国際政治劇として見るべきコロナ危機2020年10月11日 田中 宇世界的なコロナ危機の特徴の一つは、米欧先進諸国と、発展途上諸国(非米諸国)のコロナ政策が大きく異なっていることだ。先進諸国の多くは、コロナ対策として厳しい都市閉鎖を行ってきた。人々は外出制限や社会距離を強要され、経済活動が大幅に減退して先進諸国はどこも大不況になっている。都市閉鎖は、コロナ対策として効率が非常に悪い。ほとんど効果がない。各国で新型コロナの陽性者や発症者が4月ごろに比べて減っているのは都市閉鎖の成果でなく、他の要因(状況が集団免疫に近づいているからとか、感染を繰り返すうちにコロナの重篤性が低下したとか)によるものだ。都市閉鎖がコロナ対策として効果がないと思える根拠の一つは、季節性インフルエンザの感染者が減っていないことだ。都市閉鎖が新型コロナ対策として有効なら、コロナだけでなく似たような感染のしかたをするインフルエンザの罹患者減るはずだ。だが、たとえば英国では年初来のインフルの累計患者数が前年比で減っていない。インフル患者数が減っていないことから、新型コロナの減少は都市閉鎖が原因でないことが読み取れる。 (Flu is killing more people than Covid19) (コロナのインチキが世界的にバレていく) 新型コロナの陽性者が再増加している国もあるが、それらはコロナ危機を扇動する目的で検査数を増やし、見かけ上の陽性者を増やす恣意的な策の結果だ。都市閉鎖をやらなかったスウェーデンのコロナ対策を立案してきた感染症の専門家アンデシュ・テグネルはFTに対して「都市閉鎖策は、壁にとまったハエを大鎚で叩いて殺虫しようとするようなものだ」と言っている。都市閉鎖は、ハエ(新型コロナ)を潰すのでなく、壁や家(国家経済や国民生活)を壊してしまう愚策だ、という意味だ。言い得て妙である。都市閉鎖は、愚策というより完全に間違った策だ。(スウェーデンの政策をさんざん中傷報道してきた歪曲屋のFTは、テグネルの指摘を懐疑的にとらえているが) (The controversial epidemiologist believes lockdown is ‘using a hammer to kill a fly’.) ("It's Like Using A Hammer To Kill A Fly") スウェーデンは8月から新たな陽性者が激減し、病院のICUへの新規のコロナの入院患者も減ったので、ICUのコロナとそれ以外の領域に分けることをやめる病院が相次いでいる。当初は、発熱や咳の症状がある患者を全員コロナ領域に入れていたが、ほとんど誰も感染していない事実が判明した。スウェーデンは集団免疫に達している可能性が高い(日本も。ほとんどの人は自然免疫でコロナが治癒するので獲得免疫を得ず、免疫保有率が12-43%という低さのまま集団免疫に達する)。前出のテグネルも集団免疫の可能性を指摘している。ストックホルムではほとんど誰もマスクをしていない。老人ホームへの訪問も解禁された。ベルギーやデンマークもマスク義務を解除した。北欧やベネルクスでは、マスクはコロナ感染防止の効果がない(薄い)という事実が定着している。 (COVID-19: Does Sweden Have Herd Immunity?) (Belgium to scrap face mask rules) (Denmark Nears Pre-COVID Normality: No Masks Or Distancing In Schools, Just Common Sense) 英国では、数千台の呼吸器が使われないまま倉庫でほこりをかぶっている。3-4月には、呼吸器が足りないと世界的に大騒ぎしていたのに(モサドが敵国から呼吸器を盗んでくる英雄談まで出ていた)。 (Thousands of ventilators bought at the height of the Covid crisis are sitting in warehouses due to a lack of demand) (Ventilators By Cloak & Dagger: Israel's Mossad Boasts Of Stealing Medical Gear From Other Countries) 北欧や日本など一部の例外を除き、先進諸国の多くは、都市閉鎖や社会距離、マスク義務化など厳しいコロナ対策を、見かけ上の陽性者数を恣意的に増やす歪曲策までやって続けている。対照的に、発展途上諸国の多くは、厳しいコロナ対策をやってこなかった。陽性者が多く出るとWHOに言われて対策をとるが、多くはそれほど厳しいものでない。しかし、手ぬるい対策しかやらない途上諸国はコロナが蔓延して大変なことになっているかというと、そうでもない。大変なことになっていると騒いでいるのは先進諸国だけで、しかもその騒ぎのほとんどは、陽性者や死者の数を捏造的に増やすなど自作自演の結果だ。 (Did The WHO Just (Accidentally) Confirm COVID Is No More Dangerous Than Flu?) (新型コロナ集団免疫再論) たとえばインドネシアは世界最低の人口あたりの検査率で、これではコロナ封じ込めが困難だと欧米マスコミで報じられている。途上国全体に、そのうち発症者があふれて大変なことになるぞ、やっぱり途上国は遅れてるなあ、みたいな印象がばらまかれてきた。しかし、そんなマスコミの妄想と裏腹に、人々は平然と生きている。インドネシアの人々が無策状態のコロナから受けている打撃よりも、米国やスペインの人々が都市閉鎖などの馬鹿げた強硬策から受けている打撃の方がはるかに大きい。