ヤBACK  ↑NEXT 
RANDOM DIARY TOUR
鳴海諒一日記 SINCE 6/18.2000



7月15日

▼求められているもの

 当社では毎月1回、系列店の社員が自主的に集まって、サービス向上、社員同士の
コミュニケーションを計るミーティングというものを行っている。これが僕にはとて
も苦痛なのだ。自主的に集まると言っても、実際は半強制の集いである。だからいつ
も仕方なく参加している。

 何がそんなに嫌なのかというと、参加者のほとんどの人はサービスや考えのレベル
が低すぎて、話を聞いていても僕には何の得もない。みんな自分がイケてると勘違い
している人たちばかりなので、自己反省が全くないのだ。だから発展、成長もしない。
簡単にまとまるべき話もまとまらない。参加していてイライラする。

 大体、各店長からして「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」が素敵に言
えない人たちなのに、何がサービス向上だ、アルバイト教育だ。ちゃんちゃらおかし
い。バイトの方が優れたサービスしてるっつーの。

 僕が「まずお前が最高の挨拶が出来なくて、バイトが育つわけがないだろう。自分
の足元から見直さなきゃだめだ」と言ったって、「僕はちゃんといい挨拶をしてます」
と言い張ってしまうんだからな。「そんなに長い間ずっと集中するのは無理です」と
か「ずっと一生懸命やってると疲れちゃうんですよ」なんて言ってるやつらだ。いい
仕事をしてるわけがないし、サービスが向上するはずもない。その前にサービス業に
向いてない。当店では絶対に採用しない人たちだ。

 そのうちメルマガにも書くのだが、ある系列店の店長が当店が全く人手が足りなく
て手伝いに来てくれたとき、彼の挨拶の言い方のあまりのひどさに、当店のアルバイ
トからも蔑まれたことがあった。でも彼は自分の愚かさに気付かない。いつまでたっ
ても気付かない。そんな人と僕は付き合わないことにしている。

 そりゃ、系列店がふがいないサービスをしているのは情けないし耐えられない。で
もオーナーは毎日全店を見ているわけだし、それでいいと思ってやらせているのであ
る。僕が何を言ったって聞く耳を持たない。

 僕はオーナーから「君の教えるサービスは堅すぎる。もっとラフでいいんだよ」な
どと言われて、ものすごいショックを受けたことがある。僕のやっているサービス、
部下にやらせているサービスなんて、行うのが当たり前の範囲、すなわち最低限行わ
なければならないことに毛が生えた程度のことなのだ。これをもっとラフでいいなん
て言われたら、僕がこの店に存在する意味はなくなってしまう。

 ラフといい加減は違うのだ。ラフが気さくという意味なら、当店のサービスは時に
はかなり気さくなのだ。これを落とせばいい加減になってしまう。いい加減なことな
どやりたくない。

 時々、この店は良いサービスなんてオーナーから求められていないんだな、と愕然
とすることがある。僕は何のために従業員を厳しく指導し、ある一定の水準以上のサ
ービスをさせているんだろう、と迷うこともある。その全てはお客様のためであり、
結果的に店のレベルアップにもつながっているのだ。しかしオーナーは別に喜んでい
る様子も無い。

 人に使われているうちは、何を言っても始まらない。自分の店を出して、自分が信
じることをやる以外にないのだ。それはわかっていても、僕は自分の店をやる気がな
い。理由は今のところ言えないが、とにかく出す気がない。だから困ってしまう。

 誰に何と言われようが、自分の信じるサービスを今後も行っていくぞ。くそったれ。


7月14日

▼茶道に触れて

 昼間、新宿御苑へ行った。苑内を散策する途中、あまりの暑さにお茶処へ逃げ込ん
だ。店先の券売機で700円のチケットを買って中に入ると、店内には客が誰もいな
い。ひんやりとした厳かな雰囲気の店だった。全ての窓は障子戸が閉められていて外
が見えず、障子に反射している日の光だけが店内の明かりとなっている。

 席に座って着物姿の中年女性にチケットを渡すと、18歳くらいのアルバイトの女
の子が、和菓子を持ってしずしずと歩いてきた。目の前で立ち止まり、ゆっくり深々
と一礼して和菓子を置き、また丁寧に礼をして戻って行った。とても清々とした印象
だった。

 外の暑さで喉がカラカラだったので、いきなり和菓子を食べる気分ではなかったが、
その夏向けの涼しそうな菓子を半分だけ食して、お茶を待った。少しして、先ほどの
女の子がしずしずと抹茶を持ってきた。茶道の時と同じような抹茶だ。げっ、作法を
全然知らないや、とちょっと焦ったが、女の子が下がってから何となく茶道の飲み方
をイメージして飲んでみた。

 そこへ女将がやってきた。柔らかな口調で「こういう場合はこちらの和菓子を先に
全部召し上がって、それからお茶を飲んでいただきたいんです。それとも和菓子はも
うお召し上がりにならないの? お下げしてよろしいですか」と言って下げかけた。
何で急かすんだろうと思いつつ「まだ食べますので」と伝えたら、それから急に茶道
の講義が始まった。

 茶碗の持ち方、回し方、飲み方、置き方、茶碗の鑑賞の仕方、終了の合図の出し方、
店内の座り位置の意味、等々、とても親切にわかりやすく教えて下さった。1つ1つ
の動作に全てちゃんと意味があることを知った。とても勉強になった。無知とは恐ろ
しいと思った。

 洋食のマナーや、きちんとした言葉遣い、お客様に対するサービスなど、いろいろ
と勉強しているつもりだったが、肝心の日本の伝統や作法を何も知らない自分にびっ
くりした。そして今日教わった茶道のマナーの基本の中に、礼儀作法、日本人の心配
りをほんの少しだけ感じることができて嬉しかった。

 日本人なのに日本の伝統や文化に全く目を向けずに生きてきた自分が、なんか恥ず
かしくなってしまった。気がつかなかった今までの分を取り返すために、これからど
うしたら良いのか、よく考えてみたいと思う。


7月13日

▼ある博多ラーメン屋の話

 新宿歌舞伎町に「博多天神」というラーメン屋がある。いかにも博多ラーメン屋の
風情のとんこつラーメンの店である。店は新宿に4店舗、渋谷と大塚にもある。ラー
メンははあっさりとしたとんこつスープで、麺はとても細い(太麺もある)。オーダ
ーしてから1分以内に出てくるので、知らない人はビックリしてしまうだろう。

 博多天神へは時間が無い時にたま〜に行くことがある。この店のラーメンは日によ
ってスープの当たり外れがとても激しい。暇な日はスープが適度に煮詰まって、良い
味なのだが、忙しい日は薄いことが多い(駄目じゃん!)

