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「Hotwired Japan」田中宇インタビュー(1999年10月?)

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「Hotwired Japan」の田中宇インタビュー(1999年10月?)

投稿者 天空橋救国戦線 日時 2006 年 11 月 23 日 07:53:52: ZtsNdsytmksDE
http://www.asyura2.com/0610/hihyo4/msg/142.html
http://hotwired.goo.ne.jp/bitliteracy/interview/991026/

ネット・ジャーナリズムを確立した男、孤高の「独立宣言」。【 (笑) <-- 田中宇脚注 】

 田中宇(さかい)さんは、MSNジャーナルにて「田中宇の国際ニュース解説」というメールマガジンを運営、16万5千人という数の読者をもっている国際ジャーナリストだ。田中さんのジャーナリストのスタートは共同通信社から。その後、MSNジャーナル編集記者としてマイクロソフトを経て、先日退職。独立したジャーナリストとして活動を始めたという。

 現在、このインターネットでどのようなジャーナリズムを実践しているのか、どうしてジャーナリズムのメインストリームである通信社からメールマガジンの世界に入ってきたのかを田中さんにお聞きしてみた。

吉田松陰みたいに座敷牢で外に出られない状態でした。

――田中さんの記者としてのスタートは共同通信ですよね。

 記者のになったきっかけというと、学生の時にヨーロッパからインドに向かって貧乏旅行していたときに、イランを通ったのです。 当時のイランのテヘランはイランイラク戦争だったから、欧米人は入国できなくて日本人しかいなかった時でした。インドから来たっていう早稲田の学生とかと何人かが集まりました。みんな大学三年生で「どうすんの就職?」という話しをした時に、「旅行しながら、なんか書いて送ったら、金になる職はないのかな?」って聞いたら、「それはマスコミだ。」っていわれたんですよ。例えば共同通信とかは国際ジャーナリストで、ファックスで原稿を送ると給料が世界各地の銀行に入ってるって感じのことを言われて、それはいいなって思って・・・(笑)。

 一回目は就職試験を受けたんだけど勉強が間に合わなくて受かりませんでした。それでメーカーに行って一年サラリーマンやったのですが、やっぱりマスコミにいきたいなと思って、共同通信に入りなおしました。共同通信では、京都と大阪と東京に合計10年いました。

――どうして共同通信をおやめになったんですか?

 マスコミも今でこそ叩かれるようになったじゃないですか、マスコミと言えばしょうもないことを書くとみんな思っている、みたいな。実際にマスコミの中にいても同じことを感じているんですね。僕がいたころからすでにマスコミは硬直化していて、面白ければ面白い原稿ほど通らないような感じでした。

 記事の面白さというのは“トゲ”だったりします。つまり編集するデスクからすると、自分の責任問題になりかねないので、保身力が強い人ほど面白い部分、つまりトゲを切るわけですよ。トゲをみんな切ってってバフンウニみたいな記事になっちゃって・・・(笑)。

 私がこんなこと言ってるなんて当時のデスクが聞いたら、おまえの元の原稿がへたくそだったからバフンウニになったんだ、と言い返されそうですけど(笑)。それじゃつまんないなってことになって、ある日にフリーになる決意をして会社を辞めると上司に言ったんです。

 そのことを先輩に報告したらそれはバカだと、おまえみたいなヤツが突然にフリーになっても年収100万だぞとか脅かされました(笑)。おれが取りなしてやるから会社に戻れと言われまして、それじゃやめるのやめますみたいなことを言ったら(笑)、それから会社で座敷牢みたいなところにつながれて外に出られない状態になったんですよ(笑)。

――座敷牢で外に出られない状態ですか。

 それは取材に行けない翻訳職場ってのがあるんですね。英文の記事を日本語に訳して、しかも新聞向けじゃなくて、証券会社とか金融会社とかの端末に電子的に流していく部門に回されました。会社的にはそういうところで何年か冷や飯を食わせて、許してやるという腹だったと思うんですよ。

 僕がそこに行って見つけたものは、英字新聞と英語の雑誌の山でした。でえええっと積んであるんですよ。勉強したかったら、それを読みなさいっていわれました。そこでニューヨークタイムスだとか、エコノミストだとかを読み始めてみたのです。

 読み始めてみたら、これが面白いんですね。日本の記事って「原油価格が上がった」って言ったら、それだけで終わりじゃないですか、英語の記事だともうちょっと書いてあるんですよ。例えば「サウジで王様と王子様がケンカして、それが内紛があると思われたんで・・・」とか、こういうニュースの後ろにこういう意味があるのかと教えられました。
 それから英語の記事の面白さにひかれたんです。

――そんなに違いますか?

