他の記事を読む

米当局がエボラ危機を誇張する戦略?

2014年10月6日   田中 宇

 西アフリカで多数の罹患者や死者が出ているエボラ出血熱の問題について、米政府が、危機を意図的に扇動・誇張する策を採っているという指摘が、インターネット上で出ている。エボラをめぐっては、今春の早い段階から、米国の製薬会社が臨床試験を不十分にしか行っていない新薬の患者への投与をやりたがったり、米国防総省がエボラを「軍事問題」としてとらえたがるなど、政治力のある製薬業界や軍産複合体による不正な利権あさりの動きが目立っていた。エボラ自体が(エイズ同様)生物化学兵器として米当局が開発したものだという見方も以前からある。 (DoD may send personnel to Africa to help fight Ebola epidemic) (US Department of Defence Released This Bioengineered Airborne Ebola/Lassa Hybrid via Tekmira TKM-Ebola Human Trials in Sierra Leone) (Ebola, AIDS Manufactured by Western Pharmaceuticals, US DoD?

 米オバマ大統領は9月19日、エボラの拡大がアフリカだけでなく世界的な脅威になっているとして、脅威に対抗するため3千人の米軍兵士を西アフリカに派兵すると宣言した。西アフリカ諸国は国内に反政府武装勢力を抱えるところが多く、エボラの拡大が治安悪化や内戦再発につながりそうなのは確かだが、エボラ対策の中心は医師ら医療関係者であり、軍隊でない。米軍の介入は治安を改善せず、むしろ国内の敵対関係を煽り、内戦を悪化させる。 (Why is Obama sending military to attack the Ebola virus?

 別の方法で解決すべき問題を、無理矢理に軍事の問題にして米軍の利権拡大に使うやり方は、911以来の「テロ戦争」と共通している。テロ対策は軍隊でなく警察が行うべきものなのに、米政府はこれを「戦争」として扱い、アフガニスタンやイラクに侵攻して占領し、テロリストや反米武装勢力を逆に増やしている。米軍は08年にアフリカ司令部を新設し、アフリカに対する軍事介入を重視している。エボラ危機は、アフリカに介入したい米軍にとって格好の口実となっている。 (Militarizing the Ebola Crisis

 米政府は表向きエボラが米国内に入ってくることを止めるための策として西アフリカに軍事介入しているが、実のところ米国の入国審査体制は甘い。米国への入国者は空港の入国審査時に来たかを尋ねられない。9月末、西アフリカでエボラに感染したとされる人物が米国に入国し、テキサス州ダラスの親族の家に着いて発症して入院した後で、ようやく当局からエボラの疑いをかけられている。 (Do these ten pieces of evidence prove the U.S. government is actively encouraging an Ebola outbreak in America?

 しかも当局は、患者が住んでいたダラスの親族の家を何日もウイルス駆除せず放置した。当局は一応、患者の親族の感染を懸念し、親族に対し家から出ないよう命じたが、当局がウイルス駆除作業をしなかったため、不安に駆られた親族がそのまま家に住み続けることを嫌がり、当局の命に反してこっそり家を出てしまった。当局はダラスにエボラを蔓延させたいようだと批判されている。 (CDC and Texas Officials Allow Ebola to Spread in Dallas

 米当局が、自分の国にエボラを蔓延させるはずがない。私もそう思いたい。しかし米当局は911後、米国の治安を良くするテロ対策だと言って、米国内外で無実のイスラム教徒を無数に逮捕・虐待し(イラクなど国外では何十万人も殺害し)、米国に対する怒りを扇動し、米国自身を危険にしている。911直後には、何者か(当局筋?)が炭疽菌をばらまいたりしている。米当局は以前、麻薬を取り締まると言って、米国への麻薬の流入をむしろ増やす「麻薬戦争」を展開したりもしている。米当局は近年、事態を改善するための対策と称して、事態を悪化させる策をやることが多い。現場の担当役人は心から人々のためを思って献身的にやっているのだろうが、上層部に意図的な失敗を企てる勢力がいると疑われる。 (◆麻薬戦争の終わりと米国の孤立主義

