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RANDOM DIARY TOUR
鳴海諒一日記 SINCE 6/18.2000
6月30日▼生産者の気持ち
海外で水産物の生産・輸出(日本向け)の仕事をされている方からメールをいただい
た。僕の書いた「デパート食品街物語」(6/21)をお読みになって、スモークサ
ーモン売場の事を知り、少々困惑されているようだった。そのメールには、「生産現
場ではスモークサーモンの規格ひとつでもかなり厳しく規格、衛生面などチェックさ
れています」と書かれていた。せっかく生産者の方々が、購入する消費者に喜んでもらおうと一生懸命良いものを作
っていても、販売店に従事する人がいい加減に販売していたら、生産者の努力は水の
泡である。生産者の方は製造して出荷して終わり。その後は販売店に全てを委ねるし
かないのである。生産者がお客に誠意をもって売ってほしいと願っても、どう売るかは店の勝手である。
精魂込めて作ったスモークサーモンが杜撰に扱われていても、その状況をどうするこ
とも出来ない。かく言う僕も、洋酒を扱っていて生産者の苦労や思い入れなどを、今まであまり考え
たことがなかった。恥ずかしい。洋酒の原料はその時々で品質にばらつきがあっても、
いつも全く同じ味わいを作り出さなければならない。その苦労は並々ならぬものがあ
るのだろう。洋酒の生産者の苦労と努力を考えてこそ、製品に対して今まで以上に深い愛情を注げ
るようになる。生産者の方からのメールは、僕を少しだけ目覚めさせてくれた。
6月29日▼情操教育
先日、ピアノ教師をしている知人の教え子たちのピアノ発表会に行ってきた。これ
は3人の友人関係にあるピアノ教師が合同で開催したものだ。いくら友人同士とはい
え、皆自分の生徒が友人の生徒より優秀であってほしいと思っているので、当日は一
見、和気あいあいとしたムードだったが、実は火花がバシバシと飛び交っていたらし
い。教え子たちは4歳〜20歳位の総勢30名ほどだった。年少者から順番にステージ
に上がり、現在練習中の曲を披露した。各教師の生徒が順々に弾くのだが、僕の知人
の生徒と他の2人の生徒では、弾き方が全く違っていてとても驚いた。知人の生徒の奏でる旋律はとても音楽的で心地よく聞こえる。タッチも良く、ピア
ノの音もとても綺麗だった。しかし他の2人の教師の生徒は、鍵盤をただガンガンと
叩きつけるように弾くだけで、タッチに強弱が乏しく、機械的で味もそっけもない演
奏だったのだ。発表会終了後、僕は知人に言った。
「君の生徒さんは、みんなとても綺麗なピアノを弾いていたね。時々つっかえたり、
弾き直したりしてたけど、そんなこと全然気にならないほど素晴らしかったよ。きっ
と君の指導がいいんだね。でも他の人の生徒の演奏は、君の生徒と違って暗譜しない
で譜面を見ながら弾いてたし、それでいてよく間違えたね。ちっとも良くなかったよ」「私も実はびっくりしたの。あんなにガンガン弾いてたら良い音なんてするわけな
いし、演奏も単調で正しい曲の解釈を教わっていないみたいね。でもね、もっと驚い
たのは、友達がね、自分の生徒が曲を弾き終わると、生徒の自慢をするのよ。どう?
私の生徒はちゃんと弾けてるでしょって」恐ろしい・・・ 2名のピアノ教師は、生徒に音楽の奏で方を教えているのではな
く、単にピアノの弾き方を教えているだけだったのである。それは教師演奏を聴いて
もよくわかった。彼女たちの演奏は、これ見よがしにテクニックをひけらかすだけの、
傲慢で無味乾燥なものだった。連弾でも互いの調和を考えずにグイグイと勝手に弾い
ていた。僕はこの発表会を聴いて、この2人の教師に教わっている子供たちが可哀想になっ
た。子供たちはピアノの弾き方だけを教わり、音楽の心を学べない。これでは何のた
めの情操教育かわからない。僕の知人は幼い頃、習っていた先生から、綺麗な音を出す練習と正しい曲の解釈を
徹底的に叩き込まれたそうだ。その経験が今とても役に立っている。世の中にピアノ教師は大勢いるけれど、いったいどのくらいの人が、まっとうなピ
アノ指導を行っているのだろうか。上記の悪い例は、たまたまなのか?ピアノをお子さまに習わせている皆様は、十分お気をつけになって下さいね。
6月28日▼つまらない言い訳
僕はつまらない言い訳をする人が苦手だ。「これはこうしなきゃダメだよ」って正解
を教えてるのに、なぜ失敗してしまったかをこと細かに話し出す人がいる。相手のそ
の言葉の裏には、(僕は何も考えずにその失敗を犯したんじゃありません。ちゃんと考えて行動したつ
