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RANDOM DIARY TOUR
鳴海諒一日記 SINCE 6/18.2000




2004年 12月28日

▼フレッシュジュース

 先日、ホールのお客様にオーダーされたソルティドッグを作り、アルバイトが持っ
て行った。が、バイトはカクテルを持ったまますぐに戻って来た。「お客様が、グレー
プフルーツジュースの色がちょっと薄いんじゃないかっておっしゃるんです」と言う。
僕は言った。「それはフレッシュジュースを使ってるから、パック入りや瓶詰めの濃
縮還元ジュースみたいに色が濃くないんだよ。お客様に、フレッシュジュースを使用
しているので、って伝えて」

 バイトは、わかりましたと言ってお客様のテーブルに再び向かい、説明してカクテ
ルを置いて戻ってきた。納得して下さった?と聞いたら、「あの〜、何でフレッシュ
ジュースを使うんだっておっしゃってるんですけど」との答え。びっくり! このよ
うなお客様の疑問はバー人生で初めてだ。

 すぐさま副店長がすっ飛んでいき、お客様に丁寧に説明した後、お客様がソルティ
ドッグを一口飲んで言った。「何だこりゃ〜〜っ!!めちゃめちゃ美味いよ!!!」
 
 ホッ。お口に合って本当によかった。実は当店のソルティドッグ(他にもフレッシュ
ジュースを使用するカクテルの多く)には、ウォッカ、グレープフルーツジュース以
外に2種類の材料(社外秘)を入れている。これによってフレッシュジュースが、よ
りいきいきとし、さらに美味しさが増すのだ。フレッシュジュースはフルーツの状態
によって甘みが変化するので、それだけでは水っぽくなる場合がある。当店のモットー
は、ゆっくり時間をかけて飲んでも最後まで美味しく飲めるカクテルづくり、なので、
スタンダードカクテルでもカクテルブックどおりに作ることは希なのだ。だいたい様々
なアレンジを施している。これは別に自慢ではなく、どのバーも自分の店の味を強調
し、他店との差別化を図っている(はずだ)。

 カクテルのことを書くのはとても久し振りなので、さぞ懐かしかったでしょう?


12月26日(日)

▼近況

 年末の繁忙期に対応するため、先週日曜日に年内最後の公休をとり、その後、毎日
忙殺されている。今日はクリスマス明けの日曜日で、もしかすると多少暇かもしれな
いと予想していたら、案の定(というよりそれ以上に)超ド暇だった。そこで明日か
らの怒濤の3日間(毎年必ず混み合う)前に氷のストックを十分満たすために、営業
中ずっと裏で氷を割っていた。で、氷もバッチリ準備できたので、部下の勧めに従っ
て2時間ほど早く帰ることにした。いやあ、たったの2時間とはいえ、すこぶるあり
がたい。ルンルンスキップランランランと店を出た。

 帰りに普段の帰宅時間には閉店している古本&中古CD店が開いてて嬉しかったの
で、立ち寄ることにした。最近めちゃめちゃハマっているテナーサックス奏者=ジョ
ン・コルトレーンのCDを探したら、次に購入を予定していた1966年録音「ヴィ
レッジヴァンガード・ライブ・アゲイン」があった! 多少傷あり物だが1200円
と格安だ。すぐさま手に取りレジへ向かった。傷物なのでディスクを確認させてもらっ
たが、たいした傷ではない。むふふ。で、買おうと思ったら、ディスクに『キース・
ジャレット』のなんたらとかいうタイトル名が書いてある。だっふんだ! 中身が違
うじゃにゃーきゃ。店員に探してもらったけど、結局みつからなかった。地団駄。

 1ヶ月半くらい前、レンタル屋でいつものように勉強を兼ねてピアノ系ジャズCD
を何枚か借り、何の気無しにコルトレーンの1965年録音「ファースト・メディテー
ション」というCDも借りた。運命的出会いである。このCDを聴いてぶっ飛んだ。
めちゃめちゃすげ〜〜!のだ。こんな凄まじい演奏を僕はいまだかつて聴いたことが
なかった。

