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RANDOM DIARY TOUR
鳴海諒一日記 SINCE 6/18.2000



12月30日

▼仕事納め

 今日で年内の勤務は終わり。やっと終わったJ! 毎日忙しくて気を抜かずにぴり
ぴりと(お客様にはもちろん笑顔で)働いていたので、明日あさっての休みは神経休
めに徹しよう。そして1月2日からまたバリバリ働かなきゃ。そう、休みはたったの
2日間だけなのだ。毎年のこととはいえ、正月休みの少ないのにはいつまで経っても
慣れない。

 おとといは当店の忘年会だった。全員がテーブルを囲んでも総勢7名。こんなに少
人数で年末の忙しさを乗り切ったのかと思ったら、みんなが愛おしくなった。

 忘年会会場は居酒屋の「和民」。以前、「スーパーテレビ」(日テレ系)の「居酒
屋戦争」という特集で和民の経営戦略を見て興味を持ち、一度行ってみたかった僕の
リクエストによるものである。テレビでは、和民は従業員のサービス指導を徹底して
行っており、居酒屋の中では高品質なサービスを実践しているような感じだったが、
別にその辺の店と変わるところはなく、可もなく不可もなくといったところ。しかし、
フード類は非常に安いし、そこそこ食べられる味だった(レトルトや冷凍ものにして
は)。

 腹ぺこ7人組は、食べる食べる飲む、食べる飲む食べる、と食に走りまくり、もの
凄くたくさんのフードをオーダーしたのだが、会計は非常に安く、1人3千円もかか
らなかった。ビールもたくさん飲んだし、ウイスキーもボトルを飲んだのに、いやは
や居酒屋は偉大である。

 さて、問題のプレゼント交換だが、僕は忘年会当日になって慌ててあちこち探し廻っ
たのだが、千円以内で面白いものを買うのは、やはり至難の業である。結局、「う〜、
もうこれでいいや」と少々投げやりに買ったのは、サンリオショップに売っていた
「バット×○(バツマル)」というキャラクターのだるま型貯金箱である。しかしこ
んなものがウケるとは夢にも思わなかった。

 プレゼントはアミダによって決められた。僕の「バット×○」は、コムサデモード
出身の男子バイトに当たった。彼は紙袋からプレゼントの箱を取り出した途端、大声
を上げた。

「わあ〜〜っ! これ、ポムポムプリンじゃないですか! 僕、大好きなんですう」

 ん? 何だって? ポムポムなに? 彼は包装紙に付いていたリボン代わりのポム
ポムプリンとやらのオマケを見て、驚喜したのだった。な〜んじゃそれ。

 彼は待ちきれないかのように急いで箱を開け、喜びのあまりゲラゲラ笑い出した。

「やった〜〜! バット×○だ〜! 店長、ありがとうございますう。最高ですう。
あはは、あはは」

 僕には彼がなぜそんなに喜んでくれるのか、まるでわからなかったけど、とりあえ
ずこのメンバーの中で他にこんなに喜んでくれる人はいないようなので、めでたしめ
でたしと胸を撫で下ろした。それにしてもあいつはサンリオおたくか? ややキモい。

 僕に当たったのは女子バイトからのプレゼントで、メモ用クリップ、キャンドル、
文庫本カバーなどの雑貨店グッズだった。他の子たちのプレゼントは、犬の写真のカ
レンダー、駄菓子盛り合わせ、小さく折り畳める布製バッグ、変な電球、あっ、もう
1つは忘れてしまった。すまん、Sさん。

 後で考えてみると、このプレゼント交換の時が盛り上がりのピークだったような気
がする。その後は酒に飲まれてドロドロに落ちていったのだ。

 今年の年末はバイトの人数が足りなかったので、もう2〜3人補充したかったのだ
が、数多く行った面接で気に入った子は1人もいなくて、「こんなヤツを使うぐらい
なら現メンバーの少数精鋭部隊で乗り切った方がマシ!」と我慢して採用しなかった。
そのせいでみんなの負担も多くて大変だっただろうが、忙しさに揉まれているうちに
結果的に皆仕事がより出来るようになった。自信がついて少し大きくなったようにも
見える。

 僕はみんなに感謝の気持ちを抱きつつ、来年早々店が暇続きになった際に、次第に
目に見えてダレ始めるだろうバイトの気持ちをいかに引き締めるか、ということをも
うすでに懸念し始めているのであった。大人って汚い?


