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米政治家らに横領されるウクライナ支援金

2022年5月18日  田中 宇 

米政府は2月末の開戦以来、合計530億ドルを軍事・経済・人道などの分野でウクライナに支援していることになっている。すでに実施されているのが130億ドルで、間もなく米議会で可決されそうな追加支援金が400億ドルだ。だが米政界では、これらの支援金のかなりの部分が目的通りにウクライナのために使われず、不正使用されたり、実際の使徒が不明になったりしている(これからなる)のでないかという疑いが、とくに共和党側で強まっている。 (Where is the $56 billion 'to Ukraine' actually going?) (The Bizarre, Unanimous Dem Support for the $40b War Package to Raytheon and CIA: "For Ukraine"

軍事部門のウクライナ支援金は、兵器製造を米政府(国防総省)から受注するレイセオンやボーイングなどの米軍事産業に支払われ、軍事産業が兵器を作ってウクライナに送ることになっている。だが、軍事産業が受注した数量の兵器をちゃんとウクライナに送ったかどうか追跡調査する機能を、米国防総省は持っていない。それは国防総省自身が認めており、意図的にやっていることだ。米国防総省は軍事産業への兵器発注について、ずっと前から二重帳簿の方式を採っている。国防総省は、必要数の何倍かの数の兵器の予算を米政府に申請して確保し、軍事産業には必要数だけを発注し、残りの資金は兵器を作らず、諜報界の秘密の作戦(アルカイダやISISなど便利な敵としてふるまってくれるテロリストの育成とか)の費用や、外国の要人への贈賄金、議員ら政治家に二重帳簿制を認めさせるための政治献金、プロパガンダを流すシンクタンクや専門家の経費、関係者の私服肥やし(横領)などに使われてきた。 (Why Did Rand Paul Delay Washington’s $40 Billion Ukraine Giveaway?) (US weapons for Ukraine disappearing into 'black hole') (ウソだらけのウクライナ戦争

軍産複合体やCIAの裏金の資金源が、この二重帳簿制だ(だからCIAより国防総省の方が上位だ)。冷戦を長期化するためのソ連へのテコ入れ、日韓駐留米軍の駐留を長期化するための北朝鮮支援なども、この資金でやってきた。この従来の流れを踏襲し、軍事部門のウクライナ支援金もおそらく、実際にウクライナに兵器を送るために使われたのは一部だけで、残りは裏金になっている(米国の軍事産業はフル稼働を演出している)。国防総省が二重帳簿制をとって軍事費を大膨張させてきたことは、民主党の反戦左翼や、共和党の小さな政府主義者たちに反対されてきた。だが国防総省の裏金は、裏金制度に反対する議員たちが好む分野にも浸透し、議員の反対を抑制するためにも使われてきた。たとえば国防総省やCIAは近年、さかんに左翼的な覚醒運動を支援して資金を出し、民主党の左翼を取り込んでいる。その結果、今回のウクライナ追加支援金は、バイデン政権が最初に発案した時に330億ドルだったのが、米下院の民主党主導の審議で70億ドル追加されて400億ドルに増えた。そして民主党の下院議員は、反戦派の左派も含めて全員がウクライナ支援金の法案に賛成した。 (NATO Pledges Open-Ended Military Support For Ukraine Ahead Of US Senate $40BN Aid Vote) (Greenwald: Biden Wanted $33B More For Ukraine. Congress Quickly Hiked To $40B. Who Benefits?

ウクライナ支援金は軍事部門だけでなく、経済支援や人道援助の分野もある。それらの資金にも裏がある。非軍事のウクライナ支援のかなりの部分は、米政府からウクライナ政府に資金が渡されるのでなく、米国や欧州、ウクライナの誰かが作った慈善団体などNGOに米政府から支給され、NGOがウクライナなどに行って支援活動を実施する際の資金になる。支援活動をするのが政府であれNGOであれ、実際に支援活動が行われているのなら問題ない。しかし軍事分野と同様、NGOが実際にどんな活動をしているのか、十分な監査は行われていない。NGOの中には、米国の政治家の友達や親族が関与しているものがかなりある。米国の議員たちが親族や友人にウクライナ関連のNGOを作らせ、米政府の支援金の一部がそれらのNGOに入るようにしている疑いがある。それらのNGOはろくに活動をしていなくてもかまわない。米政界にはNGOの活動報告書を巧妙にでっち上げて書ける人がたくさんいる(みんなそれで食ってきた)。NGOはほとんど何もせず、政府からもらった資金は議員とその仲間たちで山分けされる。 (The Subtleties of Anti-Russia Leftist Rhetoric