 エボラウイルスは血液中に存在し、血液や唾液などを介してしか他人に感染せず、空気感染しないので、十分な対策をとれば感染は急拡大しないとされてきた。しかし、米政府から派遣されて国連のエボラ問題の責任者をしているアンソニー・バンベリーは先日「ウイルスが突然変異して、エボラが空気感染するようになるようになるかもしれない」と発言し、世界を震撼させた。 (The cdc & the un are forced to admit that Ebola is airborne

 英国の学者は、エボラが空気感染するには根本的な変異が必要で、その可能性はほとんどゼロだと述べ、バンベリーが無責任な誇張の発言をしていると批判している。米国の分析者の中には、バンベリー発言を重視する者もいるが、米政府(軍産など)がエボラ危機について誇張する傾向があることを踏まえると、バンベリーの発言も、米政府の誇張策の一つと考えられる。 (Suggesting Ebola will become airborne is 'irresponsible', say experts

 米国の諜報戦略や地政学に詳しいウィリアム・エングダールによると、西アフリカでのエボラの死者数としてWHOが発表している人数にも誇張が入っている可能性がある。リベリアでは千人以上がエボラで死んだとされるが、その69%は、実験室での血液検査でエボラが死因だと特定されておらず、マラリアや腸チフスなど他の病気で死んだ可能性があるという。米国の差し金で、WHOがエボラの死者数を多めに言っていることが疑われる。同様の誇張は、鳥インフルエンザ騒動の時もあったという。 (And Now, Ladies an' Gentlemen: Obama's `War on Ebola'…) (Official: U.S. military's response to Ebola hampered by lack of expertise with virus

 マスコミ報道によると、エボラのウイルスは、もともとアフリカの野生のコウモリなどが持っていたものを、野生動物の肉(ブッシュミート)を売る市場を経由して市民に感染し広がったとされる。この説が正しいなら、エボラのウイルスは人為と関係ない天然のものだ。しかし、米政府の疾病対策予防センター(CDC)は、今回感染が拡大したエボラウイルスの種族「ブンディブギョ種」について、07年からウイルスを保管しており、同種のウイルスを他のウイルスと掛け合わせるやり方について特許まで持っている。 (Human ebola virus species and compositions and methods thereof) (U.S. govt. preparing for massive Ebola outbreak across USA & Why does the CDC own the patent?

 ブンディブギョ種はもともと07−08年に、今回の発生地ギニアから3千キロ以上も離れたウガンダのブンディブギョ県で発症した。CDCはウガンダを訪問してウイルスを採取し、治療薬を作る目的で他種との掛け合わせを行い、そのやり方について特許をとった。今回、ブンディブギョ種が西アフリカで発症したことと、07年のウガンダでの発症との関係性は明らかでない。何らかの自然の摂理によってウイルスが3千キロを移動したのかもしれない。しかし、ウイルスの長距離移動が考えにくいことであるとしたら、CDCが持っている種が発症したという点が米当局の関与を疑う問題になってくる。今回発症したのは別の新種だという説もあり、全体として話が不確定だ。 (From martial law to big money: Five questions we're asking about the Ebola scare) (Study Finds West African Ebola Virus Is Previously Undetected "New Strain"

 ロシアでは専門家が「エボラは米国の生物兵器として開発された可能性がある」と言っている。こういった話をすべてヨタ話として一蹴することは簡単だ。潜在意識から対米従属的な日本人の心理として、米国の生物兵器が何らかの経緯でばらまかれてエボラ熱の発症になったという話は受け入れがたい。 (Top medical expert calls Ebola outbreak 'suspicious'; others cite use as bio-weapon

 しかし自作自演的な911テロ戦争、大量破壊兵器が不在だったイラク戦争、温暖化していないのに地球温暖化問題、米連銀のQEによる経済歪曲など、米国がらみのおかしな話がいくつも起きていることを考えると、エボラやエイズが米国の生物兵器であったとしても、あまり驚くべき話でなくなっている。むしろ、これらの灰色な話のすべてをヨタ話として一蹴する人が多いことの方が、国家の安全上の問題かもしれない。



田中宇の国際ニュース解説・メインページへ