 テーブルの上にはゴマ、辛い高菜、紅生姜、おろしにんにくなどがドンブリに入っ
て置かれていて、好きなものを自由に入れることが出来る。ある日、少々食べ飽きた
ので、いろいろ入れてみたら結構美味しくなったので、自分なりのレシピを考えてみ
た。

・ゴマ スプーン3杯

・辛い高菜 ほんの少々

・おろしにんにく 耳かき一杯

・紅生姜 食べ終わる間際

 この配分が一番イケると思い、バイトを連れていった時に得意げに説明した。その
後、ふとカウンターの上を見ると張り紙が張ってあり、なんと僕のレシピと同じこと
が書いてあった。しかも「このスープを作った人からのアドバイス」などという言葉
が添えてある。これじゃ僕が受け売りをしたみたいじゃん。

 僕は、このラーメンがそのままではあまり美味しくないから、トッピングに凝って
「マシな味」にしているというのに、コックがお薦めすな! お前はトッピングなど
必要ない、美味いスープを考えるべきだろう。全くしょ〜がね〜な〜。

 ある日、天神でラーメンを食べていると、ある客が言った。

「いやあ、大将。ここの博多ラーメンはうまいねえ。これはなに、スープも麺も全部
博多から取り寄せてるの?」

「いや・・・違う(モゴモゴ)」

「じゃ、麺だけ取り寄せてるの?」

「いや・・・」

「じゃ、なんなの」

「博多とは全然関係ないんだよね・・・ただの屋号みたいなもんだね」

 僕はその話を聞いていて、やっぱそうだよな、博多の博多ラーメンは美味いもんな、
と思ってしまった。それにしてもよくぞはっきりと言い切ったもんだ。もうちょっと
客に夢を持たせても良かったかもね。

 別の日なんか、大将がラーメンを食べている客に向かって、「おにいちゃん、韓国?
台湾?」と聞いていた。客は「いいえ、日本人ですけど」と答えていた。がはははは。
なんつ〜質問をしてるんだ。バッカじゃないの〜。でもその客は「自分は慶応大学大
学院に通っている学生であります」と自己紹介をしていた。これにもウケたぜ!


 さて、もうすぐ僕の誕生日がやって来る。この年になると誕生日だからどうのって
ことは何も無いんだけど、明日の昼間、知り合いの著名人の方が、僕の誕生祝いにイ
タ飯を御馳走して下さるのだ。きゃっほ〜〜。ランチデートなのじゃ。やったやった。
でも金曜日だから、その後仕事だけどね。ちょいとほほ。


 メルマガが相変わらず滞っておりますが、書きたいものがどんどん変わってしまう
ためです。いくつか書き上げたのですが、これだけお待たせしてたら、あんまりあっ
さりとしたものはお届け出来ないなあ、と思ったので、現在、皆様に納得していただ
ける面白コラムを執筆中です。御期待下さい。きっぱり。


7月12日

▼天才たち

 昨日、元F1レーサーの中島悟がテレビに出演していた。彼の隣に座っていたアナ
ウンサーが以前に体験したエピソードを話った。

 「中島さんと一緒に車に乗ってサーキットを走ったことがあるんですが、中島さん
は全然前を見て運転しないんですよ。ず〜〜っと私の顔を見ながら走ってるんです。
もう私は怖くて怖くて、中島さん、前を見て走って下さい。危ないですからって言っ
たんですけど、全然前を見て運転してくれないんですよ」

 会場はどよめき、別のアナウンサーが「どうして前を見ないで運転できるんですか」
と尋ねた。中島氏は事も無げに言った。

 「僕はどこを見ていても運転出来るんですよ。別に前を見て走らなくたっていいん
です。横を向いて運転していても、前の状況は視野に入ってますし、まっすぐに走っ
てるってことさえわかれば大丈夫です。別にルームミラーだけを見ていても運転でき
ますよ」

 すげえ・・・僕はぶったまげた。ルームミラーを見ながらって、後ろを見ながら走
れるってこと? やっぱF1レーサーって類い希な天才的な感覚がなきゃなれないん
だ。そう思った。

 日本が世界に誇るナンバー1ドラマー、村上ポンタ秀一は、ドラムのスティックを
持って4日後に、赤い鳥(“翼を下さい”などのヒット曲を飛ばしたグループ)のオ
ーディションに参加し、20数名のドラマーの中から選ばれた。

 彼はドラマーになろうと決意してから1年以上もの間、ドラムセットでの練習を行
わなかった。いきなりセットに座って叩いたら、他のドラマーと同じような平凡なド
ラマーになってしまうと思ったポンタは、スティックを一切持たずにドラムのフレー
ズを「ドンパン、ドドパン」と口ずさみながら、ドラムスを叩く真似をして、「ドラ
ムを歌う」ことに専念し続けたのだ。彼が現在でもなお、とても歌心溢れる天才的な
ドラムスを叩くことが出来るのは、この1年間の「叩かない練習」の成果だろう。

 おまけにポンタは「練習をしない」ドラマーとして有名である。彼は実際に叩いて
練習をしない代わりに、演奏する曲目の譜面を見ながらその曲を理解し、どう叩けば
良いか、ということに全ての時間を費やすのだ。凡人から見れば、誰も見ていないと
ころで人知れず練習しているに違いない、と思ってしまうのだが、本当に個人練習は
しないらしい。

 ドラマーになりたいと思った時に、「まずオレは叩かね〜」などと考える人間が他
にいるだろうか。そもそもこの発想が、ポンタが天才である証である。誰にも真似の
できない考え方である。

 以前、ピアニストの中村紘子の著書で読んだのだが、一流のピアニストのテクニッ
クは16〜17歳で完成する、とのことだった。18歳以降にまだテクニックを磨い
ているようではもう遅すぎるそうなのだ。過去にも現在も、一流と呼ばれている演奏
家は皆、若くして優れた技術を収得しているとのことだ。みんな天才的あるいは天才
なのである。

