コロナの歪曲とトランプvs軍産の関係2020年9月26日 田中 宇新型コロナ拡大にともなう危機は、とても政治的な構造を持っている。マスコミや権威ある専門家たちは、コロナ危機を「裏」のない、政治色の全く入らない純粋な感染症の危機としてしか見ない。人々の多くも裏読みに慣れていないので、マスコミ権威筋の説明を鵜呑みにしている。だが事態を詳細に見ていくと、コロナ危機は国際政治的に歪曲された各国政府による陰謀・政治的演出だと考えた方が納得がいく話になる。たとえば「第2波」「第3波」として騒がれている陽性者の再増加は、日本でも米国でも、PCR検査数を増やしたことに伴うもので、コロナの感染拡大の速度が最増加した結果でない。なぜ各国政府が事態を歪曲して第2波、第3波を演出し、感染拡大が続いていると人々に思わせねばならないのか、の方が大きな問題だ。事態を深く掘り下げた時の構図の大転換は911テロ戦争と同じだ。 (The Jump In New US Covid Cases Is "Completely Explained" By A Surge In Testing: BofA) (新型コロナ「第2波」の誇張) (911とコロナは似ている) 世界的に、市民外出禁止や店舗閉鎖命令などの都市閉鎖が、コロナ対策として効果があるという確証がないまま各国に強要され、その悪影響である経済停止の方がひどくなり、世界的な大恐慌になっている。都市閉鎖を必要ないと考え、むしろ都市閉鎖しないことで集団免疫を早めに獲得した方が良いという方針を続けたスウェーデンは国際マスコミから非難され、悪しざまな歪曲報道で誹謗中傷され続けた。今ごろになって、スウェーデンは全体的な感染が少ないまま経済成長を再開でき、正常な社会の維持もできて成功したと認められている。都市閉鎖が愚策であると公式にわかってきた今でも、欧米の多くの政府は、今後も断続的に都市閉鎖が必要だと言い続けている。こうした間違った策を長期化するために、間もなく第3波がくるという歪曲的な喧伝(実は検査数の増加)が続けられている。 (Does Sweden have herd immunity?) (New Lockdowns Could Lead Europe to Economic Depression) この国際政治的な歪曲を主導しているのは米国だ。経済を破壊するだけの都市閉鎖には、米国以外の国が扇動・強要しても、他の諸国が従わない。日本を含め同盟(=対米従属)諸国の多くは、今回のような国家運営の根本に関わる重要事項の場合、覇権国である米国の言うことしか聞かない。米国自身も、他の国の主導なら従わない。 (コロナのインチキが世界的にバレていく) 今の歪曲的なコロナ対策の主導役(コロナ危機の扇動役)が米国であるとして、米国のどの勢力が主導しているのだろうか。トランプなのか、軍産なのか。米国では、覇権運営に関してトランプと軍産複合体(諜報界、外交界、マスコミ、学術界、民主党主流派など。深奥国家)が対立的に存在している。これまで米国の覇権運営は軍産が握ってきた。そこにトランプが大統領になって殴りこみをかけた。軍産は米国覇権の永続が目標で、トランプは米国覇権の破壊と多極化が目標だ。 (米英諜報界内部の暗闘としてのトランプのスキャンダル) (トランプと諜報機関の戦い) 米国の中枢では、第2次大戦で英国から覇権を譲渡されて以来、英国が黒幕になって米国の単独覇権体制を維持する戦略を採りたい軍産と、覇権を多極化・機関化して世界の発展の均一化と安定を進めたい勢力(隠れ多極主義)が暗闘してきた。多極派の目標は、ロックフェラーが作った国連の安保理P5が象徴している。トランプは多極派の代理人だ。トランプは大統領になって軍産に戦いを挑み、ロシアゲートなどを舞台にした激しい暗闘の結果、トランプが軍産に勝っている。諜報界を取り仕切る司法長官にはトランプの忠臣であるウィリアム・バーが19年2月から就任し、トランプに楯突いてきたFBIなど諜報界を仕切ってきた幹部たちを次々と更迭ないし格下げ・抑止してきた。バーはトランプの軍産潰しの現場指揮官だ。 (スパイゲートで軍産を潰すトランプ) (軍産の世界支配を壊すトランプ) トランプは軍産と対立してきたが、トランプはすでに軍産との戦いに勝っている。トランプは、すでに軍産の中枢である米諜報界を乗っ取っており、乗っ取った後も、まだ戦いが続いていて軍産と対立しているかのような演技を続けることで、軍産が過激にやって失敗して米国覇権を自滅させ結果として多極化が起きているという展開に誘導していると考えられる(マスコミや学術界は軍産の一部だが独立的な機関なので、トランプが諜報界を乗っ取っただけでは言うことをきかせられない)。