12月27日

▼書評家に一言いいたい

WEB筑摩書房の「田口ランディさんの日記」12月19日を読んで、少々感じたこ
とを書きたい。

 ランディさんの「アンテナ」が、WEB「本の雑誌」の「今月の課題図書」に選ばれ、
6人の方々が批評しているのだが、批評家の評価がD・C・A・E・E・D(A〜E評価)と
かなり悪い。そのうえ批評内容は、悪意で書いているように思えるほど陰湿な感じを
受けた。

 この書評を読んだランディさんは日記に次のように書いている。「書評というのは
怒りという感情をベースにして書いてはいけないと思う。(中略)怒りはとても子供っ
ぽい、洗練されていない感情だ。それは物事を伝えるには未分化すぎる感情だと思っ
ている。(中略)怒りが伝えるもの、それはあまりにも小さい。そう思う。」 正論
だと思う。僕にはとてもよく理解できた。

 以前、ランディさんが「書評っていうのはね、自分の感想を書いてるだけじゃダメ
なの。それじゃただの感想文だよ。自分にしか書けない作品に高めなきゃ書評とはい
えない」と話してくれた。それを聞いて僕は、なるほどそうだと感銘を受けた。

 「アンテナ」を批評している方々は、皆さん自分の感性にとても自信を持っていらっ
しゃる。自分が読んで面白くないと感じた本は「ダメな本」なのである。面白さを感
じない自分自身の感性に決して疑問を持たない、自己を尊重する考えの持ち主のよう
な気がする。公の場にこれだけ主観的に書きたい放題人の批判が出来る神経は、はっ
きりいって凄いと思う。

 当店の常連に、たけし、松本、タモリを「全然面白いと思わない」とけなす人がい
た。その人は面白いことなど何一つ言えず、僕を笑わせたことなど一度も無いのに、
である。また、自分がいつも正しいことを言っていると(言わんばかりに)得意満面
で人の批判をしている常連がいる。その批判は常にピントがずれていて、その客自身
が従業員から全く信用されていないというのに、である。

 当店の従業員が嫌な客を陰でけなすことがある。そいつに言うのは「その嫌な客を
大満足させるサービスがお前にできるのか。相手を納得させることも出来ないくせに、
文句なんか言うな」である。身の程を知らなければいけない。

 現代は1億総評論家時代である。誰が何を言っても自由なのだ。しかし自分が“そ
れ”を今批判できる立場にあるのかということを顧みることも、時には必要なのでは
ないだろうか。

 書評家の皆さんは、まず優れた作品を1〜2本発表すべきである。それだけ文句を
並べられるのだ。さぞかし素晴らしい作品が書けるはずだ(皮肉ではない)。そして
それから大手を振って書評を書こう!


12月26日

▼ブルークリスマス

 昨日のクリスマスは、バーで働き始めて初めての貴重な休日だったというのに、風
邪気味で体調が悪く、夕食後すぐに寝てしまった。なんだか勿体なくて腹立たしくて、
プンプン怒りながら眠った。15時間も爆睡したおかげで、少し体調は良くなったも
のの、昨日の充実しないクリスマスのことが忘れられず、今日はちょっとブルーな気
分だった。妻はもっとブルーだったろう。妻よ、すまん。

 仕事が毎日忙しいこともあって、メルマガがメチャメチャ滞っており、年内に配信
するのは無理っぽい。毎日パソコンに向かってはいるものの、今回のコラムが国産ビー
ルその他に対する批判的な内容のため、読者全員を敵に回さぬよう、書き直しに次ぐ
書き直しで、書いている最中なのにもう疲れてきた。批判コラムはパワーを大量に消
費する。おまけに好きでもないメーカー各社のビールを毎日日替わりで試飲している
と、体が疲れているのですぐに眠くなってしまう。これではジジイみたいだ。くそ〜。

 縦しんば年末にメルマガが書き上がったとしても、正月早々こんなのを読んだら、
皆さん「縁起でもない!」と怒ってしまうかもしれない。少し暖めて仕事始め以降に
配信するかも、なんて、いつ配信するかなどど〜でもいい。今は早く書き終えること、
それだけである。

 それにしても20世紀から21世紀にまたがって書くメルマガの出来やいかに!


12月23日

▼当店の忘年会

 今週は忘年会の流れで来店される方々で毎日店が賑わった。皆様、忘年会お疲れさ
までした。でも明日はクリスマスだし、もうすぐ正月がやってくるので、お飲みにな
る機会が目白押しですね。お酒がお好きな方はともかく、普段からあまりお飲みにな
らない方は、とても大変だと思います。

 僕は仕事柄、つきあいで飲みに行くということが無い。毎日直帰である。当店のお
客様の中には、会社の上司が酒好きで「今日軽く行こうか」と誘われて、断ると後が
怖いので渋々つきあってるんだろうな〜、とお見受けする方も多い。皆さん頑張って
下さいね!と、いつも陰ながらエールを送っている。

 もうすぐ当店の忘年会がある。従業員と飲みに行くのはずいぶん久し振りだ。久し
振り過ぎて前回いつ飲んだか思い出せないくらいだ。10ヶ月振りくらいかもしれな
い。

 今日、女性バーテンダーのSさんが、「Kさん(女性バイト)から、今度の忘年会
はクリスマスを兼ねて、みんなでプレゼント交換をしませんかと提案が出たのですが、
いかがですか」と聞いてきた。なぬ?プレゼント交換とな?