 いかにも凡人が考えそうなことを書く。僕は一瞬でいいから天才の脳を体感してみ
たい。彼らが何をどのように考え、どんな発想をしているのかを感じてみたい。物事
をズバズバっと理解してみたい。そんな浅はかな夢を持っている。これだから凡人は
嫌だね(笑)


7月11日

▼言いたかないけど

 雪印乳業が終わった。出荷されなかったり返品された乳製品を、加工乳などの原材
料として再利用していたとのことだ。これをテレビのニュースで見て、あまりのバカ
バカしさに、思わず吹き出してしまった。これが業界最大手の仕事だ。われわれはす
っかり舐められている。5日の日記に「雪印の今後の動向に注目したい」と書いたが、
雪印はもう終わりだ。合掌。

 明日より日本全国のスーパー、コンビニから雪印製品が消える。これで、陳列棚に
うっかり手を伸ばして「あっ雪印だった」と手を引っ込めるような間違いが無くなる。
喜ばしいことだ。雪印の副社長は、まるで感情が伝わらない言い方で、「何年間かか
るかわからないが、信頼回復に努める」と言っていたが、信頼回復などあり得ないと
いうことを、多くの国民の不買によって、そのうち知ることになるだろう。また、知
らしめなければならない。全ては一発勝負なのだ。雪印は勝負に敗れた。自爆した。

 雪印が今後どう衰退しようが知ったことではないが、もろに影響を受けている関連
会社、畜産業者のことが心配だ。いつもしわ寄せはこういう人たちに押し寄せる。彼
らの救済措置、補償問題を、絶対にないがしろにしないでほしいものだ。

 雪印の問題も腹立たしいが、もっと怒りを覚えているのが、埼玉県川越保健所によ
るトーチクハムのO157汚染検査ミス問題だ。今日のニュースで、このトーチクハ
ムを今日から県庁の職員食堂が食材として仕入れることになり、埼玉県知事がハムス
テーキをパフォーマンス的に食べている模様を放送していた。

 知事は「このハムは塩加減がちょうどいいねえ」などと、一見、落ち着き払って食
べていたが、アゴにソースをダラリと垂らしているのに気がつかないほど、実は緊張
していたようだ。食べ物が口に詰まったまま喋るものだから、「うへ、汚ね〜」と思
ってしまった。

 今日は県庁の食堂にマスコミが来ているため、「今日は必ずトーチクハム製品を使
ったメニューを食べるように」との上部からのお達しがあったのではないかと思って
いる。僕としては明日以降、トーチク製品使用のランチが1日いくつ食されたのかを、
こっそり調べてほしいのだ。たぶん明日から注文者が減るような気がする。

 その食堂で働く50歳代のコックさんは、「毎日ハムやベーコンを使用したメニュ
ーを考えるのは大変です。今まで使ったことがないからねえ」と困っていた。今日の
ランチを食べていたある女性職員も、「毎日食べるのはちょっと・・・」と困り顔だ
ったのが印象的だった。あなたたちは正直でとてもよろしい。

 トーチクハム製品の安全宣言が出されてからも、今までのように取り扱ってくれる
店は激減してしまった。現在、工場の稼働率は45%に落ち込んでしまったそうだ。
このような踏んだり蹴ったりの状況の中、トーチク関係者が「県が一生懸命、当社の
汚名返上に尽くしてくれて感謝しています」と言っているのを聞いて、とても大人っ
ぽい素晴らしい発言だと感心した。はらわたが煮えくり返るほどの怒りを押し殺して、
よくぞ言った、と思った。好印象。

 街頭インタビューで、ある主婦が「県のミスなんだから、トーチクの補償問題には
私たちの税金を絶対に使わないでほしいですね」と言っていた。じゃ、どうやって補
償金を支払うんだよ。全ての予算は税金でまかなってるんだよ。その意見じゃ、補償
金を払うなってことになっちゃうんだけどねえ。

 僕は、雪印製品はもう買わないと決めたそれと全く正反対の気持ちで、このトーチ
クハムをこれから買ってゆきたいと思った。今のところ行きつけのスーパーにはまだ
置かれていないが、見つけた際には積極的に購入したい。

 今後、雪印とトーチクの補償問題に関する詳細を、是非ともまめに報道してもらい
たいものだ。弱い立場の人間たちを、国は県はどう守ってくれるのか、くれないのか
に注目したい。たまには「なかなかやるもんだ」と思わせてほしい。

 いくら私的日記とはいえ、社会問題についての意見をこのような場所に書き記すこ
とは、あまり本意ではないのだけれど、この二つの問題は自分の生活に密着した社会
問題でもあるので、注目せずにいられない。これからもつぶさにチェックしていきた
い。


7月10日

▼甘えん坊な行動

 いま、今日の日記用に「ガソリンスタンドのサービス」を書いていたのだが、今度
配信するメルマガに掲載することにした。よって別のことを書こうと思う。

 甘えん坊は放っておくと増長する。先月発売された月刊誌「群像」に僕の大好きな
作家、赤坂真理さんの短編小説が掲載されているのを知って、嬉々として購入し、店
で休憩時間に読んだ。しかしこれが僕にはとても難解で、あまりよく理解できない。
そこで、当店の日本文学に自称うるさいアルバイトに試しに読ませてみることにした。

 彼の休憩時間中に「群像」を読んでもらい、戻って来てから聞いてみた。

 「どうだった?わかった?」

 「はい、わかりましたよ。まだ途中までしか読んでいないんですけど、赤坂さんの
小説、とっても面白いですね」

 「ちょっと教えてよ」

 「これはですね、椎名林檎と◯◯◯◯(忘れた)の歌詞があちこちに散りばめられ
ているんですよ。だからその歌詞を知っていれば、とてもよくわかるんです」

 ふうん、そうなんだ。オレ、ジャパニーズポップス聴かないからな。よしんば聴い
てたとしても、歌はメロディーとしてしか聴かないから、どっちみち歌詞はわかんな
いや。

 「店長、もしよかったらこの本、今日一日お借りできないですか。赤坂さんの小説
を全部読み切っちゃいたいんです」

 今日買ったばかりだけど、ま、いっかと貸してあげることにした。次の日、彼は貸
した本を持って出勤してきた。

 「あのう、店長。赤坂さんの小説は読んだんですけど、他にも面白そうな小説がた
くさんあるので、もし良かったらもう少しだけ貸してもらえないですか」

 「えっ? う〜ん、ま、いっか。いいよ、じゃ貸してあげる」

 「ありがとうございます!」 

 そしてそれから3日後に彼は出勤してきた。本は持っていない。

 「ねえ、貸した本は?」

 「まだ読み終わってません」 

 彼は全く悪びれずに平然と言ってのけた。僕の胸がドキンと鳴った。彼には僕の本
を延滞して申し訳ないという気持ちが無くなっていたのだ。へ〜、こいつずいぶん出
世しちゃったなあ、おまえは甘えん坊出世魚か。でも何となく言う気にならず、自己
返却を待つことにした。

