習近平を強める米中新冷戦2019年5月24日 田中 宇5月上旬に米中間の貿易交渉が頓挫した後、トランプの米国は、中国の対米輸出品に対する広範な懲罰関税の引き上げ、スマホやネットワーク機器を製造する華為(ホアウェイ)など中国のハイテク企業への制裁強化、台湾海峡での米軍艦の航行の頻繁化など、中国との「新冷戦」の体制を一気に強めている。今回のトランプの展開を、事前に最も的確に指摘・予測していたのは、かつて(たぶん今も隠然と)トランプの世界戦略を練っていた元首席戦略官のスティーブ・バノンだ。 (Kyle Bass Interviews Steve Bannon About China's "Grand Strategy" For Global Domination) (Steve Bannon Declares War on China) バノンは、中共敵視の亡命中国人財界人らに資金を出させて中国敵視シンクタンクを新設するなど、昨年末から中国に対する敵視を強めた。これは、今回のトランプ政権の中国敵視増強の布石だったようだ。バノンは4-5月に「米国が経済面・文化面で中国と仲良くしてきたことが、中共の独裁体制やウイグル弾圧などの悪事を黙認・助長してきた。これ以上中国の台頭を黙認すると、中国は(他の反米非米諸国への支援を強めることで)既存の自由世界の体制を破壊していきかねない。そうなる前に、米国と同盟諸国は、中国を厳しく制裁し、経済文化など全面的な中国との縁切りを進めねばならない。米金融界は、中国への投資や、中国企業の米国市場での株上場や起債を禁止すべきだ」と繰り返し言っている。バノンは5月10日にトランプが米中貿易交渉の破談と対中報復関税の引き上げを発表する4日前の5月6日に「米中の長い貿易戦争が始まった」と予測的に宣言している。バノンは、政権を去って2年近く経っているが、その後もトランプ政権の別働隊として動いている。 (Bannon: We're In An Economic War With China. It's Futile To Compromise) (バノン辞任と米国内紛の激化) 1979年の米中国交正常化と中国の改革開放開始以来、米国が中国に投資し、中国がその資金で「世界の工場」として製造業で経済成長を続けつつ、余裕資金で米国債やドル建て社債を買って米国の経済覇権を支え、米国は対中投資の儲けで金融立国として繁栄し続ける構図が続いてきた。この米中協調の経済関係が、この40年間の世界システム(米覇権体制)の根幹に位置していた。日本や欧州などの米同盟諸国も、米国にならって中国と協調的な経済関係を維持し、それが日欧などの経済成長を支えてきた。このシステムを運営する具体策として、米国の支配層(エスタブ、金融界、軍産)は、中国で儲けたいので、中国と経済面で協調しつつ、安保人権の面では中国を批判(やんわり敵視)し続ける「経熱政冷」の姿勢をとってきた。 (世界経済を米中に2分し中国側を勝たせる) バノンは昨年来、こうした米中協調の世界システムを壊して中国を制裁すべきだと言っている。バノンは、米金融界に対し「もはや中共の台頭を容認できないので、中国で儲けるのをあきらめろ」と言っている。エスタブ側は、冗談じゃないと反対しているが、反対論を強く言えない。「経熱政冷」で、こっそり経済だけ仲良くし、政治面は中国をやんわり敵視するシステムだからだ。トランプは、エスタブの反対論をかわすため、表向きは「中国を経済制裁するのは、貿易交渉で中国を譲歩させるためだ(米エスタブが儲けている既存の世界システムを壊すつもりはないですよ)」と言っている。 (No, There Is No US-China ‘Clash of Civilizations’) だが、ピエロ的な別働隊であるバノンは、トランプの隠れ多極主義的な真意を暴露するような発言を繰り返している。バノンは、トランプの世界戦略の真意を把握する上での重要人物だ。バノンは、中共の要人たちとも会い、中国側に対し「トランプが態度を緩和すること期待するな」(米国との協調関係の維持をあきらめ、一帯一路など中国独自の世界システムで発展する体制を早く作りなさい)と伝えている。中国政府も、トランプとの貿易戦争や新冷戦の長期化を予測して5月22日、対米輸出が多かった中国企業に対し、2年間の法人税の免除と、その後の3年間の法人税率の半減を約束した。米中貿易戦争は今後5年以上続く可能性がある。 (Don’t wait for a friendly White House, Steve Bannon tells China) (Expect A Long-Trade War: China Offers Tech Companies Five-Year Tax Break To Offset Tariffs) トランプ自身、昨年10月に、配下のペンス副大統領に、中国を敵視して米中新冷戦の開始を事実上宣言する演説をさせている。