 「ファースト・メディテーション」の演奏は、全曲ワンコードで進行し、コルトレー
ンは様々な奏法で吹きまくる。幻想的で優しくてクールかと思えば悲痛で破壊的でも
ある。コルトレーンの演奏は僕の魂をゆさぶり、心を揉みほぐし、ストレスを昇華さ
せてくれた。ナチュラル・トランス状態とでも言おうか。とてもいい気分である。実
に素晴らしいアルバムだ。コルトレーンのCDは6枚ほど持っているが、今まで聴い
たどのCDとも違うコルトレーンがそこにいた。

 その後、現在までの1ヶ月半の間に、コルトレーンのCD(リーダー作、参加アル
バムを含む)を46タイトル入手した(主にレンタル)。借りてきたCDのジャケッ
ト、解説を、帰りにコンビニでコピーし、帰ってきてからCDROMに焼き、MDに
録る作業を毎日繰り返している。そして通勤の行き帰りや店の準備中、休憩中、犬の
散歩中、料理をしている時などに聴いている。また、就寝前や電車内でコルトレーン
関連本も読んでいる。もう完全に恋におちてしまった。現在メロメロ中である。

 コルトレーンは録音の年代のみならず、アルバムによって奏法が様々に変化する。
その違いを聴くのがが面白くて楽しくてしょうがない。年代物のウィスキーを飲む時
のように、今日は何年何月何日録音を聴こうか迷うのも楽しいし、その前後に録音さ
れたアルバムとの関連性や違いをあれこれ考えたり想像するのも楽しい。

 年末の疲れた体の心にピッタリとリンクするコルトレーンが、現在僕の最大のマイ
ブームであり、そしてカンフル剤なのである。

 と偉そうに締めくくって今日はおしまい。


11月24日(水)

▼クソまず麺

 近所に都内繁盛ラーメン屋の系列店がある。昨年オープン直後に二度食べに行った
が、あまりのマズさに辟易し、二度と来るかこのやろーと憤った(二度食べたのは不
味さの確認)。その後しばらくして、テレビのラーメン特集番組で、このクソマズラー
メン屋が取り上げられていた。この店のオーナーは、行列のできる店など簡単に作れ
ると高を括っていたようだが、その甘い考えが災いし、現実には全く流行らず、頭を
抱えていた。そこでラーメン作りを一からやり直し、スープの味を変え、麺も変えた
のだった。

 この番組を見て興味を持ち、僕は(ダメもとで)再びこのラーメン屋を訪れた。す
ると、かつての醤油ラーメンはやや細めの丸麺だったのが、リングィーネ(パスタの
種類)のような平打ち麺に変わり、食感が少し良くなっていた。スープも以前に比べ
ると、まあ食えないほどの味ではなくなっていた。その後、近所にろくなラーメン屋
がないこともあり、一ヶ月に一回くらいの割合でこのラーメン屋にも行くようになっ
た。ああそれなのに……

 先日行って、いつものラーメンを食べて驚いた。なんと醤油ラーメンの平打ち麺が
再びクソまず丸麺に戻っていたのだ。なんじゃこりゃ! 僕は店員を呼び寄せ「麺、
変わったんですか?」と聞いてみた。すると店員は「はい、新しく作り上げた麺に替
えました」とのたまっていた。しかしユーアーライヤー!これは明らかに以前のクソ
まず丸麺である。

 この店は、醤油ラーメンに平打ち麺、塩ラーメンには丸麺と二種類の麺を使用して
いた。しかし売上が上がってちょいといい気になったようで、絶望的な改悪を行って
しまった。こんな客を莫迦にしたラーメン屋にはもう二度と行かない。きっと僕と同
じことを考えている客は多いだろうから、今後どう朽ちていくか静観することにしよ
う。

 数年前にわりと頻繁に通っていた中華料理店があった。そこのあっさり塩味タンメ
ンが大大大〜好きだったのだ。それがある日突然、莫迦みたいに魚臭くて食えたもの
じゃないくそまずタンメンに変わってしまった。壁には「スープがいっそう美味しく
なりました」と書いた紙が貼ってある。でも、その“いっそう美味しいスープ”が魚
臭くて飲めやしないのである。まったくなんつーことをしやがったのだ。あほか!滅
びるぞ!二度と行かねえ!と思った。そしたらしばらくして案の定、潰れてしまった。

 最近、最寄り駅の駅前に某ラーメン屋のチェーン店がオープンした。このラーメン
屋も笑える。ラーメンを客前に置いた後、必ず「よろしければこの辛子味噌とコショ
ウを入れてお召し上がり下さい。いっそう美味しくなりますので」と言うのである。
で、一度勧めに従って入れてみたら、ラーメンの味がとてつもなく変化して、本来の
味が消滅し、別物になってしまった。マズかった。。それ以来、店員の勧めには従っ
ていない。

