イスラエルとシリアの和平交渉2008年5月2日 田中 宇中東ではここ数日、イスラエルとシリアとの和平交渉が進展している感じが強まっている。交渉は、トルコが仲裁している。イスラエルが1967年の第三次中東戦争でシリアから奪って占領しているゴラン高原を返還する見返りに、シリアは傘下に置いているヒズボラ(レバノン南部)とハマス(ガザ)という2つのイスラム武装勢力が南北からイスラエルを攻撃するのを抑止する構想だ。 仲裁担当のトルコからは、最近外相がシリアを訪問してシリア側と話をまとめ、次はトルコの代表が近くイスラエルを訪問する予定になっている。目下の問題は、シリアがイスラエルに対し「交渉に入る前に、ゴラン高原からの撤退を保証すると表明してほしい」と求めていることだ。シリア人はイスラエルを憎悪している。シリア政府が自国民を説得して交渉に入るには、このぐらいの前置きが必要ということである。(関連記事その1、その2) イスラエルが弱体化させたいレバノンのヒズボラは、シリアだけでなく、イランの影響も強く受け、イランはヒズボラに軍事訓練を施している。イスラエルとイランは強く敵対したままの状態だ。だが、シリアのムアッリム外相は、先日イランの首都テヘランを訪問時に、イランのモッタキ外相と共同記者会見を行い、そこで「イスラエルが和解したいのなら、シリアは喜んで交渉に応じる」と発言した。シリア外相の発言がテヘランにおいて、イラン外相を横に置いて発せられたということは、シリアとイスラエルの和解には、イランも賛成していることを意味している。(関連記事) ▼テロ戦争に乗って失敗したイスラエル イスラエルとシリアが和解交渉する構想は、1990年代からあった。2000年には、トルコの仲裁によって和解交渉開始の一歩手前まで進んだが、当時のイスラエルのバラク首相が最後の決断をせず、交渉は見送られた。 当時、すでにアメリカでは、ウールジーCIA元長官らネオコンが「いずれイスラム過激派が米本土でテロを行う。米当局は防ぎきれない」といった発言を繰り返していた。米政府は1997−98年に、アフガニスタンのイスラム武装勢力タリバンの政権に対する支持(アフガンを安定させパイプラインを通す構想)を撤回し、タリバン政権に「ならず者国家」のレッテルを貼り、敵視に切り替えた。1997年から2001年にかけて、アメリカの世界戦略は「テロ戦争」の色彩を強め、911事件はその「仕上げ」だった観がある。 それまでシリアやパレスチナ(アラファト)との和解を模索していたイスラエルは、アメリカがテロ戦争をやりそうなのを見て、周辺のイスラム各勢力と和解するより、アメリカに潰してもらった方が良いと考えを改め、途中まで進めていたシリアとの和平を打ち切ったのだろう。(アメリカがテロ戦争の戦略を開始したというより、在米イスラエル右派勢力が頑張って米政界に食い込み、米政府にテロ戦争の戦略を採らせたと考えた方が良いかもしれない) 01年の911事件、03年のイラク侵攻を経て、アメリカの「テロ戦争」「中東民主化」は本格化し、シリアやイラン、ヒズボラ、ハマスなどのイスラム勢力は、いずれアメリカに潰される運命に見えた。しかしその後、米ブッシュ政権はイスラム敵視策を過激にやりすぎてイスラム世界全体を敵に回し、イラク占領はゲリラ戦の泥沼にはまり、アメリカの中東戦略は大失敗している。 ブッシュ政権は自国を失敗させただけでなく、イスラエルを窮地に陥れた。06年初めにはイスラエルの反対を押し切ってパレスチナで議会選挙をやらせ、反米反イスラエルの過激派ハマスが圧勝し、米イスラエルが交渉相手にしていたファタハは弱体化した。イラクでは、弱い勢力にすぎなかった反米のシーア派指導者サドル師を、米軍がことさら敵視した結果、サドルは反米の英雄として有名になり、今やイラクで最も強いゲリラ軍団を持っている。