 予算を聞いたら1人千円(税込1050円)までということだ。お子ちゃまの集ま
りみたいで可愛い。「面白い、よしやろう。決定!」と即断した。その後、仕込みを
しながら、何を買おうか、どんなものがウケるかと、あれこれ考えた。でも後でSさ
んが貼りだした紙には、「ウケ狙いはダメよ。男女兼用のもの」と厳しい指示が書い
てあり、「じゃ何を買えばいいの?」ととたんに悩んでしまった。金額の上限も厳守
とのことで、Sさんはとても厳しい。

 ウケを狙わずにさすが店長!とみんなに尊敬されるような「しょうもない」貰って
も嬉しいのか嬉しくないのかわからない、そんな突拍子もないプレゼントってないか
なあ。う〜ん、悩むぜ。ちなみに副店長は、大好きなドンキホーテで買って来るに違
いないことを、ここに予想しておこう。

▼森達也監督作品の放送について

 僕の大好きな森達也監督が制作された「精神障害者の移送」についての特集が25
日の夕方のニュース番組「スーパーJチャンネル」(テレビ朝日)で放送されます。
森さんの切り口はいつも鋭くてハッとさせられてばかりなので、今回も放送に期待し
ています。

 森さん曰く、「例によってモザイクぐしゃぐしゃテロップべたべたにされてしまう
だろうけど、局からこの後、干渉がないかぎりは相変わらずの僕のテーマです」との
ことでした。

 また、森監督がオウム真理教の内側を撮ったドキュメント映画「A2」が、映画公
開に先駆けて30日23時から「田原総一郎のテレビ大全集」(テレビ朝日)という
特番で紹介されます。現アレフの活動が生々しく映し出されることと思います。必見!


12月19日

▼エクソシスト

 昨日、テレビCMで映画「エクソシスト ディレクターズカット版」の予告をつい
見て、うわ〜〜っと大声を上げてしまった。昔、映画で見た時には無かったシーン、
なんとリーガン(悪魔が乗り移った女の子)がブリッジの姿勢で階段を下りて来るで
はないか!

 「エクソシスト」は僕が中学2年生の頃に劇場公開された。当時はリーガンの悪魔
顔は雑誌やテレビでは一切発表されず、映画館に足を運ばなければ、その顔がどうなっ
ているのかがわからないようになっていた。その宣伝方法が人々の関心を集め、映画
は爆発的にヒットした。

 僕も怖いものみたさで見に行ったのだが、当時まだ純朴だった少年を震え上がらせ
るには十分過ぎるものごっつ怖い映画だった。それはそれは怖かった。途中で映画館
を飛びだして家に帰りたくて仕方なかった。しかし僕はその後、「エクソシスト」に
ハマッてしまった。

 あんなに怖かったのに、後日再び「エクソシスト」を見に行ってしまった。しかも
カメラとラジカセを持って・・・。僕は映画を録音し、雑誌に掲載されないリーガン
の恐怖顔をバシャバシャと撮影した。でも現像した写真は怖すぎて見られなかった。

 「エクソシスト」の特集本に、英語のセリフ、英語セリフの日本語訳、映画の日本
語字幕の全てが掲載されており、僕は録音テープを聞きながら、「そうか、本当はこ
ういうことを喋っていたのか、ふむふむ」と、より深く映画を理解できるように努め
た。その後、原作も読み、マイクオールドフィールドの「チューブラーベルズ」(映
画の挿入曲)のレコードも買ってきてよく聴いた。

 こんな映画、作り物じゃ〜ん、といくら思おうとしても、僕の本能はなかなか言う
ことをきかなかった。役者が演技をしているように思えず、作り物とは思えなかった。
当時の僕の自宅がリーガンの家に造りが似ている上に、僕の部屋はリーガンの部屋に
位置していたものだから、自分の部屋のドアを開けたら彼女がこっちを睨み付けてい
るような気がして、部屋へ行くのが嫌で仕方なかった。

 どうやら僕はエクソシストにハマッたせいで、自らをトラウマ状態に追い込んでし
まったらしい。あんな恐ろしい映画を見るのはもう嫌だ。絶対に見たくない。

 とはいえ、なぜリーガンがブリッジ階段降りをしているのか、気になって気になっ
て仕方ない。きっと悪魔が乗り移って少しずつ様子がおかしくなった頃に行ったのだ
と思われるが、真相はわからなくてもいい。本当は知りたいが、映画を見られないの
で、わからなくても仕方ない。