 ちなみにこのラーメン屋では、麺を茹でる時にデカイ声で「麺入りま〜す!」と言
う。すると従業員一同がこれまたデカイ声で「ありがとうございま〜す!」と答える
のである。全くもって意味不明である。彼らはいったい何に(誰に)対して感謝の言
葉を発しているのだろう? 謎である。

 あと、最近どのラーメン屋でもラーメンをもってきて一言「どうぞごゆっくり」と
言うけれど、ラーメンに「ごゆっくり」は似合わない。僕はこれを聞くたびに、「っ
たく、ラーメンはゆっくり食うものじゃないだろーが」とがっかりする(店員がこの
言葉を使いたい気持ちはわからないでもないけどね)。で、「どうぞごゆっくり」と
言う店で、美味いラーメンが出てきたためしがないのは僕の行動範囲が狭いせいか?


11月9日(火)

▼電波時計

 先日、常連客Zさん(以下、Z)が、購入した電波腕時計見せに来た。この時計は
外国製で、価格は60数パーセントオフ=19800円と大変お買い得だったそうだ。
彼は、送られてきた“未承認ダイレクトメール”でこの時計を知り、飛びつくように
買ったとのことだった。

 電波時計の右側に付いている2つのボタンの1つを押すと、秒針がぐるりと回転を
始め、月、日、曜日の位置を順に指す。おもろい機能だ。さてもう1つのボタンはな
んじゃらほいとプチッと押してみたら、時計が停止した。「あれっ、止まっちまいま
したけど」とZに言うと、「ダメだよ!そのボタン押しちゃ〜!」と叱られた。どう
やら強制時刻補正を開始してしまったようだ。

 Zの話では、時刻補正を始めると“10分間ほど時計は止まったまま”で、その後、
針が正確な時刻の位置までグイーンと高速で回転するとのこと。待つことしばし。電
波時計の針がグルグルグルっと回り、現在の時刻でピタッと止まった。

 その時刻が本当に正確かどうかを確かめるために、ミスター疑心暗鬼な僕は117
に電話した。さすがである。その最先端技術の結晶、外国製電波腕時計の時刻は、な
んと117の時報より“2秒ジャスト”遅れていた(笑) だいたいこの時計は、時
刻補正で止まった時点で、僕の30秒〜1分進ませてある腕時計よりも、2分進んで
いた。前回の時刻補正の5時間後に+2分〜+3分である。これって……???

 Zによれば、この外国製電波腕時計は、午前1時と午後1時に時間補正のため、毎
回10分少々止まる(!)というのだ。午前1時はまだ良いとして、午後1時といえ
ば、会社員は昼食タイム終了時刻である。1時前に帰社していれば問題は無いが、ちょ
こっと帰るのが遅れたら、何分遅れたかわからなくなってしまう。なんともすげえズッ
コケ時計である。時刻をジャストにするために12時間ごとに10分ずつ、24時間
で20分以上も止まる時計ってアリなの? 当店のバイトに尋ねてみたら、皆、声を
揃えて「ありえない」「ほしくない」を連発していた。

【結論】 この電波時計は、12時間ごとに時刻をジャストに補正するんだからその
間に時間が狂ってたって別にいいじゃん的発想で、時計そのものは精度の低い安物を
使用していると僕は邪推している。な〜にが誤差は10万年に1秒(宣伝文句)だい! 
もっと真面目にやれ〜っての。ということで、皆さん、電波時計には10万年、じゃ
ない、十分気をつけよう。

▼お詫び

 ということで、また2ヶ月半も更新をサボってしまいました。いつも訪れて下さる
方々を含め延べ6千数百人の方々、このバガヤローをどうかお許し下さいまし。


8月29日

▼一杯飲んでよ

 カウンターで接客をしていると、お客様から「一杯飲んでよ」とお酒をすすめられ
ることがある。当店は仕事中に飲酒しないため、丁重にお断りするのだが、「ああそ
うか仕事中だもんね」と理解してくれる方は少ない。すすめたら飲むもんじゃないの?
と意外に思われたり、一緒に飲めばいいのにと残念がる方もいる。

