敵にガスを送るプーチン2022年2月26日 田中 宇2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻は、最初の半日で露軍がウクライナの空軍を全破壊して制空権を奪った後、ロシアがウクライナに降伏を要求しつつ一段落しているようだ。首都キエフで大規模な戦闘が、起こりそうだとか、すでに起こっているとか、陥落寸前とか報じられているが、いずれも欧米マスコミお得意の歪曲報道だと思う。ロシアとウクライナの政府は戦後策を交渉する気だ。露軍は交渉相手のウクライナ政府を潰す気がないので、政府軍どうしは休戦しているはずだ。米英諜報界が育てたウクライナの反露民兵団(ロシアから見るとネオナチ)は政府の意向を無視し、キエフの住宅地に地対空兵器などを持ち込み、住民を盾にして露軍を攻撃する非人道的な戦いを散発的にやっているようで、それを露軍が精密兵器で攻撃して潰している。それが「露軍による凄惨な戦闘」みたいな報じられ方をしている。欧米日マスコミと、ウクライナの反露民兵団は、両者とも米英諜報界の傀儡なので「同志・義兄弟」だ。だからマスコミはネオナチを礼賛する。報道写真は「ここでウクライナの軍服を着た人が露軍に殺された」などと書いてあり、撮影者は殺された人が政府軍でなく民兵(ネオナチ)だと知っているかのようだ。はっきり報じないことで読者の勘違いを誘発する汚い手口だ。 (Kyiv under heavy air/missile assault as Russian forces close in from 4 directions) (Putin tells Ukrainian military to ‘take power into their hands’) NATOのストルテンベルグ事務総長は2月25日、地対空ミサイルなどの新兵器をウクライナに送る計画があると発表した。ウクライナ軍が新型の地対空ミサイルを得れば、侵攻してきた露軍を撃退でき、戦況が激変しうる。「ロシアを叩き潰せるぞ」と大騒ぎになったが、これには最重要の点が抜けていた。ウクライナは制空権がロシアに奪われているので、NATOがウクライナ軍に新兵器を送る方法がない。NATOがウクライナに兵器を送り込むには、まずNATO軍(米軍)がウクライナ上空を支配するロシア空軍を攻撃して潰さねばならない。米空軍が露空軍を攻撃して潰そうとしたら、第三次世界大戦の核戦争になる。それはやれない。となると、NATOがウクライナに兵器を送り込む方法がなくなる。もうウクライナ軍を外部から武器支援することは不可能だ。ストルテンベルグは記者団に突っ込まれて「NATOそのものでなく、NATOの加盟国が各国の責任と権限でウクライナを武器支援することが検討されている」と言い直した。NATOでなく各国に良い方法を考えてもらいましょう、という詐欺的な責任回避だった。米国はウクライナ以外の東欧諸国に追加派兵すると発表したが、これも同様の「やってるふりだけ」の演技だった。だがマスコミは「NATOが即応部隊を派兵へ」と喧伝した。 (NATO Countries To Provide Weapons, Air Defense Systems To Ukraine: Stoltenberg) (NATO sending more weapons to Ukraine – Stoltenberg) 欧米はプーチンとラブロフ外相を制裁することにした。外国の首脳個人への制裁は異例だ。すごいことだと喧伝された。しかし、これも茶番劇だ。制裁内容は2人が欧米に持っている在外資産の凍結だ。しかし、ずっと前から欧米に敵視されている2人は、欧米に資産を全く持っていないだろう。そもそもプーチンは資産が少なく、露政府の発表によると年俸12万ドルで、マンションひとつと自家用車3台だそうだ。中小企業の経営者みたいだ。首脳を制裁する場合の可能性としてはもう一つ「欧米への入国禁止」があるが、今回は発動されていない。欧米は、近いうちにプーチンやラブロフとの外交交渉が必要になるので入国禁止にできない。 (EU Set To Freeze Putin, Lavrov Assets) こういうインチキな大騒動の裏で、報じられていない重要なことが起きている。それは、ロシアがウクライナを経由するパイプラインで欧州に天然ガスを送る量を急増したことだ。ロシアからウクライナを通ってポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニアに天然ガスを送るパイプラインは、ベラルーシからポーランドを通るパイプラインと並び、かつてはロシアが西欧にガスを輸出する主要なルートだった。