 日本の新聞、ようは自分の書いていたものと全然違うんです。つまり英語の記事には、“世の中をどう見るか”と言うことが書かれたものが結構あります。それに気付いてから、また改めて自分が今までやっていたことはつまらんなと思いました。そこでこれからは、こういうことをやろうと決心しました。

――なるほど。でも世界の見方って言うのは一朝一夕では身に付きませんよね。

 自分は座敷牢の中なんだけど、日々に世界で起こっていることやニュースが座敷牢なりに入ってきます。そこに座ってるといろいろ世界の動きがわかってきます。さらにロイターとかエコノミストとかが解説してくれたものを読んでいると、自分なりに考え始めるわけですよ。

 彼らは欧米人だから、欧米人の植民地支配感みたいなのがまだ残っていて、解説にウソをつけってところもあるわけなんですね。ウォールストリートジャーナルなどのユダヤ系資本といわれる新聞は、ユダヤ人のところは明らかに肩を持つわけです。例えば中東問題ではアラブ人のことをこき下ろして、イスラエルのことを正当化しているんですよ。いっぱい悪いこともしているくせに。

 そういうこともたくさんわかってきて、だんだん自分なりの解説もわき上がって来ました。それがちょうど95年とか96年とか、インターネットが出てきた頃ですね。プロバイダーが出てきて、ニフティでもインターネット接続できますだとか、そのころでした。

 それでおれもホームページを作ろうと思って、ホームページを作ったのが「田中宇の国際ニュース解説:世界はどう動いているか」です。


綿密な下調べから始まるジャーナリズム

――そこでマイクロソフトに声をかけられるんですね。

 そうです。ホームページに記事を出しつつ、座敷牢で仕事していたら。97年の1月ぐらいかな。マイクロソフトのMSN担当者の一人からメールをよこしてきて、「実はM SNでニュース部門を立ち上げるんだけれども、どういうの作ろうか考えてるんだが、なんか良いアイデアがある?」っていうんですよ。そこで、おれのサイトみたいなの作ればいいじゃないかと言ったんです。そうしたら協力しますよとも言いました。

 最初はアルバイト原稿を書くみたいなことのつもりでいたら、入社して本格的に手伝ってくれと言う話しになりまして、どうせ共同通信を辞めてフリーになろうと思っていたから、そのままマイクロソフトに入りました、

――共同通信と言えば、ジャーナリズムの中ではメインストリームというか、王道じゃないですか。そこにいらした方が全く畑違いのマイクロソフトに、なぜ移ろうと思ったんですか?

 僕の周りでも共同通信から、年収100万円のフリーの世界にダイビング的に辞めていく人が結構いるんですよ。なかには、取りあえず世界を旅行してから考えるとかね(笑)。

 それはどうしてかというと、マスコミってつまらんのですよ。王道なんだけど、王家と宮廷内部が腐敗してるんですよ。共同通信に限らず、いまマスメディア全体がそうですよ。日本のマスコミにいる10人に聞いてみて、今やっていることに対して十分ジャーナリズムとしての意味のある仕事をしていると思うか?ってきいたら、推測だけれども、してるぜって言う人は4人くらいしかいないと思う。その4人の中の内3人は僕が会ってみたら、こいつら勘違いしてる。マスコミ官僚みたいになってるぞと思えてしまう人でしょう。

――いままでもインターファックス通信のようなゲリラ的なニュースメディアはあったと思うんです。でもインターネットを使って、定期的にニュースを書いて配信するというジャーナリズムは、今まで無かったと思うんです。何か参考にされたものはありますか?