 当店が小さな店で、そのお客様だけを相手にしているのなら、多少おつき合い程度
に飲むことも必要かもしれないが、当店は100席ほどある店である。ほろ酔い気分
で働いてはいられないのだ。

 先日も中年男性にしつこく飲めとすすめられたので、「お客様と一緒ですよ。仕事
中はお飲みになりませんよね」と言ったら、「オレは飲む!昼食の時はいつも飲む!」
と凄まれた。昼食中は厳密には仕事中ではないと言おうと思ったが、話がよけいこじ
れるのでやめた。

 以前、仕事が終わってからよく行っているバーがあった。そこのバーテンダーは皆、
深夜になると売り物のウィスキーを自分でグラスに注いで飲んでいた。彼らは僕に、
仕事中に酒を飲まないなんて信じられないと言っていた。で、僕は仕事中なのに酒を
飲んでるおまえらが信じられないと言っていた。

 以前、お客とのつき合いで、そのお客の行きつけのスナックへ行ったら、そこのマ
マとマスターがお客のキープボトルを自分のグラスにドボドボ注いでガンガン飲んで
いた。目が点になった。これが水商売ってやつか!と思った。お酒を楽しみとして飲
んでいるのではなく、早く空にしてもう一本キープさせようとしているようにしか見
えなかった。こんな商売は絶対にしたくないし、こんな店には二度と来たくないと思っ
た。

 僕たちはお客様と接客している時に、酔っぱらいと話しているという意識が全然な
い。また、こちらは酒を飲んでいなくても、ほろ酔いのようなテンションになること
ができる。だから酒など飲まなくていいのだ。それに仕事中に飲んだって営業前の試
飲の時と一緒で「いかに酔わないか」を心がけるばかりで、面白くもなんともない。

 酒好きのお客様は僕たちもきっと酒を飲みたいに違いないと思うかもしれないが、
それは大きな間違いだ。僕たちは仕事中に全然飲みたくないのだ。だからどうか仕事
中にお酒をすすめないでほしい。どうせならその分をチップで置いていってほしい。
と、これはウソ。あはは。


8月5日

▼お湯

 先日、仕事の帰り道に無性にカップラーメンが食べたくなった。家の中で食べると
においが部屋に充満するので、車の中で食べることにして、いそいそとコンビニへ向
かった。店内に入り、どこぞのラーメン屋の名前の書いてあるコテコテ味のカップ麺
を買い、店のポットからカップにお湯を注ぎはじめたその時である。

「お客様、お湯の温度の方は大丈夫ですか?」

 店員がにこにこしながら聞いてきた。

「えっ?」

 僕は反射的にポットのスイッチから手を離した。

「大丈夫ですかって、このお湯、沸いてないの?」

「(にこにこ)いえいえ、沸いているのですが、お客様からときどきぬるいって言わ
れる時があるんですよね」

「つーか、もう注いじゃってるんだけど」

「(にこにこ)では温度の方は大丈夫ですか?」

「わかんないよ。だってどうやって確かめるの? 触って確かめろって?」

「(にこにこ)いえいえ、ぬるくなければいいんですけど」

「だってわかんないじゃん。んもう、いいよ」

 僕はお湯をカップに注いだ。もしぬるかったら返金させればいいのだ。カップラー
メンを車に持ち込み、イライラしながら5分待つ。そしておっかなびっくりスープを
飲んだ。

 熱い〜! あ〜よかった。なんだよまったく脅かしやがって。ったく変なことを聞
く店員だ。だいたいお湯の温度なんてどうやって確かめるんだよ、ったく。注ぐ前に
確認しろっつーの。ぶつぶつぶつぶつ……

 と、カップラーメンを食べながらあれこれ考えていたら、いつの間にか食べ終わっ
てしまった。げげっ!味わうのを忘れたじゃにゃーきゃ、だっふんだ! 切腹!