この手法は、ブッシュ政権の時に政策立案集団である「ネオコン」が採った策略だ。ネオコンは、軍産の一部としてイラク侵攻を起こしたが、そのやり方は過激かつ稚拙で、イラクの占領が失敗して米国は覇権を低下させた。ネオコンはトランプと同根の隠れ多極主義者と考えられるが、表向きネオコンは「ネバートランプ」の派閥を結成したりしてトランプを敵視している。ネオコンは、イラク侵攻後も「悪名高い軍産」として演技し続け、トランプと軍産が戦ってトランプが勝つという演技に参加している。 (ロシアゲートとともに終わる軍産複合体) 「トランプvs軍産」の構図の中で、コロナの歪曲を積極的にやってきたのは、軍産の一部であるマスコミだ。また米政界では、共和党より民主党の方が都市閉鎖の恒久化に積極的だ。米マスコミの多くは民主党寄りである。学術界や大学も、コロナ危機を積極的に扇動してきた。コロナの歪曲は、マスコミや民主党など、軍産によって行われている。軍産の目標は米国覇権の永続なのだから、米経済を破綻させ米覇権を自滅させ、中国をこっそり台頭させるコロナ危機の歪曲は、軍産の目標と正反対だ。この矛盾をどう説明するか、という時に出てくるのが「軍産はすでにトランプに乗っ取られている」という状況だ。トランプは、乗っ取った軍産の一部であるマスコミや学術界が、コロナ危機を歪曲的に扇動するように仕向けている。かつてイラク戦争の前後にも、マスコミはネオコンが流す稚拙なウソを「事実」として報道し続けていた。 (好戦策のふりした覇権放棄戦略) (ネオコンと多極化の本質) トランプは、都市閉鎖に反対するかのような印象を流している。都市閉鎖を続ける民主党の州知事や市長を批判するツイートや発言を連発する。しかし、トランプが本当に都市閉鎖に反対なら、連邦政府として都市閉鎖に反対だときっちり表明すれば良い。州知事や市長が勝手にやる都市閉鎖策は無効だと宣言して政治的・法的に争えば良い。トランプはそれをせず、逆に、自分が任命したCDCなど米政府のコロナ担当部署が、各種の厳しい都市閉鎖的な諸策を進めることを許している。米政府がPCR検査を増やして第2波を演出するのも看過ないし推進している。トランプは、表向き都市閉鎖など厳しいコロナ策に反対する印象を流しつつ、実のところ部下に厳しいコロナ政策をやらせ、米国の多くの地域が延々と都市閉鎖を続け、大恐慌を悪化させるのを容認している。トランプは、表でコロナの愚策に反対しつつ裏で推進している。トランプと軍産の両方がコロナの愚策を推進している。欧州や日本などの同盟諸国に厳しいコロナ対策をやらせているのも、トランプと軍産の協調体制だろう。 (Dr. Fauci Warns "We Need To Hunker Down To Get Through This Fall And Winter Because It's Not Going To Be Easy") (新型コロナ集団免疫再論) コロナ危機は「危険な感染症が世界で流行し、米国が感染症対策と称する覇権行使の強化・世界的な有事体制の確立をやるべきだという話になる」という、軍産の覇権強化策としての「パンデミック」のシナリオに沿っている。コロナ危機はパンデミックのシナリオに沿っているが、やっている策は、米国と同盟諸国の経済を破綻させる都市閉鎖や、軍産のエージェントが世界各国に行けなくなる国際旅客航空便の停止など、米国覇権を自滅させている。なぜこうなっているかという疑問も、トランプらが軍産を乗っ取り、軍産の策であるパンデミックのシナリオを発動し、それを自滅的な具体策でやらせることで、トランプらがやりたい覇権崩壊や多極化につなげていると考えれば納得できる。 (12 Steps to Create Your Own Pandemic Or How to Turn a Harmless Virus into Boundless Profits for You and Your Friends) (コロナ危機による国際ネットワークの解体) 裏の覇権自滅シナリオを書いているのはトランプ自身でなく、側近や知恵袋の誰かだ。ビルゲイツら、もともとのパンデミック推進派は、目くらまし用のピエロにされている。イラク戦争の時も、軍産のふりをした多極派のネオコンが立案し、軍産本流(中道派)のパウエル国務長官らはピエロにされ、ネオコンが埋め込んだ「イラクの大量破壊兵器保有」の稚拙な捏造を国際社会に説明するのに苦戦させられていた。 (Bill Gates Slams FDA, Doubts Agency Can Be Trusted With COVID-19 Vaccine) (イラク戦争を乗っ取ったパウエル) コロナ危機の歪曲は、米欧を自滅させるだけでなく、中国を台頭させている。