イランのアハマディネジャド大統領も、アメリカが過度に敵視した結果、中東全域で英雄視されている。ブッシュ政権は、表向きはイスラエルを強く支持しているが、実際にやっていることはイスラエル潰しである。(関連記事) ▼シリアと和解し、イランの策動を止める ブッシュ政権は05年ごろから「米軍はイラクで占領の泥沼に陥っているので、代わりにイスラエルがヒズボラやシリア、イランと戦争してくれ。援護するから」と何回も持ちかけ、06年8月にイスラエルはヒズボラと戦争したが、アメリカは大した援護をしなかった。アメリカに騙されていると気づいたイスラエル政府は、ヒズボラとの戦争開始から約1カ月後に何とか停戦にこぎつけた。だが、国際社会でのイスラエルのイメージは大きく悪化し、中東の世論はイスラエル敵視の度合いを一気に強めた。ヒズボラはイスラム世界で英雄となった。(関連記事その1、その2) その後も、イスラエルの右派(野党リクード右派)は、ブッシュ政権(特にチェイニー副大統領)と結びついてイスラム敵視を続け、イスラム側との停戦や和解を進めたいイスラエル政府(オルメルト政権、中道派・現実派)を阻止する動きを展開した。米イスラエルの右派と、イスラエルの中道派との暗闘は続き、イスラエルとイスラム側(イラン、シリア、ヒズボラ、ハマス)との関係は、戦争の扇動と回避の両方の方向性が交錯し続けた。(関連記事その1、その2) 昨年6月には、パレスチナの半分であるガザで、反米のハマスが、親米のファタハを追い出して政権をとった後、ハマスとイスラエルが戦争になり、それがイスラエル北方のレバノン(ヒズボラ)やシリアとの戦争に飛び火する可能性が強まった。イスラエルは、戦争を避けるため、再びトルコの仲裁によってシリアとの和解を模索するようになった。(関連記事その1、その2) ハマスとヒズボラは、石油やガスの収入があるイランから支援されて軍備を増強しているが、ハマスもヒズボラも、イランとの連絡はシリアを経由している。シリアがイスラエルと和解すれば、ハマスやヒズボラに代理戦争させてイスラエルを潰したいイランの画策は阻止できる。 だが、イスラエルから和平を持ち掛けられたシリアは「イスラエルだけでなく、アメリカも同席するなら交渉に応じる」「先にイスラエルがゴラン高原を返すなら交渉に応じる」と言ってきた。米ブッシュ政権はシリアを敵視し、むしろイスラエルとシリアを戦争させようとしてきたから、アメリカを交渉の席に引っぱり出すのは無理だった。ゴラン高原の返還には、イスラエル国内の右派が猛反対だった。(関連記事その1、その2) ▼緊張関係の背後で交渉模索 イスラエルのオルメルト首相は昨年7月、シリアに向かって「アメリカの仲介を期待せず、直接交渉しよう」と呼びかけた。しかしシリアのアサド政権は現在まで、アメリカ抜きでイスラエルと和解するのを拒否している。中東で最も嫌悪されるイスラエルと和解したら、シリア内外の世論はアサド大統領を裏切り者扱いし、イスラム主義勢力が国内で反乱を起こし、政権が転覆されかねない。それを防ぐため、アサドはイスラエルだけでなくアメリカとの和解も同時に実現し、欧米に経済制裁を解除させ、国際社会への復帰を成し遂げ、シリアの経済と国際的地位を上向かせることで、国民の反感を抑えたい。(関連記事その1、その2) イスラエルをシリアやヒズボラと戦争させたい米ブッシュ政権は、イスラエルとシリアの交渉を潰そうと画策した。その一つが昨年9月、イスラエル空軍機にシリアを空爆させることだったと思われる。空爆の経緯は機密のままだが、イスラエル政府が空爆について報道官制を敷いて沈黙した半面、米政府筋やネオコンは「空爆対象は作りかけの核兵器用原子炉だった」と、証拠もほとんど示さず言いふらし続けた。(関連記事その1、その2) 以前の記事に書いたように、シリアが核兵器を開発しているという米政府の諜報分析はでっち上げの可能性が高い。