▼買い間違い

 今日バイトに「消臭力」という商品名の消臭剤を買ってくるよう頼んだら、このよ
く買い間違いをする男は「サワデー」の(しかも)詰替用を買ってきた。ちなみに当
店ではサワデーは使用していない。僕は唖然とし、なぜこういう買い間違いをするの
か彼に尋ねた。でも彼はしょぼくれた顔をしてボソッと「すいません……」と言うだ
けだ。今までもよく買い間違いをするアルバイトは何人かいたが、皆、的確な判断力
に欠ける者ばかりで、結局、長続きせず辞めている。果たして彼はどうなるのか?…



8月3日

▼調律

 時折、ライブハウスにジャズを聴きに行くことがある。お気に入りのミュージシャ
ンが様々な編成でライブハウスに出演するので、次はどんなプレイが聴けるのだろう、
と期待に胸膨らませて出かけるのだ。が、バットしかし、期待をもろくも打ち砕かれ
ることがある。その最も大きな原因は“ピアノの調律がなってない”ことだ。つまり
ピアノの音程がものすげえ狂っているのである。

 僕のお気に入りのミュージシャンはそんなクソピアノをものともせずに、素晴らし
いプレイを繰りひろげる。そして僕はその狂った音程を頭の中でジャストに修正しな
がら演奏を楽しむ。って、そんなのありか? ライブハウスではミュージックチャー
ジを二千円〜三千五百円ほど支払っているのだ(ドリンク代は別)。それでそんな狂っ
た音を聴かされるなんて、これってちょっと詐欺じゃねーか?と憤ってしまう。

 憤るのはピアノの音が狂っているからだけじゃない。そのピアノの狂いにその店が
『素晴らしいミュージシャンの優れた演奏をきちんとお客さんに届けたい』という気
持ちの薄さを感じてしまうからだ。ライブハウスを経営するというのは、金儲けしよ
うという気持ちでは到底できないはずである。なぜなら毎日店を満席にするようなミ
ュージシャンをブッキングし続けるのは無理だからだ。つまり音楽を愛しているから
こそできる業種なのである。売上のばらつきや少なさを、ピアノ調律代をケチること
で支出を抑えようとするなんて、音楽を、ミュージシャンを、音楽好きのお客を愛し
ているとはいえないのである(きっぱり)。

 他にも、音のバランスが悪い、飲み物(食べ物)がまずい、椅子が座りにくい、タ
バコの煙が気になるとか、店によっては様々な要素が加わり、ライブハウスは非常に
居心地の悪いものとなり、お客は次第に足が遠のいてしまう。悪循環である。

 当店はたいしたピアノは設置してないが、調律師が「こんな状態で調律をする店な
んて滅多にありませんよ」とびっくりするほど、良好な状態で調律している。でも僕
自身そんなに気をつかっているつもりはないし、これくらいが当たり前だと思ってい
る。和音がちょっと濁ってきたなと思ったら、“優れたミュージシャンの素晴らしい
演奏をきちんとお客様に楽しんでいただくために”早めに調律してもらう。クラシッ
クファンは僅かな音の狂いでも気にする人が多い。当店を訪れたそんなお客様に不快
感を与えることは避けたい。「ピアノの音が狂ってるね」と指摘されることは、僕に
とっては恥なのである(お前は音感が悪いのか、と言われている気になる)。全ての
方に楽しんでいただくための基本中の基本、それが、ピアノの音程が正確、であるこ
とだと僕は考える。

 普通、ライブハウスはだいたい1ヶ月に1回調律を行っている。つまり毎日ライブ
を行っている場合、30回に1回の割合である。当店はだいたい9回〜12回に1回
のペースで調律を行う。季節の変わり目はもっと音が狂いやすいので、もうちょっと
回数が増える。

 で、きちんと調律したピアノで素晴らしい演奏を……と思っていたら、演奏がちっ
とも素晴らしくなかった、なんてこともある。単に演奏レベル(実力)が低い場合も
あるし、今日はこのくらいでいいだろうと聴き手をナメて手を抜くこともある。また、
完全に日銭稼ぎの仕事感覚で演奏している半端者もいる。すると今度はミュージシャ
ンに対してイライラすることになる。で、そういうミュージシャンはどんどん斬って
新たな人を……と、おっとここから先はまた別の話。いずれまた。


7月25日

▼上司、部下を口説く

 先日やって来た50歳くらいの男性上司と28歳くらいの女性部下の話。二人はカ
ウンターで飲んでいた。上司は上機嫌でウィスキー・ダブルロックをグイグイ飲み、
次第に部下の肩や腕にさりげなくソフトタッチし始めた。部下は少し暗い感じの女性
で、上司のタッチをあまり気にする様子もなく、軽いカクテルをゆっくりゆっくり飲
んでいた。

