コロナ危機に関する私の認識のまとめ2020年5月13日 田中 宇今年1月23日に中国が武漢と湖北省の1億人に対して閉鎖政策を始めた時から危機になった「コロナ危機」は、リーマン危機やテロ戦争を超える巨大な危機だ。2度の世界大戦に匹敵する影響を人類に与える可能性が高い。コロナ危機は、ウイルスや病理の特性、感染対策のあり方に関する是非と、感染対策に政治的な陰謀が入っている可能性が高いこと、都市閉鎖策や社会距離策が経済に大変な問題を引き起こしていること、QE依存によるドル崩壊への道の不可避性、グローバリゼーションと米覇権体制を終焉させるであろうことなど、問題がとても多岐にわたっている。コロナ危機はまだ初期段階であり、事態はどんどん変わっているし、新たな政策や扇動も各国や各勢力から頻繁に出されており、状況が不安定だ。ここいらで、これまでに考え散らかし、書き散らかしたことをまとめるのが良いと思って今回の記事を書く。これまでの繰り返しが多くなる。 まず新型コロナがどうやって発生したかについて。中国の武漢が唯一の発生地(動物からヒトへの感染開始地)だ。中国政府は、中国以外の国での発祥を示唆したが、稚拙なプロパガンダの域を出ていない。覇権国っぽく偉そうな態度をとるなら、英国系の巧妙なプロパガンダを見習いなさい(笑)。もともとコウモリが持っていたコロナウイルスがハクビシン(野生猫)など野生の中型哺乳類に感染し、そこからヒトに感染したことはほぼ確定的だ(コウモリから直接ヒトにはたぶん感染しない)。ただ、中型動物からヒトへの感染の舞台が、武漢の野生動物市場だったのか、武漢のウイルス研究所だったのかが未確定だ。私はウイルス研究所からの漏洩だろうと思っている。 (武漢コロナウイルスの周辺) 中国政府は当初、武漢の野生動物市場で食肉用に生きたままま売られていた哺乳類からヒトに感染したと言って、武漢の動物市場でDNA採取などをやったのだが、その結果を詳細に発表していない。中国政府は、コロナの発祥経路について米国など世界の中国敵視派から非難されている。もし武漢の動物市場が舞台だったなら、中国政府は動物市場での調査結果を詳細に発表し、世界からの疑いを晴らすことができる。しかし、中国政府はそれをやっていない。中型動物からヒトに感染した舞台は、動物市場でなかった可能性が高い。 すると、可能性が高い説で残っているのは、武漢のウイルス研究所からのウイルス漏洩しかない。この研究所はSARS発生後、SARSやMERSなどコロナウイルス全般の感染ルートの解明、ワクチン開発など、まっとうなウイルス研究をやっていた(SARSは華南の野生動物市場で野生猫からヒトに感染した)。華南全域からインドまで行ってコウモリのウイルスを集めて研究していた。こうした研究を生物化学兵器の開発と決めつける人は稚拙であり、中国敵視派として失格だ。英国系の巧妙な敵視策を見習いなさい(笑)。 武漢ウイルス研究所では、コウモリが持ついろいろなウイルスを中型哺乳類に感染させて、どうなるかを実験していた。この研究所には隔離度が最も高い「P4バイオラボ」があり、感染実験はP4ラボ内で行われていたはずだ。さもないと実験者が感染し、家族や他の人々をも感染させてしまう。そして、何らかの経緯で、中型動物の新型コロナのウイルスが付着した物質がP4ラボから外に出され、そのウイルスに研究所の要員が感染して中型動物からヒトへの感染が起こり、それが世界に広がってコロナ危機になったと考えられる。 中国では当初、北京のP3バイオラボでSARSのウイルス研究をしていたが、その際に何度か過失によってSARSウイルスが研究所の要員に感染するかたちで外部に漏洩している。ウイルスが付着した物質は、消毒液をかけたりして不活性化(殺)してからバイオラボ外に出すことになっているが、消毒液を全体にかけたつもりがかかっていない部分があり、活性化したままのウイルスがラボ外に出てしまい、研究所の要員が感染して漏洩が起きた。SARSは重篤に発症しないと他人に感染しにくかったので大事にならなかった。今回の新型コロナは無発症の人からどんどん感染するので世界的な危機になった、というのが一つの仮説だ。 武漢のP4ラボは北京のP3ラボより漏洩抑止策が強いが、抑止システムがどんなに強くても作業手順が厳格に守られないと漏洩が起きる。ラボからの漏洩がコロナ危機の発祥だった場合、ラボの管理が不十分だったことになり、中国政府の責任になる。だから中国政府は武漢ラボ発祥説を躍起になって打ち消しているのだと考えられる。中国政府はEUに圧力をかけ、EU域内の新聞が社説で武漢ラボ発祥説を書かないようにせている。これは本末転倒な稚拙な策で、むしろ「やっぱり発祥地は武漢ラボなんだ」と世界の人々に思わせてしまう。何度も言うが、巧妙な英国系を見習いなさい(笑)。 ただ、コロナの発祥が武漢ラボからの漏洩だったとしても、漏洩を引き起こしたのが米国の諜報機関だった可能性は残る。