米覇権への見切りとトルコのクーデター2016年7月22日 田中 宇前回の記事では、6月23日の英国民投票がEU離脱を決めた後、EUやドイツが、EUをNATOや米国から自立させる軍事統合を進める計画を、相次いで発表したことを書いた。これまで英国は、EUの内部にいてEU軍事統合を猛反対し、阻止し続けることで、EUを米英主導のNATOの傘下に軟禁してきた。だが、英EU離脱の可決とともに、EUに対する英国の影響力が激減し、そのすきにEUがドイツ主導の軍事統合を加速した。 (英離脱で走り出すEU軍事統合) 軍事政策はどこの国でも、国家存続の根幹にかかわる重要事項だ。国家間の軍事統合は時間のかかる、慎重さが必要なデリケートな事業だ。たとえば日本は最近、オーストラリアから潜水艦の受注を画策し、豪州はそれを潜水艦部門での日豪軍事統合の始まりとして検討したが、豪州は結局、日本が中国敵視に傾きすぎており、バランス重視の豪州の対中国戦略と相容れない(豪州が日本の対中戦争に巻き込まれかねない)ため、日本に潜水艦を発注するのをやめた。EUの軍事統合も、簡単に進まないのでないかとの疑問が湧く。 (潜水艦とともに消えた日豪亜同盟) だが現実を見ると、すでにドイツは、隣国オランダとの2国間の軍事統合をかなり進めている。ドイツとオランダは、EUが統合を始めた直後の93年から陸軍部隊の統合を開始し、すでにオランダ陸軍の3つの旅団のうち2つがドイツ陸軍に統合されている。逆に海軍では今年から、ドイツ海軍の一部がオランダ海軍の部隊の中に編入されている。 (I. German/Dutch Corps From Wikipedia) (Germany and the Netherlands sign Joint Support Ship LOI) 戦後の西ドイツ軍は、ソ連軍の地上からの侵攻を念頭に作られ、戦車部隊を中心に陸軍が大きい半面、海軍が小さく、特にドイツが海上から外国に上陸侵攻する機能がない(これも英国の策?)。半面、オランダ軍は比較的大きな軍艦(Karel Doorman)を13年に作ったが、使いこなせていない。両国のこうした特色を生かし、オランダは戦車を買わず、ドイツ軍の傘下に入って独蘭合同の戦車部隊を構成する一方、ドイツ海軍は軍艦を最小限に抑え、オランダの軍艦部隊に入るかたちで、陸海の相互乗り入れをやっている。冷戦後、独蘭両国はNATO傘下で海外派兵する機会が増えたが、ドイツ海軍は海外派兵に使える輸送艦が足りないので、オランダと軍艦を共有するのが得策となっている。 (Germany Is Taking Over the Dutch Army) (German Armed Forces To Integrate Sea Battalion Into Dutch Navy) 独蘭の軍事統合は、相互乗り入れとはいえ、大国ドイツが小国オランダを軍事的に併合する観がある。オランダはナチスドイツに侵攻された過去もあり、軍事統合に抵抗感もあるが、懸念を超えて統合が実施された背景には「財政問題」がある。オランダは、戦車を買わずドイツのを使わせてもらえる上、軍艦の運用費の一部をドイツに出してもらい、政府財政上、かなり助かっている。ドイツはカネでオランダを釣って軍事統合を進めている。 (German and Polish Armies Agree to Closer Cooperation) こうしたやり方を見て、ドイツの隣国であるポーランドとチェコが、軍事統合をぜひ進めたいと、列をなしてドイツに頼みに来ている。ポーランドもチェコもドイツ軍に占領された歴史を持つが、そんな過去の懸念より、今のカネ(政府財政)の話の方に目を奪われている。ドイツとポーランドは14年に陸軍の統合協定に調印し、両国間で統合司令部を作っている。今年6月末には、両国の潜水艦部隊を統合していくことで合意している。ドイツとロシア圏にはさまれたポーランドは、冷戦後、遠くの米英に頼って独露両方を牽制する国策をとっていたが、今やドイツの軍門に下ることを決めている。 (Polish and German Navies Decide Historically Unique Submarine Cooperation) ドイツのライエン防衛相は、オランダやポーランドとの間で成功している軍事統合のやり方を、EUの他の国々との軍事統合にも広げることで、ドイツ主導のEU軍事統合を短期間で進める計画を発表している。