隠れ多極主義のトランプと対照的に、ペンスは軍産エスタブ系の人だ(トランプは、軍産エスタブを抱き込むためにペンスを副大統領にした)。トランプは、軍産エスタブの覇権運営体制を壊すことにつながる米中新冷戦の開始宣言を、軍産エスタブのペンスにやらせたのは、トランプ的な皮肉作戦だった。 (The Crisis in U.S.-China Relations) (Russell Napier: Mike Pence Announces Cold War II) ▼中国のスマホを独自OSに追いやると米国に不利なのに・・・ 米国が中国との経済関係を断絶していく「新冷戦」が進展すると、困窮し経済破綻していくのは中国の方だ、という言説も多い。たしかに、華為は米政府のブラックリストに入れられた挙句、グーグルからアンドロイドの一部機能の利用を遮断された。これまで米国の地下鉄車両などを受注して儲けてきた中国の鉄道車両メーカー「中国中車」は、米市場から締め出されそうだ。中国企業の大きな不利益になる話がどんどん出てきている。短期的な中国の不利益は明らかだ。 (Huawei: ARM memo tells staff to stop working with China’s tech giant) (US Senator Charles Schumer wants ‘top-to-bottom review’ of Chinese train maker CRRC that won design contest for New York City subway cars) しかし、長期的かつ広範な視点に立ってみると、米中新冷戦は、中国を、きたるべき米国バブルの大崩壊の影響を受けにくい状況にするので、中国に有利になる。世界経済はすでに、米国が主導する金融経済と、中国が主導する実体経済(ハイテク関連の製造業やサービス業など)に2分されている。トランプやバノンが提唱する、米国を中国から引き剥がす新冷戦(デカップリング)の戦略は、世界の実体経済が、きたるべき米国の大バブル崩壊の影響を受けないようにしてやり、中国を有利にする策になっている。 (Huawei Executive Accused by U.S. Startup of Involvement in Trade-Secrets Theft) トランプが制裁した華為は、携帯通信の世界を激変させる5Gの技術で世界的に先行しており、米国や欧州のライバル企業では、米国が華為を制裁して排除した市場の穴を埋められない。トランプ政権は、華為が中国共産党のために米欧で通信を傍受して機密情報を盗み出すことをやっていると主張しているが、ドイツやオランダなどEU諸国の政府は、トランプが言う華為への疑惑は根拠が薄いと結論づけ、華為への制裁を見送っている。華為の5G技術が大したことなかったら、EU諸国は、対米関係を重視して、濡れ衣と知りつつ華為を制裁したかもしれない。だが、華為の技術は、EUなど世界が5G通信網を構築する際に必須なものなので、EUはトランプに逆らって華為を制裁しないことにした。同様の理由で、日韓豪など他の同盟諸国も、できるだけ華為を制裁したくない。 (US ban won’t derail Huawei’s European 5G rollout) (Germans, Dutch won't ban Huawei despite US move) オランダ当局(諜報機関)は、華為が本当に中共の代理勢力として欧米側の機密情報をネットワーク機器経由で盗んでいるのかどうか、捜査を開始した。これは多分EUとしての捜査だろう。オランダなどEU各国の政府はすでに、華為が機密を盗んだと考えられる根拠がないと暫定的に結論づけており、こんご本格捜査してもこの結論が変わる可能性は低い。本格捜査によって、華為へのスパイ容疑が米国の濡れ衣だったことが露呈すると、米国の信用や覇権がさらに落ちる。EUの対米自立が進む。トランプは、悪者にされつつ覇権放棄の目標を達成していく。 (Dutch authorities investigating alleged Huawei 'backdoor') 華為は前四半期、世界のスマホ市場でサムソン(21%)に次ぐ17%ものシェアを持っている(アップルが3位で12%)。5月19日、グーグル(親会社のアルファベット社)が、華為にアンドロイドの一部機能(グーグルプレイやGメールアプリ)を使わせなくすることを検討していると報じられた。米政府は、華為を蹴落としてアップルを復活させようとしているようだ。