もりですけど、どうやらそれは正しい判断じゃなかったようです。でも自分なりに考
えたんですよ。考えなしに行動したんじゃないんですう〜〜。だからどうして間違え
たか聞いて下さいよ〜〜)と保身がテンコ盛りに散りばめられている。そんな言い訳を聞いていても全く時間の
無駄だ。悪いと思ったら謝り、改める。納得できなかったら尋ね、理解する。それで
十分だ。こんなことを言ってるから、僕は合理的すぎると言われるんだな、きっと。
6月27日▼当店の氷
当店の製氷器は、普通の四角い氷ではなく、幅10センチ×長さ15センチ×厚さ5
センチの少し変わった規格の氷が出来る。その氷を専用の冷凍庫で一昼夜冷やしてお
き、アイスピックでグラスの大きさに合わせて四角く砕いて角を落とし、袋に詰めて
もう一度冷凍庫で凍らせる。そして締まった氷になってから使用している。キンキンに締まった氷を使用すれば、水割りなどでも溶けにくくなり、不必要に薄ま
ることがない。シェイク用にも重宝している。しかし、いつもベストのストックをキ
ープするのはとても大変だ。砕いた氷は30センチ×60センチのビニール袋に詰めるのだが、一袋詰めるのに、
どんなに急いで割っても30分近くかかってしまう。1日に必要なストックは6袋な
ので、単純計算で3時間は氷割りに費やさなければならない。最近では、もっと良質
の氷を作ろうと僕が少々割り方を変えたので、なおさら時間がかかるようになってし
まった。店は17:30にオープンするのだが、最近は20:30ぐらいまでは裏で氷を割っ
ている。新たな割り方が完成しつつあるので、やっと部下に任せられるようになり、
ホッとしているところだ。まさか店長が自ら裏で氷を割り続けているとはお客様も気付かないようで、よく、
「ダメだよ店長、さぼってばっかりいちゃ」とか、「休憩が長すぎるんじゃないの?」
と言われてしまう。裏で氷を割っていたんですよ、と説明しても、「またまた〜」と
茶化されたりする。また、氷割りはけっこう体力を使うので汗をかくことがあるのだが、お客様に「裏で
何してるんですか? 走ってるんですか? ジョギングですか?」とバカな質問を受
けることもある。んなわけないだろ。
お客様の多くは、店が17:30オープンと聞くと、僕たちは17:00頃にやって
来るものだと思っている。「働く時間が少なくていいですね」なんて言う人もいる。
だから、15:00前から店内の掃除、トイレ掃除、セッティング、仕込みを行って
いると教えると、ビックリされる方が多い。ゆっくり出勤できるのはアルバイトだけ
で、社員は普通の会社員の方と同じ9時間労働である。社員の休日は、週1回+月に有休が2日ある。夏休みと冬休みは各5日間で、元旦の
休みも冬休みとして1日さっ引かれる。年間休日数はかなり少ない。祝日やゴールデ
ンウィークなども全く関係がない。基本的には、皆様がお休みの時は必ず働いている。休日が少ないのは飲食業の宿命と諦めているのだが、いつまでたってもなかなか慣れ
ない。皆様全員がたっぷり休日があるとは思っていないのだが、それにしてもちと休
みが少ないかなあ。だから自分の時間は睡眠時間を削って作るしかないのだ。上ばかり見ていてもきりがない。自分は自分と割り切って精進、精進。あ〜あ、今日
は愚痴ってしまったぜ。そんなつもりじゃなかったのにな。
6月26日▼あるオペラ歌手の卵の話
やたらと声がデカイ人がいる。ただ単に地声が大きい人、耳が悪くて大きくなってし
まう人、声の通りが良すぎて大きく聞こえる人、など様々である。僕は声がデカイ人を見かけると、必ずその人のアゴをチェックしてしまう癖がある。
ガッシリした良いアゴ(エラ張りを含む)をした人は、声が頭蓋骨によく共振して通
りやすいのだ。以前、オペラ歌手の卵が当店で働いていた。彼は国立音大声楽科を卒業し、イタリア
へ音楽武者修行に行く資金を貯めるために、当店でアルバイトをしていたのだ。その
彼が言っていた。「声楽を志す人に無くてはならないもの、それはガッシリした良いアゴです。いくら
歌が上手くても、良いアゴを持っていなければ一流のオペラ歌手にはなれません。だ
からアゴの貧弱な学生は、教授からこの道は諦めろって宣告されてしまうんです。オペラ歌手を志している者が、歌手を諦めろなんて言われたら、死ねと宣告されたの
と一緒ですからね。彼らは絶望の中で、良いアゴを持っている声楽科以外の一般学生
を見ては、『ちくしょ〜、てめえいいアゴしてやがって。お前にはそんなアゴは無用