武漢ウイルス研究所の研究者の多くは米国の大学への留学経験がある。留学中にCIAなどから脅されたり贈賄されたりして米国のスパイに仕立てられ、中国に帰国後に武漢ラボに就職してスパイをやり続け、その者が米国側からの命令で新型コロナをラボ外に漏洩されたというシナリオがありうる。米国の諜報界(軍産複合体)が中国を破壊するためにウイルスを漏洩させたという筋書きだ。しかし今回のウイルスが、中国だけでなく米欧にも蔓延して米国中心の世界経済を破綻させることは事前に予測できたはずで、このシナリオは軍産にとって自滅的だ。このシナリオが現実なら、挙行したのは軍産のふりをして米国覇権をぶち壊してきた隠れ多極主義のネオコンやトランプ系だ。 このシナリオだとしても、中国政府は、自国の重要な研究所が米国のスパイに入り込まれていたという不名誉を認めたくない。だから、どっちにしても中国政府が武漢ラボ発祥説を認めることはない。中国政府が認めなくても、武漢ウイルス研究所の発祥である可能性が高い。 ▼誇張されているコロナの脅威 新型コロナウイルスに感染した人の80-95%は、無発症か軽症だ。無発症者は感染した自覚がない。軽症者は多くの場合、2-3日以内に症状がなくなる。のどの痛みや発熱、倦怠感、息苦しさが発生して「コロナかも」と思っても、翌日ぐらいに治ってしまうと「まあいいや。もう治ったし」で終わってしまう。だから、無発症と軽症は同じ範疇で考えられる。こういう人が感染者の80-95%だ。残りの人々の中に、入院が必要な人、呼吸器の着装が必要な人、死ぬ人が出てくる。入院した時点で致死率が25%、呼吸器を着装した時点で致死率が90%前後と言われている。恐ろしい病気であるが、ほとんどの人は感染しても大したことない。大半の人の無発症と、ごく一部の大変な重症が併存している病気だ。しかも、無発症で感染するので感染防止策が難しい。重症になる人の多くは、呼吸器疾患や糖尿病などの持病がある人だ。英国や米NYでは、コロナによる死者の95%が持病持ちだった。コロナは恐ろしい病気だと喧伝されているが、それは全体のごく一部の人の症例を、感染者全員の症状であるかのように報じる手法だ。 (Sky News: 95% Of England’s Covid Victims Had Underlying Conditions) 米国の監獄で囚人と職員にPCR検査を実施したところ、検査対象の80%が感染していた。このニュースは日本で「3密が起こりやすい監獄で、囚人がみんな肺炎になってしまった」みたいな感じで報じられた。だが実のところ、このニュースの最重要点は、日本語で報じられていない点にある。それは、この監獄での検査での感染者の96%が無発症だったことだ。ロイターの英文記事では、何人が重症だったか書いていない。しかし、無発症が96%なら、軽症が3%台、中程度以上の症状の人は1%以下だろう。ほとんど誰も肺炎どころか症状そのものが出ていない。無発症で蔓延するコロナを象徴する出来事だ。それなのにマスコミは、感染者の中にけっこうな数の重症者がいるかのような印象を日本人に持たせたがる報道(のふりをしたプロパガンダ発信)を続けている。 (全米の刑務所で新型コロナが猛威、被収容者と職員8割以上陽性の施設も) (In 4 U.S. state prisons, nearly 3,300 inmates test positive for coronavirus -- 96% without symptoms) こうしたコロナの危険性を誇張する方向の歪曲プロパガンダによる「恐怖戦略」が、コロナ危機の政治的な特徴だ。報道の歪曲は世界的なものであり、偶然の産物でなく、何らかの意図的なものだ。マスコミ自身は傀儡なので、その意図についての分析をやらないし、そんな歪曲は存在せず、陰謀論者のたわごとだとしか言わない。「心ある専門家」たちはすでに、今のコロナ対策はおかしいと言い始めている。だが、なぜおかしなことが延々と行われるのか、覇権側の動機について考えている人はほとんどいない。911の時もそうだった。ブッシュ政権や軍産の陰謀だと感じる人は多かったが、なぜそんな陰謀が展開されるのか、考えていた人が世界にほとんどいなかった。深い分析をする人が必要だ。 (Leading German Virologist: ‘COVID-19 Less Deadly Than We Thought’) (911事件関係の記事) 米国では、共和党支持者(保守派)より民主党支持者(リベラル主義者)の方が、マスコミによるコロナに関する報道を軽信し、コロナを過剰に恐ろしいものとして考えている。コロナによる実際の死亡者数は報道されている人数より多いと思うかという世論調査の質問に対し、民主党支持者は63%が「報道より多いと思う」と答え、29%が「事実の人数を報じている」、7%が「実際は報道より少ない」と答えた。