かつて反戦左翼は腐敗していなかったと考えられていたが、今の米民主党系の左翼はむしろ保守派よりも腐敗している。左翼NGOであるBLMの幹部は、寄付金など組織が集めた資金で豪邸を買って住んでいることが発覚している。事務所用にも高級マンションを買い、幹部たちが宴会していることが最近も指摘されている。米国の左翼は腐敗している。やっていることも、地元の警察の予算を減らした上で暴動を扇動して繁華街を破壊するなど、テロリスト的なことばかりだ。その上、自分たちを非難する者たち(共和党側)をテロリスト呼ばわりし、マスコミやSNSを支配しつつ、与党としての権力を乱用して独裁的なことをやっている。民主党は腐敗した左翼に乗っ取られている。 (After Denial, BLM Co-Founder Admits To Holding Parties At $6M Mansion Bought With Donations) (BLM Founder Patrisse Cullors Resigns Following Controversy Over Homebuying Spree

子ブッシュ政権時代に共和党にいてイラク戦争を起こし、米覇権自滅の先鞭をつけた過激なネオコン(隠れ多極主義者)は、共和党がトランプに乗っ取られた後、民主党に移って左翼に合流している。主要なネオコンは、米諜報界中枢のシンクタンクであるCFR(ロックフェラー系、隠れ多極派)のメンバーであり、米政界を操作する能力や人脈を持っている。元ネオコンの勢力が入ってきてから、民主党の左翼は過激にパワーアップされ、覚醒運動など米国を破壊する諸活動を猛烈にやっている。ネオコンに入り込まれた左翼が民主党を乗っ取り、驚くべき巨額の腐敗をやらかしている。これは米覇権を自滅させ世界を多極型に転換するための意図的な戦略だ。ウクライナ支援金をめぐる猛烈な腐敗は、隠れ多極派による米国自滅の策略が大成功していることを示している。 (One neocon warmonger is upset over something that will leave you completely speechless) (ネオコンと多極化の本質

米民主党の腐敗はネオコンだけに起因しない。バイデン大統領は、オバマ政権の副大統領として2014年の政権転覆後のウクライナを仕切る担当になった後、息子のハンター・バイデンをウクライナに派遣し、ハンターがウクライナの国営ガス会社の取締役になって役員報酬をもらえるよう取り計らった。ハンター・バイデンは、ウクライナ政界と米政府の橋渡し役をすることで、あちこちからキックバック(賄賂)をもらい、父親の政治資金作りを手伝っていた。バイデン親子の先例を見ると、米政府のウクライナ支援金を横領するためのNGOを政治家たちの親族や友人がどんどん作っていても、何の不思議もないことがわかる。 ("Something Is Up": Rep. Jim Jordan Suggests Hunter Biden Indictment Could Be Coming

ロシア政府は最近、米民主党(オバマ政権)が2014年にウクライナを政権転覆した後、ウクライナにバイオテクノロジーの実験ができる研究所をいくつも作り、そこで米国などの製薬会社(生物兵器製造業者)が地元の人々を使って新薬や新たな組み換えウイルス、生物兵器などの効き目を試す実験を行い、製薬会社が研究所に払う使用料が米民主党に政治献金されていたことを突き止めたと発表した。米国側のマスコミ権威筋は「またロシアがとんでもないウソを言っている」と嘲笑したが、これまでの経緯を考えると、ロシア政府の指摘はたぶん事実だ。 (US Democrats use Ukraine biolab profits for campaign funding - Russia