2004年ごろから米英の謀略で、ウクライナがロシア敵視の国になっていく中で、ウクライナがロシアにガスを止めると脅す傾向が強まり、ウクライナを経由するルートはガスの送付量が減らされた。ウクライナと並んで英米の傀儡であるポーランドも、ロシアから西欧へのガス送付を敵視するようになったので、ロシアとドイツは迂回路としてノルドストリームの1と2の海底パイプラインを建設した。1は2011年から稼働し、ドイツのガス需要の3分の2をまかなっている。2も昨秋完成したが、昨年からロシア敵視を強めた米国は、ドイツに加圧して2の稼働をやめさせた。 (Ukraine Power Grid Stable, No Blackouts, NatGas Pipelines Running "Smoothly" As Energy Prices Spike) ドイツだけでなくEU全体が、暖房や発電などのエネルギー源としてロシアの天然ガスに依存している。だがEUは対米従属なので米国と一緒にロシア敵視を強めねばならず、ロシア側(国営ガス会社ガスプロム)は昨夏から報復としてEU諸国へのガスの輸出量を減らしてきた。欧州は、米国に巻き込まれてロシアとの敵対が強まるほど、ガスの供給不足と値上がりに悩まされるようになった。米露対立が激化した昨年末以降、欧州は厳冬期なのにガス供給停止や停電が懸念されるようになった。そしてついに2月24日に露軍がウクライナに侵攻し、欧州のガス不足がさらに悪化するという予測から、欧州を代表する天然ガス相場(オランダのガス先物)は1日で60%も急騰した。欧州は、ガス危機の劇的な悪化が不可避になった。 (No Shooting War in Ukraine – Dr. Paul Craig Roberts) だがその直後、意外なことが起きた。ウクライナを電撃的に占領したロシアが、ロシアからウクライナを経由するパイプラインで欧州に送るガスの量を急増した。このルートのガスの量は、侵攻開始の2月24日に前日より38%増え、翌25日にも24%増えた。この増加により、欧州のガス価格は、24日に60%高騰した後、25日に28%下がった。ロシアからのガスの値段は、欧州が緊急にスポット購入していたガスの値段より安い。しかも増量。ガスプロムは「欧州側の要請があれば、ウクライナ経由で欧州に送るガスの量をもっと増やせますよ」と言ってきている。ウクライナに侵攻した露軍は、パイプラインや電力網などのインフラを全く攻撃せず手付かずで残しており、ウクライナのインフラは平常運営され続けている。欧州は、ロシアがウクライナを占領して天然ガスの送付量を増やしたことにより、ガス危機から救われる道が開けた。これは一見意外だが、少し考えれば事前に予測できた(私は思いつかなかったが)。 (European NatGas Prices Plunge As Russian Flows Via Ukraine Soar) ドイツ(などEU)は、ロシア敵視のウクライナがガス送付を妨害するのを避けるため、ノルドストリーム2を建設した。露ウクライナの対立激化の中、ドイツは何とかノルドストリーム2を稼働させようとしたが米国に阻止された。だが今、ロシアがウクライナを占領し、ウクライナ経由のガス送付の阻害要因が消失して送付量が再増加した。これによりドイツは、ノルドストリーム2がなくてもかまわない状態になってしまった。ただしそこには決定的な条件がある。それは「ドイツ(やEU)がロシアによるウクライナ支配・傀儡化を容認し、ロシア敵視をやめること」である。ガスプロムは欧州に対し「ウクライナがロシアの傀儡国に戻ることを認めるなら、ガスの送付量をもっと増やせますよ」と言っているのだ。日本の戦国時代、上杉が武田に対し「敵に塩を送る」策略があった。上杉には色んな思惑があったらしい。それと同じで今回プーチンは欧州に対し「敵にガスを送る」策略をやっている。 欧米はもうウクライナを奪還できない。口でプーチンを非難するだけだ。プーチンは今後大きな失策をやらない限り、ウクライナをロシアの傀儡国に戻していく。欧米は、ウクライナがロシアの傀儡に戻るのを容認せざるを得ない。この着地点はもう変えられそうもない。バイデンの米国は、頓珍漢なことばかりやって覇権を自滅させている。バイデンの後にトランプが戻ってきたら別の頓珍漢・覇権放棄が始まる。欧州はもう米国を当てにできない。対米従属をやめなかったことは欧州自身の弱体化も招いた。半面、ロシアは中国との結束や、多極化の流れの中で台頭している。 (Time to Turn the Tables on Vladimir Putin) これらの全体から見て、欧州はロシアを敵視するのをやめて和解するしかない。選択肢は、それを早くやるか遅くやるかだけだ。遅くなるほど欧州は弱くなり、ロシアは強くなる。米国は覇権喪失後に孤立主義・北米主義という選択肢があるが、欧州はロシアや中東と近く、ユーラシアの一部なので国際主義・多極主義しかとれない。欧州が賢いなら、今回プーチンが送ってきたガス付きの提案に応え、ロシア敵視をやめて和解していく。しかし現実的に見ると、欧州は今後もしばらく、無茶苦茶と自滅を加速する米国の覇権下から出られず、ロシアと和解せず中途半端に敵視し続ける愚かな道をたどりそうだ。 (The War to Reshape European Security Has Begun) 3月1日から、米連銀がQEをやめることになっている。米国中心の世界の金融相場をつり上げる圧倒的に最大の要因だったQEが終わると、おそらく相場の下落が加速する。表のQEをやめる代わりに裏QEが始まる兆候はない。プーチンのウクライナ占領は、来週から米連銀がQEをやめる直前のタイミングで挙行された。露軍ウクライナ侵攻に際していったん株が急落し、金相場が高騰したが、最後のQE資金が注入されたらしく、その後は戦争が続いているのに株が反騰し、金相場は再急落した。このまま3月に入る。 おそらく、QE停止の影響で株は再び下がりだし、金相場は少しずつ再上昇する(数週間以内のタイムラグはあるかも)。インフレが悪化しており、QE停止やQT(中銀の資産圧縮)が必須だ。米中心の金融やドルの崩壊が進行していく。米国の覇権は失われ、欧州は対米従属できなくなる。日本はすでに米中両属になっている。欧州も本質的な対露和解が必要になる。英国の謀略で自滅的に肥大化させられて失敗しているEUも、いったん解体して再編が必要だ。NATOは、G7と同様、幽霊機関になっていく。 ▼ロシアを制裁できない欧米 以下、2月23日に書いて24日に配信しようとしたら露軍がウクライナに侵攻し、話の大前提が崩れてしまってボツにした記事「ロシアを制裁できない欧米」の中の、まだ読み応えがあると思われる部分を貼り付ける。今回ここまで書いたことと重複もあるがお許しを。ボツにした全文へのリンクも作っておく。 (ロシアを制裁できない欧米) 「露軍のウクライナ侵攻」に対し、米欧の軍隊がウクライナを助けて露軍と戦うなら第三次世界大戦になる。だが、その可能性はほぼゼロだ。核保有国同士は戦争しない。ロシア敵視のバイデンも、以前から経済制裁のことしか言わず、ウクライナに米軍を入れないと前から宣言している。今の話の中心は、欧米がロシアに対してどんな経済制裁を発動するかということだ。 ('War Between Nuclear-Armed Powers Is Not An Option': Calls For Diplomacy Surge) (Beware the Sanctions Trap Over Russia) 結論から言うと、欧米はロシアに対し、効果がある経済制裁をほとんどやれない。ロシア経済は、石油ガスなど地下資源や穀物などの輸出で回ってきたが、欧米がロシアの石油ガスなどを買わないようにする経済制裁をやった場合、困るのは欧米、とくにロシアの天然ガスへの依存がとても強い欧州諸国だ。ロシア自体は、欧米が買ってくれない分の石油ガスや穀物などを中国が全量買ってくれるので全く困らない。プーチンは北京五輪に際して訪中し、すでに習近平とその話をまとめてある。 (West warned against sanctioning Russian energy sector) ロシアの2州独立支持・ミンスク合意破棄を受けて、ドイツ政府はノルドストリーム2の天然ガスパイプラインの不使用を宣言した。ロシアからドイツに天然ガスを送るパイプラインとしてすでに元祖ノルドストリームが稼働しており、このラインでの輸入が、ドイツの天然ガス需要の3分の2をまかなっている。ドイツの全世帯の半分はガス暖房だ。ドイツは今後、対露経済制裁としてロシアからの天然ガスの輸入を減らすかもしれないが、そうなるとドイツの低所得者層が家の中で凍死する事態が現実になる。ドイツなどEU諸国は、ロシアの代わりに中東のカタールから天然ガスを買う算段をつけようとしたが、カタールも産出量の大半は世界各国と長期契約されており、産出量の1割ほどしかスポット売りしておらず、少ししか売れませんと言われてしまった。 (Qatar Says It Can't Replace Russian Gas Supplies To Europe) 世界の3大天然ガス産出国はロシアとカタールとイランで、ロシアもイランも欧米の敵であり、カタールは売れる量が少ない。欧州は、ガスを買える先がなくなってしまった。スポット品はアジアと欧州などの諸国が奪い合って昨年から価格が高騰しており、そのせいで各国の電力料金やガス料金が値上がりしている。今のような非常時のために、各国は液化天然ガスを地下の貯蔵施設に国家備蓄するようになっている。だが先週の時点で、欧州全体のガスの備蓄量は、備蓄可能総量の5%しかない。昨夏以来、米国が欧州を引き連れてロシア敵視を強めてきた中で、ロシアの国営会社ガスプロムが欧州に売るガスの量を減らし、減った輸入量を穴埋めするために備蓄施設のガスが使われ、備蓄量が減ってしまった。 (Europe has next to no gas left – Gazprom) ガスプロムが欧州へのガス輸出を減らしていることは以前から疑われていたが、ガスプロム自身は「減らしてませんよ」としらを切り続けてきた。欧米とロシアが決定的に対立した今になって、ガスプロムは欧州へのガスを減らしていたことを勝利宣言のように認めた。欧州側は輸入を減らされていることを知っていたはずなのに手を打たず、手遅れになってからカタールなどに売ってくれと頼んで断られるという馬鹿さ加減だ。ドイツは、ガスの備蓄量の減少を食い止めようとする策を打っていたが、それでも今の備蓄量は総容量の35%しかない。過激な温暖化対策によって天然ガスすら敵視される傾向で、ガスの国際相場が高いのだから国家備蓄を増やす必要はないという理屈がまかり通ってきた挙げ句、今の窮乏状態になっている。 (Germany running out of natural gas) (The Steep Cost of Sanctions for Europe and Russia) 独仏などEU諸国の多くは馬鹿げた温暖化対策によって原発まで止めてしまい、その挙げ句に石油ガスの宝庫であるロシアと敵対し、真冬なのに電気も暖房も足りない状態になっている。ドイツ政府は、ロシアを経済制裁するためにノルドストリーム2を稼働しないと発表したが、独政府がロシアからのガス輸入を制限することは、ロシアでなく自国民を経済制裁することになっている。ドイツなどEUは、ロシアからのガスの輸入を減らせない。減らしたら、国民は凍死し、工場など経済全体が止まってしまう。独政府がやったことは、完成したが不稼働のままのパイプラインの不稼働を継続すると宣言しただけだ。ドイツなどEUは、それ以上の「対露経済制裁」をやれない。この時点で、ロシアと欧州の今回の対立は、欧州の負けが決まった。今後の欧州は、どのようにウクライナの事態を見ないようにしてごまかしつつロシアとの関係を維持・修復していくかという話になる。 (No Shooting War in Ukraine – Dr. Paul Craig Roberts) (German minister explains Nord Stream 2 regrets) 第二次大戦後、欧州の安全は米国によって守られてきた。欧州にとって最大の脅威はロシア(ソ連)であり、その脅威から米国が欧州を守るためにNATOが作られていた。NATOの役目は、今回のような欧米とロシアの対立時に、欧州が危険な状態にならないようにすること、欧州の安全が保障されている状態を維持することだ。みんな軍事的な戦争の話ばかりしているが、安全保障(危険にならないこと)は軍事だけでない。そして欧州は今回、軍事でなく、天然ガスに象徴されるエネルギー安全保障の分野で、ロシアの脅威をもろに受けてしまい、とても危険な状態に陥っている。この間、NATOは、軍事の話ばかりして(というより軍事の話でロシアを意図的に怒らせることばかりやって)、ロシアが天然ガスを使って欧州を危険な状態にしてきたことを無視してきた。 (Is NATO a Dead Man Walking?) (Russia Warns Of "Brave New World" Of Higher Gas Prices After Germany Halts Nord Stream 2) 米国がノルドストリーム2の稼働を阻止するなら、代わりに米国から欧州への天然ガスの輸出を恒久に増やすなどの大対策が必須だったが、米国は何もやらなかった(巨大な妄想である地球温暖化人為説を扇動し、むしろ世界的なエネルギー危機を醸成した)。米国もNATOも、エネルギー面で欧州の安全を保障しなかった。