 上司は部下との話に詰まると、その矛先を僕に向ける。

上司「ねえマスター! 彼女はねえ、この店をすごく気に入って、今度一人で飲みに
   来るって言ってるよ。彼女が来たらよろしく頼むよ!」

僕「(にこっ)はい、かしこまりました」
 
 ってゆーか、彼女はそんなこと何も言ってない。

部下「(おろおろ)あたし、バーには一人でなんて来られません。バーには女性が一
   人で来るものじゃない、って前に聞いたことがあります・・・」

僕「そんなことないですよ。それはずっと昔の話ですよ。今では当店にも女性のお一
  人様はけっこうお越しになりますし、当店は安心してお飲みいただけますよ」

部下「いえ、無理です。あたし来れません」

 おい上司、変なこと振るから、フォローが大変じゃねーか。僕はしばらく部下にフォ
ローを入れるハメになった。その後、

部下「そろそろ帰りましょう」

上司「おおそうだな。よし、マスター!じゃ、彼女に合うきれいな色のカクテルを一
   杯作ってくれ!」

 おいおい、帰るんじゃないのかよ。やる気満々だなこの上司。僕はかしこまりまし
たと言い、なるべく早く飲み干せるようアルコール度数の弱いショートカクテルを作っ
て出した。

上司「彼女はねえ、本当にいい子なんだよ。僕はねえ、この子に何かしようとか、ど
   うにかしようとか、そういうことはこれっぽっちも考えてないよ!」

 僕は心の中でプッと吹きだした。この上司の発言は、もし部下に「私に何かしよう
とか思ってますか?」と聞かれた時に言うのなら有効だと思うが、誰も何も言ってい
ない状況でこういうことを言うのは、部下に何かしたい、どうにかしたい、と声を大
にして宣言しているようなものではないのか? または百歩ゆずって、どうにかした
いという気持ちを声に出して必死で打ち消しているのか? はたまた、逆のことを声
に出して、部下にそれとわかるように伝えているのか?

 こういうのって心理学的にはどういう解釈なんだろう。僕が思うとおりか否か。当
店の心理学に詳しい常連の大先生、きっとこの日記を読んでるでしょうから、次回お
越しになった時に詳しく教えて下さい。あまり飲む前の正気のうちに(笑)


7月19日

▼JAZZ & BAR

 お待たせしていた新コンテンツ「JAZZ&BAR」をアップしました。BARの
雰囲気が楽しめるCDを取り急ぎ3枚御紹介してあります。どんどんアップしていき
ますので、どうぞお楽しみに〜。


7月13日

▼某国際音楽コンクール

 昨日、録画してあった番組「某国際音楽コンクール」を見た。内容はピアノ部門優
勝者と2位の人の演奏だ。両者ともそれはもうびっくりするほど音楽的じゃなかった。
ただ「弾き間違えない」だけのスケール練習のような演奏だったのだ。オーケストラ
を歌伴ならぬピアノ伴奏だと思っているのか、オケのカラオケ(ピアノパートレス)
を聴きながら練習室でひとり練習しているかのような味気なさだった。審査員の採点
方法は、弾き間違えた箇所を減点していくスポーツと同様のシステムなんだろうか。
もしそうなら「音楽コンクール」ではなく「完全コピーコンテスト」と大会名を変え
た方がよい。間違いない!(ちと古い?)

 数年前の大コンクール優勝者の同コンクールでの演奏も、全く音楽性が乏しく感銘
を受けなかった。これは僕の好みのせいだけではないだろう。審査員のひとりが、優
勝者はしばらくリサイタルを行わずにじっくりと勉強した方がよい、と評していた。
大コンクールの優勝者に捧げる言葉とはいえない。その後、彼はバンバンリサイタル
を行っている。


7月7日

▼ちゃんぽん

 ちゃんぽんといってもお酒のちゃんぽんの話ではない。長崎ちゃんぽんの話である。

 仕事帰りにたま〜に行く長崎ちゃんぽんチェーン店の店員は、「ちゃんぽん下さい」
とオーダーすると「御注文は以上でよろしいですか?」と毎回聞いてくる。それがい
つも非常にうざい。で、ちゃんぽんを持ってきてテーブルに置いて、「御注文は以上
でお揃いですか」と言う。ダブルうざい、のである。ひとつ注文しただけでお揃いも
へったくれもあるかい!と思ってしまう。ああ実につまらんマニュアルだ。

 この店は現在、「御注文は以上でよろしいですか?」と言っているが、以前は「餃
子の御注文はよろしいですか?」と聞いていた。つまり餃子を注文させて客単価を少
しでも上げたかったのである。気持ちはわかる。一番安い380円のちゃんぽんしか
出なかったら、利益は上がらないのである。だから客単価を上げるべく一言余分に言
うマニュアルを作る気持ちはわかる。でもじゃあ美味い餃子を供しなさい、と僕は口
を酸っぱくして、じゃなくて声を大にして言いたい。なんせこの店の餃子はぶっちゃ
け、すこぶる不味いんですから〜!残念!!