華為は、こうなることを予測して独自OSの開発に着手していたが、独自OSが使い物になるのか、スマホが売れるのか、非常に怪しい。だが、今回のことを機に、中国のアンドロイド系のスマホメーカー各社は、いつグーグルから同様の処分を受けるかわからない状態になり、アンドロイドOSでないもののアンドロイドのアプリが動く独自OSの開発が必須になった。隠れ多極主義の道化師であるバノンは、ここぞとばかりに「華為の破壊が、米中貿易戦争の最重要目的だ」と言い出している。 (Bannon Says Destroying Huawei More Important Than Striking Trade Deal) (As Huawei Loses Google, the U.S.-China Tech Cold War Gets Its Iron Curtain) 中国は今後、国を挙げて、似非アンドロイド的な独自OS(かつての紅旗リナックスみたいな?)を開発するかもしれない。中国では今後、貿易戦争と反米ナショナリズムの勃興により、iフォンなどアップル製品も売れなくなることが必至だ。これは、世界最大のスマホ市場である中国が、アンドロイドとアップルという米国主導のスマホ世界から分離独立(デカップリング)していくことを示している。中国だけでなく、中国の影響圏になりつつある中央アジアから南アジア、中東、ロシア東欧、アフリカにかけての一帯一路の諸国も、同様の傾向になる。華為への制裁は、グーグルにとって自滅行為だ。そのため今後、今回の措置が撤回・修正されていく可能性も高い。 (Huawei suffers hammer blow with Android ban) 今後、華為以外の分野でも似たようなことが起きるだろう。中国は、すでにハイテク分野でいくつもの重要技術を握っている。特許が米国にあっても、実質的な製造技術が中国にしかなく、他国での製造に切り替えるのに何年もかかるものも多い。消費市場としても、中国抜きに世界が成り立たなくなっている。トランプが中国を敵視するほど、日本の財界はそれに逆行し、安倍政権に圧力をかけて中国に擦り寄る態度をとらせている。日本右翼が中国敵視を貫くなら、バノンと組んで日本財界を恫喝すべきだが、日本右翼は自民党と官僚の傀儡でしかないので、そんなことすらしない。バノンは以前、日本の右翼を扇動しようとしたが不成功に終わっている。近年の日本は、くだらなさに拍車がかかっている。令和万歳。 同盟諸国は、トランプの対中制裁に参加せず、中国と付き合い続ける傾向を強める。トランプは今のところ、同盟諸国が中国制裁に参加しないことに寛容な姿勢をとっている。米国や同盟諸国の企業が中国と取引できなくなる不利益を埋めるため、トランプは、中国への制裁強化と同時に、日独やカナダメキシコとの貿易面の対立を棚上げした。トランプは、日独からの自動車輸入に対する報復関税の開始を延期し、NAFTAの再交渉でも譲歩を発表した。これらを見ると「トランプは中国に厳しく、同盟諸国に寛容になっており、軍産エスタブ的な米国覇権を大事にしている」と感じられるが、多分これは目くらましだ。 (U.S. Seeks to Resolve Other Trade Disputes Amid China Impasse) (Donald Trump eases tariffs for allies as he focuses on China) 米中貿易戦争による世界経済の減速を緩和するため、今回トランプは同盟諸国に甘い姿勢をとったが、いずれ米中対立の構図が長期化し安定したら、再び同盟諸国に厳しい態度をとるだろう。同盟諸国は「米国か中国か、どちらかをとれ」と迫られるようになる。今後、米国バブルの大崩壊が近づくほど、同盟諸国は、二者択一を迫られると、米国でなく中国を選ぶようになる。米中の新冷戦・デカップリングが長期化するほど、米国が孤立していく(マスコミは歪曲報道がひどくなり、そのような傾向を伝えなくなった。人々は変化に気づかない)。その過程で、中国や同盟諸国が米国債を保有したがらなくなり、米国バブルの大崩壊になる。 (As Trump escalates China trade dispute, economic ties lose stabilizing force in matters of national security) ▼中国の反米主義に火をつけて習近平を強化してやるトランプ 米中新冷戦は、長期だけでなく短期的にも、中国側を強化している。中国は習近平まで「経熱政冷」的な対米協調・対米従属の国家戦略(トウ小平の24文字の国家遺訓)の中にいた。中共は、米国から要求された「政治のリベラル化・(やや)自由化(するふり)・独裁でなく民主的な集団指導体制」を標榜していた。