の長物だろうが!ばかやろ〜!』って嫉妬したり恨んだりしてるんですよ」その話を聞いて僕は、ある人にとってはアゴなんて「エラが張っててやだなあ」とか
「小顔に生まれたかったなあ」と、コンプレックスにしか感じないことでも、一部の
人にとっては宝物のように羨望の眼差しで見られたりしてるんだ、と驚いた。誰かが
チラチラとこっちを見てたとして、「あっ、あの人、私のアゴを羨んでる」などと感
じる人などいるはずがない。世の中は不思議なことで一杯だ。ある日の終業後、僕はオペラ歌手の卵に話しかけた。
「オレさあ、1973年録音のカラヤン、ベルリンフィルでパヴァロッティが歌って
る「ラ・ボエーム」(プッチーニ)を聴いて、ハマっちゃったんだよ。何人かテノー
ルを聴いたんだけど、パヴァロッティが一番好きだ」「そうなんですか!」 彼は興奮して大きな声を出した。
「店長、僕は店長が好きなそのボエームのCDを聴いて、オペラ歌手になろうと決め
たんです。このオペラの曲は歌詞も全部覚えています」僕はカッと胸が熱くなった。嬉しさが胸の奥からこみ上げてきた。僕たちは、聴いた
時期こそ違うが、同じCDを聴いて深い感動を共に覚えていたのだ。急に激しく仲間
意識が芽生えた。「ねえ、店にドミンゴのボエームのCDがあるんだけど、良かったらそれに合わせて
1曲歌ってくれないかなあ」「いいですよ。何がいいですか?」
「もちろん『なんて冷たい手』だよ!」
この曲はパヴァロッティ扮する主人公ロドルフォが、愛するミミに愛を告白する歌で、
パヴァロッティがしっとりと歌い上げる素晴らしい独唱曲である。僕はCDをデッキ
にセットし、再生ボタンを押した。彼は椅子から立ち上がり、静かに歌い始めた。ものすごい声量である。鳥肌が立った。
曲は次第に盛り上がり、ヴォーカルパートもハイノートに移ってゆく。窓ガラスがビ
リビリと細かく振動している。彼の声が僕の体全体に共鳴し、骨を直に震わせている。
鳥肌が止まらない。大感動である。彼は最後まで華麗に歌いきり、まるでステージから挨拶するように深々と僕にお辞儀
した。たった1人の聴衆のために精魂込めて歌ってくれた彼に、僕は惜しみない拍手
を送った。その後、僕たちはすっかり意気投合し、仕事も楽しく行いつつ、暇さえあればオペラ
の話に華を咲かせた。そんな彼がある日失踪した。前日まで何事もなく楽しく働いていたし、「じゃ、また明日」と元気良く帰っていっ
たのに、それっきり彼は姿を現さなかった。毎日毎日、何度もアパートに電話をかけ
たが、彼が電話に出ることはなかった。従業員も心配してアパートに何度か尋ねて行
ったのだが、部屋にも戻って来なかった。彼の履歴書の実家の住所から電話番号を調べて、実家に電話をかけた。母親に事情を
説明したが、なぜかそれほど驚いた様子じゃない。もう何が何だかわからなかった。
結局、彼の消息はつかめないままである。テレビに声楽家が出演する度に、もしかしてあいつじゃないかと食い入るように見て
しまう。どこでどうしているのか、歌手になっているのかいないのか、何もわからな
い。時折、「ラ・ボエーム」を聴き直す度、今でも彼の声を思い出す。あの感動を思い出
す。『なんて冷たい手』は僕にとって、他のどれよりも思い出深い曲なのである。
6月25日▼並々カクテルについて
以前、どなたかのサイトの掲示板にこんなカキコがしてあった。
「カクテルはカクテルグラスいっぱいに並々と注いである場合がありますが、これは
なぜでしょうか? 少し大きめのグラスに8分目ぐらいまで注いではいけないのでし
ょうか? また、並々と注がれたカクテルは、どのように飲むのがスマートなのでし
ょうか? どなたか教えて下さい」これからこの質問について僕が独断と偏見(とは思っていないが)で意見を書こうと
思う。何の裏付けも無い個人的な意見なのに、さも真実であるかのように断定的に書
いてみたい。なぜ断定的に書くのかというと、断定的に書きたい気分だからだ(笑)
これを読んで、真実じゃねー!などとクレームなど送って来ないように。何の根拠も
ないが、僕はこれから書くことを盲信してるんだからね(盲信かよ〜 ヤ皆さんの声)店によってカクテルがグラスの縁ギリギリまで注がれていることがある。これは日本
の古き悪しき慣習である。小さめのグラスに目一杯注ぐことによって、ボリューム感
を出しているのだ。通常、カクテルは60ミリリットルを基本として作られる。しかし、グラスが60ミ
リリットルの容量しかなかったら? そう、シェイクして多少氷が溶けることを考え
て調合するなら、50ミリ〜55ミリリットルの酒を入れればよい。すなわち5ミリ