 これを読んで余計な親切心で僕にディレクターズカット版の詳細を教えないでほし
い。そんなことをすると僕はあなたを恨んでしまうかもしれない・・・


12月16日

▼満員御礼

 さすが年末だけあって、昨日も今日もメチャメチャ忙しかった。2日合わせて数百
人の来客を満席のため断った。おかげで両日とも休憩する間もなく汗だくになって働
いた。こんな日に1人で来た常連客は、誰からも話しかけられることなく、1人の時
間を延々と楽しまなくてはならない。話しかけたいのは山々だが、物理的に無理なの
だ。まあ常連客の方も勝手知ったる店だから、状況を理解してそれなりに過ごしてく
れるのでありがたい。

 今日は混雑を予想して氷やフードを大量に仕込んだのだが、1日で全て無くなって
しまった。明日は普段より数時間早く出勤して、仕込みなおさねばならない。

▼1人で飲むこと

 以前、仕事の後に知り合いのバーテンダーの店に1人で飲みに行ったことがある。
僕はあまり1人で飲むことはないのだが、その時は何となく気が向いたので、たまに
はいいかなと思って出かけたのだ。

 知り合いの店は渋谷にあるのだが、深夜だというのにその日は多くのスペイン人が
カウンターを占拠していた。まるでスペインの片田舎のバーに来たよそ者の気分だ。
僕はカウンターの端の席を1つ空けてもらい、酒を飲みながら知り合いの手が空くの
を待った。しかしスペイン人が次から次へとオーダーするので、ずっと放っとかれて
この上なく手持ちぶさたである。隣で大声を張り上げている男も何を喋っているのか
全然わからない。本を読むには明かりが薄暗すぎる。することがない。

 さてそれでは自分の人生でも振り返ってみるかと思ったりもしたが、店内のあまり
の騒がしさに落ち着いて考え事も出来やしない。もう、カウンターに入って知り合い
の手伝いをしてやろうかとも考えたが、そんなの余計なお世話だ、と思ってやめた。
全く何もすることがない。最悪だ、帰りて〜、面白くね〜、来るんじゃなかった〜と、
とても後悔した。こんなときの時間の使い方が下手なんだと、つくづく思った。

 自分がこんなふうだから、当店に1人でやって来る知らないお客に対して、とても
緊張して接してしまう(ことがある)。たいていお喋りな方が多いのだが、それでも
あまり話し過ぎない方がいいのか、そのままずっと喋っていた方がいいのか、よくわ
からない時がある。気が合えばまだいいのだが、相手の話に興味が沸かなかったりす
ると、困ってしまったりする(相手は気付かないだろうけど)。でもそんなこと言っ
たら、興味が沸くことなんて極めてレアなんだけど。

 これはひとえに僕が1人で飲む楽しみを知らないせいだと思う。酒のこともそこそ
こ知ってるので、飲みに行ってもバーテンダーと話したいことが見つからない。むし
ろバーテンダーとはあまり話したくない。気を遣って話せば、バーテンダーに対して
接客するようになり、相手を楽しませるだけで、いつも僕はくつろげない。

 だから僕は1人で飲むくらいなら、家に帰って1人でやりたいことをやってる方が
断然好きだ。これは気遣いを仕事としていることの反動なのだろうか。それともただ
の内向的なヤツなのか。う〜ん、自分のことはよくわからない。


12月15日

▼痴漢行為

 今日、バイトが出勤してすぐ、興奮して僕に話しかけてきた。

「昨日の帰りに電車で痴漢に間違われちゃったんですよ。車内が超満員に混んでて、
僕が持ってた荷物が人波にさらわれそうになったんで、慌ててグイッと引き戻したら、
女の人のお尻に手が当たっちゃったんです。そしたらその女がもの凄い目でキッと睨
むんですよ」

「何だよそれ。理由はどうあれ女の人の尻を触ったんだろ。不可抗力にせよ相手から
見たら痴漢じゃん。それでおまえはどうしたの?」

「知らん顔してやりましたよ」

「何だよそれ。それじゃ普通の痴漢とリアクションが同じじゃん。おまえただの痴漢
じゃん。すぐに謝ればよかったのに」

「嫌ですよ。カッコ悪いじゃないですか」

「そうかなあ。痴漢だと思われる方がよっぽどカッコ悪いと思うけどなあ。変なの」

 実際に触っておきながら、僕はそんなつもりじゃなかった、痴漢じゃない、だから
謝らない、などと自分を正当化しているこのバイトは、とてもカッコ悪い。触る気で
触ろうが、誤って触ったんだろうが、相手には知る由もないし、どっちでもいいこと
だ。こういう時に反射的に「すみません」と謝れなきゃ、店でも良いサービスは出来
ないだろうな。明日からビシビシ鍛え直すの刑に処す。