 この店は現在、一番安いちゃんぽんをメニュー中一番目立つように載せているが、
以前はマクドナルドよろしく、目玉商品である安ちゃんぽんをものすご〜く目立たせ
ないように載せていた。写真も高いちゃんぽんの半分以下の大きさなので、まるで半
ちゃんぽん(もしくはお子様ちゃんぽん)のようだった。知らない人は絶対に普通盛
りだと思わないだろう。店の外にのぼりを立てて「ちゃんぽん380円」を大々的に
アピールして客を呼び込み、メニューを見た客を「何だよ、半ちゃんぽんかよ!」と
激怒&愕然とさせるこの店のバーロー的手法を見て、なんだかな〜と思っていたが、
たぶん客から相次いでクレームが寄せられたのだろう。今は本来あるべきメニューに
変わった(当たり前だ!)。

 あっそうだ。今日はこんな話をしたいんじゃなかった。僕が何を言いたかったのか
というと、ラーメン屋で「ラーメン下さい」と注文したら、たいてい「かしこまりま
した」と返事をするだろう。もしラーメン屋で「御注文は以上でよろしいですか?」
と聞かれたら、僕は店員の気持ちをああなるほどと察して「じゃあ麺かため、味濃い
めで」とお金のかからない注文をしてあげたい。と、また話がそれた。

 えーとえーと何が言いたかったのかというと、ファミレスでオーダーした時、「◯
◯をひとつ」「はい◯◯をおひとつ」「□□をひとつ」「はい□□をおひとつ」「△
△をひとつ、以上で」「はい△△をおひとつ。御注文は以上でよろしいですか? で
は御注文を繰り返します」と店員がしつこく繰り返すのを聞くと、これはお客の注文
を間違えずに受けたい思うのではなく、万が一違っていた時に、あれだけ繰り返した
んだからこちらの間違いではない、と店の保身のためにやっているのではないかと邪
推しているのは僕だけだろうか? と、これが言いたかったのだ。ちゃんぽん屋の話
は関係なかった。たははは。


7月2日

▼和食作り

 最近、諸事情から毎晩(未明)朝食を作ってから寝る生活が続いている。メニュー
は和食が中心だ。いろんなものが作れるわけではないので、和食の料理本を何冊か買
い込み、本を参考に作っている。

 仕事帰りに車に乗り込み、料理本をパラパラとめくって、食べたいもの(作りたい
もの)を考える。メニューが決まると、数ヶ月前に24時間営業になった大きなスー
パーマーケットへ買い出しに行く。スーパーの24時間営業は、僕のように深夜まで
働いている者にとって、涙がちょちょ切れるほど嬉しい。

 ここ1ヶ月ほどの間、いろんな料理を作った。さといも煮、ひじき煮、切り干し大
根煮、ぶり照り焼き、鱈おろし鍋、すき焼き風鍋、などなど、他にもいろいろ作った。

 普段、ほとんど家庭料理を作っていないので、手際が悪くて自分に対してムカムカ
する。最近になってやっと、あれやってる最中にこれやって、それを暖めている間に
洗い物を済ませて……と多少は早くできるようになったが、まだまだ時間を短縮でき
そうだ(今の半分位)。今のところまるで仕事中と変わらない真剣さで日々料理に取
り組んでいる。

 毎日の献立を考えることや、料理を作ることは、けっこう楽しいものだ。料理以外
にもやらなくちゃいけないことが山積しているのだが、ちょっとそっちのけかも。


6月20日

▼Eの法則

 先日、あるテレビ番組(番組名忘れた)で「Eの法則」というテストを行っていた。
これは自分の額に指でアルファベットの「E」を書く(なぞる)だけの簡単なテスト
だ。さあ皆様、さっそく書いてみて下さい。やり終えたら以下の
印をドラッグして
下さい。答えが隠れています。

あなたは「E」を自分向き、相手向きのどちらに書きましたか? 他の人が「E」
と読めるように書いた人は、人に気遣うサービスマンタイプ。自分に向かって「E」
と読めるように書いた人は、人に気遣っているようであまり気遣わない自分中心のタ
イプだそうです。
I←ここまでドラッグしてね。

 このテストが当たるのかどうかはよくわからないが(テレビではけっこう当たると
言っていた)、よく知る友人知人にテストしてみてはいかが?