 更に数日後、「本は?」と聞くと、「今日は店長が休みのような気がして、持って
きませんでした」と言う。

 「何でだよう。今日は水曜日だぞ。水曜は副店長の公休日だぞ。オレが水曜に休ん
だことがあったかよう。それって変じゃん。何考えてんだよう」

 「すいません。何か今日は店長が休みだと思っちゃったんですう。今度シフトに入っ
ている日に必ず持ってきます」

 まったくもう、自分勝手に解釈するんだから、しょうがねえなあ、とプスプスとく
すぶってしまった。でも怒ってもしょうがない。本が返ってくるわけじゃなし。

 その日の営業中、そのバイトが自分の甘えから大失敗をしてしまい、彼の仕事に対
する甘えと貸してる本に対する甘えがあまりに似通っていたせいで、僕はとうとう彼
にブチ切れてしまった。まあ本の件がなくても時々同じようなことになるのだが・・・

 「甘えるのもいい加減にしろ!(中略:あまりに罵詈雑言すぎて書けない) あの
本は謹んで進呈させていただくよ。もういらね〜」

 彼は申し訳なさそうに首をうなだれている(常套手段) 彼はいつも、怒られてか
らしばらくは神妙にしているが、しかし大抵元に戻ってしまう。これはちゃんと心に
響いていない証拠である。

 あ〜あ、ブチ切れたお陰で赤坂さんの小説を読み損なってしまった。もう1冊買お
うと思って探しに行ったのだが、「群像」なんてどこにでもある本じゃない。とうと
う見つからなかった。しょうがない。いつか短編集にまとめて出版されたら読むこと
にしよう。


7月9日

▼「一生懸命」の使い方

 今日は夜8時から貸し切りパーティー(結婚式2次会)が行われたため、通常営業
はお休みした。週末は時々パーティーが入るのだが、1日中貸し切りというのは珍し
いことだ。

 年間数十回のパーティーを見慣れているのだが、今日のパーティーはとても素敵だ
った。幹事も司会も参加したお友達も、全員が新郎新婦を心から祝福しているのが伝
わってきた。こんなに良いムードのパーティーは滅多に見ることが出来ない。

 特に幹事と司会は、新郎新婦に楽しんでもらうために一生懸命がんばっていた。通
常、幹事が一生懸命になりすぎると、企画倒れになってしまうパーティーが多いのだ
が、今日は大成功だったんじゃないかな。いやあ、良かった良かった。

 いま「一生懸命」と書いて思い出したのだが、以前、当店でお客様による「一生懸
命論争」が行われたことがあった。30代のサラリーマンが4人で飲んでいるときに、
それは起こった。

 1人の方が「自分が起こした会社の仕事を現在一生懸命やっている」と話したら、
彼の友人が、「おいちょっと待て。お前は自分のやりたいことをやってるんだろ。そ
ういうのは一生懸命やってるって言葉を使っちゃおかしいぞ」と言い始めた。

 「自分の趣味や自分のやりたい仕事は、自分が好きでやってることだろ。そういう
 時には一生懸命って言わないの。当たり前のことをやってるだけなの」

 「でもさあ、オレは朝から夜中までずっと休みなく働いてるんだぜ。何で一生懸命っ
 て言っちゃいけないんだよ」

 「バカだな。そんなの常識なんだよ」

 「いや、オレは一生懸命働いてる。一生懸命って言ったっていいと思う」

 「違う。お前は全然わかってない。言葉の使い方を知らないんだ」

 僕はレジの前に立っていて、喧噪の中から彼らの話を拾い出すように聞いていた。
へえ〜、これは初耳だ。今まで考えたことがなかったな。確かに趣味を一生懸命やる
という言い方はしたことがないけど、漠然と使わなかっただけだった。

 そのサラリーマンたちの形勢は3対1で、一生懸命を使っても構わないと言ってい
る人が他の3人に責め立てられていた。皆、嘲笑気味に1人を揶揄している。

 その後、店がどんどん混み合い、彼らの話に耳を傾けてばかりいられなくなってし
まった。う〜っ、もっと聞きたいよ〜と思いながら、他の仕事を一生懸命こなした。
ここは「一生懸命」を使ってもいいの? いいんだよね。

 しばらく忙しく動き回って、40分ほど後にやっとレジ前に戻って来たら、一生懸
命論争はまだ続いていた。いつまでこんな話をしてるんだろう。

 「だからお前はまだまだだって言われるんだよ。理解力が不足してるんだよ」

 「何と言われても、オレは間違ってない。オレは一生懸命働いてる。一生懸命を使っ
 て何が悪いんだ」

 「あ〜あ、もう何を言ってもダメだな。お前にはわかんないな」

 3人は呆れて物が言えないといった様子である。僕はそれを見ていて、「一生懸命」
の正しい使い方がそんなに重要なのかな。そんなのどっちでもいいじゃん、と思って
しまった。まあ、お客様なのだから何を話していても、僕にはとやかく言う権利はな
いんだけれど、そろそろ他の話に移ろうよ〜、と少々じれったくなったのだ。でも話
は終わらなかった。延々と堂々巡りを繰り返している。

 4人とも興奮して喋っているものだから、非常に喉が乾くと見えて、皆、水割りを
どんどんお代わりしてガブガブ飲んでいた。そのうち一生懸命肯定派の男性が酔いつ
ぶれてテーブルで寝てしまったのを境に、この話はやっと終結した。やれやれ。


7月8日

▼怒りを持つということ

 週刊文春7月13日号のコラム「心のクリニック」を読んだ。今回のタイトルは、
「心の病のはじまりとは」である。筆者は春日武彦氏(精神科医)。このコラムで筆
者は、御自身が風邪をひいた時の味覚の変化について私見を述べている。