独蘭の合同戦車部隊や、独ポーランドの潜水艦部隊に他の諸国も参加するかたちで、2国間の軍事統合を多国間に拡大していこうとしている。「ドイツがカネを出す」という点が、他の諸国を引きつけている。ドイツは、2021年に、独蘭戦車部隊を拡大発展させてEU統合戦車部隊として発足させる計画を進めている。 (Germany Is Taking Over the Dutch Army) ("Revolution" in the Cooperation Between the Polish Army and the Bundeswehr) EUには、これまで英軍産NATOに阻止されて機能していなかった独仏合同旅団もあり、これも近いうちに息を吹き返しそうだ。フランスやオランダでは、EUの国家統合に反対する右派政党が拡大しており、今後それらが政権をとり、EU軍事統合を拒否し、ドイツとの統合から抜けて、独自の自国軍を再生することがあり得る。だが、独自軍の再生には巨額の政府支出がかかる。景気が悪い中で、それに踏み切るのは難しい。誰が政権をとっても、軍事統合の傾向が続くの出ないかと予測される。軍事統合が進むと、外交安保戦略の統合も進み、EU解体の可能性が減る。 (英国が火をつけた「欧米の春」) ▼トランプ的な英国の新外相 EUの軍事統合は、これまで主に英国によって阻止されてきた。そのことは、ドイツの防衛相も明らかにしている。だが今、軍事統合を主導するドイツのメルケル首相は、英国に対し、EU離脱の過程をゆっくり進めてかまわない(その代わり、確実に離脱してくれ)と表明している。先日、英国のメイ新首相が初の外遊先としてドイツを訪問し、メルケルからそのように言われ、EU離脱の手続き開始(リスボン協定50条の申請)を来年まで延期することにした。メルケルは、英国に対して余裕ある態度をとりつつ、英国が猛反対していた軍事統合を進めている。このことからは、英国がすでにEU中枢での国家統合加速の話し合いに口出しできなくなっている状況がうかがえる。EUに対する英国の立場は非常に弱くなった。 (Merkel offers May breathing space on invoking Article 50 divorce clause) (Britian not to begin talks on leaving EU in 2016: May) 英国はこれまで、EUの軍事統合を阻止してNATO傘下に貼り付ける一方、米国の好戦派と連携してNATOのロシア敵視策を主導してきた。だが、今後の英国は、EUに対する影響力を失っただけでなく、ロシア敵視策や、米国の好戦派(軍産)との連携すらやめてしまう可能性がある。それは、メイ新首相が、外相にボリス・ジョンソンを選んだことからうかがえる。この人事には、欧米の外交専門家の多くが驚いている。 (Boris Johnson is foreign secretary: The world reacts) (Europe stunned as UK's `jester' Boris becomes top diplomat) ('Outrageous' and 'a liar' – Germany and France lead criticism of Boris Johnson) 英保守党のジョンソンは今回、国民投票に際して離脱派を率いて有名になったが、彼の特徴はそれだけでない。彼は、昨年末に「ISIS(テロリスト)を潰すため、欧米は、シリアのアサド政権と、アサドを助けてきたロシアに対する敵視をやめて、アサドやプーチンと力を合わせてテロと戦うべきだ」と主張する論文を英国の新聞に載せ、それ以来、ISISを潰すためにアサド政権を敵視でなく支援すべきだと何度も言っている。この姿勢は、アサドとプーチンを敵視し(ISISをこっそり育て)続ける好戦的な米国を全面支持する、これまでの英国の姿勢と真っ向から対立する。当然ながら、英米の軍産系の勢力はジョンソンを外交に無知な頓珍漢な奴と酷評している。 (Let's deal with the Devil: we should work with Vladimir Putin and Bashar al-Assad in Syria) (Boris Johnson's Position on Syria Is a Problem for the UK) 外相になったからといって、ジョンソンの考え方がそのまま英国の国家戦略になるわけではない。