推察するに、ブッシュ政権はイスラエル空軍機にシリアの施設を爆撃させ、シリアとイスラエルの仲を裂こうとしたのだと思われる。イスラエル政府や軍の内部には、右派が多く入り込んでいる。米政府から「シリアが建設中の原子炉を空爆してくれ」と言われ、中道派のオルメルト政権中枢は、アメリカの情報の根拠や真意を疑ったが、政府内の右派から「空爆しなければアメリカとの関係が絶たれる」と突き上げられ、空爆せざるを得なかったのだろう。 昨年秋には、イスラエルでロシア系の大金持ちが右派の頭目ネタニヤフ(リクード党首)に巨額献金してテコ入れしたり、イラクで米軍が親米ゲリラに渡したはずの膨大な武器が、シリア経由でレバノンに密輸され、イスラエルの敵であるヒズボラに流れたりして、好戦的な形勢作りも進んだ。(関連記事その1、その2) 今年に入って緊張感はさらに高まり、4月上旬にイスラエルが建国以来の大規模な軍事演習を行った際、演習に紛れてヒズボラに本物の戦争を仕掛けるのではないかとの見方が中東などで広がり、演習中にはイスラエル政府の右派の閣僚らが「イランを潰す」と発言するなど一触即発の雰囲気となった。私は開戦を予測したが、実際には戦争は起きなかった。イスラエルは水面下でシリアとの予備的な和平交渉を開始しており、一触即発の軍事演習は、シリアを威嚇して交渉を有利にするためか、もしくはアメリカに対する目くらましだったようだ。(関連記事その1、その2) ▼異例な「もうすぐ和平」の感じ 米ブッシュ政権は、イスラエルをイスラム側と戦争させて自滅させたい。イスラエルは、その罠から逃れるため、イスラム側の中で最も和解しやすいシリアと和解したい。だがイスラエルは、軍事・経済・外交の全面でアメリカの支援に頼って国家存続しているので、アメリカの反対を押し切ってシリアとの和解に踏み切ることはできない。またイスラエルにとっては、自国だけが戦争に入ると破滅だが、アメリカがイランやシリアを戦争で潰し、イラクのように軍事占領してくれるのなら、和平よりそっちの方が好都合だ。 そのためイスラエルは、表向きはアメリカと歩調を合わせ、今にもシリアやイランを攻撃しそうな雰囲気を醸しつつ、裏ではシリアとの和平を模索してきた。世界の報道界を主導する米マスコミを操る力は、米政府だけでなくイスラエルも持っている(米マスコミにはユダヤ系が多く、シオニストもかなりいる)。中東情勢に関する世界のマスコミ報道は、戦争と和平の両方のプロパガンダが交錯し、何が事実か見極めが難しい状況が続いている。(関連記事) 4月上旬のイスラエルの軍事演習でシリアやヒズボラとの緊張が高まったものの開戦しなかった後、4月下旬になると、今度はシリアとイスラエルが和平交渉をしているという話が流れてきた。ここ2−3年間、シリアとイスラエルの両方が、断続的に和平の意志を表明していたが「もうすぐ和平が実現するかもしれない」と感じられる状況は、今回が初めてだ。「もうすぐ戦争」は何度もあったが「もうすぐ和平」はなかった。 今回の和平話も、イスラエルが醸し出す幻影なのかもしれないが、今回の話が異例である一つの点は、アメリカが長年イスラエルに課してきたシリアとの交渉禁止を撤回したことだ。4月29日、アメリカ・ユダヤ委員会(American Jewish Committee)の年次総会に出席したライス国務長官は「シリアとイスラエルが和平を求めるのなら、アメリカは決して和平には反対しない」と述べた。米シンクタンクの研究者は「(シリア・イスラエル和平交渉に対する)アメリカの政策は、赤信号(反対)から黄信号(容認)に変わったが、まだ青信号(支持)ではない」と述べている。(関連記事) 北朝鮮がシリアに核兵器技術を供与したという話をでっち上げていることなどから考えて、ブッシュ政権はまだ本心では、イスラエルがシリアと和解して国家存続することを何とか阻止したいと思っている。