 こういう風に書いてもいいんだという点では、欧米のマスメディアの書き方は参考になりました。反対に日本のマスメディアの場合、現場に行っているくせに「私は現場に行ってこう思った」というのは書いてはいけないんですね。現場で肌に雰囲気とか放射能とか全部を浴びて、「私はにはこう感じられる」という権利があるにもかかわらず書いちゃいけないんですよ。客観報道じゃなきゃいけない。記事に主観を入れてはいけない、というんです。日本のマスコミ全部が“客観”の意味を取り違えていると思うんですけどね。欧米のメディアは、あるコードに基づいて、ウソでなければ、自分で検証しながら、それを書いていいのです。そのことは座敷牢に入ってわかったことですね。

――座敷牢時代にいまのジャーナリズムスタイルを学んだわけですね。

 新しいジャーナリズムだなって自分で思ったのは、ごくごく最近のことですよ。というかMSNから独立すると決めたら、みんなが「新しいジャーナリズムの可能性を探ってください」と言ってくれたんで、あれそういうことかみたいな。

 実は最初、私はジャーナリストって名乗って無かったんですよ。

 というのは、ジャーナリストというのは現場で自分の目で見たことを報道する。現場にいって報道するのことこそがジャーナリズムだ、と言うことが日本のマスコミの普遍的な価値観なんです。そういうことを言ってるのは日本だけで、間違っているんことなんですが。だから何も事前に調べもしないで現場に行って、現場の人にインタビューして原稿を書くから本質が見えない記事になるんです。

 例えばインターネットであるテーマを2時間かければすごい調べられるじゃないですか。現場に行く前に調べられることは全部調べて、それをやってから取材にいけよって感じがします。

 現場に行って肌で感じることはすごく大事だし、現場の人の話を聞くと、なるほどと思うことはいっぱいあるんですよ。そのなるほども、たくさん読んでから行くのと、読まずに行くのでは全然違うんですよ。それに、取材相手と話すときに、それはこういうことですねとか、それはこうじゃないですかって聞けるわけじゃないですか、そうすると相手と会話になるわけですよ。そうじゃないと「ぺけぺけについていかがですか?」「今回の件について」ってなってしまう。これでは相手は黙っているだけですよね。

 そのことを誰かに話したときに、おまえはジャーナリストじゃないと言われてしまったんです。わかった、そんな名前は返上してやるって言って、以前は国際ニュース解説者とか、時事講談師とか名乗っていました。 今はもうみなさんが“新しいメディアのジャーナリスト”といってくれるから、ジャーナリストっていう、便利な肩書きを名乗ろうかって思っています。

――下調べこそがジャーナリズムと言うことですね。そういえば、私も声高にそうするべきだと言われたことはないですね。

 日本のマスコミは全部そう。資料を調べてるひまがあったら、さっさと現場に行けという考え方です。竹やりかついで特攻隊っていうのと変わりませんよね。

 雑誌社の人とかインターネットを使っていない。この間も大手の雑誌社の人に、「インターネット使わないんですか?」って言ったら、「あんなもん使って意味があるんですか」って。おっとー!おれが誰だか知らないのかみたいな感じ(笑)。


メールってやっぱりテロリズムなんですよ

――メールマガジンなどのインターネットというのは、紙の媒体と違って読者との距離が近いじゃないですか。そうすると16万5千人の読者のパワーに当てられてしまうことって無いですか?

 それには書く技能ってのがあって、僕の場合はちょっといらんことを書くと、があっとメールが集中するんですよ。例えば、何かの記事でこれは団塊の世代が悪いとかぽろっと書いたりするわけです。すると団塊の世代からいっぱいメールが来るわけ、何を言ってるんだ、傷つけないでくれ、みたいな(笑)。そういう来そうなのは、何回も書いてくるとわかるじゃないですか。そうやって余計なものを省いて、メールが来ないようにしています。

 メールってやっぱりテロリズムなんですよ。物陰からバチンって打つみたいな。誰でも打てるみたいなね。僕だけじゃなくて、他のメールマガジンを配信している方とか、Webだけでも結構読まれている筆者とかは、いつもいつもそういう心ないメールにさらされて、かなり我慢強くないとやっていけないと思います。

――そうですね。

 読者は無責任なものなんだ。全部読まずに自分の気に入らないところ、もしくは気に入ったところだけを読んでメールを送ってくるのだ。と思って、僕は基本的にメールには答えない。その前に来ないようにしてます。

――テーマの選択のところからですか?

 いや、書く時の段階です。ちょっとぼかすとか、断定しないとか、そういうことです。みんなが読んでいますってことは、MSNジャーナルから独立しますとか、まぐまぐから離脱しますとかいうときに、200通ぐらいメールが来てわかりますね。インターネットは双方向ではないし、ましてや部数が多くなるとある種マスコミと同じですよね。

――田中さん自身の記者・編集者としての姿勢みたいなものは、マスコミの記者・編集者としてのそれと同じですか?