▼迷子

 このバイトは吉祥寺に住んでいるのだが、先日帰りの電車でぼんやりしていて一駅
乗り越してしまった。上り電車が終了していたうえに、タクシーに乗るお金も持って
いなかったので、駅前交番で帰り道を尋ねて、歩いて帰ることにした。しかし、いく
ら歩いても家が近づかない。

 おかしいおかしいと思いながら、かれこれ2時間ほど歩いたところでもう一度人に
尋ねると、吉祥寺からむしろどんどん離れて歩いていることがわかった。そこは調布
だったのだ。彼は疲労と情けなさから泣きたくなる気持ちを抑えて、今来た道を戻っ
た。今度は道を間違わずにようやく家に辿り着いたのは、なんと朝5時だった。この
バイトは4時間も迷子になってさまよっていたそうだ。なんてバカなやつだ。げろげ
ろ。嫌いになりそ。


12月12日

▼甘酒

 数年前から大の甘酒ファンである。それまではむしろ大嫌いだったのだが、妻の薦
めでとてもおいしい甘酒を飲んだその日から、突然大好物になった。この甘酒は別に
特別なものではなく、ただ米と米麹のみを使用して造った普及品である。900ml
ビンで値段は495円と安い。この製品には米がたっぷりと入っていて、「甘酒粥」
と呼んだ方がいいかもしれない。

 以前、ごくたまに口にした甘酒は酒粕の臭いがプンプンしていて、あまり飲む気が
しなかったし、おいしいとも感じなかった。甘酒とはそういう味なのだと思っていた。
しかし、米・米麹のみの甘酒を飲んで、今までの僕の記憶とは全く違ったふくよかで
すっきりと甘いメチャウマな味わいに、大袈裟だが、ぶん殴られたようなショックを
受けた。「これが甘酒だったのか・・・」と愕然とした。

 ネット上で甘酒を調べてみたら、米・米麹のみを使う方法と、酒粕を使用する方法
の2通りあることがわかった。どちらが真っ当な造り方なのかはわからない。僕自身
は米・米麹のみ使用を推奨したいところだが、酒粕入りのメチャウマ甘酒が存在する
かもしれないので、ここで断言はできない。

 最近、特定のおいしい甘酒ばかり飲んでいたので、かつて飲んだことのあるメチャ
マズ甘酒と比べてみたくなり、今日、大手練乳メーカー製の缶入り甘酒を買って飲ん
でみた。果たしてそれは、かつて僕が大嫌いだった当時そのままのメチャマズ振りを
継続していた。あまりにマズすぎて、思わずその合成的マズさをしっかりと記憶する
ために、逆によお〜く味わってしまった。

 缶の正面に「甘酒は米からつくられた自然飲料です」と書かれており、缶の後側の
原材料名には「砂糖、酒粕、米麹、食塩、酸味料」と表示されている。おいおい、米
を使ってね〜じゃね〜か!嘘つき! 僕は唖然としてしまった。看板に偽りありとは
このことだ。原材料名は、一般的に多く使用している原料順に書かれている。という
ことは、この甘酒には砂糖と酒粕が最も多く使用されているということになる。

 こんな甘酒を売って、メーカーは世の中の甘酒嫌いを増やそうとしているのか。そ
れとも消費者の味覚を「甘酒もどき」に合うように下げようと考えているのか。どち
らにせよ、こんなまがい物を提供しているメーカーを疑ってしまう。

 以前、当店のバイトたちに僕の愛飲している甘酒を振る舞ったことがある。彼らは
あまり甘酒に興味などなかったのだが、飲んでみて今までの甘酒の印象とは異なった
抜群のおいしさに、皆、考えが一変したようだった。やっぱり本物は強い。

 大手メーカーの商品には良心を感じられるものが少ない。どうやったら売れるか、
どうしたら買ってくれるかと、儲けることばかり考えていて、優れた商品を提供した
いという気持ちがまるで伝わってこない(それ故に大手メーカーとして成り立ってい
るといえる)。そのメーカーの手に乗せられてホイホイと購入してしまう消費者が多
いせいで、メーカーは「売れてんだからいいじゃん」と、悔い改めることもない。

 結局、メーカーを増長させているのはいつも消費者だ。消費者が確かな選択眼を持っ
ていれば、メーカーは少しは真っ当な商品を提供するようになるというのに。しかし
そんな時代はやって来るのだろうか。CMやパッケージに踊らされて購入する消費者
が減るようなことはあるのだろうか。これを考えるといつも沸々と燻ってしまう。


