ロシアがイスラエル・イラン・アラブを和解させていく2019年7月1日 田中 宇6月24-25日に米露イスラエルの安保担当高官がエルサレムに集まった安保会議は、米国の退潮とロシア・イランの台頭の中で、今後のイスラエルの国家安全をどう守っていくのかを検討する、歴史的・地政学的に非常に重要な会議だった。会議は、ネタニヤフ政権の強い要請で開かれ、準備もすべてイスラエル側が行った。議論の中心は、イスラエルと隣接する内戦後のシリアにイラン系の軍勢(民兵団)が駐留してイスラエルに脅威を与えているので、イスラエルがロシアに「イランに圧力をかけてイラン系軍勢をシリアから撤兵させてほしい」と頼むことだった。イスラエルは、アサド政権を容認するから、イランに撤兵するよう説得してくれとロシアに頼んだようだ。 (Netanyahu seeks joint U.S., Russia, Iran exit plan from Syria) (Israeli, Russian, US interests converge on Iran in Syria) シリア内戦はアサド・イラン側の勝利、米イスラエルが育ててきたISアルカイダの敗北で終わっており、もはや軍事的にアサド・イランを倒すのは無理だ。外交で説得するしかない。アサド政権は、シリアが安定するまでイラン系軍勢にいてもらうことにしたと言っている。イスラエルは、ロシアに協力し、アサドとも和解してシリアの安定に貢献することで、イラン系を出て行かせられる状況にしたい。 (Kremlin says Russia-US-Israel meeting 'very important’) 米国は、すでにシリアの事態に対してほとんど影響力を持たず、イランとも前から対立一辺倒なので有効な圧力をかけられない。米国の代表はイラン敵視の急先鋒であるボルトン安保補佐官であり、イランの説得など無理だった。米国は、イスラエルの対露要請に「口添え」することぐらいしかできない。イスラエルはロシアだけが頼りだ。 (The Art of the Deal: Trump turns to Putin on Iran) (ボルトンは、トランプを騙して米国の戦略をイラン敵視一辺倒にねじ曲げていると報じられているが、これは過剰にやることで逆の効果を生むための「騙しの演技」で、ボルトンの本質はトランプと同じ覇権放棄・隠れ多極主義だ。今回のエルサレム会議でボルトンは、イスラエルがロシアに頼んでイラン側と仲直りしていくことを容認・支援している) (Contradicting Trump, Top Putin Adviser Says U.S. Drone Downed in Iranian Airspace) (Can Bolton & His Russian Counterpart Defuse Israeli-Syrian Tensions?) イスラエルは、シリアにいるイラン系軍勢から脅威を受けていると主張しているが、シリアやイランから見ると話が逆だ。もともとシリアのアサド政権を転覆しようとISアルカイダを支援してシリアを内戦に陥らせたのは米イスラエルであり、米イスラエルこそ主権国家たるシリアに大きな脅威を与えてきた。アサドがシリアを守るためイランに助けを求め、それに応じてイランが民兵団をシリアに派兵したのは、まさに正当防衛だ。米イスラエルが支援するISカイダを完全を潰し、シリアが再び安全になるまで、イラン系軍勢がシリアに駐留する必要がある。こうした理屈は、ロシアも十分に理解している。 (Russia-U.S.-Israel Meeting in Jerusalem Is Doomed to Fail. Here Is Why) この構図は、さらに大きな枠にもあてはまる。米イスラエルは79年のイスラム革命以来「イランの脅威」を重大視してきたが、中東の情勢を冷静に見ると、イランは米イスラエルにとって脅威でない。イスラム革命は、米国がイランを傀儡国家として維持しようとした反動で起きているし、イランがハマスやヒズボラといったイスラエルの敵を支援してきたのも、イスラエルがパレスチナやレバノンを攻撃・支配しようとしてきたことへの反動だ。そもそもイスラエルとアラブの対立(パレスチナ問題)や、イラン(シーア派)とアラブ(スンニ派)の対立、ISアルカイダ(スンニ過激派)の勃興も、米英による中東の「分割支配」戦略によって扇動されて起きている(イスラエル自身が、分割支配に翻弄される側だ。だからイスラエルは米国を逆翻弄して仕返ししてきた)。「イランが核兵器を開発している」という米イスラエルの主張は全くの濡れ衣だ(判定役のIAEAは、イランが核兵器開発していないと繰り返し言っている)。米イスラエルが中東支配の汚い戦略をやめれば、イランは米イスラエルにとって脅威でなくなる。 (Iran says it welcomes any defusion of tensions in region) 米英イスラエルと対照的に、冷戦後のロシアは、イランを脅威と考えず、むしろ米イスラエルによる中東支配・対立扇動・濡れ衣敵視の戦略を批判的に見てきた。トランプは、濡れ衣に基づくイラン敵視を意図的に誇張して展開している。米国の「汚さ」と「大間違い」「ウソつき」「覇権国として不適格」が露呈し、相対的にロシアが「正しい」「信頼できる」「米国に代わる中東の覇権国としてふさわしい」とみられる傾向が強まっている。 (Russia says many countries standing by Iran in case of any US ‘crazy’ action against Tehran) イスラエルは今のところ、覇権国である米国に同調し、濡れ衣に基づくイラン敵視の姿勢をとっている。この前提でイスラエルは「シリアからイラン系軍勢を追い出すこと」を最重視している。(イラン敵視の前提で行われた今回の米露イスラエルの安保会議にロシアが出たことについて、イランがロシアに抗議したらしく、ロシアの代表は「イスラエルにはロシア・旧ソ連から移住した200万人のロシア系国民がおり、ロシア政府は彼らを守るため、イスラエルの安全保障の会議に出席する必要がある」と弁解した) (In trilateral Jerusalem summit, Russia sides with Iran, against Israel and US) (U.S. seeks Russian support on Iran at key Israel meeting) 今はイラン敵視の前提だが、今後は違ってくる。今後、トランプの意図的な覇権放棄・多極化策の結果として米国の中東覇権がさらに失われていくことがほぼ確実で、イラン敵視や中東の分割支配の構図もしだいに消失していく。イスラエルは、従来と反対に、イラン敵視策をやめた方が国家安全上、都合が良くなる。イスラエルは、表向き米国と同歩調のイラン敵視の姿勢をとりつつ、実質的に、ロシアと同歩調の対イラン和解の方向に寄っていく(この傾向はトランプ登場前、オバマが15年にシリア内戦の解決をロシアとイランに任せたころからのものだ)。 (シリアをロシアに任せる米国) (Donald Trump’s Iran Show) いずれイランはイスラエルの敵でなくなっていくので、シリアにいるイラン系軍勢とイスラエルが敵視・攻撃し合わなくなる。米国の中東覇権が低下すれば、ISアルカイダもいなくなる(テロでなく、選挙や社会運動を戦う「ムスリム同胞団」に戻っていく)。シリアの治安が改善し、イラン系の軍勢がシリアに駐留する必要もなくなる。シリアが安定するころには、イスラエルがイラン系の撤退を求めなくなり、その中でイラン系が自発的にシリアを撤退する。そこまでいくのにあと数年か?。 (Iran shifts to higher-risk strategy as Trump bears down on pressure campaign) そのころには米国の中東覇権がさらに消失し、ロシアの中東覇権が拡大する。ロシアは、イスラエルとイランの間だけでなく、イスラエルとアラブ諸国の敵対、その中心であるパレスチナ問題、そしてイランとアラブ諸国との敵対関係も、解消する方向で仲裁していきたい。これらの敵対関係はいずれも、中東の覇権国だった米英・軍産複合体が支配維持のために扇動してきた。米国の覇権低下とともに、敵対関係も崩れていく。 (ロシアの中東覇権を好むイスラエル) (中東の覇権国になったロシア) 中東にはアラブを中心に米国の傀儡政権・対米従属国も多く、彼らは分割支配の敵対構造を活用して自分の政権を維持してきたので、米国の覇権が失われても敵対構造に固執するだろう。しかし、傀儡政権の後ろ盾となる米国の覇権が消失すると、傀儡政権自体の維持が困難になり、非米・反米的なポピュリズムに頼って政権を維持する新姿勢に転換するか、国内の反米非米勢力に政権転覆されるかどちちらかになる。非米化・イスラム主義化しつつ独裁政権を維持しているトルコのエルドアンが象徴的だ。 (In "Stunning Blow" To Erdogan, Opposition Candidate Takes Istanbul By Huge Margin) 米国の覇権焼失後、誰も中東の覇権国(仲裁役)を引き受けないと、既存の勢力どうしが和解でなく戦争して相互に自滅しかねない。米国覇権の軍産が最後っ屁的に永久混乱を残置していきかねない。米国に代わる外部の仲裁役が必要だ。オバマ、トランプの米国が、ロシアを後継の覇権役に押し立てつつ中東覇権を低下させてきたのはこのためだ。 (Trump: War President or Anti-Interventionist? - Patrick J. Buchanan) ロシアは、米国から中東覇権を譲渡されているものの、米国より経済力がはるかに小さい(米国のように金融バブルの錬金術をやれないので)。ロシアは、中東覇権を安上がりに運営する必要がある。不用意に派兵すると、米国の軍産に泥沼化させられて消耗してしまう(ソ連のアフガニスタン占領のように)。ロシアは、外交的な仲裁によって中東の諸勢力間の対立を緩和していきたい。今回のエルサレム会議は、シリアを舞台にしたイスラエルとイランの対立を緩和するのが主題だが、これが軌道に乗ったら、イランとアラブ、イスラエルとアラブとの対立もロシアに仲裁してほしいという話になっていくだろう。 (Moscow seeks Iran-Israel compromise at Jerusalem security chiefs meeting) イランとアラブの対立は現在、トランプがMbS皇太子のサウジアラビアをけしかけて兵器を買わせ、サウジがエジプトやUAEを引き連れてイランと対決する「アラブNATO」を作らせようとしている。トランプは、アラブNATO軍ができたら米軍を引きあげるつもりだ。しかしサウジなどアラブは、日本などと同様、米軍に自国を守ってもらえるので対米従属し、米国に同調してイランを敵視する演技に参加している。米軍が撤退するならイラン敵視などやりたくない。 (State Dept Looks to Create Anti-Iran Coalition) (Trump: Allowing FBI to Investigate Khashoggi Murder Would Jeopardize Saudi Arms Sales) ロシア政府は6月28日、イランが中東での重要なパートナー(同盟国)であると表明し、イランが望むなら最新型の迎撃ミサイルS400をイランに売ると発表した。以前の記事に書いたように、S400は米国の新型のステルス戦闘機を探知して迎撃しうる。S400が配備されたら、米国であれサウジであれ、イランを攻撃することが有望な選択肢でなくなる。ロシアがS400のイラン配備に言及したので、アラブ諸国はイランと対決する気がぐんと失われ、アラブNATOは結成前に瓦解することが確定した。 (Russia ‘ready to deliver S-400 to Iran,’ no request made yet) (Will US Elites Give Detente With Russia A Chance?) (ロシアは、トルコやインドにもS400を売ろうとしている。トルコやインドはもともと自立的な国だったが、防衛力をつけるため米国と親密にしてきた。ロシアからS400を買って非米的に防衛力を高められるなら、米国と親密にする必要が低下する。トランプはこの時とばかりにインドに貿易戦争を吹っかけ、米議会などはエルドアンの独裁を批判するようになっており、トルコやインドの対米自立と、覇権体制の多極化に拍車をかけている。S400は対米自立の道具だ。韓国やサウジはS400購入を検討したことがある。日本も検討してみてはどうか 笑) (Why Indian-Turkish Embrace Of Russia's S-400 Is So Important For Global Affairs) (India "Risks Triggering Sanctions" Over Russian S-400 Deal, US Warns) サウジのMbSは、反政府ジャーナリストのカショギを殺したので世界から嫌われており、トランプしか頼る先がないので、まだアラブNATOを推進する姿勢を見せている。だが、これまでサウジを兄貴分と慕ってきたUAE(アラブ首長国連邦)は最近、サウジに協力してイエメン戦争に派兵していたのをやめて、イエメンからかなりの軍隊を自国に撤退することにした。UAEは、米サウジが「イランの仕業だ」と(濡れ衣的に)言っているUAE沖のタンカー爆破事件について6月28日に「イランの仕業と考えられる根拠が何もない」と(事実を)言い出し、米サウジから離反してイランの肩を持ち始めた。 (UAE withdraws 'large' number of troops from Yemen) (UAE: "We Don’t Have Evidence" That Iran Carried Out Tanker Attacks) 米サウジのイラン(濡れ衣)敵視連合は、崩壊に瀕している。このタイミングでトランプは6月28日の大阪でのG20サミットでの全体写真の撮影会で自分の左隣の、ど真ん中の位置(議長である安倍と、世界最有力者であるトランプ自身の間)にサウジのMbSを招いて写真をとらせた。