そして今、米NATOに敵視されたロシアが2州の独立を承認して政治的な反撃を開始し、欧米NATOが対露制裁を発動しようとしたら、欧州は、自分たちがエネルギー面ですでにロシアに完敗してとても危険なガス不足・電力不足の状態に陥っているいることを発見し、驚愕している。エネルギー面で欧州をロシアの脅威から守ってやらなかったNATOは、決定的な信用失墜に直面している。 (Washington Should Threaten War Only if it Is Willing To Go to War: And Ukraine Does Not Justify War) (Is Putin’s End Game To Make Biden Look Stupid?) NATOを主催する米国は今後もロシア敵視を続けるだろう。だが欧州はもうロシアを敵視できない。欧州がこれ以上のロシア敵視を続けると、ロシアは欧州に輸出するガスをさらに減らし、欧州の市民の部屋の温度と経済の繁栄度がさらに下がる。コロナ愚策と相まって、欧州諸国の政府に対する人々の怒りが増加し、エリート支配の諸政権の転覆まで至ってしまう。バイデンの米国は、欧州に対し、ロシアを敵視しろと言うばかりで、欧州がロシアを敵視した場合のマイナス面の穴埋め(ガス輸出など)を全くしてくれず、頼りにならない。欧州が米国の言いなりになってこれ以上のロシア敵視を続けると、選挙で欧州のエリートたちが権力を失うことになる。欧州は今後、米国に付き合ってロシアを敵視するのをやめていく。欧州が米国の言いつけに従わなくなると、米国は欧州を守らなくなり、NATOが終わる。NATOの明示的な終わりは2025年のトランプ再登場以降になるかもしれないが、すでにNATOは死んでいる。 (Time to Turn the Tables on Vladimir Putin) ロシアは石油ガスのほか、アルミニウム、コバルト、銅、ニッケル、ウラニウム、パラジウムなども産出しており、これらのコモディティはすでに昨年からの米露対立や世界のインフレ傾向を受けて相場が高騰しているが、今回の決定的な米露対立の激化を受けてさらに高騰しそうだと言われている。 (5 Commodities That Could Explode As The Ukraine Crisis Escalates) (Buying Russia...) ロシアとウクライナは穀倉地帯でもある。両国の合計で、世界のひまわり油の8割、小麦の3割、トウモロコシの2割を生産している。これらの食糧類も、すでに世界的なインフレ傾向の中で昨年から値上がりしてきたが、米露対立の長期化とともに、今後さらに高騰する。これらは、世界のインフレ傾向をさらに悪化させる。米国ではバイデン大統領が国民に向けて、ロシアとの対立激化でガソリンなどがさらに値上がりしそうだが、全部ロシアが悪いので国民の皆さんは我慢してください、といった感じの声明を発表した。米国では最近、政府を批判する者はみんなロシアの回し者だ、といった感じの濡れ衣プロパガンダが横行しており笑えるが、それがさらに加速して「物価高騰を政府のせいにする人は非国民(ロシアのスパイ)だ」という、北朝鮮を笑えない話になっていく。 (Russia-Ukraine crisis will put even more strain on the global food supply, driving up prices of wheat and corn around the world) (Biden Says Russia To "Extend Deeper" In Ukraine, Warns Americans Of Coming "Pain" At Gas Pump) ロシアの動きとユーラシア地政学に詳しいぺぺ・エスコバルは、プーチンの2州独立承認を、多極型世界の誕生を意味するものだと解説している。私から見ると、プーチンの2州独立承認は、米国の諜報界がバイデン政権にやらせてきた過激で稚拙なロシア敵視策の産物だ。米国自身の覇権やNATOを自滅させつつ、プーチンを煽って多極型世界を誕生させた黒幕は、バイデンを動かしている米諜報界(DS、軍産)だ。米諜報界やDSは、隠れ多極主義(多極派)に乗っ取られていることになる。これは陰謀論でなく現実そのものだ。 (Escobar: The Birth Of The 'Baby Twins' - Russia's Strategic Swing Drives NATOstan Nuts)
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