12月10日

▼本日の鳴海

 いつも通りに出勤。週末の忙しさでストック用アイスがゼロ。約4時間かけて2日
分を割り冷凍保存。副店長に誘われ営業前に回転寿司で夕食。部下3人に奢る。店が
暇なので途中で早退。書店で「新潮ムック別冊・ビートたけし編集長・コマネチ!2」
「新憂国呆談・神戸から長野へ 浅田彰 田中康夫」「ミッドナイトコール 田口ラ
ンディ」を購入。電車内で「ミッドナイトコール」一話目「アカシヤの雨に打たれて」
を読み感動。このアカシヤはロールキャベツで有名なアカシヤか? ランディさんの
凄さを再認識。

 帰宅後、テレビで「K1」鑑賞。武蔵、辰吉ばりのふざけたパフォーマンス空しく、
こてんぱんにのされてKO。めちゃカッコ悪。ゲラゲラ笑いころげる。アーネストホー
スト最年長35歳での優勝に拍手。食事しながらビデオ録「松本紳介」鑑賞。2人の
かけあい面白すぎてタメになる。食後、日本映画「女の園」(昭和29年)鑑賞。ラ
ストシーンに涙する。若者が現代の老人喋りでオモロ。コギャル語も50年後にババ
ア語となるのだ。「セリエA速報」鑑賞。中田のひさびさスタメン出場に驚喜。アナ
の「スタメン出場したが後半〜」のところで録画部分終了。中田は交代か? 残念。
ビデオデッキの時計時刻修正。「久保田・蔓寿」「八海山・純米吟醸」に舌鼓。

 2匹の愛犬ネネ、モモのトイレタイム、裏庭へ。満月がデカく眩しく輝き足下を明
るく照らす。気分良い。満月の夜は決まってちょんまげの飛脚が土手を走る映像が浮
かぶ。電気が無い時代の月明かりの大切さを想像。

 明日あさっては久し振りの2連休。めちゃ嬉しい。思いっきりのんびりしたい。毎
日ヘトヘトで眠くて書けないメルマガ用コラムも書く予定。


12月9日

▼サミュエルアダムス・トリプルボック

 今日の夕方、アメリカンビール「サミュエルアダムス・トリプルボック」(777
円)を初めて飲んだ。このビールはアルコール度数17.5度とビールで一番高く、
麦汁成分が通常の4倍、ビン内熟成10年可能という特殊イーストを使用して数年間
樽熟成したビールである。

 どす黒い液体をグラスに注ぐ。泡が全く立たない。なんと炭酸が入っていないのだ。
飲んでビックリ、すげえ味だ。ビールだと思って飲んだらウゲ〜〜ッと吐き出しそう
になった。なんじゃこりゃ〜〜。濃い紹興酒にアンゴスチュラビター(苦み酒)を混
ぜたような凄まじい味わいだ。こんなのビールじゃないよ〜。

 部下3人が回し飲みして、皆思いっきり顔をしかめている。「もっと飲めよ」と勧
めても、もう誰も口にしない。副店長が「これじゃ罰ゲームっすよお!」と吠えてい
る。仕方がないので僕が1人で飲んだ。僕は癖の強い酒は得意な方なのだが、このビー
ルにはまいってしまった。でも味を忘れないように、一生懸命飲んだ。いくら飲んで
も慣れない。舌が痺れてきた。しかし、もう二度と飲まないビールなのだ。最初の衝
撃は二度と味わえないのだ。そう思って無理矢理記憶に刻みつけるように飲んだ。こ
の味がトラウマにならなければいいのだが・・・



12月8日

▼クリスマスソング

 街中にクリスマスの装いが施され、クリスマス商戦たけなわといった感じだが、こ
のクリスマス用ディスプレイの飾り付けは、年々早まっているのだろうか。以前は、
11月1日にガラリとクリスマスモードに突入していたと思ったが、今年は、10月
後半からあちこちで見かけられた。

 今日、当店のオーナーから「まだ店ではクリスマスソングをかけないの? 今日か
らかけようよ」と言われた。この時期になると決まってクリスマスソングをかけよう
と急かされる。今や冬の風物詩の1つである。

 街中にクリスマスソングが流れていて、それによって買物客の購買意欲をそそる手
法は当然アリだと思う。しかし当店でこの時期から流すのは全く気が進まない。自分
の中ではまだまだ季節外れなのだ。お客様には街の喧噪とクリスマスソングから離れ、
通常の当店の雰囲気を楽しんでいただきたいと考えている。