それにも関わらず、米政府がイスラエルとシリアとの和平を容認する姿勢を見せ始めたということは、和平交渉は幻影ではなく、本当に交渉に入りそうな段階に来ていると考えられる。交渉開始後も反対し続けると、米議会などで「ホワイトハウスは中東の平和を望まないのか」と批判されかねない。 ▼北朝鮮を使ってイスラエルの和平を潰す イスラエルとシリアは、3月から4月にかけて水面下で和平交渉への準備を進めたと思われるが、この時期はちょうど、ブッシュ政権が北朝鮮に「シリアに核兵器技術を供与した」と認めさせる買収工作を行った時期と重なっている(4月8日のシンガポールでの米朝交渉で買収話がまとまった)。 北朝鮮からシリアへの核供与は事実ではなく、アメリカがでっち上げた話を北朝鮮に認めさせることで、事実であると見せかけている。おそらくブッシュ政権は、シリアとイスラエルの和平交渉を阻止するため「北朝鮮がシリアに核技術を供与し、イスラエルはシリアの建設途中の原子炉を空爆した」という話を蒸し返したのだろう。(関連記事) 米政府は4月30日に発表した2007年度のテロ支援国家リストから北朝鮮を除外しなかったが、韓国の朝鮮日報は、5月中に北朝鮮が核事業の廃棄開始を宣言し、それを受けて米政府は北朝鮮をテロ支援国家リストから除外するだろうと書いている。国交正常化を準備するためワシントンと平壌に相互の連絡事務所を置く構想も出てきた。(関連記事その1、その2、その3) 同時に米議会は「米政府が北朝鮮をテロ支援国家リストから外す場合は、事前に議会で詳しい説明を行わねばならない」という新しい法律(新条項)を作るべく動いている。米議会がこのような抑止的な動きをするということは、米政府は本気で北朝鮮をテロ支援国家リストから除外するつもりだろう。(関連記事) ブッシュ政権は、でっち上げによってイスラエルとシリアの和解を阻止し、でっち上げに協力する北朝鮮には、制裁解除という「ご褒美」を与えようとしている。イスラエル潰し(イラン強化)と、北朝鮮(とその後見人の中国)への優遇を同時にやるのは、米英イスラエル中心の世界システムを壊して世界を多極化しようとするブッシュ政権の戦略の一環に見える。 ▼和平交渉の目的は米政権交代までの時間稼ぎ イスラエルとシリアの和平は実現するかどうかまだわからないが、かりに実現しても、中東における敵対関係に大した変化をもたらしそうもない。 イスラエルは、シリアにゴラン高原を返す見返りに、シリアからヒズボラ、ハマスへの援助を止め、シリアとイランの関係を切ろうとしているが、イスラエルの要求がかなう可能性は低い。シリアは、表向きヒズボラなどへの支援を停止し、イランとの関係を疎遠にするふりをするかもしれないが、非公式には支援や関係を続けるだろう。イスラエルはシリアを非難するだろうが、シリアは非難は事実無根だと言うだろう。イスラエルがシリアを制裁したければ戦争しかないが、イスラエルはそもそもシリアと戦争したら自滅だから和平交渉するのであり、戦争は不可能だ。 シリアにとっては、ほとんど失うものなくゴラン高原を得られる。シリアとイランの関係も実質的には失われないから、イランが和平に賛成するのは納得できる。イランはシリアにかなりの軍事経済支援を行っており、もともとシリアはイランとの関係を切れる状況にない。 イランのアハマディネジャド大統領は、イラク戦争後、中東全域で強くなったイスラエルへの憎悪に乗って、反イスラエル的な発言を繰り返し、イラン内外での人気を高めた。アハマディネジャドがイスラエルと和解したら、人気は失墜し、イラン人は彼の経済政策のひどい失敗を非難し、失脚させてしまうかもしれない。アハマディネジャドは、イスラエルと和解するわけにはいかない。