共和党支持者は3つの答えがいずれも30-40%で一定していた。民主党支持者が「死者数が報道より多い」と考える傾向なのは、民主党系のリベラル派のマスコミが、そのように報じているからだ。米国のマスコミの多くはリベラル系だ。 (Most Americans Have Serious Doubts About The Official COVID Death Count: Axios-Ipsos Poll) 共和党系の新聞であるWSJはさいきん「コロナは実のところそんなに大それたウイルスでないとわかってきたのに(中道派とリベラル派の)マスコミはコロナを過剰に恐ろしいものと喧伝する恐怖戦略の第3弾をやっている」という社説を掲載した。WSJによると、恐怖戦略の第1弾は「EUを離脱したら英国は経済崩壊する」で、第2弾は「トランプが当選したら米国は崩壊する」で、いずれの恐怖戦略も失敗した。「コロナは実のところそんなに大それたウイルスでない」!!。よくぞ言った。WSJや共和党右派はえらい。今の時点でこんなことを大手紙が社説で書けることが米国の底力だ。米国の本質は左派(リベラル、民主党)でなく右派(保守、共和党)にある。 (The Coronavirus and Project Fear 3.0) イラク戦争後、共和党はネオコン(親軍産のふりした反軍産)にとられてしまったので、軍産はリベラルと結託している。コロナ危機を扇動しているのは軍産リベラルだ。日本は軍産リベラルの傀儡国だ(安倍は、隠れ反軍産のトランプの個人的傀儡だが)。戦後の日本の知識人は全員がリベラル系(しかも小役人だし、うっかり軍産傀儡)なので、日本人は対米従属のくせに永久に米国の本質を理解できなかった(コロナで米国覇権終了で間もなく対米従属も終わるけど)。 コロナ危機の前に「地球温暖化問題(温暖化人為説)」というのがあった。あの問題も、米国ではNYTやCNNなどリベラル系のマスコミが人為説を過剰に喧伝していた。気候変動の最大の原因は人為の石火燃料の燃焼でなく、太陽の活動の変化だ。軍産リベラルは、それを人為だと歪曲してきた。WSJは人為説の詐欺性を書き続けてきた。正しい。温暖化問題は、コンピュータのモデル計算でのシミュレーションによって「正当化」されてきた。コロナ危機での死者数の予測と都市閉鎖策の効果も、英国政府に雇われた専門家であるインペリアル大学のファーグソン教授らが作ったシミュレーションが根拠になっている。温暖化問題とコロナ危機の歪曲の手口は似ている。 (歪曲が軽信され続ける地球温暖化人為説) だが事態は「歴史は繰り返す」の下の句だ。温暖化人為説のシミュレーションはインチキとばれるまで何年か権威を持っていたが、コロナ危機のシミュレーションは、作られてから2か月もしないうちにコード的にインチキだと指摘され、早々と権威を失った。ファーグソン自身、先日コロナに感染して自宅療養中に人妻の不倫相手を家に呼び込んでいたことが発覚し、政府顧問を辞めた。まさに喜劇だ。ホッケーの棒とかも喜劇だったけど。 (Computer Model That Locked Down The World Turns Out To Be Sh*tcode) (Exclusive: Government scientist Neil Ferguson resigns after breaking lockdown rules to meet his married lover) コロナ危機は世界経済を全停止させているが、地球温暖化問題も、うまく人類を騙せていたら、温暖化対策として世界の燃料使用を強制的に減らし、世界経済を減速・縮小させていたはずだ。コロナと温暖化は軍産リベラル系の同じ勢力が扇動しているので、同じ目的を持った戦略っぽい。両者に共通する「目標」は、世界経済を長期間(数年間とか)の縮小に追い込むことだ。これによって、世界の政治経済の体制を大転換する意図でないかと思われる。世界を転換する戦略として、コロナの方がはるかにうまくいっているので「前のバージョン」のうまくいかなかった戦略である温暖化問題は、もうやらないことにした。そんな感じだ。 (地球温暖化問題の裏の裏の裏) WSJはコロナ危機を扇動された「恐怖戦略」と看破したが、世の中の多くの人々は歪曲報道を軽信してコロナに怯え上がり、政策に対してものすごく従順になっている。恐怖戦略は大成功している。英国では国民の9割が、政府に都市閉鎖を延長してもらいたいと思っている。経済の即時再開を望んでいる人は4%しかいない。また英国民の50%は、政府が生活費をくれるなら、このまま仕事が再開されなくても構わないと思っている。少し前までリベラル左派の妄想だったUBIとかMMTの実現まで、あと一歩のところまで来ている(財源が中央銀行群のQEしかなく、QEの恒久化が可能だと思えないので、結局のところ社会主義と同様、人類を巻き込んだ妄想なのだが)。