米国を自滅させる「文化大革命」2021年6月8日 田中 宇地政学分析者のぺぺ・エスコバルは、リベラル自由主義の覇権勢力である米欧の世界支配が自滅的に弱まり、中露イランなどユーラシアの内側の勢力が台頭する地政学的転換・覇権崩壊と多極化を、以前から指摘してきた。地政学的な動きはゆっくりなので、最初に指摘されてから人々が実感できるまで何年もかかることがある。遠くに雨雲が見えてから、実際に雨が降るまで何十分かかかるのと似ている。1年前の指摘が今ごろ現実味を帯びたりする。その意味で、エスコバルが昨年7月に出した記事「文明の衝突を見直す(Clash of civilizations, revisited)」を、まず紹介する。 (Clash of civilizations, revisited) 「文明の衝突」は、冷戦後の米単独覇権期だった1990年代に権威ある学者ハンチントンが出した「いずれイスラム世界やロシア、中国(、日本)などが米国の言うことを聞かなくなり、リベラル自由主義の米国(米欧イスラエル)とそれらの他文明の非米諸国との衝突が激しくなる」というシナリオで、数年後の911テロ事件を「予測」(というか、911事件は自作自演系なので「構想」)したことで知られる。当時は米国の単独覇権がものすごく強かったので、対米従属の日本外務省の偉い人などは「これは今後、米国が、イスラム諸国やロシアや中国を、次々と倒してくれるというシナリオだろ」とうれしそうに述べていた(日本自身は米欧側でなく、いずれ米国に楯突いて潰される「孤立文明」に分類されており、日本の権威筋は衝撃を受け、シナリオ変更を求めて米国側に泣きついた)。 (世界的な「反乱の夏」になる?) 確かにその後、米欧イスラエルと中露イランなど非米側との「文明の衝突」は激しくなり、中東のイスラム世界は米国によって無茶苦茶にされてイラク、シリア、リビア、イエメンなどで合計200万人が殺された。だが全体的には、米国が非米側をやっつけて単独覇権体制を強化するのでなく逆方向で、米国がリベラル自由主義を過激に稚拙にやりすぎて自滅して非米側の中露イランなどが台頭し、多極化が進む展開になっている(日本は、一方で米国にしがみつきながら、他方で中国への従属する「両属」の傾向を強め、孤立文明としての自立だけはやりたくないので「わざと自分たちを弱め続ける」道を進んでいる)。 (Escobar: Turkey & The Clash Of Civilizations) (地政学の逆転と日本) 上で紹介したエスコバルの「トルコと文明の衝突」は、トルコやロシアや中国が、文明の衝突のシナリオを逆手にとり、欧米リベラル自由主義体制の崩壊に便乗して、それぞれの地域覇権を拡大して世界を多極化していく様子を描いている。トルコは、オスマントルコ滅亡後の欧米化・リベラル化・脱イスラム化の百年の国策をエルドアンが潰して、新オスマン帝国的なイスラム主義・反欧米の戦略を進めている。ロシアは、プーチンの側近が、欧米中心のリベラル主義の終わり・欧米覇権の終わりを指摘し、中国との協力体制を強めて米欧に対抗するユーラシア主義を進めている。欧米の「リベラル主義」とは、英国が作った、自分たちの考え方のみが「善」であり、他の伝統的な異文明の考え方はレイシズムや全体主義であるという、他者を肯定しない米英を頂点とする、実は最もレイシズムの民族序列のことだと、プーチン側近(Aleksandr Dugin)が言っている。そしてエスコバルの記事は、中国について「帰ってきた毛沢東(Mao returns)」という小見出しのもと、以下の示唆的な政治小話を紹介して終わっている。それは、3年前に中国のSNS微博(weibo)で拡散されたものだ。 (Clash of civilizations, revisited) ある日、40年以上前に死んだ毛沢東が街に帰ってきて、今の世界の様子を知りたがった。 ここまでの話は「かつて毛沢東の中国を自滅させた文化大革命は、今や米国で行われている」と書くための導入部だ。エスコバルの記事が出た昨年7月は、ミネアポリスで5月末に白人警察官デレク・ショービンが黒人のジョージ・フロイドを捜査中に死なせた事件を皮切りにBLMやアンティファ、LGBT運動体など、差別撤廃運動と称して白人や警察やゲイ嫌いを攻撃する民主党左派の市民運動が「覚醒運動」を急拡大していたころだ。米国のリベラル左翼運動が過激化して文化大革命の感じになり始めた時にエスコバルの記事が出たが、文化大革命が米国を潰すところまでいくのかどうかまだわからなかった。 (暴動が米国を自滅させる) (覚醒運動を過激化し米国を壊す諜報界) しかしその後現在までの1年近くの間に、覚醒運動は米国の混乱をひどくするだけの「悪い運動」であることが明確になった。民主党が多数派である諸州では、警察の予算が削られて殺人や強盗が急増している。民主党の諸州から人々が逃げ出し、共和党の諸州に引っ越している。シカゴの民主党の黒人女性市長(Lori Lightfoot)は、白人記者のインタビューは受けないと宣言する「白人差別」を堂々とやった。「白人は全員が生来の差別主義者である」と子供に教え込むトンデモなCRT(Critical Race Theory)の運動もまかり通っている。不合理であり、まさに文化大革命だ。