 今年のクリスマスイブは日曜だから、せいぜいその2日前の金曜ぐらいからクリス
マスソングをかけるのが僕にとってはベストである。しかし、イブの前週はクリスマ
スパーティーの流れでいらっしゃる方も多いので、死んだ気で(ちょい大げさ)20
日ぐらいからかけるかもしれない。

 当店は15枚ほどのクリスマス用CDを所持しているのだが、街角で耳にするよう
なストレートな曲はほとんど無い。ジャズ仕立て、ブルース仕立て、クラシック仕立
て、ボサノバ仕立て、フュージョン仕立て、アカペラなどなど、一聴してそれとすぐ
にわかるものは少ない。買い物をしているときに耳にする曲とはひと味違ったものを
かけたいのだ。同じような曲は、お客様も耳タコだろう。

 今年のイブは日曜ということもあって、例年に比べて静かでゆったりとした雰囲気
のクリスマスになるだろう。恋人たちの愛がより燃え上がるように心地よいBGMで
素敵なクリスマスを演出できれば、と考えている。


12月6日

▼増税実施見送り:発泡酒・ワイン

 【自民党税制調査会は5日午前、発泡酒やワインなど酒税の増税について、200
1年度の実施見送りを決めた。この日、大蔵省は「酒類ごとの税率格差を是正する必
要がある」と増税案を文書で正式に提示したが、自民税調の議論では「個人消費に悪
影響を与える」などと慎重論が大勢を占め、見送りが決まった。
                            (12月5日WEB毎日新聞)

 ものすごい勢いでシェアを伸ばしている発泡酒に対する増税が見送られた。ホッと
している人も多いだろう。ビールの約半額で売られている発泡酒があるおかげで、晩
酌の際、ビールなら1本のところ発泡酒は2本(奥様に気兼ねなく)飲むことができ
る、なんていう人も多いはずだ。

 うちの近所に最近、超大型スーパーがオープンした。酒売り場を覗いて驚いたのは、
国産ビールが1種類も置かれていないのだ。全て発泡酒である。ビールは外国産のみ
で、オランダのハイネケン、チェコのピルスナー・ウルケル、アメリカのサミュエル・
アダムス、フランスのクローネンブルグなどが置いてあり、発泡酒をあざけ笑うよう
な真っ当な品揃えになっている。しかしこの売り場を見て、いかに発泡酒の人気が高
いかを、まざまざと見せつけられた。

 発泡酒を増税したら、政府や自民党の支持率が更に下がってしまうと危惧して見送っ
た部分もあるのかもしれない。もし来年の参院選挙で自民党が圧勝するようなことに
なったら、今度こそ増税されてしまうかも。

 今日、アサヒビールの営業マンから聞いたのだが、来年早々アサヒからも発泡酒が
発売されるそうだ。今まで耐えに耐えて発売を見送ってきたのだが、もう我慢も限界
らしい。

 なぜ発泡酒を売らずに我慢しているのかというと、ビールメーカーから見ると発泡
酒なんてあんなものビールじゃない!という思いがあるのだ。気持ちはわかる。純粋
なビールメーカーではないサントリーがスーパーホップスを発売して人気を博し、そ
れを見てサッポロビールが追随し、その後キリンビールがシェアを落としたため仕方
なく参入した。キリンは「発泡酒など発売する予定はありません」と言い切っていた
のに、である。

 僕から見れば、アサヒはスーパードライという発泡酒のような味わいのビールをす
でに作っているのだから、何を躊躇する必要があるのだ、と疑問に思ってしまうのだ
が、ビール屋にはビール屋の「ある一線は越えられないプライド」があるのかもしれ
ない。

 その気持ちをぜひ本格ビール造りに向けてほしいものだが、いかんせん多くの日本
人は本格ビールの出現を望んでいない。大手メーカービールがあれば満足できてしま
うのだ。だから本格ビールを作っても売れない。それがわかっているからメーカーは
作らない。従って同じような味わいのビールを名前を変えて、新発売!とかいって売っ
ている(私見)。このような状況が変わる日は、果たしてやって来るのだろうか。


12月5日

▼某東京情報雑誌が嫌いになった日(もともと読んでないけどね)

 今日、某東京情報雑誌のフリーライターと思しき女性から、店に電話がかかってき
た。何でも1月発売の同誌に「女性バーテンダー特集」を組むので、当店の女性バー
テンダーを紹介したいとのこと。この雑誌読者の年齢層は、当店の客層よりも若いの
ではないかと思ったが、特に断る理由もないので、話を聞くことにした。しかし、こ
のライターはメチャメチャ感じの悪い女だったのだ。

 この女性は取材願いを淡々と機械仕掛けのように抑揚なく話す。しかもお願いとい
うよりも、お宅に断る理由などあるわけないでしょ、うちは有名雑誌よ、載せてあげ
るのよ、とでも言いたげな高圧的な感じで「掲載許可をいただけますか」と極めて事
務的に語っていた。極めつけは次の言葉だ。