マスコミやネット大企業SNSは民主党寄りなので、民主党がどんなに腐敗しても何も伝えないし、民主党の腐敗を伝える者たちに陰謀論者や極悪人のレッテルを貼って言論封殺する。今回の米政府のウクライナ支援金をめぐる腐敗について、共和党の下院議員マージョリー・テイラー・グリーン(MTG)は「政治家の親族や友人がやっているNGOに支援金が入る仕組みは、不正な資金洗浄であるように見える」と言って支援金の法案に反対した。MTGの指摘は正しいが、彼女は民主党系のメディアであるウィキペディアで「陰謀論者」のレッテルを貼られている。MTGは911や2020年米大統領選での民主党による不正疑惑、コロナ危機など、いくつものテーマで鋭い指摘をしており、私から見るとすべて正しいが、ウィキペディア(権威筋)はそれらのすべてについて彼女に陰謀論者などのレッテルを貼っている。もはや権威筋から陰謀論者などと非難・否定される人々の方が正しく、権威筋から礼賛される人々は間違っている時代になっている。 (US aid to Ukraine looks ‘like money laundering scheme’ - Congresswoman) (Marjorie Taylor Greene - Wikipedia

米上院では共和党のランド・ポールが「支援金が正しくウクライナで使われているかどうか査察する制度を盛り込むべきだ」と言って修正案を出し、一人で可決を遅らせている。すでに書いたように支援金は不正だらけなので、ポールの主張は全く正しい。たとえ査察の機構が付け加えられても、これまでの多くの先例から考えて、査察は抜け穴だらけになる。しかし、何もないよりは良い。米国がアフガニスタンに支援した資金を査察したところ、3分の1(調査対象の630億ドルのうち190億ドル)が紛失・使徒不明・不正使用になっていた。これは多分、明らかに不正だとわかった分だけだ。巧妙な偽装に成功したグレーゾーンを含めると、支援金の半分かそれ以上は不正だろう。ウクライナもそんな感じになる。 (Why Did Rand Paul Delay Washington’s $40 Billion Ukraine Giveaway?

米国は、対外支援金だけでなく国内のコロナ対策の失業手当も、1630億ドルが横領もしくは不正支給だった。総額は7940億ドルだから21%が不正となった。米国は、行政的な自滅がひどくなっている。これらも隠れ多極派の策略の成功といえる。 ($163 Billion of COVID Unemployment Money Either Stolen Or 'Misspent'

ウクライナ政府に渡された支援金も、ゼレンスキーらウクライナ政府の上層部の人々に着服される可能性がある。ゼレンスキーは8.5億ドルを蓄財しており、その多くが大統領就任後の収賄でないかとオランダ議会などで問題にされている。米国がウクライナに支援した資金のかなりの部分は、正しく使われず、米国やウクライナの政治家らに横領されて終わる。米国でなく、日本や欧州の米同盟諸国の政府や民間がウクライナに出した支援金は、正しく使われるのか??。米国やウクライナの政府から勧められるまま、米国系のNGOなどに資金を渡したりしていないか。それだと、米国の政治家などに横領されることになる。米同盟諸国はもう自立的な行動を許されていないから、米国側に言われるままにやるしかない。悲しいね。報道されないから、ウクライナに支援金を出した人々は落胆や怒りを感じることもなく、騙され続けていればいいだけだが。 (Dutch Party Asks Zelensky to Account for $850 Mln Personal Wealth) (US tells Europe to give more money to Ukraine

最近はもう一つ、バイデン大統領(@POTUS)のツイッターのフォロワー2200万人のうち半分(49.3%)がニセのアカウント(自動的に作られたボットや、一人でたくさん作って使ってないアカウント)であることがわかった。米マスコミが報じているので「事実」(笑)だ。登録抹消されたトランプ前大統領の個人アカウントは8900万人のフォロワーがいた。バイデン政権は、せっかく(不正までやって)トランプに勝ったのだからフォロワーもできるだけ多くしないとダメだと思ったのかもしれないが、それでもこんなもんだ。バイデンの個人アカウントはフォロワーが3400万人だが、そちらのニセ比率はどんなものなのだろうか。イーロン・マスクが買収することになった後、ツイッター全体のニセアカウントの問題が露呈した。ツイッター社は従来、ニセ比率が5%未満だと言っていたが、実はニセ比率が20%だったことがわかったとマスクは言っている。登録者の総数が2割も水増しされていたとわかり、マスクは買収価格の値下げ交渉に入っている。 (Half of Joe Biden's Twitter Followers Are Fake, Audit Reveals - Newsweek) ("The Real President Is Whoever Controls The Teleprompter": Musk Delivers Scathing Criticism Of Biden

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