この間に、民主党が選挙不正をやってトランプを追い出した疑惑や、政権をとった民主党が、トランプの共和党の支持者たちに「国内テロリスト」の濡れ衣をかけて攻撃する流れなども起きた。極左が保守派に濡れ衣をかけて大弾圧する米国の構図は、中国の文化大革命と同じになっている。 (Daily Caller News Foundation Sues Chicago Mayor Lori Lightfoot For Refusing Interview With White Reporter) (Grass-Roots Americans Revolt Against Critical Race Theory) 民主党バイデン政権は、左翼的な財政急拡大をやって失敗し始めている。連銀のQEが唯一の資金源であり、バブルを膨張させすぎて金融崩壊寸前の状態だ。インフレもひどくなっている。毛沢東が中国の経済を自滅させたように、バイデンは米国の経済を自滅させている。ミネアポリスの白人警察官デレク・ショービンは、フロイドを殺した罪で1審で有罪になったが、実のところ多分フロイドに対するショービンの対応は適切と言える範囲で合法なものだった。ショービンは無罪で、不起訴になるべきだった。しかし判決の直前、バイデン政権が裁判所に強い圧力をかけて有罪にさせた。1審の有罪はおそらく「人民裁判」的な濡れ衣・冤罪である。この人民裁判の構図も、中国の文化大革命と同じだ。ショービン裁判は上級審でくつがえる。中国の文革と同様、米国の文革も大失敗のレッテルをいずれ貼られる。 (Officer Chauvin’s Show Trial Will Bring the End of Law and Order) (Hedge Fund CIO: We've Lost Faith In Media, Politicians And Scientists; We Still Have Absolute Trust In The Fed) 文化大革命とは何か、も考えねばならない。中国の文革は、中共内部の左右の対立の末に起きた。右派(というより現実派)は経済状態を保持するため革命をゆっくり進めようと考え、徹底的な革命を性急に求める左派の毛沢東の権力棚上げに一時は成功した。毛沢東はこれを打ち破るため、自分のカリスマ性を利用して全国の若者に反逆を呼びかけて1966年に文革を開始し、全国で反革命狩りや役所の乗っ取りや破壊活動を扇動した。中共を握っていた現実派は「資本主義」の濡れ衣を着せられて処分され、左派が中共を席巻したが、大混乱と破壊と経済破が続き、10年後に毛沢東が死ぬまで中国は文革で自滅していた。毛沢東は、徹底した革命によって中国人を人間改造しようとしたが、それは妄想だった。 (Is A Cultural Revolution Brewing In America?) 米国の文化大革命は、2020年5月末のフロイドの死で激化したが、それ以前は、政界や学界、言論界などで、自分の敵に「差別主義者」のレッテルを針小棒大に貼って潰す「キャンセルカルチャー」や「ポリティカル・コレクトネス」の(汚い)動きが、民主党左派の主導で続いていた。多くの米国人はこの唾棄すべき汚い動きに参戦せず回避しようとしたが、フロイドの死後、全米を巻き込む文革的な覚醒運動が強まり、民主党支持が強い米国のマスコミも覚醒運動の機関紙になった。大半の米国民は、巻き込まれたくないので発言を控えつつも、言論統制が入った覚醒運動を嫌う傾向を強めた。民主党を支持する人が減り、共和党の支持者が増えて、不正がなければ11月の選挙はトランプの再選になったはずだが、実際は民主党の選挙不正により、バイデンの民主党政権ができた。 (Steve Bannon: Georgia Will Hold a Forensic Audit) (米国政治ダイナミズムの蘇生) 左派がイデオロギーを使った内乱を醸成して右派を追い出した点で、米中の文革は一致している。イデオロギーが極端で非現実的なのに国内を席巻できたことや、左派の方が極悪なのに、右派に濡れ衣を着せて無力化したことも、米中の文革で一致している。米国の文革はまだ前半戦であるが、マスコミや政界、学界など既存の権威を自滅的に破壊していくことは確実だ。世界中の米大使館は、フロイドの死から1周年を記念してBLMの旗を米国旗と並べて掲げている。米大使館や国務省やCIA(いずれも米諜報界の機関)は、LGBTの虹の旗を掲げたりもする。米政府は、覚醒運動と一心同体ですと宣言している。日本の自民党は、米国から求められたLGBT礼賛決議を拒否したが、当然だ。日本は、おかしくなった米国に従属できなくなっていく。 (Biden State Department signals support for BLM flag to be flown at US embassies) ("Unloading A Revolver Into The Head Of Any White Person": Yale Features Violent, Racist Diatribe By Psychiatrist) 覚醒運動など米国の文革は諜報界に支援されており、諜報界は覚醒運動を過激化する左派を傀儡として民主党を乗っ取り、選挙不正によってトランプを追い出して政権をとった。