トランプは撮影会で、自分の右隣にトルコの独裁者エルドアンを立たせており、これらは表向き「中東の同盟国を大事にする」という(軍産のふりをした)トランプの演技として行われているが、実質的には、欧州カナダなどG20参加のリベラル先進諸国(米同盟諸国)がMbSやエルドアンへの批判を強めていることに対し、トランプが「馬鹿野郎。これでもくらえ」と嫌がらせしたという意味がある。 (Return To The Fold: MbS Stands Right Next To Trump & Erdogan At G20 After Prior Snub) トランプはG20でプーチンと緊急の米露首脳会談を開いたが、この首脳会談はエルサレムの安保会議をふまえた中東に関する話し合いだったと思われる。エルサレム安保会議より前の6月18-20日には、ロシアのウファでロシア主導の年次の国際安保会議が開かれ、米国から初めてNSC部長級(人名は不明)が参加した。この会議にはイラン政府の安保責任者(Ali Shamkhani)も参加し、米露イランの安保担当高官がそろった。3者が会談したかどうかは不明だが、米露が中東の安保分野の話し合いを重ねる状況ができつつある。 (At G20, Trump Seeks Fresh Start With Putin After End of Mueller Inquiry) (Top US Security Council official to attend forum in Ufa) - Russian Security Council (Will US and Iranian officials be at Russia’s Ufa meeting together?) MbSは、カショギを殺したことが国連の調査で確定しつつある「殺人鬼」だ。エルドアンは、国内の選挙で負けたので「やり直し」させ、それでもまた負けたので次はどんな不正をやろうかと考えている独裁者だ。トランプはMbSという「うんち」をG20の真ん中に据え付けて記念写真を撮らせた。脇の方ではプーチンが「リベラルはもう時代遅れだよ」とFTのインタビューで(リベラル派自身が認めたがらない事実を)言い放ってほくそ笑んでいる。米国の民主党リベラル派は、米国の自滅を加速する「極左」として生まれ変わりつつある。 (Putin Eviscerates Liberalism, Calling It "Obsolete", In Wide-Ranging Interview Ahead Of G-20) (Vladimir Putin says liberalism has ‘become obsolete’) (Elizabeth Warren Has Lots of Plans. Together, They Would Remake the Economy) トランプは、イランを敵視する一方で、イラン前面のホルムズ海峡やインド洋、ペルシャ湾の航路を米軍が防衛してきたことについて「この航路を通る船の大半は中国や日本など東アジアの(金持ち)諸国の船であり、米国の船でないのだから、航路の防衛を米国が高い軍事費用を負担して行う必要はなく、中国や日本の軍隊が航路を自衛すべきだ」という趣旨の、覇権放棄的なことを6月25日に言い放っている。トランプは「イランに核兵器開発をやめさせることが自分の(イラン敵視)戦略の目的であり、イラン前面の国際航路を日中韓などのために守ってやることが目的でない」「イランが核兵器開発をやめさえすれば自分の目的が達成でき、イランと仲良くできる」と言っている。 (Trump: We Won’t Protect Foreign Oil Tankers For Free) (Trump: Why Protect Other Countries' Shipping Lanes For "Zero Compensation"?) 国際航路を守ってくれないと、日韓や東南アジア諸国は対米従属する意味が半減するし、中国も米国の顔色をうかがう必要がなくなる。中国は、すでにパキスタンやスリランカ、ミャンマーなどインド洋に点々と航路防衛の拠点(海軍基地)を作っており、米国がインド洋の国際航路を守ってくれないなら、インド洋を中国の覇権下に入れるまでのことだ。だが日韓や東南アジアは困ってしまう。結局、中国と仲良くして日中韓などでインド洋航路を共同防衛しようという話になる。トランプは、日韓を中国の方に押しやっている。 (中東インド洋の覇権を失う米国) (インド洋を隠然と制する中国) もうひとつ、イラン問題を機に対米自立の方に押しやられているのがEUだ。