の隠然同盟の形成を阻止するため、ウクライナを露敵視国に転換するマイダン革命を起こしてロシアのクリミア併合を誘発し、英米欧とロシアが恒久対立する構図を作った。ロシア敵視はウクライナ戦争に発展し、英国系は対露和解できなくなった。
イラン戦争の前にウクライナ戦争を起こしたことは、リクード系による英国系潰しの策として重要だった。ウクライナ戦争でリクード系はプーチンに入れ知恵し、ロシアはウクライナで苦戦している演技を続けた。
追い出されて諜報力が低下した英国系(英欧やマスコミ)はプーチンの演技に引っかかり、頑張ればロシアを潰せると勘違いして全力でウクライナを支援した。
実際は、ウクライナの軍事戦略を立てているのも米諜報界のリクード系で、ウクライナは兵器や人材(徴兵された人々)を無駄に消費した。裏でリクード系と組んでいるロシアは、ウクライナの兵器庫の場所を知っていて破壊し続けた。
英国系は、弱体化した2010年代から中共にも接近し、習近平の一帯一路に呼応して、中東を迂回する中央アジアからカスピ海、コーカサス、トルコ、欧州へのシルクロードの交易路を整備しようとした。
だがこれも、2023年からイスラエルの巻き返しに遭った。イスラエルは、トルコと裏で協力し、トルコがコーカサス(アゼルバイジャン)や中央アジア(カザフスタン)との関係を強化し、英国系と中共によるシルクロード支配に対抗した。
(コーカサスをトルコに与える)
トルコとイスラエルは表向き今にも戦争しそうな対立ぶりだが、実際はアゼルバイジャンの石油ガスがトルコを経由してイスラエルに輸出され続けており、トルコはイスラエルの覇権拡大に協力して見返りを得ている。
この構図自体が、リクード系による英中隠然同盟潰しの策になっている。英国系の巻き添えで潰されたくない習近平はリクード系に立ち向かう気がなく、もうイランに頼まれても支援せず傍観している。
(A fake threat exposes a very real crisis between Turkey and Israel)
ホルムズ海峡は地理的にアジアの方を向いており、ペルシャ湾の石油ガスを中国印度日本などアジアに送る経路として有名だ。
だが今回のホルムズ閉鎖が長期化すると、石油ガスが不足して最も困るのは、アジア方面でなく英国系の欧州だ。欧州諸国は、このままだと燃料を配給制にせねばならない状態だ。
日本は米国から石油ガスを買う。中国や印度はロシアから買う。ロシアもトルコも、裏でリクード系と組んでいるので、欧州への石油ガスの流れを妨害する策を続ける。
(Sweden Will Consider Ways To Limit Energy Use If Iran War Continues, Government Says)
これまで、新型コロナの都市閉鎖の経済自滅策や、地球温暖化対策の超愚策(無根拠な人為説を軽信し、石油ガス石炭を無意味に敵視して不安定な自然エネルギーに依存する)で、世界経済が意図的に破壊されてきた。
それらは、全世界の経済をまんべんなく破壊しているように見えて、実のところ西欧や英国や豪NZなど英国系の諸国を集中して破壊した。新型コロナも温暖化対策も、リクード系が仇敵の英国系を自滅させるために展開した諜報戦略だったと考えられる。
ウクライナ戦争もその流れだ。そして今回のイラン戦争も、リクード系が英国系を自滅させる策になっている。
(‘We are facing the biggest energy security threat in history,’ IEA chief tells CNBC)
プーチンは、イラン戦争が新型コロナのような世界経済の破壊をもたらすと予測的に指摘している。
リクード系とつながっているプーチンは、全体像を把握しているだろう。イラン戦争は新型コロナと同様、世界経済の中でもとくに英国系の諸国を破壊する。
高市化した日本は、英国系からリクード系に転換する流れを開始した。日本の官僚機構やマスコミ学術界や左翼などは、まだゴリゴリ軽信な英傀儡で、高市を誹謗中傷し続けているが、いずれ様相が変わっていく。
(Putin Issues Some Frank Thoughts On 'Unpredictable' Iran War)
田中宇の国際ニュース解説・メインページへ
|