〜10ミリの酒をケチれるのだ。すると原価は若干下がるモ儲けが増える(ちょっと
だけどね)。それ以外に並々と注ぐメリットはありえない。きっぱり!だってなぜ好きこのんで飲みにくくする必要があるのか? これをこぼさずに口へ運
ぶのが上手かどうかを見て、カクテル慣れしているのかをバーテンダーが判別したい
ためか? 否!。それとも怖くてグラスを持ち上げられないので、カクテルに顔を近
づけることでお客にお辞儀のような格好をさせて、カクテルに感謝の意を強制的に表
させたいのか?、バーテンダーを敬わせたいのか? 否、否!。え〜とえ〜と、もう
他には思いつかない。【結論】 カクテルをグラスに目一杯注ぐのは、原価を浮かせるためである。
次に、グラスに目一杯注がれたカクテルを飲む方法は、普通に考えれば、こぼさない
ように気をつけながらグラスを持ち上げ、それと同時に口も近づけてアポロとソユー
ズのドッキングよろしくしずしずと飲む。しかし、僕が提唱する飲み方は、グラスを
グイッと引き寄せて、カクテルをカウンターにボタボタとこぼす。そして言うのだ。
「こんなに入ってちゃこぼれちゃうよね〜〜」 うわ〜っ、やな客だ(笑) これは
取り消そう。無かったことにしてほしい。【結論】 極めて常識的に、こぼさないように気をつけて飲む(普通すぎてつまらん)
でも、何杯か飲めば軽く酔ってくるだろうし、気をつけていてもこぼしてしまう可能
性は高くなる。昔は、2〜3杯をサッと飲んでサッと帰るのが粋な客だとされていた
ので、こぼしてしまう程酔っぱらったことをお客に気付かせるリトマス試験紙的役割
を兼ねているのかもしれない。なわけないか(それはどうかな)。常識的に考えたら、お客様がこぼさないように配慮して、少し大きめのグラスに余裕
を持たせて注ぐのが正解である。並々と注いだグラスからお客様がカクテルをこぼし
てしまったら、お客様が粗相(そそう)をしているみたいで恥をかかせることになる。
そんな可能性が大いにあるのに平気で並々と注いで、片やサービスうんぬんとほざい
ているバーテンダーがいたら、僕はその人を信用しない。きっぱり!当店では60ミリ〜70ミリリットルの酒量で調合して、90ミリリットルのグラス
に注いでいる。自慢ではない。普通に考えればこれが妥当である。以上!う〜ん、我ながらよく言いきったぞ。誰がどう正当化しようが、「でもこぼれちゃう
じゃん」、この一言で大抵の屁理屈はぶっ飛ぶと思うぞ。くれぐれも次のようなメー
ルは下さるな。「前略。うちの店はカクテルを並々と注いではいますが、大きめのグラスに量も多め
のカクテルを注ぐようにしています。並々と注ぐのは、お客様から見たカクテルの印
象を高め、幸福感を味わっていただきたいからです。決してお酒をケチって原価を安
くしようなどという邪心からではありません。鳴海さんの書き方では、お客様に悪い
印象を与えかねません。私達は真面目にカクテルに取り組んでいます。どうか訂正文
を掲載して下さるようお願い申し上げます。草々」(鳴海創作)こんなこと言われたって「でもこぼれちゃうじゃん」って返事に書いちゃうか、もし
くは返事を書かない。だから送って来ないでね(笑)
6月24日▼睡眠時間
僕の睡眠時間は毎日3〜5時間である。朝7時〜8時に寝て11時〜12時に起きて
いる。逆転人生である。以前は7〜8時間ぐらい眠っていた。僕にはそのぐらいの睡
眠時間が必要だと思っていた。しかし竹村健一の「睡眠時間は減らせる」という本を
読んで奮起して徐々に減らしてみたら、あまりまとまった睡眠時間を取らなくても大
丈夫なことがわかった。ノンレム睡眠とレム睡眠が約1時間半ごとに交互にやって来るが、この狭間に起きる
ととても寝覚めが良い。理想的なのは3時間と6時間だが4時間半も捨てがたい。眠
りに就くまでの時間を加算して約3時間半後、5時間後に起きると、一発ですっきり
起きることが出来る。それはもう面白いくらいすっきりしている。この間NHKで「上手な居眠りのしかた」を見たのだが、日中の居眠りは10〜15
分ぐらいが最適なのだそうだ。それ以上寝ると眠りがどんどん深くなり、逆に寝覚め
が悪くなってしまうのだ。僕は1日2〜3回居眠りをする。往復の通勤電車内と仕事の休憩時間である。電車内
での居眠りは10〜15分ぐらいだが、かなり爆睡してしまう時があって恥ずかしい。今日、仕事に向かう電車でいつものように眠ってしまったのだが、電車を降りてから
左目がかすんでよく見えない。歩きながらメガネを外して目をこすり、またメガネを
かけ直すが、まだ目がかすんでいる。どうしたんだ。病気か?と心配した直後、あっ!