世界の主要な諸国の中で今年、プラスの経済成長になるのは中国だけだ。米日独など、あとの諸国は全部マイナス成長だ。米国のマイナスが特に大きくなりそうだ。米国が自国と同盟諸国に愚策をやらせて自滅させている。対照的に中国は、さっさと都市閉鎖をやめて経済を平常に戻し、経済成長を好転させプラスにした。これも、トランプの米覇権破壊・多極化戦略の「成果」だ。 (米中逆転を意図的に早めるコロナ危機) (中国が内需型に転換し世界経済を主導する?) 新型コロナは中国の武漢で発祥した。この部分も、トランプが乗っ取った軍産にやらせた、もしくは軍産が中国潰しの策としてコロナを武漢で発祥させるのをトランプが黙認し、中国から世界に感染が広がるところで策を乗っ取った可能性がある。それらでなく、単に中国側の研究所員の過失だった可能性もある。コロナの発生経路は、武漢の野生動物市場で売られていた中型哺乳類からヒトに感染したという純粋な自然発生の経路ではないだろう。自然発生なら中国政府の責任がないので、そのように発表するはずだ。中国政府は一時、自然発生説を流布したが、その後止めている。世界から詳しく尋ねられると辻褄が合わなくなるからだろう。中国政府は、コロナの発生経路を不明にしたままだ。中国政府が認めたくない、責任重大な経路なのだろう。となれば、武漢のウイルス研究所からの漏洩が最も疑われる。 (武漢コロナウイルスの周辺) 研究所からの漏洩の場合、純粋に研究所員の操作ミスだったのか、それとも米諜報界が武漢ウイルス研の要員を自分たちのスパイに仕立て、そのスパイに意図的なウイルス漏洩を引き起こさせたか、という2つの場合が考えられる。どちらにしても中国政府にとって不名誉なことなので発表されない。純粋な操作ミスの場合、SARS研究として実験室でコウモリから中型哺乳類に感染させたコロナウイルスを実験終了後に殺菌処理したのが不十分だった可能性がある。この例はSARSウイルス漏洩事件として、過去に北京の研究所で起きている。CIAやFBIなど米諜報界・軍産が黒幕の場合、中国のウイルス研究者のほとんどが米国の大学や研究所に留学した経験を持つので、米諜報界が米国に留学中の研究者をたぶらかしたり脅したりして陥れ、スパイに仕立てることが可能だ。 (新型ウイルスとトランプ) 新型コロナが武漢ウイルス研から漏洩したとして、それが純粋な操作ミスの結果であるなら、コロナの発祥時には米国のトランプや軍産と関係ないことになる。トランプや軍産は、中国側の過失で発祥した新型コロナが中国から世界に広がる際に、わざと稚拙な都市閉鎖などを展開し、コロナが中国でなく米欧を自滅させるよう設定したことになる。そうではなくて、米諜報界が武漢ウイルス研究所の中に仕込んだスパイがウイルスを漏洩させてコロナ危機を起こしたのなら、最初から軍産やトランプの謀略だったことになる。どちらだったのかは、多分永久にわからない。どちらであっても、コロナ危機の全体構図としては大した違いでない。 (ただの風邪が覇権を転換するコロナ危機) コロナの有事は、中国の習近平主席が自分の独裁を大幅に強化する好機を与えた。習近平はコロナ危機を使い、中国での独裁を強化しただけでなく、米国などのマスコミ記者や外交官らの中国駐留を制限することで、中国の状況に関する情報が世界に漏れにくい状態を作り、世界から監視・邪魔されずに、中国と一帯一路の強化をやれるようにした。天安門事件など、米欧が中国をへこます局面は、米欧が中国を監視していることで可能になった。コロナは米欧から中国への監視を外し、中国の台頭を見えにくいものにしている。世界が監視していない中で、これから中国がさらに台頭していく。実態が見えにくいので、米欧は中国への抑止策がとりにくい。 (米欧日の儲けを中国に移転するトランプの米中分離) (China Backslides on Economic Reform) しかもトランプはコロナ以外の経済の部分で、稚拙で過激な中国敵視策を加速している。これもネオコン的だ。中国を敵視して弱体化することはマスコミなど軍産の目標だが、トランプは中国敵視をやっているのでマスコミが批判しにくい。トランプの中国敵視は中国を強化する。その点をマスコミが批判しても、難しい政策論になるので効果がない。トランプは、軍産の策であるパンデミックや中国敵視を稚拙にやり、これを恒久化することで、米国覇権の自滅と中国の台頭、覇権の多極化を推進していく。世界的なコロナ危機はまだまだ続く。
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