 「わたしの場合、煙草だとセブンスター系統があきらかに風邪をひいたときの味に
近い。(中略)セブンスター系統の煙草に限って、わたしは嫌煙主義者なのである」

 「食べ物では、しゃぶしゃぶのときの胡麻だれが駄目である。(中略)わざわざ胡
麻だれに肉を浸して食べている人を見かけると、殺された牛が哀れになってくる」

 オムライスにドミグラスソースをかけたやつも、風邪をひいたときの味を連想させ
る。したがって、大嫌いである。どうしてあんな茶色いソースをかけなければならな
いのか」

 これらの後に「心の病のはじまり」について述べている。しかし、連載物のせいか
どうかは知らないが、別にどうという内容ではなかった。

 僕はこのコラムを読んで、最初、春日氏自身が心に重い病を背負い込んでいて、そ
れでセブンスターやしゃぶしゃぶやオムライスをけなすことによって、病気の胸の内
を告白しているのかと思ってしまった。しかしどうもそうではないようだ。それにし
てもひどい文章を書く人だ。読んでいてムカムカした。人間性をも疑った。しかもこ
れで精神科医である。

 無料のメルマガ配信じゃあるまいし、もうちょっとましな書き方ってものがあるだ
ろうに。この氏の好き嫌いを赤裸々に語られても、気分が悪いだけである。この書き
方が後の「心の病のはじまり」に生きているわけでもなんでもない。言っちゃ悪いが
駄文の山積である。つまらない文章を書くだけならまだしも、公の書物で人を嫌な気
分にさせないでほしいなあ。

 ちなみに僕は、嫌なものから目が離せないタイプだ。レベルの低い事柄でも、心の
階段を下りていき、気に入らない事柄と同じレベルに立って「気にいらねえ!」とカ
ッカする。そんなことでカッカしなけりゃいいのに、と注意されることもある。しか
しそれにも、「大したことじゃないから目をつぶれってえのか。そういう考え方だか
ら、何も良くならないんじゃないのか」と怒ったりする(口に出すかどうかは別とし
て)。

 例えば僕が当店のアルバイトの不満を人に漏らしたとして、相手が「最近の若者は
そんなもんだよ」と、知ったようなことを言ったりすると、むっか〜〜っと頭に来て
しまう。思わず「最近とかそんなの関係あるかよ。そういう諦めが相手の成長を止め
てるんじゃないか」と怒ったりする(口に出すかどうかは別として)。とにかく、ラ
ティーニャ(ラテン系)の血が騒いでしまうのだ。純日本人だけど・・・

 僕の持論は「怒りを持たなければ成長しない」である。全てを端折って結論だけを
書いてしまったが、そういうことである。だからいつもいろんなことに怒っている。
勿論、常に怒っているわけではないが、しょうがねえなあとか、そりゃまずいだろと
か、許せないなあとか、いいかげんにしろと怒りつつ、正解を探している。どうある
べきかと考えてる。

 世の中そんなに割り切れることばかりじゃないし、答えも1つだとは限らないのは
わかっているけど、とにかく僕の成長は、様々なことに対して怒りを持つことによっ
て促され、形成されているのは間違いない。って、これが単なる思い込みだったら、
泣いちゃうね。だっふ〜んだ。


7月7日

▼台風3号上陸

 今日は台風の影響で、金曜日だというのに店はとっても暇だった。でも僕がスペシ
ャル大好きな常連の方々が、どっか〜んと御来店下さったので、たっくさんお喋りで
きて、とても嬉しかった。おおっ、今日はすこぶる普通の日記じゃないか。もしかし
てこんな何の変哲も無い日記を書くのは初めてかい? 逆に照れるぜ。

 本日御来店になった大好きな常連は、ジャーナリストのTさん、編集者のSさん、
Oさん、作家のRさん、元スチュワーデスのHさん、などなど他多数。今週は常連様
がどなたもいらっしゃらなかったので、とても淋しかったんだけど、いらっしゃると
きは一斉にいらっしゃるんだね。まんべんなく接客するのは大変だったけど、嬉しい
悲鳴って感じかな。お陰で今週あまり喋らなかった分、一気に喋ってしまったぜい。
ちょっとハイになりすぎたかも。でもたまにはいいよね。

 遅い時間にいらっしゃった◯◯省にお務めの常連のお連れ様に突然、「店長〜、読
んでますよ、メールマガジン」と声を掛けられてびっくりした。お客様には内緒にし
ているのに、いったい誰から聞いたんだろうと思ったら、ジャーナリストのTさんが
その方と面識があって、以前お教えしたとのことだった。いやあ、世の中は狭い! 
それにしても僕は相手の方を知らないのに、相手の方が僕の考え方や胸の内を知って
いるなんて、ちょっと緊張してしまう。「あっどうも」なんて取り繕ったって、付け
焼き刃な感じだった。

 深夜近くになるに従い、雨足はどんどん強くなる。アルバイトから「店長、11時
ごろには雨はもっと激しくなりますか?」と聞かれて一瞬答えを失った。仕事のこと
なら何を尋ねられても答えられるが、雨の激しさの度合いなど、僕に聞かれても困る。

「天気予報士じゃねーから、わかんねーよ」

とわざと吐き捨てたら、バイトは自分の愚かな質問に気付いたらしく、げらげら笑い
出した。近くにいた別のバイトには、「店長、天気予報士じゃなくて、気象予報士で
す」と逆に突っ込まれた。当店は言葉の使い方にとてもうるさい。

 台風のピークは8日の朝のうちということなので、土曜日の営業に支障は無いよう
だ。台風マニアの僕にとって台風一過はちょっと淋しい気もするが、営業に差し支え
るのは困るので、これで良しとしよう。台風3号よ、さようなら。

 でももう新たな台風4号が沖縄付近に発生しているらしい。立て続けに直撃されて
は困るので、4号は線香花火のように消滅するように。わかったか。


7月6日

▼アララットとアララット山

 先日、ある洋酒メーカーの営業マンがやってきた。以前、コラム「実録・洋酒メー
カーの営業マン」を書いてから、当店を訪れる営業マンがめっきり減ってしまったの
で、ひさびさの来店だなあと懐かしくなり、思わず話に耳を傾けてしまった。

 この営業マンは、アルメニアのブランデー「アララット」の宣伝にやって来たのだっ
た。この旧ロシア・現アルメニア産のブランデーの名前は、以前から耳にしたことが
あったのだが、試飲するのはこの日が初めてだった。