と気がついてメガネを外したら、左のレンズが曇っていた。電車内で端のパイプにメ
ガネを押しつけて寝ていて汚れてしまったのだ。失明の危機は免れたものの、いった
いどんなブザマな寝方をしていたのか想像し、あまりの恥ずかしさに頭がクラクラし
てしまった。毎日雨が降っているせいか気温もそれほど高くならず、毎日がとても過ごしやすい。
僕は今ぐらいの気温が一番好きだ。薄手の掛け布団をかけて眠れるのが嬉しい。夏が
やってくると暑くて暑くて寝苦しくて、とてもじゃないが眠れない。昼間に寝るのが
とても困難になる。夏は水商売をやっている者には非常に辛い季節なのだ。クーラー
は旧式で微調整が効かない。つければ寒いし、止めると暑い。眠っているときに知ら
ずにクーラーをつけてしまった時など、ブルブル凍えそうな状態で目が覚める。クー
ラーをつけないと、汗びっしょりで目が覚める。ああ、もう書くだけで嫌になってき
た。
今日はすこぶる眠い。現在時刻は午前6時40分。昼間に働いている方がぞくぞく起
きるころだ。あっ、でも今日は日曜日だ。関係なかったね。う〜、眠い、気絶しそう
だあ。今日のこの日記はちゃんと書けているのだろうか。心配だ。
6月23日▼タメ口なお客様
今日来店した20代前半のカップルの男性は、何を注文するにもタメ口だった。「ちょ
っと、タバコある? 何あんの?」「ショップカードくれる?」「お代わりくれる?」
等々、カウンターに座っているのに目の前にいるバーテンダーに注文せずに、いちい
ち振り返ってホールの僕を呼びつけるのだ。しかもおいでおいでと手招きする。「まったくもう、何でいちいちオレを呼ぶんだよお。しかもオレは召使いじゃねーぞ。
人にものを頼むときは、口の聞き方に気を付けろい」、と閉口してしまった。しかし
お客様である。失礼の無いように応対しなければならない。元気な声で受け答えする
気にならないので、呼びつけられる度に10歩ほど引いた物静かな応対をした。しばらくすると男性は目の前のバーテンダーを呼んで、僕をちらちら見ながら何かを
話しかけていた。なんだろう、気になるなあと思い、バーテンダーが戻ってきてから
何を話していたのか聞いてみた。「あの方と何を喋ってたの? オレのこと何か言ってなかった?」
「はい、あの人は誰だって聞くので、店長だって言いました」
「それで?」
「そしたら、そうなんだ、店長なんだ。いやあ、あの人は凄いよ、あの人のサービス
は凄い、って褒めてましたよ」なぬ?褒めてた? はて、褒められるようなこと何かしたっけ? めちゃめちゃ引い
た応対してたのに・・・謎だ。僕は心底不思議だった。取り立てて褒められるようなことはしていない。極めて普通
のことをしたまでだ。ふむ〜、これはあの方の望んでいるサービスと僕の態度が一致
したんだな、きっと。いろんな方がいるものだ。僕が良いと思っているのは、もっと
明るくはきはき、きびきびと振る舞うサービスだ。あの方にはそれじゃ逆に受け入れ
てもらえないのかもしれない。「調子こきやがって」とひんしゅくを買ったりして。サービスは奥が深い。深すぎる。こんな淡泊な応対の方がかえって好まれる場合もあ
るなんて、今まで思ってもみなかった。ってことは、僕が普段良かれと思って行って
いるサービスも、相手の心に響いていないこともあるのかもしれない。でもこのお客
の感性は、普通の人とちょっと違うんだろうなあ、というふうにまとめて、僕はサー
ビスの方針を決して変えようとはしないのだった。
6月22日▼桜吹雪が風に舞う
今日は話題のラーメン屋「桜吹雪が風に舞う」へ行ってきた。このへんてこな名前の
ラーメン屋は、先日、スーパーテレビ(日テレ系)の「新宿3丁目ラーメン戦争」で
見て知った。この店は新宿伊勢丹の先の小道を入ったところにあって、「桂花ラーメン」と「黒門」
という熊本ラーメンの店に挟まれて建っている。そして「桜吹雪」も九州ラーメン屋
である。「桜吹雪」は、元フランス料理のシェフが1年半の歳月を費やして完成させた豚骨ラ
ーメンである。この店(会社)の社長は、自分が納得できる味が完成するまで店のオ
ープンを半年間遅らせた。その損害額は5千万円。もうこれ以上オープンを遅らせら