ジョンソン自身が外相になった後で態度を変える可能性もある(もともと口が悪い彼は、多方面から「うそつき」呼ばわりされている)。だがジョンソンは、外相になった後の演説で「ロシアとイランが影響力を行使すれば、シリアの停戦を実現できる」と述べ、ロシアとイランとアサド政権によるシリアの安定化を良いことと評価している。これは従来の米英の好戦策と一線を画している。ジョンソン自身は変わっていないようだ。 (UK Foreign Secretary Urges Russia, Iran to Influence Syria) (Johnson: Syria faces `terrible humanitarian catastrophe') 英国がEU離脱を決めた後、あちこちの分析者から「今後の英国は、EUと離れることによるマイナスを、中国やBRICS、新興市場諸国との関係強化で穴埋めしようとするのでないか」といった見方が出ている。英国がBRICSと関係を強化するなら、米国の好戦策から離脱し、ロシアと和解することが必須だ。ジョンソンの姿勢は、奇しくもこの線に沿っている。 (Will Boris Johnson end the special U.S.-U.K. relationship?) (Positive prospect for Iran-UK relations after Brexit) (外れゆく覇権の「扇子の要」) 英国などのメディアは「メイ首相がジョンソンを外相に選んだのは、EU離脱派の頭目だった彼を何らかの要職につける必要があったからだ(外交姿勢を評価したからでない)」と解説している。だが私は、メイの思惑はもっと深く、無頼漢のジョンソンを好きなように振舞わせることで、英国を親米軍産から離脱させ、BRICSと親しくする多極化対応の外交へと転換させようとしているのでないかと分析している。 (`Boris Johnson could break UK attachment to Washington's neocon foreign policy') (中国の知恵袋として再就職したい英国) EUは英国と別れたとたんにNATOからの自立につながる軍事統合を加速し、長期的に米国と疎遠・ロシアと親密になる方向に動き出した。そして英国も、よく見ると、EUと別れたとたんに、長期的に米国と疎遠・、ロシアと親密になる方向に動き出したように見える。EUと英国は、別れたくせに、その後、同じ方向に歩き出している。 新聞記者あがりのジョンソンは新聞に定期コラムを持っている。彼は、自分の髪型がドナルド・トランプに似ていることに触れ「この前NYに行ったら、トランプがいるわと通行人に言われた。彼が大統領になると間違えられることが増えそうで困る」と冗談ぽく書いている。私から見ると、2人が似ている最大の点は髪型でなく、「政治的正しさ」を無視した差別的な無茶苦茶でひどい発言を乱発しつつ、軍産主導の米国覇権体制を内側からぶち壊して世界を多極化していく国際政治上の無頼漢ぶりにある。2人の台頭は、多極化人為説(隠れ多極主義)を感じている私から見ると「歴史的必然」だ。ジョンソンの発言は「オバマは半分ケニヤ人だから英国に恨みがある(ケニヤは米国の元植民地)」など、けっこう笑える。 (Boris Johnson: an undiplomatic history) ▼対米自立に使われるトルコのクーデター もう一人、無茶苦茶な発言を発しつつ、軍産主導の米国覇権をNATOの内側からぶち壊し、世界を多極化していきそうな人が、欧州の近くにいる。それはトルコのエルドアン大統領だ。ジョンソンは5月、エルドアンが山羊と獣姦する五行詩を発表して英国の「エルドアン中傷コンテスト」で優勝したが、トルコ政府はジョンソンを批判していない。ジョンソンはオスマントルコ帝国の内相の曾孫にあたるが、それが理由ではないだろう。ジョンソンとエルドアンは、ほとんど同じ穴のむじなである。 (Turkey's Curious Silence On Boris Johnson's Insulting Erdogan Poem) (Turkey Distances Itself From the U.S. and NATO - But to what extent?) トルコでは7月15日にクーデターが発生した。エルドアンらトルコ政府は、発生直後から「ギュレンのしわざだ」と言い続けている。