イランを巻き込んだ和平はあり得ない。 イスラエルは和平してもイスラム側の敵対を崩せず、ゴラン高原を返還するだけ損なのに、何故にシリアと和平交渉をしたいのか。私が見るところ、イスラエルが得ようとしているのは「時間的猶予」である。 ブッシュ政権は「隠れ多極主義」で、米英イスラエル中心の世界システムを崩壊させる一環として、イスラエルに自滅的な戦争をやらせようとしている。だが来年1月にブッシュ政権の任期が終わり、次の政権になったら状況が変わるかもしれない。もっと素直にイスラエルの言いなりになる米政権ができる可能性がある。だから、それまでの約9カ月間、何とかしてヒズボラやハマスがイスラエルを攻撃してこないように時間稼ぎする必要がある。その時間稼ぎの方策として、イスラエルはトルコに仲裁を頼み、シリアとの和平交渉を準備しているのではないか。 和平交渉に入っても、実際に和平が締結され、ゴラン高原からイスラエルの軍と入植者が撤退するまでには、かなりの時間がかかる。その間、シリアはヒズボラやハマスにイスラエルを攻撃させないだろう。イスラエルは、ブッシュ政権の残りの9カ月間、ゆっくり交渉を進め、交渉の途中で次の米政権になったら、アメリカを和平に参加させるなどして、シリアに対してもっと強硬な姿勢に転じられる。もしくは、米軍にイランを潰させたり、レバノンやガザに米軍を駐留させてイスラエルを防衛させることも夢ではない。 ▼米大統領選挙を操る 米大統領選挙は、民主党でオバマとクリントンがぎりぎりの選挙戦を続けている。米政界に強大な影響力を持つイスラエル系の圧力団体が民主党のどちらかの候補を隠然と応援する見返りに、その候補は当選後にイスラエルのためにイランを潰す戦争をすることなどを誓うといった戦略があり得る。イランを潰せれば、シリアやヒズボラやハマスは後ろ盾を失う。(関連記事) もしくは、共和党のマケイン候補がイランとの戦争をイスラエルに誓った見返りに、イスラエル系の団体は民主党の側でオバマとクリントンの共倒れを誘発しているのかもしれない。すでに3人の大統領候補は昨年から、競って何度もイスラエル支持を公約しており、その卑屈な姿は哀れだ。イスラエルが大統領を決めるアメリカが民主主義のモデルとされているのは、現代世界の巨大な偽善の一つである。(関連記事その1、その2) 現在のブッシュ大統領は、2000年に当選する前に、イスラエルに対して「イラクに侵攻してフセイン政権を潰します」と約束し、当選後にそれを履行したと考えられる。イスラエルは今年、同じ戦略をやっている。約束を履行しなければ、イスラエル系の団体が米議会やマスコミを動かし、スキャンダルを大騒ぎに発展させて大統領を弾劾する。ウォーターゲート事件で辞任したニクソン(冷戦を終わらせようとした)や、モニカ・ルインスキー(ユダヤ系)との不倫で弾劾されたビル・クリントン(イラク侵攻を拒否した)の前例がある。パパ・ブッシュはイスラエルに和平を強要したので再選を阻まれた。 とはいうものの、イスラエルは現ブッシュ政権にイラク侵攻を約束・挙行させて安泰になるはずが、ブッシュ政権の「政権転覆の約束を過剰に挙行する」という隠れた戦略によって、逆にイスラエルは窮地に陥れられている。次の米大統領が誰になるにしても、イスラエルがその人物に何を約束させたとしても、結果はイスラエルの思い通りにならないかもしれない。 イスラエルがシリアと和平交渉に入り、ヒズボラやハマスがイスラエルを攻撃するのを延期させても、まだブッシュ政権にはイスラエル潰しの次の手がある。それは、アメリカ自身がイランの核施設などを空爆し、イランが報復的反撃をイスラエルに対して行うように仕向けることである。中東の緊張は、まだまだ続くと予想される。
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