れないというところまできて、やっと社長が「これだ!」という味を開発することに
成功した。シェフはこの時の味が認められなかったら会社を辞めるつもりで、胸に辞
表を忍ばせていたほど追いつめられていたので、社長の「よく今まで頑張ったな」と
いう労いの言葉に、男泣きに泣いた。テレビで見ていたときは別に美味しそうじゃなかったけど、ものは試しと出かけて行
ったのだ。午後3時頃だというのに、店内は満席の賑わいである。ラーメンはあっさ
りとこってりの2種類(各750円)あり、具はトッピング制である。僕は「こって
り・豚角煮・ゆで卵」を注文した。供されたラーメンを食べてみた。まずスープを飲む。それほどこってりはしていない。
しつこくない味だが特に個性は感じない。「うまい!」と自然に感じられなかった。
麺はコシが強くてシコシコしているが、特に旨みは感じない。しかし豚角煮は超個性
的だった。甘くて甘くて砂糖漬けか、こりゃって感じだった。ラーメンにこのどぎつ
い甘さは合わない。茹でたモヤシも、こってりスープの味が水っぽくなってしまって
NG。結局僕も副店長も、もう一度食べたいとは思わないという意見で一致した。これはラー
メン職人が考えたラーメンじゃない!などとブツブツ言いながら店を後にした。スーパーテレビでは他にも何軒かのラーメン屋を特集していたので、そのうち全店回
ってみることにしよう。次回は、東京一うまいと評判の「武蔵」に行ってみたい。こ
の店はどの時間帯でも行列が途絶えないらしい。あまり並ぶんじゃ仕事の合間に行け
ないなあ。でも「武蔵」はスーパーテレビで取り上げられたラーメン屋の中で、画面
上はダントツうまそうに見えたので、早く食べに行ってこよっと。
メルマガの配信が遅れていて大変申し訳ありません。日記は毎日更新しているという
のに、とほほ。どうか見限らないでね。
6月21日▼デパート食品街物語
当店では貸し切りパーティーがある際、食材の一部を近所の老舗デパートで買うのだ
が、いつも予約して購入するスモークサーモンが、今回のはメチャメチャひどかった。
通常だと幅5〜6センチ、長さ15〜18センチのサーモンが、今日は幅が平均2セ
ンチで、おまけに長さも7センチ〜15センチぐらいである。切れ端も多く混じって
いる。こんなクズみたいなサーモンはみっともなくて、とてもじゃないがお客様に出
せない。数年前からパーティーがある度に買っているのに、こんなものをよこしやがって、と
むかついて、売場に苦情の電話をかけた後、アルバイトに交換しに行ってもらった。
本当は僕が直接行きたかったのだけど、いかんせんパーティー開始時刻が迫っていて
忙しかったので断念した。バイトがサーモンを交換して帰ってきてから話を聞いてみた。そのサーモン屋のいつ
も横柄な態度の店長(じじい)は、全く悪びれずに「これしかなかった」とのたまっ
て、しかしすぐに交換に応じたそうだ。一度も謝りもしないその態度の悪さに当店の
バイトも怒っていた。サーモンを専門に取り扱っている店が、あんなどうしようもない形のサーモンを平気
で常連に売ってしまう店長の無神経さ、プライドの無さに僕は激しく憤った。謝らな
いことで責任を回避しようとしている狡さも恥ずかしい。いい年してホントみっとも
ないじじいだ。こんな時は苦情係に電話をかけた方が早いのだが、事を荒立てても、謝りに伺いたい
ので店を教えてくれとうるさくて仕方ない。こっちは謝り専門の人に来てもらって、
いくら上手に謝られても何の得もない。きちんとした商品をいつも用意してもらえれ
ばそれで良いのだ。だからめったなことでは苦情係に電話することはない。このサーモン屋は、以前は売場でサーモンをカットしていた。ある日、僕が喋ったこ
とのない男子店員が、「長い間お世話になりました。今日で辞めることになりました」
と話しかけてきた。「勤務先が変わるんですか」と聞いたら、「いいえ、大学を卒業
するので辞めるんです」と言う。「えっ、学生さんだったの?」と驚きつつ、あれ?彼は今まで、いつもここでサーモ
ンをカットしてたけど、こんな場所で文系の学生に生ものを切らせても問題ないの?