ギュレン(Fethullah Gulen)は穏健派のイスラム指導者で、99年に当時のトルコの世俗主義(反イスラム、親欧米)の政権から弾圧されて以来、米国に亡命している。民主主義を評価してトルコの世俗主義(ケマル主義)と折り合いをつけつつ数学や科学の教育に力を入れるギュレンの活動(Hizmet)は、トルコの知識層に支持され、トルコの役人や軍隊、学界、法曹界、マスコミなどで支持者が増え、一時はトルコを中心に20万人がギュレンを支持していた。 (Fethullah Gulen From Wikipedia) (Turkey's coup: The Gülen Movement, explained) (Gulen movement From Wikipedia) エルドアン自身、00年にトルコの政権をそれまでの世俗派から奪い、今に続く与党AKPの穏健イスラム政権を作ってしばらくの間は、ギュレン派との関係が良かった。だが、13年末の汚職スキャンダル後、エルドアンは、ギュレン運動が秘密結社的な信者網を作ってトルコを隠然と支配していると主張し、ギュレンとその信奉者を非難・弾圧するようになった。ギュレンの教団は米国でも100以上の私立学校を運営し、米当局との関係が良いので「米国CIAはギュレンと結託してトルコを牛耳っている」という批判が、トルコの与党筋から出るようになった。エルドアンは、ロシアと仲直りした後「露軍機を撃墜したトルコ軍機のパイロットはギュレンの支持者だった」と、味噌糞で全部ギュレンのせいにしている。 (Erdogan: Link Between Pilots Who Shot Down Russian Su-24 and Gulen Movement) エルドアンの権力が強化される中で、ギュレン派はすでにかなり弾圧され縮小しており、今回のクーデターがギュレン派の仕業であるかどうか疑わしい。トルコの軍部は伝統的に世俗主義で、イスラム主義のエルドアンは、政権に就いた当初から軍部にいろいろな濡れ衣を着せて無力化してきた。エルドアンは前から軍を詳細に監視しており、クーデターの兆しを察知できたはずだ。むしろエルドアンは、事前にクーデターの準備を察知したが意図的に放置し、稚拙で小規模なクーデターが失敗に終わるよう誘導し、事後の大弾圧をするのが当初から目的だった可能性がある。もしくは、エルドアンの側から軍内にエージェントを送り込み、クーデターを誘発した可能性すらある。 (Turkey's failed coup attempt was false flag operation: Analyst) (Turkey May Be Expelled From NATO) (Turkey coup: Conspiracy theorists claim attempt was faked by Erdogan) 今回のトルコのクーデター騒ぎで重要な点は、これがトルコと米国の関係を同盟から敵対に転換させていきそうなことだ。クーデター後、トルコ政府は米政府に対し、ギュレンをトルコに送還するよう、公式に要求している。しかも外交ルートで穏便に求めるのでなく、エルドアンがテレビの演説で、ギュレンをかくまう米国を非難しつつ、ギュレンを送還しないなら米国との関係が悪くなると、トルコ国民の前で米国に喧嘩を売った。 (Turkey Accuses US Of Being Behind Military Coup, Demands Extradition Of Cleric Gulen) しかもトルコ政府は、ギュレンがクーデターの首謀者である証拠を、米国に示せていない。米政府側は「要求でなく証拠を示してくれ。十分な証拠があれば、法に沿ってギュレンを送還する。このままだと両国関係が悪化する」と述べている。これがまたトルコを怒らせている。クーデターに参加した軍人の一部が、米軍も駐留するトルコ南部のインジルリク空軍基地にいるトルコ軍の部隊だったため、トルコの首相や閣僚が「米国にも責任がある」「クーデターは米国が起こしたものだ」と発言している。 (Kerry to Turkey: Send us evidence, not allegations on Gulen) (US slams Turkey's hint of US involvement in coup) エルドアンは、ギュレン犯人説が濡れ衣だと自覚した上で、あえて証拠も示さずに米国を黒幕呼ばわりして喧嘩を売っている。米国や欧州、NATOとの関係が悪化してもかまわない(悪化してほしい)と思っている。