先進国より途上国の方が、住みやすい場所になっている。今の先進国はコロナ対策で失業と行動制限の両方の打撃を受けているが、途上国の問題は失業だけだ。今や先進国の方が「かわいそうな人々」であふれている。これが世界の「新常態」になっている。 (Indonesia Has 270 Million People—and One of the World’s Lowest Covid-19 Testing Rates) (NY Times Admits WHO’s Decision Not to Close Borders at Start of Pandemic Was Based on “Politics,” Not Science) 東南アジアのカンボジアは、コロナ危機初期の今年2月、船内に陽性者が出てどこも寄港させてくれなくなった米国のクルーズ船ウェスターダム号を受け入れて乗客全員を問題ないとして上陸させ、シアヌークビル港まで出迎えたフンセン首相は「わが国にコロナ患者はいない」と豪語した。そのとき米国の新聞は「無策なカンボジアはそのうち発症者が急増して大変なことになる」という印象を与える記事を流した。しかし現実は逆で、カンボジアでは大きな問題が何も起こらず、今では「なぜカンボジアはコロナ対策で成功したか」みたいな提灯記事まで出ている。ニカラグアも同様だ。カンボジア政府はコロナに対して無策だが、WHOに非難されない。その理由はたぶん、WHOが中国の支配下に移っており、カンボジアは親中国の国だからだ。ニカラグアも。中国と仲良くしていればコロナ政策を非難されない。 (世界に蔓延する武漢ウイルス <2>) (What lies behind Cambodia's surprise coronavirus success?) (Nicaragua – The Country That Didn’t Swallow the Covid Blue Pill) なぜ欧米諸国は、害悪ばかり多い間違ったコロナ対策を延々と厳しくやっているのか。それをやるために統計まで歪曲して。「どういう病気なのかまだわからないので大事を取ってやっている」という、軽信者がよく言う解釈は間違いだ。コロナがどういう病気なのか専門家が諸説を出しているが、それをまとめてどれが事実であるか整理して人々に説明する動きが、先進国の中に少ない。どういう病気かわからない感じを意図的に放置している。大事を取る姿勢は、事態を調査してそれが正しいかどうか確認する作業と並行する必要があるが、それが行われていない。都市閉鎖の恒久化が最初から運命づけられている。コロナの本質についてわかってきているのに、いつまでも、わかってないことになっている。そのくせ、コロナの本質がわからないと作れないはずなのに、ワクチンの完成まであと何か月、みたいな喧伝が出回る。馬鹿げている。 (都市閉鎖の愚策にはめられた人類) (ウイルス統計の国際歪曲) 欧米諸国に都市閉鎖を命じている米覇権運営体やWHOは、厳しい都市閉鎖をやること自体が目的で、コロナはその口実として使われていると考えられる。コロナ危機を長引かせ、都市閉鎖を長期化しようとしている。なぜ、欧米経済に大打撃を与え、米覇権自体の衰退を早める長期的な都市閉鎖策がとられているのか。トランプの米国はWHOの支配権を中国に譲渡してしまい、中国がライバルの欧米を経済的に潰すためにWHOを通じて長期の都市閉鎖をやらせるシナリオにもなっている。これは、トランプら覇権構造の多極化を狙う勢力の戦略としてみると、まさにその戦略そのものになっている。都市閉鎖は、覇権体制を米単独から多極型に転換するための策として、覇権運営体(米諜報界)を乗っ取ったトランプや、多極化で得をする中国によって進められていると考えられる。 (コロナの歪曲とトランプvs軍産の関係) (ドル崩壊への準備を強める中国) 「大鎚でハエを叩こうとして家を壊す」コロナの都市閉鎖と同様の構造を持つ「隠れ多極主義」的な戦略としてこれまで、「サダムフセインやアルカイダを潰そうとして米国の中東覇権を自滅させる」イラク戦争やテロ戦争、「地球温暖化を防ぐ口実で欧米に石化燃料を禁止して経済を潰す」温暖化対策、「デフレ対策の口実でドル覇権をバブル膨張させて潰す」米欧日中央銀行群のQE(量的緩和策)、「中国を潰すためと言って米欧の経済覇権を解体し、中国を非米的に台頭させて世界を多極化するトランプの米中分離策」などがあった。いずれも軽信者には見えない構図になっている。 (911とコロナは似ている) (米欧日の儲けを中国に移転するトランプの米中分離) 新型コロナ自体、最初は中国に疫病を広めて経済崩壊させる軍産の中国潰し策だった観がある(米留学中に米諜報界のスパイにされた中国人研究者が武漢のP4ラボでSARS関連の密閉研究中だったウイルスを意図的に漏洩したシナリオの場合)。しかし、軍産(諜報界)はトランプに乗っ取られているので、コロナ危機は中国よりも米欧をひどい目に遭わせる道筋へとねじ曲げられ、中国自身はさっさとコロナ危機を脱して世界最速で経済成長する状態に戻り、コロナは習近平の独裁を強化する道具になっている。中共はコロナにかこつけて欧米の記者やスパイを大陸から追い出し、軍産による中国の政権転覆・カラー革命は不可能になった。米英の退潮と相まって、香港や台湾の「回収」が進む。世界が気づかないうちに、中国がコロナに紛れてステルスに蘇生・台頭している。孫子の兵法ならぬコロナの兵法。非米諸国や国際機関が中国の傘下に群がる(菅の日本も)。長期的に、中国はコロナでとても得をする。 (米中逆転を意図的に早めるコロナ危機)
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