調理の資格を持ってなくてもいいのかなあ、と疑問に思ったことがあった。ってこと
は、この食品街全体に似非調理人がひしめいているのかもしれない。そう思ったら何
だか少し怖くなった。
以前、ある洋惣菜店の量り売りのセリフが「少しオーバーしますけどよろしいですか」
に変わったことがある。100グラムちょうどに盛ることが出来るものでも、少しオ
ーバーするように盛って「ちょっと出ますけどよろしいですか」と言うのだ。その気になればピッタリ盛ることが出来る惣菜をわざわざオーバーさせる理由は何か
と、その店の顔見知りに尋ねたら、その店員は小声で「本社から少しオーバーさせる
ように言われたんです。私もこんなことするの嫌なんです」と言って溜息を吐いた。せこい、せこすぎるぜ! 売り上げが伸び悩んでいるからオーバーしろだって! バ
カだな、何もわかっちゃいない。主婦は絶対に違和感を感じるって。数グラムだから
いいわ、って思う人より、何よ、それぐらいサービスしなさいよ、って思う人の方が
絶対に多いよ。そんなのが度重なれば、お客は自然と足が遠のくっつーの。案の定、この店の売り上げは激しく落ち込んだそうだ。しかも苦情係に苦情が殺到し
て、元通りのピッタリ売りに戻さざるを得なくなってしまった。じゃんじゃん!かつては僕も別のデパートで「少し出ますけどよろしいですか」と言われたことがあ
る。その惣菜はピッタリに盛ることの出来る食品だったので、「いいえ、ちょうどに
して下さい」と言った。店員の職務怠慢に付き合うのは嫌だったし、オーバーするの
が当たり前というその態度が気に入らなかったのだ。。僕の言葉の後、店員の顔は歪
んだ。チッ。店員の心の舌打ちが聞こえたような気がした。あ〜あ、こいつも何もわ
かっちゃいないなあ。他にも、「揚げ立てですよ〜、いかがですか〜」と言いながら、冷め切ったカチンカ
チンの天ぷらを平気で売る店とか、3回に2回は予約した食材を準備し忘れる店とか、
苦情係からの苦情を店長が従業員に伝えないので一向にクレームの減らない店とか、
挙げたらキリがない。この老舗デパートは、かつてはサービスの良さで定評があった。しかし今では、いろ
んな人からサービスが落ちたという話をよく聞く。お客様からも時々聞く。僕自身も
この食品街のサービスの悪さには時々閉口している。そのへんのスーパーの方が全然
ましだ。従業員一人一人がこの老舗デパートのカンバンを背負っているつもりで働かなくてど
うするんだろう。多くの店員は、そんなの知ったこっちゃ無い、だって自分の生活の
ために働いてるんだも〜〜ん、と開き直っているのだろうか。一生懸命働くことの出
来ない人って魅力ないなあ。淋しいなあ。悲しいなあ。この自分の置かれた立場を認識していない店員たちによって、今日も老舗デパートの
権威は落ちてゆく。でもこれはデパートの管理不行き届きだね。自業自得か。
6月20日▼「続・落選確実選挙演説」
新潮社発行の「新潮45」に連載されているビートたけしのコラム・エッセイが、毎
月とても素晴らしい。現在発売中の7月号に掲載されている「続・落選確実選挙演説」
の出色の出来映えに、とても感動してしまった。いつもはたけし自身の言葉で綴っているこのコラムだが、今回は架空の立候補者が演
説しているという形式を取り、自分の言葉で表しては誤解を招いてしまいそうな事を、
この立候補者に全部言わせている。一読すると極めてハチャメチャでブラックユーモ
ア溢れる内容になっているが、笑って済ませるだけには僕には到底出来なかった。このコラムの内容を目次的にざっと説明すると、
<公約>
・女と学生から選挙権を取り上げる
・憲法改正、徴兵制施行
・売春防止法の撤廃、ギャンブルも認可
・義務教育は小学校まで、中学校以上は民営化
・老人福祉の全廃、地方自治もなくす
・消費税を15%にし、所得税はゼロに近づける
・国連は脱退する
・十七歳新法を作る(暴力団新法の向こうを張って)
・選挙権や被選挙権を免許制にする
・横山ノック法を作る
・健康保険制度と年金制度の撤廃
・安楽死病院法の制定
・姥捨て山法の制定
・裸足法の制定<経済政策(不景気対策)>
・昼間に電気をストップ
・ゴミ処理の有料制
・金利自由化
・命ローン
・公営カジノ設置
・公営賭博許可<たけし内閣組閣名簿>
外務大臣 石原慎太郎
大蔵大臣 千昌夫
防衛庁長官 桜庭和志
文部大臣 戸塚宏<最大の公約>
オチなので、ここには書けません。と、たった9ページの本文の中にこれだけの公約を掲げ、その内容を説明している。
とても濃い内容である。そんなの無理だよとか、出来るわけないよと一蹴してしまう
のは簡単だが、このような一見無茶苦茶とも思える事柄から真実が発見できる場合も