トルコの上層部には、欧米やNATOと親しくすべきだと考えている勢力がまだ強い。エルドアンは、クーデター騒動をきっかけに、米国や欧州との対立を激化させ、トルコの上層部に残っている親米派を一掃したい。 (Erdogan Unleashes Unprecedented Crackdown: Fires All University Deans; Suspends 21,000 Private School Teachers) その理由は、経済的、国際政治的に見て、米国の覇権体制が崩れ、代わりに多極型の世界体制が立ち上がっていくことが不可避だとエルドアンが察知し、トルコを多極型の新世界秩序における極の一つにしていくことを急がねばならないと感じているからだろう。それが、やらせ的なクーデター騒動の最大の意味だと私は分析している。エルドアンはクーデター後「トルコはロシアやイランと協力して周辺地域の平和を守りたい」とイランに伝えている。「ロシアやイランと協力して」という言い方は、多極型戦略を象徴している。 (Erdogan: Turkey ready to restore regional peace together with Iran and Russia) (英国より国際金融システムが危機) (金融を破綻させ世界システムを入れ替える) エルドアンは6月末、英国のEU離脱投票の直後にロシアと劇的な和解をしている。クーデター騒動の前に、トルコの多極化対応が始まっている。それ以前には、親欧米派の代表的存在だったダウトオール首相が、エルドアンの超法規的な辞任要求により、辞任させられている。それらの後に起きた、クーデター騒ぎをきっかけとした国内弾圧は、トルコ国内のギュレン派というより、もっと広範な「親米派」「欧米重視派」を無力化するための策だろう。 (欧米からロシアに寝返るトルコ) エルドアンの長期的な目標は「トルコをオスマン帝国時代のような大国、地域覇権国として再台頭させること」である。エルドアンは最近まで、米国の覇権に便乗して自国を大国化しようとした。だから米国が12年以来、シリアのアサドに濡れ衣をかけて政権転覆しようとした時、その策略に乗ってアサドを敵視した。だが米国は失敗し、シリアの支配権をロシアに与え、アサドはロシアと、それに協力するイランのもとで延命することになった。シリアで失敗したエルドアンは最近、米国覇権でなく多極化の流れに乗らないと大国になれないことを悟り、親ロシアに転じた。 (Putin May Be Turkey's New Buddy after the Failed Coup) (Syrian rebels stunned as Turkey signals normalisation of Damascus relations) だが、エルドアンが勘違いしてアサドを敵視していた4年間に、世界の多極化はかなり進んでいる。トルコが追いつくには、かなり急がねばならない。まずは早急に国内の親米派を一掃し、エルドアンの独裁力を強化しつつ、多極化に乗った国際戦略を進める必要がある。そのためのきっかけとして、今回のクーデター騒ぎが使われている。 (Putin's advisor: Ties with Turkey will be better than before) (U.S. Finds Itself on Shakier Ground as Erdogan Confronts Mutiny) このようにEUと英国、トルコは、たがいに離別したり敵対したりしているくせに、全員が、米国覇権の下にいることをやめて、多極化に対応する動きを開始している。この流れは全体として、しだいに冷戦終結よりも大きな動きになっていくだろう。冷戦終結は、米国の支配領域が世界の半分(西側)から全部になった動きだが、今回のは、その米国の世界支配が崩れ、BRICSなどいくつもの地域覇権国が立ち並ぶ、人類上初めての世界体制へと転換していくものだ。この動きは、03年のイラク戦争や08年のリーマン危機から始まっており、米国覇権の自滅期としてすでに10年以上だが、多極型世界の立ち上がりは、まだ始まったばかりで不透明だ。今後、長期的に、この動きが世界情勢の中心になっていくことは確かだ。 (POST-COUP TURKEY WILL BE DISTINCTLY EURASIAN)
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