15年に権力を握った習近平は、トウ小平のくびきを離脱し、対米自立や反米ナショナリズムの容認、中国独自の影響圏である一帯一路の追求、政治リベラル化や集団指導体制の放棄と習近平の独裁体制の強化を開始した。共産党内では、リベラル派など、習近平の独裁に反対する勢力の不満がくすぶった。 おりしも、米国ではリーマン危機後の中銀QEによるバブル再膨張がひどくなり、習近平は自国の金融市場が米国と連動してバブル膨張することを嫌って株価や不動産相場を意図的に破壊し、バブルで底上げされていた中国経済の成長鈍化が起きた。それまで中国では「共産党は、経済成長を維持することが政権維持の正統性だ」と言われ、経済成長の鈍化は、強引な独裁強化の姿勢と相まって、習近平に対する党内の批判拡大につながりかねなかった。 (It Ain't All Gucci In China, Luxury Goods Demand Expected To Slow) 今回トランプの米国が中国に対する敵視を一気に強化したことは、このような中国上層部での習近平の不利な状況を一発で吹き飛ばしてくれるパワーを持っている。トランプの米国が、中国に対して不当な敵視をして、中国を潰そうとしている。中国は、米国に譲歩しても、もっと譲歩しろと言われて潰されるだけだ。米国に対して譲歩せず、経済制裁を受けてもひるまず、中国人が団結して米国からの敵視に立ち向かい、勝つまで耐えるしかない。今の構図を中国側から見ると、上記のようになるが、これはまるで革命前の中国と同じ状況だ。革命前、中国共産党を率いて列強の帝国主義と戦った神話的な指導者である毛沢東の地位には今、習近平がいる。トランプに不当かつ長期的に敵視されたおかげで、習近平は自分を毛沢東になぞらえ、人心を掌握しつつ中共上層部での独裁力を増強できるようになった。 これまで、習近平の独裁を嫌がる中共中央のリベラル派は、米国と対立すると経済成長が鈍化するので良くないと言い、米国との貿易交渉の不成功をやんわりと習近平のせいにしてきた。だが今や、米国に譲歩すべきだと主張する中共内のリベラル派は「利敵行為をするスパイだ」と言われかねないようになった。米中が新冷戦になったおかげで、中共内でリベラル派が弱まり、習近平が毛沢東の衣をかぶって強くなる事態が始まった。これは習近平にとって棚ぼただ。トランプやバノンは、習近平を強化している。 トランプが5月11日に中国敵視を一気に強めた直後の1週間に、中国の国営テレビ・中央電子台の映画チャンネルが、中国が朝鮮戦争で米国と戦争した毛沢東の時代に作られた反米映画を連続して放映した。この放映は、習近平もしくは側近群の采配だろう。放映は、トランプが中共中央の政争の流れを転換したことを示している。トランプの米国はご丁寧にも、同時期に米軍の駆逐艦に台湾海峡を航行させ、中国が米国を敵視しやすい状況を作ってやっている。人民日報は5月13-14日の2日間にわたり、トランプを批判し、米国製品の不買運動を呼びかける社説を出した。 (China Calls For "People's War" Against The US, Vows To "Fight For A New World") (China State Run Media Broadcasts Anti-American Movies To Millions Amid Deepening Trade War) 続いて習近平は5月20日、江西省贛州市にある「長征」の開始地点の記念公園を訪問し、そこで「新長征」の開始を宣言した。「長征」は1934年、ライバルの国民党軍(今の台湾)に破れ、江西省に立てこもって窮地に陥っていた共産党の軍勢が、勢力を立て直すため、2年かけて1万キロ以上を国民党軍と闘いながら行軍(流竄)し、新たな本拠地である陜西省延安にたどりついたという中共創設時の歴史的神話の一つだ。毛沢東は、長征の途中で共産党内の主導権を確立した。長征は「窮乏の中で敵と長く苦しい戦いを続けつつ、党の体制を刷新(新たな独裁体制を確立)すること」を示す中国の故事である。 (Chinese President Xi Jinping sounds Long March rallying call as trade war tensions rise with United States) 習近平が「新長征」を宣言したのは今回が初めてでなく、昨春にも宣言している。その時は「一帯一路(中国の新たな影響圏としての新シルクロード)の実現」に向けた長い努力を「新たな長征」と呼んだ。一帯一路を実現していく過程で、欧米への重視・依存が強かったトウ小平以来の中共中央のあり方を刷新し、習近平の独裁を強化する、というのが新長征の本意だった。