ある。僕自身は昔から大のたけしフリークで、たけしがこき下ろしたり、ひっくり返したり
することをテレビやラジオで見聞きしながら、物事を多面的に考える重要性を学び、
真実を見極める目を養う努力をしてきた。僕のサービスについての考え方もやはり、
たけしの考え方が色濃く生きている。何が正しいのか、何が間違っているのかを柔軟
に考えることの大切さを、僕はたけしから学び続けている。このたけしのコラムを読んで、くだらねえ内容だ、としか思えない人とは、僕はおつ
きあいできない。
6月19日
▼江東区・墓地建設反対運動
今日の昼間、テレ朝の大和田漠が司会している番組で、江東区の住宅街の真ん中の空き地に
現在「墓地」を建設中で、周辺住民が「こんなところに墓地を作るな!」と反対運動をして
いる模様を放送していた。住民は、墓地が出来ることによって自分の住んでるマンションや
一戸建ての価値が半分になると危惧していた。隣接する幼稚園の園長は「こんな所に墓地が
出来ると、暗くなってから物騒だ。心配だ」と言っていた。近所の主婦は、「線香の臭いや
カラスが来たりするから困る」と言っていた。みんな怒っている。この空き地は住宅に挟まれて大きな道路が併設できないため、マンションなどのビルが建て
られない。地域住民はたいした建物が建てられないから景観が損なわれないと、タカを括っ
て移り住んで来たに違いない。しかし、空き地の地主は墓地にすれば儲かることを知ってし
まった。法的にも問題ないため、墓地じゃ墓地が儲かるのじゃ、と墓地を作り始めたのだろ
う。もうすでに墓地は区画の制作まで進行している。今さら反対しても、現行法でははっき
りいって手遅れだ。この特集を見ていて、オウムを地元から追い出そうとしている住民運動を思い出した。17
日のスーパーJチャンネルのオウム特集で、松戸の住民が「ここから出ていってくれさえす
れば、他のどこへ行ってもいいっていうのが本音ですね」と言っていた。まさしく本音だろ
う。墓地に反対している人たちも同じように思っているのだろう。今回の墓地騒動は、宗派の違う仏教徒やクリスチャンの人々には、えらく迷惑な話なのかも
しれない。現在住んでいるマンションや土地の価値が下落してしまうのも死活問題である。
でもこの番組を見ていて、何か釈然としないのだ。自分の土地をどう使おうと大きなお世話
だ!と地主の立場になれば憤ってしまう。地域住民の立場になれば、こりゃ困る!とも思う。住民が地主を納得させる方法、すなわち、墓地を作らなくても同じぐらい儲かる話を考えて
「こっちの案なら住民は反対しないし、地主さんも損しませんよ」という方向で進められな
いものだろうか。「みんなが嫌だと言ってるんだからやめるべきだ!」などと言っているだ
けじゃ、多数派によるイジメにも見える。嫌なことを排除するだけじゃなくて、相手の立場
に立って円満解決をぜひとも目指してほしいと願わずにはいられない。
もし墓地作りを止められなくて、今度は墓地販売の邪魔をしようなどと運動を起こしたら、
住民の方が違法行為となってしまう。そんなことはしないと思うが、我が身の可愛さに見境
なくなって行ってしまったら、「そら見たことか」と僕は思ってしまうだろう。どうか誰に
でもわかるように正しい手段で戦ってほしい。
6月18日
▼お気に入りの店員さんうちの近所のある店に、僕のお気に入りの店員さんがいる。何がお気に入りかというと
彼女の名前が大好きなのだ。彼女は「いかばた」さんという。最初に名札を見たとき、
ええっ!?と驚いた。「いかばた? 居酒屋メニューじゃん! イカバターじゃん!」
僕はとてもくすぐったい変な気分になった。彼女はきっと合コンへ行く度に誰かにイカ
バターを注文されて、目の前に置かれてしまうんだろうなあ。嫌なヤツだと「これって
共食いじゃん?」とか言ってそうな気がする。そんな情景が勝手に思い浮かんできて、
みんな〜!いかばたさんをいじめるな〜!と1人で怒ってしまう変な僕である。
以前、当店に希少名前トリオが在籍していた。
滝来(たきらい)、宝泉(ほうせん)、宝泉坊(ほうせんぼう)である。滝来さんは時々
「ターキーライさん」と呼ばれていた。これはワイルドターキーライといライウイスキー
にちなんでいる。くだらないんだけど店ではウケる。業界ネタである。
田口ランディさんの処女小説「コンセント」が売れている。発売2週間で3万5千部も
売れたそうだ。紀伊国屋書店新宿東口店では今週の第5位にランクされている。すげえ、
すげーぞランディ!(敬称略)というわけで、今日から日記を書き始めた。以前からずっと書こっかな、どうしよっかなと
迷っていたのだけど、とうとう始めてしまった。出来るだけ頻繁に書きたいとは思うんだけど、
基本的には書きたいことがある時に書くつもりだ。
ヤBACK