 んー。いや、どうだろう。マスコミの記者というのは、明治大正のマスコミなら別として、今のマスコミだと入社したときから、記事というのはこう書くものだと定型が決まっているんですよね。そこに自分を当てはめていく、みたいなことであるんですよ。僕がやっていることは、こういう風に書くとこのように痛い目に遭うと、だからここはやめようねと形作られたもの、体で覚えたものという違いがありますね。

――なるほど。

 例えば、僕がインドネシアのことを書いても、インドネシア政府に対する引け目みたいなものはないんですよ。反対に新聞社とかのジャカルタ特派員はインドネシア政府に対しての引け目は、読者に対する警戒感よりはるかに大きいわけですよ。そこが違う。

 インドネシアがこうなる以前に、一度スハルト政権が危ないって書いたことがあります。そう書いたら攻撃が来ましたよ。KDDのサーバーから送られてきたんですけども。一昼夜にわたって、僕のメールボックスに自分が送ったものと同じものを送られてくるんですよ。

――それは誰がやってたんですか?

 それはわからないですね。何となくこれは仕返しだなって感じがしたんですよ。これが24時間以上続いたらKDDに通報しようと思ったんですが、10時間くらいで終わりました。僕はそういう攻撃を受けたのは一回だけです。

――一般のマスコミではよくあることなんでしょうが、インターネットでは珍しいことですよね。

 そうですね。


――読者のリアクションが、田中さんの記事に反映することはあまりないんですか?

 いや、あります。次に何を書こうかなっと思ったときに、これを書いてっていいうメールが来たら、たとえ一通でもそれだと思って書いたりします。「最近金融の話しが少ないようなんですけど、金融の話しを是非」といわれると頭にインプットされるとかですね。反対に批判のメールというのは影響を与えないです。

――記事のテーマというのは、読者の意見の他にどのように決めているんですか?

 基本的には自分はいま世界で起こっていることのうち、書きやすそうなものというのを選んでいます。それかもしくは、これはなんかいろいろ起きているようだけど、なんか裏にあるんじゃないかと思ったら書いていっています。

 とにかく角砂糖の瓶の中にいるアリみたいなもので、書くことはいっぱいあるんですよ。自分の口はこれくらいしかないから、一回にはこれくらいしか食べられないんだけど、どんどん砂糖工場からどんどんどんどん角砂糖が運ばれてきて、食い尽くせないでそこら中に散らばっているという感じなんです。

 最近、台湾とイランに相次いで行ったんですよ。行くと行ったで面白いんですよね。また行くと1回じゃ書ききれない量のことが解るので、2回とか3回に分けて書くことになります。すると、自分が行っていた時と2回・3回と記事を書いているときは、他のことが書けないわけだから、その間にまた世界は2~3周しているんです。それをまた取り戻すために、またこうやってほじっていかないといけないわけです。

――そういわれれば、きりがないですね。

 イランから帰ってきて、一週間か10日ほどたったのかな。いまだ先週くらいの記事に追いつかなくて、まだ読んでいるんです。


記事は面白くなければいけないんですよ。

――田中さんはいつもどのようにして記事を書いているんですか?

 一本書くのに平均30時間くらいかかります。


――ええー。(驚)

 ニュースソースの集める技術というのは、大した技術じゃないんですけど、Net Attacheと言うのを使っています。いろいろ使い倒して選んだ結果、 Net Attache pro が一番強力でした。毎晩3時にコンピュータをつけっぱなしにして、Net Attacheが勝手にインターネットに接続します。そこで定点観測している30コのWebを全部を取ってきて、ファイルとしてローカルに保存しておいてくれます。その Net Attache のファイルが500コ以上/2年分くらいあります。

 そこから毎朝インデックスを作るんです。30紙の見出しとリード文だけ見て。本文を読んでいたらいつまでたっても終わらないですからからね。面白そうだなと思ったらインデックスを作ります。

 例えば「インド選挙、実は白い巨象が焦点」みたいなことを自分なりに書いて、それにURL。URLをクリックすると、自分のローカルハードディスク上にある Net Attache ファイルに飛ぶようになってます。このインデックスのファイルも一日一つずつ出来てきます。インデックス作るのも呼び出すのも秀丸エディタです。秀丸エディタがv3.01になってから、クリッカブルになって助かってます。