 営業マンはアララットの6年、10年、15年、20年ものを、おのおのグラスに
注いで飲ませてくれた。味わいはフランス産のコニャックに比べて甘口で、飲みやす
いといえば飲みやすい。ギリシャ産のメタクサ・ブランデーに似たタイプである。

 ネームバリューや生産国から見て、とてもヒットする商品とは思えなかったが、試
飲した6年ものが、若々しい口当たりで気軽に飲めるところがキャッチーかなと直感
し、サンプルとして1本提供してもらった。

 営業マンに、「そちらの会社は、他にはどのような商品を取り扱っているのですか」
と尋ねてみると、なんと「アララット」一本槍の会社とのこと。アララットだけで経
営が成り立つのかよお、と心配になりながら営業マンの名刺を見たら「
日本アララッ
ト株式会社
」と書いてある。すげえ、そのまんまだ。がはははは。なぜか笑いがこみ
上げてしまった。ぜひ経営が軌道に乗るように頑張ってほしいなあ。

注:現在はアルメニア・ワイン、アルメニア・ウォッカも取り扱っているようです。
                           (2002年2月現在)
 

 後日、カルヴァドス(アップルブランデー)がお好きな作家の田口ランディさんに
アララットを試飲していただいたところ、「これ美味しい! 家でも飲みたいから1
本取り寄せて」と評判は上々だった。

 当店の酒類仕入れ先に注文すればすぐにお届けできる、と言われたので、さっそく
注文してみたら、そんな会社と取引がない、連絡先も知らない、と言われてしまった。
全くもう、営業に来たらうちの仕入先に連絡ぐらい入れとけよな、と少々がっかりし
て、今のところほったらかしにしている。またそのうち営業マンがやって来るだろう
から、ちょっとハッパをかけてやろう。

 ところでこの「アララット」というのは、トルコとイラン国境にそびえ立つ山の名
前である。
アララット山はユダヤ教、キリスト教の聖典である旧約聖書に書かれてい
る「ノアの方舟」が人類の再生の地としてたどり着いた山なのだ。すげえ。
田中 宇
(さかい)さんの国際ニュース解説
のメルマガみたいでカッコいいぞ(笑)

 アララット山について、以前、面白い話を聞いたことがある。この話が書きたくて、
今日これを書いているのだ。

 皆さん、財布から5千円札を出して、お札の裏を見てほしい。水に映った富士山の
絵が描いてある。お札の上下を逆にして、水に映った逆さ富士をよく見てほしい。実
はこれがアララット山だという説があるのだ。上下の富士山をよく見比べると、この
二つの富士山はよく似ているが、明らかに違う山であることがおわかりになるだろう。

 なぜ5千円札にアララット山が描かれているのかについては、フリーメーソンがど
うのとか、渡辺美智男が大蔵大臣の時に発行したのがどうのとか聞いたのだが、よく
覚えていない。御興味のある方はお調べになってみてはいかがだろうか。


7月5日

▼雪印乳業:集団食中毒問題とあれやこれや

 雪印乳業の大阪工場が製造した低脂肪乳が原因とされる集団食中毒の発生に伴い、
当店でも雪印製品の使用を一時中止することにした。食中毒の原因となった製品は関
東では売られていない上、すでに全て回収済みとのことなので、これ以上の危険性は
無いのだろうが、今回の不祥事によって雪印乳業に対する企業イメージは、僕の中で
は著しく損なわれてしまった。

 今のところ当店のお客様から当店の使用牛乳ブランドを尋ねられてはいないが、事
情をよく御存知無いお客様が、不安な気持ちを抱かれつつカルアミルク他、ミルク割
りカクテルをお飲みになるようなことになったら申し訳ないので、しばらく雪印は使
用しない。

 今日、当店にストックしていた賞味期限内の雪印製牛乳、生クリーム、とろけるチ
ーズを全て使用中止にしたら、アルバイトの1人が「あの〜、これもらっていいです
か〜」というので、全部あげてしまった。何の問題もない製品だと知っているだけに、
タダであげるのはちょっと悔しい気もしたが、牛乳1本30円、生クリーム20円、
とろけるチーズは40円ね、と言うのはあまりにもせこい上に、金銭を要求すれば貧
乏アルバイトのこと、「じゃ、いいです」と顔を真っ赤にして無言の抵抗をするに決
まっているので、それも大人げないと思って、タダであげた(当たり前だ!)

 脱線するが、大体このホテルバー出身のアルバイトは、ちょっとずうずうしいとこ
ろがある。先日、僕に近寄って来て「店長、あのう実は今日は僕の誕生日なんです!」
とにこにこしながら言うのだ。当店に入店してまだ1ヶ月ほどのこのバイトの誕生日
宣言に、男の子がそんなことを言って来るのは珍しいなあ、と少し引きつつも、

 「へ〜、そうなんだ」 「はい、今日で22歳になりました!」

 「ふ〜ん。君、お腹空いてる? そう、じゃ、お祝いにロッテリアのハンバーガー
 を御馳走するから、いくつでも好きなのを買ってきていいよ」

 そう言ってあげたのだが、彼ったら急にもじもじして恥ずかしそうに、

 「僕、最近、焼き肉を食べてないので、焼き肉が食べたいですねえ」とぶっこいた。

 「残念だったねえ。まだつき合いの浅いおまえに何で焼き肉なんか奢んなきゃなん
  ないんだよ。バカだなあ、欲を出すからロッテリアも飛んじゃったねえ・・・」

 彼は状況が飲み込めずにキョロキョロしていたが、結局何も御馳走してあげなかっ
た、というか、それっきり忘れてしまった。ばかめ、欲を欠くからこうなるのじゃ〜
〜。サービスマンは謙虚にならなきゃ、ね。一年続いたら奢ったげるよ。なんてね。
(嘘かい!)