「女性バーテンダーは、なるべく若くて写真写りの良い方を御用意して下さい」

 ばーろー!うちはコンパニオンの派遣会社じゃね〜!風俗雑誌のモデルじゃないん
だから、年や顔なんて関係ね〜じゃね〜か。なんたる無礼者。なんたる厚顔無恥。お
まえなんかの関わってる雑誌の手助けなどしてやるもんか、ばーろー。へっくしょい。


12月3日

▼一石二鳥を求めるバイト希望者、一兎をも得ず

 今日、厨房でパーティーの準備をしていたら、副店長がやってきて僕に言った。

「いまバイト希望者の男が来てるんですけど、店の雰囲気を見たいから客として1杯
飲みたいって、カウンターで飲んでます」

 なんだそりゃ。店が気に入らなきゃバイトの応募をしないんだろうから、黙って普
通の客として飲んで、後日あらためてやって来りゃいいのに。そんなことを最初にわ
ざわざ言うなんて変なヤツ。すでに悪印象。

 副店長は続けた。

「そいつがこの店の責任者に会いたいって言ってるんですけど」

「いま忙しいんだよ。バイト希望者に呼ばれてのこのこ出て行く時間なんかない」

「はい、オレもいま忙しくて出て来れないって言っておきました」

 僕は腹が立った。そのバイト希望者は、応募前に店のことをいろいろ尋ねて、自分
の希望に合う店かどうかを事前に調べようとしている。つまり逆面接である。彼は僕
を面接しようとしているのだ。なんて打算的で傲った薄っぺらい人間なのだろう。
僕は副店長に言った。

 「お客様の立場でアルバイトの内容をいろいろ聞かれても、こちらとしても話し方
に困ります。当店で働いてみたくなったら、あらためて面接に来て下さい。その際に
質問にお答えします。今日のところは店の雰囲気を楽しんで下さい、って伝えてくれ。
ただし面接には呼ばないけどね」


12月2日

▼無神経

 今日、バイトの女の子に常連客(40代の男性)・安達さん(仮名)の話し相手を
させたのだが、このバイトが常連に向かってとんでもないことを口走ってしまった。

 最初は僕が安達さんと喋っていたのだが、ドリンクオーダーが入ったので、近くに
立っていたホールの女の子に接客を頼んだ。この28歳の女の子は急に話すように振
られて焦ったのか、少しの間沈黙しながら常連客をしげしげと見つめた後、ゆっくり
と口を開いた。

女バイト「やっぱり年をとると、額の髪の生え際はだんだん上がってっちゃうものな
     んですか」

 ガツーンと僕の体に衝撃が走った。バカか! こいつ髪の薄いお客さんに向かって
何てことを言うんだ!

僕「おい!何を言ってんだ。失礼なこと言うな」

女バイト「えっ? でもさっき安達さんが御自分でこの話をされていたんですよ」

僕「安達さんはいいんだよ、何話したって。その話をおまえがするな。まったくもう」

安達さん「店長、いいんだよ。オレ全然気にしてないから」

僕 「そうはいきませんよ。おい、失礼なこと言うんじゃない!」

 彼女がなぜこんなトチ狂ったことを言ってしまったかというと、安達さんはとても
人が良くて気さくな方で、おまけに鋭く突っ込まれるのが大好きな方である。そこで、
いつも僕は激しくツッコミまくっているのだが、それを彼女は近くで聞いていて、自
分も同じようにやっていいんだと勘違いをしてしまった。こっちはツッコミを入れら
れるようになるまで、時間をかけてコツコツと信頼関係を築いてきたっつーの。それ
にいくら突っ込むったって、そんな失礼なこと言わないよ。まったくわかってないヤ
ツだ。

 その後、安達さんは自分が住んでいるマンションのことを話し始めた。

安達さん「前に住んでいたマンションより今の方が1500万も高いのに、今の方が
     部屋が狭いんだよね」

僕「そうなんですか。ちなみに何Fですか?」

安達さん「今はね、66Fなんだ」

女バイト「え〜っ? それは狭〜いですね!」

僕「おい!やめろ!」

女バイト「いえいえ(と僕を制し)、私のアパートだって20Fありますよ」

僕「バカヤロー!やめろっつってんだよ!」

安達さん「何だよ、オレんちはおまえのアパートの3倍しかないのかよ(笑)」

 この女バイトがこんなにアホだとは思わなかった。安達さんが気にしていないから
よかったものの、場合によってはクビにしなければならないところだ。後でこの女バ
イトを呼び出して、大目玉を食らわせたのは言うまでもない。



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