グリーンウォルドも言うとおり、LGBTなど覚醒運動は諜報界に乗っ取られている。しかし、諜報界は何らかの建設的な目標があってこの米政府乗っ取りをやっているように見えない。フロイドの死後に起きたことは、米国を自滅させる方向ばかりだ。これからの米国の文革の後半戦では、米国の自滅や権威筋の信用失墜が加速する。諜報界は、米国を自滅させて覇権崩壊させ、中露イランなど非米側を台頭させて世界を多極型に転換させるために、米国で文革をやっている。 (覚醒運動を過激化し米国を壊す諜報界) (What Happens When Doctors Can't Tell The Truth?) コロナ危機も、実は文化大革命的だ。PCR検査やワクチン接種、マスク着用は「毛沢東語録」である(金日成バッジでもある)。「コロナは風邪だ」「PCR検査は偽陽性だらけだ」「ワクチンは不要・害悪だ」「マスク要らない」などと(事実を)公式な場で言った者は、毛語録や金日成バッジに敬意を払わない人と同様、職位や権威を剥奪されて「粛清」される。コロナは「裸の王様」や「アルカイダ」と同種のトンデモ・悪質なひどい誇張である。覚醒運動や毛語録と同様、コロナは「信じるふりをする」対象だ。本当に信じている人は間抜けである。日本人は、まだ間抜けかもしれないが、米国では急速にそういうことになっている。CDCのファウチ所長が同僚らに送ったメールの束が公開され、コロナに対する認識は「陰謀論」の方が実は正しかったことが米国で露呈している。 (German Study Finds Lockdown "Had No Effect" In Stopping Spread Of COVID) (COVID is over…if you want it) (ICAN OBTAINS OVER 3,000 PAGES OF TONY FAUCI’S EMAILS) 米国ではコロナがインチキ病になっていく。医者や記者の権威も落ちている。これは良いことだ。毛沢東思想もコロナも、人々を軽信させて苦しめる、とんでもなく悪どい詐欺である(欧米日のマスコミ全般なども)。ほぼ全員が騙されてしまうと、騙されていない人も騙されたふりをせざるを得なくなる。詐欺の完全犯罪。戦後の「リベラル自由主義」や「民主主義」自体も同様だったのだが。「覚醒運動」は、覚醒していない人や、それを利用しようという下心がある人から順番に取り込んでいく。覚醒している人は、覚醒運動に楯突いて潰される。裸の王様や、ジョージオーウェルの1984である。 (マスク要らない) (Why Is There Such Reluctance To Discuss Natural Immunity?) コロナは「科学のふりをした詐欺・政治」「エセ科学」であるが、地球温暖化の人為説も同様だ。コンピュータのシミュレーションで「立証」したことにしている詐欺だ。そこを指摘する専門家は学界から排除される。左翼の人ほど、コロナも人為説もコロリと騙されて嬉々として軽信する(そして私に教条的な誹謗メールを送る)。共産主義など左翼思想も非現実的な詐欺だし、経済学も多くが詐欺だが、これらは「社会科学」と称している。「科学」はもともと現代の世界の発展を作った実学だが、学問として扱われるうちに詐欺の部分がふくらんだ(大学は詐欺のかたまり)。正しいものや理想を追い求めるロマンチストが、共産主義やコロナや温暖化人為説などの「科学詐欺」を軽信している感じだ。大学は詐欺のかたまりなので覚醒運動がさかんだし、コロナも軽信して閉鎖している。大学はずっと閉鎖されたままの方が人類にとって良い。 (歪曲が軽信され続ける地球温暖化人為説) (ニセ現実だらけになった世界) 米国の文革は今後、覚醒運動が民主党多数派の諸州を混乱させる流れの継続、コロナの詐欺性の露呈、民主党が票田拡大のためにやり出した違法移民受け入れの崩壊加速(米墨国境の混乱拡大)、選挙制度改革をめぐる2大政党間の政争・2022年の中間選挙での不正の度合いをめぐるせめぎ合い、インフレ激化、金融崩壊、などのかたちをとって続く。民主党の恒久与党化策は、党内からの反対で法案が通りにくくなっており、2022年の中間選挙で共和党が巻き返し、2024年にトランプが大統領に復活する可能性が増している。そのあたりまでに金融崩壊も起きそうだ。選挙不正やコロナのインチキが露呈し、米国の文革が大失敗していく。米国でコロナのインチキが確定したのに、欧州や日本はそれを無視する、などという(笑)な流れもありうる。気の早い共和党支持者は「今年8月までに民主党による選挙不正が暴露され、トランプが復権するかも」などと言っているが、それは早すぎる気がする。 (Democrat Manchin Sides With 'The People', Will Vote Against "Democracy-Binds Weakening" Election Reform Bill) (Trump expects to get reinstated as president by August, New York Times’ Maggie Haberman claims, sparking storm)
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