 閑話休題。雪印製品は僕にとって乳製品の代名詞的存在だ。他社の類似製品とどち
らを購入しようか迷ったときは「やっぱ雪印だよな」と、雪印製品を選択していた。
(小岩井もいいけどね) 何の根拠もない選択なのだが、僕は雪印ブランドが好きだ
った。
中沢乳業はもっと好きだが、いかんせん値段が高い上に賞味期間が短い。だか
ら店では主に雪印製品を使用していた。

 今回の食中毒問題で、今後、雪印乳業は打撃地域を広げてゆくだろう。まあそれも
やむを得ない。しかし、この問題のお陰で、雪印の他工場や他社はこれの二の舞とな
ることを恐れて、いっせいに工場の検査を行い、安全確認をしたことだろう。これに
よって第2、第3の中毒事件が回避出来れば良い。とはいえ、他社がこんな杜撰な工
場管理をしているとは考えにくいが・・・。

 雪印乳業のHPに「お客様お問い合わせフォーマット」が新たに設置されていた。
これは、同社製低脂肪乳に関する問い合わせを受けつけるフォームなのだが、これに
「僕も◯月◯日の低脂肪乳を飲んで激しい腹痛に苦しみました」と嘘偽りを書いて送
り、慰謝料を期待するような日本人は存在するのだろうか。

 以前にテレビで見たのだが、アメリカでは事故をねつ造して保険金をだまし取る、
という詐欺が横行して問題になったことがある。そのあまりに多い不正申告者に見か
ねた保険会社がある日、一大捕物劇を行った。

 スラム街でわざと路線バス(ダミー)を車にぶつけて事故を起こした。バスの運転
手がドアを開け、よろよろと外に出てきた(おとり)。それを見ていた周辺にいた地
域住民(黒人)はどうしたか? なんと白々しく次々とバスに乗り込み、事故被害者
を装ったのだ。その数10数名。彼らは駆けつけた救急車に乗り込み、病院へ行って
首が痛い、肩が痛いとあちこちの痛みを訴えた。その後、数台のカメラが一部始終を
撮影したビデオを見せつけられて、全員お縄を頂戴した。

 僕はこの番組を見ていて、げらげら受けてしまった。すごいぞ、アメリカ人。油断
も隙もあったもんじゃない。日本でこれと同じような状況を再現できるとしたら、果
たしてどの辺りでバスをぶつければよいのか。乗り込む不正者は存在するのだろうか。
いやあ、一度試してくれないかな。日本人も同じ事をしたりして(笑) それにして
もおとり捜査とは怖い。

 またまた閑話休題。今日は脱線デイか? ともかく雪印乳業は証拠隠しだ、隠蔽だ
としきりにマスコミから攻撃を受けているが、そりゃ何とか被害を最小限に食い止め
るためには、そんなことぐらいやるだろう、人間だもの。でも、隠蔽工作によって、
状況は確実に悪化してしまった。この先、雪印はどうやって再生を計るのだろうか。
再生できるのだろうか。その手段は何? 安売りか?

 昨年話題になった本、「買ってはいけない」に掲載されて酷評された山崎クリーム
パンは、あちこちのスーパーのワゴンに積まれて安売りをしまくっていた時期がある。
雪印もこれと同様、安売りをして消費者との信頼関係回復を画策するのだろうか。ど
んなフェアを行うのか、今から楽しみである。買うかどうかは別だけど。
 
 ともかく今回は、食品業界が起こしてはならぬ最悪の事態となってしまった。僕は
雪印乳業の今後の再生活動に注目していきたいと思っている。当分、目が離せそうに
ない。


7月4日

▼ちょっとマニアックすぎる話

 今年も「ドラムスマガジン」誌の、誌上ドラムコンテストの季節がやってきた。こ
れは同誌付録のCDに応募曲が入っており、マイナスワン(ドラムレス)のテイクに
合わせてドラムスを叩いて録音したものを送る、という形式のコンテストである。

 僕はドラムスフェチである。音楽はドラムスで聴く、といっても過言ではないほど
ドラムス中心に曲を聴く。普段は主に「フュージョン」というジャンルの音楽を聴い
ているのだが、気に入ったタイプのドラマーが叩いていないと曲自体を聴けない、と
いうくらい極端な偏った聴き方である。

 ドラムスコンテストは一昨年、昨年に引き続き3年目を迎えたのだが、今までは一
度も応募しなかった。録音はしてみたのだが、完成度の高い演奏が出来なかったので、
何となく見送ってしまったのだ。しかし、昨年の受賞者の演奏を付録CDで聴いたの
だが、あまりピンとこなかったので、よし、次回は絶対に応募するぞ、と心に決めた
のである。

 課題曲は2曲ある。1曲はロック系インストゥルメンタル(歌なし)で、キメブレ
イクの多い、しかしシンプルな8ビートの曲。もう1曲は7/8のシャッフル系ジャ
ズである。僕は7/8(8分の7拍子)の曲が大大大好きだ。7/8のラテンフュー
ジョンなどは、めちゃめちゃノレる方である。叩いていてもめっちゃ楽しい。しかし、
課題曲はハネハネ気味なので、勝手にアレンジしてハネベタ取り混ぜで叩いてみよう
かと思う。

 僕が叩くのは普通のドラムスではなく、エレドラ(エレクトリックドラムス)でも
ない。既成のドラムパッド(YAMAHA DD-11)を改造してパッドを増やしたものを2
台使ってドラムスと同じように、しかし、手で叩くのだ。よく楽器店にこの
ドラムパッ
ド(僕の使用しているパッドの後継機種)
が置かれているので、叩いたことのある方
もおられるだろう。

 これはそのまま使うとおもちゃなので、MIDIでドラムモジュールと接続して楽器に
高めて使用している。モジュールはALESISのD4を2台、パッドの感度を調節するパラ
メーター代わりに使用し、音源となるモジュールはYAMAHA RM-50を鳴らしている。
通常は、Mac用シーケンスソフト
(Mark of the Unicorn PERFOEMER 6.0)でパソコン
にデータを書き込んで使用している。

 僕のこのドラムパッド使用法、奏法は、僕以外にやっている人はほとんどいないん
じゃないかなと思う。エレドラやパーカッションパッド
(ROLAND ハンドソニック
HPD-15)
などが発売されても、僕が望むようなシステムは一向に開発されないし〜。
とても残念だ。現在使用しているDD-11(終売)が壊れたら、どうしたら良いのだろ
う。誰か中古品を譲ってくれ〜〜。

 そのうち暇ができたら、うちの音楽室にある機材紹介や、僕のオリジナル曲が聴け
るページを作ろうかなと思っているのだが、そんなことをしていると、ますますメー
ルマガジンが滞ってしまう。いつ出来ることやら。

 僕の部屋は電源を必要とするもので溢れている。音楽機材やステレオ、パソコンな
ど全て合わせて、43ほどコンセントを必要とする電気機器があり、その全てが常時
接続されている。たぶんそのうち僕の部屋から発火して、この家は全焼するであろう。
全焼なら火災保険が下りるのでまだマシだ。全焼に限りなく近い半焼だったら目も当
てられない。冗談めかして笑っていられない。マジでヤバイかも。最近ちょっと心配
である。