世界をUBIやMMTに追い込む「究極の社会主義革命」が温暖化問題とコロナの目的だったのか??。左派的すぎる感じがする。 (Poll Finds That 9 Out Of 10 Brits Want Lockdown To Carry On) (人類の暗い未来への諸対策) コロナによる「医療崩壊の危機」が喧伝されるが、これも簡単に歪曲できる事象だ。病院はもともと中に入るためのセキュリティが厳しい場所で、それがコロナ危機によってさらに厳しくなった。誰も、国内のすべての病院の病棟を見まわって医療崩壊しそうかどうか確認できない。軽症者を入れる病院代替のホテル群の部屋の埋まり具合も発表されていない。しかも、もともと都市閉鎖政策をやる最大の理由は各国とも、集団免疫を意識しつつの「医療崩壊の回避」(感染が拡大していくこと自体は止められないが、それを遅延させることで医療崩壊を防ぐ)だったのが、いつの間にか「感染拡大を減らすこと」自体が都市閉鎖の目標になっている。この転換は愚鈍だ。都市閉鎖で感染拡大を減らしても、都市閉鎖をやめたら感染が再拡大する。この事態はすでに韓国やドイツで起きている。 (When Governments Switched Their Story From "Flatten The Curve" To "Lockdown Until Vaccine") (集団免疫でウイルス危機を乗り越える) 今のように集団免疫を無視する場合、永遠に断続的な都市閉鎖が必要になる。実際には都市閉鎖をやっても2-5年で集団免疫に達し、都市閉鎖をやめても感染拡大しなくなる。結局のところ、集団免疫しか最終着地点はない。ワクチン開発に2-5年かかるとして、集団免疫がこっそり達成されるころにワクチンが完成する。無意味だ。そのころには長期間の経済停止によって世界経済が破綻し、世界で10億人ぐらいが貧困層に転落している。都市閉鎖は愚策だ。集団免疫について、感染しても免疫の期間が不明だと批判されるが、それならワクチンの効果の期間も不明だから同じことだ。集団免疫を阻止したいリベラルのマスコミはコロナ感染者の免疫期間が短いに違いないみたいな書き方をしているが、それだけに実際の免疫期間は意外と長いのでないかと思う。大学も、米国のジョンズホプキンスとか、コロナの恐怖をあおっているところは、研究機関のふりをしたプロパガンダ機関である。 (It could take TWO MILLION deaths across the US to reach herd immunity says political scientist at Johns Hopkins) リベラル系のマスコミは「報道より多くの人が病院に行けず、在宅のままコロナで死んでいる」と報じ、多くの人がそれを軽信している。実のところ、在宅での死者が増えたのは都市閉鎖政策が原因だ。英国では年初来の自宅での死者数が過去5年間の平均より8196人多いが、そのうちの6546人がコロナ以外の死因だという。80%がコロナ以外の死だ。死亡の前後にPCR検査して感染が確認されたら、主な死因が何であれコロナによる死亡と診断される可能性が世界的に高いので、実際のコロナ以外の自宅での死亡はもう少し多いだろう。90%とか。イタリアでも同様の傾向と報じられている。たぶん世界的に、在宅のまま死んでいる人のほとんどはコロナでない。都市閉鎖にせいで、コロナ以外の持病か悪化したのに病院に行けず、治療を受けられずに死んでしまった人が、世界的に、コロナによる(主な死因がコロナである)真の死者数よりはるかに多いはずだ。それなのに、人の命を大事にするはずのリベラルな人々は、歪曲された話を軽信している。 (Thousands Of Brits Are Dying At Home Due To The Lockdown) 今回はリベラル派をいろいろ批判したが、実のところ軍産やリベラルは、コロナ危機の「被害者」だ。コロナ危機の今のような展開にした「犯人」は、軍産リベラルになりすました隠れ多極主義者、ネオコンとかトランプ系の勢力だ。トランプはすでに諜報界・軍産リベラル(マスコミ、民主党)との戦いに勝ち、米国の諜報界・軍産を乗っ取っている。トランプ系は乗っ取った軍産リベラルに、犯人であるかのように演じさせつつ、コロナ危機を今のような展開に持ち込み、都市閉鎖によるグローバリゼーション=米国覇権体制の自滅、QEによるドルの破綻への道を作っている。これは最近のいつもの結論だ。話が長くなったので、このあたりでいったんやめて配信する。歪曲されたコロナ危機はまだまだ何年も続く。先は長い。
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