今回も、新長征とは一帯一路の実現であるというのが公式な解釈だ。だが今回は、新長征に「中国を潰そうとするトランプの米国との長く苦しい戦い」という新たな意味が加わっている。「新長征」は「習近平が、党内のライバルを排除して毛沢東顔負けの独裁体制を確立しつつ、敵対の長期戦を仕掛けてくる米国に対抗するために、対米自立的な中国の地域覇権としての一帯一路を実現する長期戦略」を意味する言葉になった。 新長征の中心は、軍事よりも、ハイテク技術やマーケティング、金融覇権などの経済面である。エネルギー利権や、国連など国際機関における影響力の拡大など、地政学の面もある。最近の中共は「長征」のほか、毛沢東時代に米欧からの冷戦型の長期経済制裁に対抗するためのスローガンだった「自力更生」も復活させている。自力更生も、従来の中国の親米的なトウ小平・リベラル・集団指導体制から、習近平の独裁による対米自立と一帯一路への転換をいざなう標語として蘇生している。 (Xi Jinping calls for self-reliance as China grapples with long-term US challenge of trade war and ban on Huawei and other technology manufacturers) 習近平は、5月20日に江西省を訪れた際、希土類(レアアース)を産出・加工する地元企業「江西金力永磁科技」を訪問している。希土類は、ハイテク製品や軍事装備の製造時に不可欠な材料で、世界の供給の9割を中国が握っている(残りの大半は日本産)。米国は、希土類の戦略備蓄や独自開発が(未必の故意的に)非常に遅れており、中国の希土類がないと、中国と戦うための米軍の兵器が作れない状態だ。習近平は、江西省の長征記念公園と希土類メーカーを訪問ししただけで、すでに対米的にかなりの優勢を得てしまっている。 (Xi Jinping sounds Long March rallying call as trade war tensions rise with United States) (China Victory Assured With Any US/Iran Conflict) トランプからの敵視への報復として中国では、米国製品の不買運動が起きている。中国の大企業の中には、社員に対し、ケンタッキーやマクドナルドやP&Gやアップルといった米国製品を買うなと命じるところが出てきている。少し前まで、中国人は米国製品へのあこがれが強かったが、それが喪失していく傾向だ。中国での売り上げ不振は米国企業の赤字化につながり、米国株を押し下げ、金融危機に近づける。昨年末の米株価暴落は、それまでの株価高騰を牽引していたアップル社の減益がきっかけだったが、こんご米中貿易戦争が長期化すると中国市場でアップル製品が売れなくなり、それが米株の危機再来につながりかねない。 (The Boycott Begins: Chinese Company Orders Employees To "Stop Using American Products, Eating At KFC") (Did The US Just Lose The Trade War?) トランプは、中国への敵視を強めると同時に、イランやロシアへの敵視も強めている。米同盟国(NATO加盟国)のくせに敵方のロシアから迎撃ミサイルを買うトルコへの敵視も米議会で強まっている。これらの動きは、米国に敵視された露イラントルコなどと、中国が結束していくことを助長している。これはまさに隠れ多極主義策である。 (Angry Erdogan Defies Trump: May Accelerate S-400 Delivery, Slams Western Meddling In Turkish Economy) その一方で米政府は「これから中国との敵対に軍事力を集中せねばならないので、中東から米軍を撤退していく必要がある」と言って、イラクやアフガニスタンからの米軍の撤退を急いでいる。米国はイランとの対立を強める一方で、ペルシャ湾岸の同盟国であるサウジアラビアなどに対し、米軍に頼らず自国軍を強化してイランと対決しろと言って、サウジに兵器を売りつけている。 (America Must Pivot Toward China and Away from the Middle East) (US announces start of GCC’s ‘enhanced security patrols’ in Persian Gulf)
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