話は変わるが、先日、事情があって2日分の日記をまとめてUPしたのだが、その後、
休まずにUPしてしまい、今日これから7月4日が始まるのに、すでに4日の日記とな
ってしまっている。よって、調整を行うため、明日の更新はお休みすることにした。
次回更新は5日深夜(6日早朝)の予定。


7月3日

▼メニューの発音

 最近、「メニュー」を尻上がりに発音する人が増えている。むにゅー、ぐにゅー、
ぶちゅーと同じイントネーションで発音するのだ。うっかりすると「むにゅー下さい」
と聞こえてしまい、とても違和感を感じる。簡単に言うと「かっこわる〜」と思って
しまうのだ。失礼な!と叱られてしまいそうだが、そう思ってしまうのだから仕方が
ない。

 時代と共に、日本語のイントネーションは尻上がりに発音する傾向にある。僕はど
ちらかというと順応性がある方なので、大抵の言葉にはすぐ慣れるのだが、この「メ
ニュー(ぐにゅー)」には全く順応できない。たぶん「サラミ(はらみ、しらみ、の
イントネーション)に、いつまでも慣れないのと同様に、今後、末永く引きずってい
くような気がする。

 もし「メニュー(ぶちゅー)」の尻上がり発音が、現代的傾向に基づくのならば、
「カクテル」は、粕取り(かすとり)、と発音しても良さそうなものだが、今のとこ
ろ聞いたことがない。「カクテル(かすとり)」も嫌だなあ。ダサイなあ。

 そういえば「ごめんね」を、御縁ね( /\/ )、と発音する方も最近多い。これ
も不思議なイントネーションだなあと、聞く度に思う。どうでもいいんだけど、でも
気になる。

 いつか「セックス」も、「切腹」のイントネーションに変わるのかなあ。なんか、
とほほな響きだぞ。


7月2日

▼アホな会話

 店内。仕事前。

副店長(以下“副”) 「店長、ちょっとH系なぞなぞ。入れる前は白くて入れた後、
赤くなるものな〜んだ」

店長(以下“店”) 「えっ? え〜と、わかんない、なに?」

副 「もっと考えましようよお」

店 「だってわかんないもん。なに?」

副 「Tバックです」

店 「Tバック? なんだそりゃ。わけわかんない」

副 「Tバックですよ。ほら、紅茶のパックのやつ」

店 「えっ、そりゃティーバッグだろ?」

副 「ティーバック?」

店 「ティーバッグ」

副 「ティーパック?」

店 「ティーバッグ! 紅茶のBAGだよ。TEA BAG。紅茶のカ・バ・ン」

副 「紅茶のカバン、ですか? そんなもんあるんですか?」

店  ドサッ(倒れる)「なに言ってんだよ。そんなのあるわけないだろ。違うよ。
   ティーバッグは、紅茶の入ってるバッグ。あれはバッグなの、BAG。もう、
   わからんやっちゃなあ。この話、あんまりくだらないから日記に書いてHPに
   さらしてやる」

副 「店長、やめて下さいよ」

店 「お、おい、くすぐるなよ。がははは。やめろって、くすぐったいって。きゃは
   はは」

副 「じゃ、載せないで下さいね」

店 「きゃははは、わかった、ぐふふふ、載せない、ヒーッ、やめて、やめて。載せ
   ないから、載せないって! ゲタゲタゲタ、やめちくり〜〜、がはははは」


7月1日

▼ぶちギレ

 昨日はマナーの悪い客が多くて死ぬほどむかついた。

 少人数でギャーギャー騒いでる40代サラリーマンと、大人数で死ぬほど大声で騒
いでる老人たち。どこかの別荘か個室で飲んでるんじゃねーんだぞ。

 灰皿で紙片を燃やして部屋中を焦げ臭くしてる20代グループ。燃やしてんじゃね
ーよ。臭くてたまんないよ。何考えてんだよ。

 サングラスをかけたまま暗い席でタメ口をきいてくる若者。海外じゃ頭が悪いって
思われるぞ。

 カウンターで何時間もノートパソコンを開いてる30代。モニターが眩しいんだよ。
雰囲気が壊れるんだよ。インターネットカフェじゃないんだよ。

 フラッシュをバチバチたいて記念写真を撮っている20代。めちゃめちゃ眩しいだ
ろーが。お客様がビックリしちゃうだろ。他人を驚かしてんじゃねーよ。

 満席だって伝えて謝ってるのに何とか入れろとゴネまくる40代グループ。何度も
来てるんだから入れろとか言ってんじゃねーよ。物理的に無理なんだよ。わかれよ。

 ムカムカしながら働いている時に(顔には出してないよ)、ある40代の客の背広
を預かるときに「貴重品はございませんか」って聞いたら「そんなもん入ってねーよ!
」と言われて、ぶちキレた。もちろん態度には出さないけど(ちょっと出たかな)、
もうやってらんねー、おまえにサービスなんか出来っかよって思った。何でお前にそ
んなこと言われなきゃならないんだよ。ちゃんと接してるじゃねーか。てめえ何様の
つもりだ。お客様以外の何様なんだよ。

 お前ら自分たちが楽しけりゃ、他の客や従業員に迷惑だろうが何だろうが知ったこ
っちゃないっつーのかよ。最低限の常識も無くて、それで大人だなんて言えるのかよ。
似非大人どもが。老若男女を問わず、精神的子供が多すぎるっつーの。頭にもくるけ
ど、悲しすぎるぜ、一部の日本人。

 政治や経済や環境問題や福祉や事件のことをとやかく言う前に、まず自分の近くに
いる人たちに迷惑をかけるのをやめようよ。人に迷惑をかけちゃいけないって気持ち
を持とうよ。人に迷惑をかけてることを知ろうよ。気を配ろうよ。少しでいいから考
えようよ。考えてくれよ。頼むよ。

 マナーの悪い一部の客が、マナーを正しく守って飲んでいる過半数のお客様に迷惑
をかけて平然としている。マナーの良いお客様たちのひとときを平気でぶち壊してい
る。それがオレには耐えられない。酔ってるから仕方ないなんて妥協出来ない。人様
に迷惑をかける客は、悪い客だ。客であって客でなし。まず己を知れ。



   ヤBACK  ↓NEXT