 そのインデックスを原稿を書くときにグレップをかけるんですよ。インドって引くとインド関連の記事がだあっと出てくるわけです。URLをクリックするとブラウザは開いて、元の記事に行き着くようにしています。

 それを全て選択で、テキストに落として、ざっとつなげてプリントアウトして読むと、このくらい厚いんだけど。(と見せてくれたのはプリントアウトの束。)こういう風なものを用意して読んで、それで情報を頭にためていくと。

――ニュースソースを読み込むのに大変な時間がかかりますね。

 読むのに5時間から15時間。いろいろなんですけれどもね。

 例えばいまだと“インドネシア”だけでもごっちゃり出てるから、これをだいたい読まないとだめだと。これはすごい長いトンネルですね。膨大にありますから。ちょっと海外に行って帰ってきたりすると、そういうのがどんどんたまりますね。

 “パレスチナ・中東”とかは、2~3ヶ月書かないと膨大になっているから、そういう時は他の用事を全部片づけたり、先に回したりして、よしこれから3日間でこの山を食べ尽くすぞと決めてかかるんです。

 読み始めて15時間ほどたつと、だいたいどの記事でも、これ読んだ、これも読んだ、書かれていることは知っていると言うのがほとんどになってきます。それでだんだん斜め読みになってきて、ある瞬間にこれは書けると思うようになるんですよ。つまり自分が何を聞かれても、その問題はこうだというように言えるようになっている状態です。そうなったら家で書こうとするんだけど、頭がくしゃくしゃくしゃになっているから書けなくなっているから、近くのドトールに大学ノートを持っていってから構想を練りはじめて30分や1時間たつと、おっこれだと思って書き始めます。

 最近はさらに原文のテキストファイルに、日本語の文章を書き入れていっちゃう。その日本語のメモ書きだけをグレップしてを出してきて、それを元にMS-DOS化してVZ エディターを入れたモバイルギアなんかで、その場で打ち始めるようにしてます。その時にはもう英語は見ない。これで一応、著作権はクリアしたことになっている。

――すごい。田中さんのジャーナリストという活動の中の情報処理にかけている時間とか、手間や暇とかのパーセンテージってすごく大きいですね。

 でも僕はWIndows98というクライアント側マシンだけで終わっているから、大したことやってないですよ。Webの自動巡回なんて誰でも出来るじゃないですか。あとはデータの管理が大変なだけで、それをこまめにやっていれば誰でも出来る仕事ですよ。

――そこまで情報を網羅的にチェックしないと書けないものですか。

 記事は面白くなければいけないんですよ。その面白さというのは結局、事実の中にしかないんです。事実を3つくらい、ばん・ばん・ばんってあってこそ、「でしょ、だからこうなんだ」って。この部分が主観なんだけど、ばんばんばんがないとだめなんですよね。

 テレビのコメンテーターが面白くないのは新しい事実がないからです。結局、新しい物事を調べようと思ったら、それについて調べれば調べるほど面白く書けるんですよね。

――国内のニュースは書かないんですか。

 僕はもともと、海外のことを書こうと思ってやってきているんです。今も海外のことの専門家としてやっていきたいと思ってるから、国内のことでも海外に関することは書くかもしれない。

 ここ4~5年、日本人のニュースの中に世界で出来事がだんだん割り込んで来ている感じがするんです。ちょっと前だと国際ニュースというと、ごく一部のオタッキーなひと、あなたも落合信彦さん?(笑)みたいな特殊な世界だったものが、だんだん普通の人にも知らなければまずいなっていうものになってきたんで、あえて国内のことをやらなくても役目は果たしているかなとおもいます。

――ではMSNジャーナルから独立すると言っても、これからもやっていくことは変わらないんですね。

 全く変わらないですね。新しいことも出来ないですよね。別にメールマガジンをやるかと言われてもやらないです。一紙で十分。いっぱい書ければ週に2回を3回にするかもしれないですけれどね。いまは本業確立ですね。

 でも、海外取材に行ける雑誌なんかの記事を書くことは、積極的にやっていきたいと思っています。座敷牢も嫌いじゃないんだけど、やっぱり取材現場は面白いですから。(笑)


(10/7 Hotwired Japan編集部にて、Text:保坂昇寿)




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