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欧州を政権転覆するトランプ陣営
2025年1月16日
田中 宇
ドナルド・トランプが、仲間のイーロン・マスクらを使って、ドイツや英国で、リベラル系や中道右派の既存のエリート政権を追放する流れを誘発・加勢している。
(Musk’s big bet: Could Germans kick out their liberal elites?)
戦後ずっと、欧州の既存エリート政権は、米国のエリート政権(民主党や、トランプが席巻する前の共和党。米覇権派)と組んで、米英覇権による世界支配を続けてきた。この欧米中心主義・米覇権の世界体制が、戦後の欧州の繁栄の源泉だった。トランプは、この体制を潰そうとしている。
潰されていくリベラル・中道エリートの替わりに欧州の権力層になっていくのは、米国の覇権派と親密にせず、対米自立や親露化を模索する右派(いわゆる極右)の勢力だ。ドイツのAfDやフランスのルペン系、英国で人気急増のナイジェル・ファラージ(英国のEU離脱運動の首謀者)のリフォームUKなどだ。ファラージは2016年からトランプを支持してきた。
(Nigel Farage Leads Betting To Become Next British PM)
(Elon Musk STRONGLY Backs Nigel Farage and Reform UK)
欧州の既存エリートは、米英諜報界(英国系)の傀儡勢力だ。諜報界の傘下に米国と欧州のエリート層がぶら下がり、それが米英覇権として戦後の世界を支配してきた。覇権運営の中心は米英(英国は黒幕)であり、欧州(や日本)は米英の言いなりだ。「欧日は米英の傀儡」」といえる。
だが同時に、欧日は戦後の世界経済の大黒柱であり、欧日が完全没落したり、英米からの離脱・自立に成功したら、米英覇権も維持できなかった。
(2025: A year of uncertainty ahead as the old world order crumbles)
近年、欧日の経済は低成長になっており、中国BRICSなど新興諸国よりも成長力がない。それでも、これから欧州が対米自立したら、世界における米覇権の支配力は、さらに低下する。
ウクライナ開戦後、米英覇権は、内側と外側の両方から縮小・瓦解が進行している。BRICSなど非米側が結束し、ドルや債券金融システムに頼らない非米的な経済システムを作って運営開始したり、米欧(米国側)が対露制裁や地球温暖化対策で放棄した石油ガスなどエネルギーや資源類の利権を自分たちの側に取り込んだりしている。
非米側が離脱・自立したので、米覇権の領域は「全世界」から「欧米日豪など」に大幅縮小した。米国側マスコミはろくに報じないが、これが外側からの覇権瓦解だ。
(世界を多極化したがる米国)
そして今回の記事で書いている、イーロン・マスクらが扇動している「欧州の、非エリート化・右傾化・国際主義から民族主義への転換」による欧州の対米自立・米欧分離・分裂が、内側からの米覇権瓦解である。
欧米分裂が進むと、欧州は米国と異なる「極」になる。世界はウクライナ開戦後の非米側の台頭によってすでに、米覇権(米国側)という極のほかに、BRICSがいくつかの極(中国、印度、ロシア、アフリカ、小4極の中東など)の集合体として存在するようになり、世界は多極化した。
(欧州エリート支配の崩壊)
(欧州を多極型世界の極の一つにする)
これから欧州が米覇権から分離していくと、欧州と米国も別々の極になり、世界の多極化が進む。ウクライナ戦争は、米諜報界の多極派が画策し、それにプーチンが乗った。イーロン・マスクらが欧州の非エリート化と対米自立を扇動していることからは、トランプ陣営も多極派であることがわかる。
マスクは、昔から多極派だったのでなく、トランプの政治運動の本質を知って、これは面白いと思って参加し、多極派になったのだろう。マスクは、起業も政治活動も、壮大な「遊び」としてやっているように見える。遊びとしての欧州潰しや多極化。
(ロシアでなく欧州を潰してる)
(自滅させられた欧州)
ドイツに対するマスクの言論介入は、昨年11月のトランプ当選直後、独オラフ・ショルツ首相が連立政権内の政策の対立から財務相(Christian Lindner)を罷免したことに関して「オラフは馬鹿だ(Olaf ist ein Narr)」とドイツ語で書き込んだことに始まった。
("Olaf Is A Fool" - Berlin Responds To Elon's Swipe At Chancellor Scholz Amid Government Collapse)
年末には、ショルツ政権など独エリート層が敵視している(国民の支持は急増している)非エリートの右派のAfDを絶賛する論文をマスクが書き、ドイツのリベラル系の大手紙ウェルト(Welt am Sonntag)が「マスクのAfD支持は間違っている」という論説委員の批判コメントとともに全文掲載した。
新聞社は、批判コメントと合わせて掲載することで、AfDを敵視するエリート層に配慮してみせたが、それでも掲載は大騒動になり、論説委員の引責辞任に発展した。
(Warum Elon Musk auf die AfD setzt - und warum er dabei irrt - WELT)
("The Last Spark Of Hope" For Germany - Musk Pens Pro-AfD Op-Ed In Major Paper; Editor Resigns)
1月に入ると、マスクはAfDのワイデル共同党首と対談して動画を配信した。米欧がウクライナを戦争させていることの愚かさ、メルケル元首相時代からの移民の大量受け入れ政策が失敗だったこと、原発を全廃したのも失敗だったので再開すること、AfDは親イスラエル・親ユダヤであることなど、AfDがいつも言っていることをマスクが支持した。
ドイツでは、、2月23日の議会選挙に向けてAfDの支持率が高まり(20%)、すでに与党(中道左派)のSPDを抜き(16%)、最多支持の中道右派のCDUに近づいている(31%)。
(Merkel ‘ruined’ Germany, Ukraine conflict, ‘Hitlerian’ censorship: Key points from Musk’s talk with AfD leader)
(Nord Stream pipeline to be relaunched - German chancellor candidate)
エリート系の諸政党はAfDを敵視・危険視するが、AfDは大失敗したエリート政党群の諸政策を是正・反転する政策を打ち出し、それが独国民に支持されて人気を強めている。
政策が失敗した諸政党が不人気になり、その是正を打ち出すAfD(やBSW)が優勢になる。AfDが独選挙で勝つことは「民主主義の危機」でなく、それと正反対の「健全な民主主義の発露」である。AfDを危険な極右とレッテル貼りするマスコミ権威筋や左翼の言動の方が危険だ。この現象は、ドイツでマスコミ権威筋や左翼をますます不人気にする。
(‘Don’t feed the troll’ - Scholz on Musk)
イーロン・マスクは、この状況を踏まえた上で、しだいに強くAfDを称賛し、2月の選挙でAfDが勝つように仕向けている。これは内政干渉なのか、自由な言論活動なのか。内政干渉だとしても、止められない。それ自体が無意味なレッテル貼りだ。
ウクライナ人を無理やり徴兵して露軍の前に置いて死なせる策を支援する米欧日のリベラルや左翼の方が極悪だ。
(In latest threat to German democracy, dangerous fascist Elon Musk tweets six words about AfD)
このあと、英国とフランスとイタリアのことを書こうと思っているが、延々と長くなりそうなので、とりあえずここで切って配信する。
("Shameful, Dangerous, & Anti-Democratic"? - German Establishment Fumes Over Musk's "Election Interference")
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