EUの独仏英は、露中とならび、オバマの米国と一緒にイラン核協定(JCPOA)を作った。米国(軍産イスラエル)がイランにかけた核の濡れ衣につき合い、濡れ衣を晴らすのでなく、イランに核開発をさせない体制としてJCPOAを作った(露中やイラン自身も、濡れ衣構造につきあった)。しかし米国はトランプになって好戦的な演技を強め、自国が作った協定から離脱してしまった。残されたEUは、イランや露中とともに協定を維持することを決め、米国の制裁を迂回するためユーロ建てでイランと石油ガスなどを取引する特別な決済機構(SPV)であるINSTEXを作った。 (EU mechanism for trade with Iran 'now operational') 米政府は「INSTEXを使ってイランと取引したEU企業は、米国とのドル建て決済の取引を禁じる」と脅し、EUは一時INSTEXを棚上げしていた。だが、INSTEXを棚上げしたままならイランが核協定から離脱すると脅してきたので、EU(独仏英)は6月28日、INSTEXの正式稼働を発表した。同日、米政府はあらためて「イランから石油を輸入した企業は、どこの国の企業であれ制裁する」と発表した。INSTEXは稼働したものの、使うと米国から制裁されるので、欧州企業にとって怖くて使えないだろうと言われている。しかし国の姿勢として、EUは、米国を見限ってイランとの関係性の筋を通すことにした。 (Trump To Unleash Hell On Europe: EU Announces Channel To Circumvent SWIFT And Iran Sanctions Is Now Operational) (US will sanction any country that imports Iranian oil: US special envoy) このようにトランプは、イラン敵視にまつわる航路防衛の拒否やINSTEX拒否によって、日韓や欧州の同盟諸国を対米自立に追いやっている。トランプが覇権放棄や同盟諸国への意地悪をやるほど、同盟諸国は米国を世界の主導役・覇権国として見ることができなくなり、相対的に、ロシアが頼もしく見えるようになる。ロシアは中国と組んでおり、中国の発言権も増大する。アラブ諸国は、米国の覇権が低下するなら、ロシアの仲裁でイランやイスラエルと和解するのが良いと考えるようになる。 (Russia to take measures against Washington's 'major' new sanctions on Iran) (Donald Trump’s Iran policy confuses both allies and foes) アラブとイスラエルの対立の根幹にあるパレスチナ問題では、トランプが中東和平を提案していくことになっている。だが、少しずつ見えてきたトランプの和平案は、パレスチナ国家の主権や領土がほとんど認められていないため、サウジ以外のアラブ諸国の多くやイラン、トルコなどがこぞって反対している。トランプの中東和平案がダメなものだとわかってくるほど、ここでもロシアへの期待が潜在的に強まっている。 (Bahrain's Foreign Minister Makes Stunning, Unprecedented Statement About Israel) (Annexation: How Israel Already Controls More Than Half of the West Bank) ロシアが中東和平を仲裁するようになっても、イスラエルにパレスチナ国家を容認する政権ができないと、だれが仲裁しようがうまくいかない。だが、この点でも「もしかすると」的な動きがある。イスラエルでは9月末にやり直し選挙をするが、そこでリーベルマン元外相が音頭をとり、パレスチナ国家を絶対認めない極右を排除した中道と穏健右派、左派を結集し、リクード(極右除外)から青白連合、左派までの大連立政権を作り、中東和平を進められる体制を作ろうとしているふしがある。これはネタニヤフを外して行われようとしているが、ネタニヤフはこれに対抗し、やり直し選挙につながった議会の解散を取り消し、自分が中心になってリクードの極右を除外しつつ青白連合に呼び掛けて大連立政権を作り直すつもりでないかと勘ぐれる動きをしている。もしかすると、近いうちにイスラエルで中東和平をやれる極右除外の大連立ができるかもしれない。イスラエルはすでに西岸の半分を自国に編入しており、いまさら望み薄な感じもするが。 (中露に米国覇権を引き倒させるトランプ) (中東和平に着手するロシア) (Netanyahu mulling cancelling election)
田中宇の国際ニュース解説・メインページへ |