6月17日

▼お天気出入り業者

 風邪をひいたりなんだかんだなんだかんだで、また更新をサボってしまった。

 昨日のオープン準備中、週に1〜2度やってくる出入り業者が来た。彼は毎回「こ
んにちは〜」の後に必ず「過ごしやすくなりましたね〜」とか「暑いですね〜」とか
「雨になっちゃいましたね〜」と天気ネタを振ってくる。いつもそれを聞くたびに
「そ〜ですね」と言ってはみるものの、なんだかすごくうっとうしい。

 昨日の彼のセリフは「暑いですね〜。でも昨日よりは少し落ち着きましたね〜」だっ
た。ぶっちゃけ、そのまやんけ!それがどないしたっちゅーねん!と憤ってしまった。

 彼は毎回、重い荷物を運んでくるので、暑い日は額から玉のような汗がドバドバ滴っ
ている。だから毎日の気温や天気は非常に気になるところだろう。そりゃ記録的猛暑
だとか台風だったりしたら、話に乗らないわけではないけど、こう毎回毎回、見たま
んまの天気の話では(そして話は天気のことのみ)全く面白くないのである。何か他
のことも話せ!変化をつけろ!お前は気象実況中継マンかこのやろー!と思ってしま
う。

 なぜ彼がお天気のことを振ってくるのか時々考えるのだが、これは彼の会社の方針
なのではないだろうか、と邪推してしまう。つまり相互関係をスムーズにするために
お客様(僕)と多少コミュニケーションをとりなさい、と言われているのだと思う。
もしそうだとしたら、これはもう完全に裏目に出ていると言わざるを得ない。僕にとっ
て彼のボキャ貧お天気一言ネタは、「あっ来た、出るぞ、出た〜、あちゃ〜」と、思
うだけの、うざい話以外の何者でもないのだから。

 お天気を挨拶にからめることのどこが悪い!と怒っている人もいるかもしれないが、
数年間に渡って毎回100%お天気責めにあっている僕(ら)にとっては、心穏やか
ではいられない。おかげで僕は、お客様との会話にお天気ネタをからめることをほぼ
やめてしまった。

 他愛のないお天気話も、使い方を誤れば毒になる。せめて、夜は雨がやむらしい、
とか、明日は晴天らしい、などの天気予報もプラスしてくれれば、このストレスは一
気に減るのにな。でも「アナタナゼイツモ天気ノコトバカリ言ウノ? ワタシワカラ
ナイネ」と言うわけにもいかず、これからもジッと我慢の子(おっさん)でいよう。


6月2日

▼梁石目(ヤン・ソギル)さん

 以前、梁石目(ヤン・ソギル)さんの書いた名作「血と骨」(幻冬舎)を読んで、
そのあまりに壮絶な物語にびっくりし、また、文章の巧さに目を見張った。文章を書
くならこういう文章が書きたい!と思ったものだ(書けないけど)。それからという
もの、梁さんの小説・エッセイを何冊もむさぼるように読んだが、どれも内容がとて
つもなく濃すぎて感銘を受けまくった。

 先日、「血と骨」がビートたけし主演で映画化されることを知った。小説の主人公
とたけしでは、狂気という意味では共通点があるものの、体格が桁外れに違いすぎる。
いったいどんな作品になるのか逆に興味はあるが、原作を超えるのは到底無理だろう。

 ひさびさに梁さんのことを思い出したものだから、また無性に読みたくなり、先日、
「睡魔」(幻冬舎)を読み、そして昨日「夜を賭けて」(幻冬舎文庫)を読み終えた。
どちらも非常に興味深く、梁ワールドをどっぷりと満喫した。

 梁さんの小説はどれも内容が激しく、そして展開が早い。もったいぶって話を引き
延ばしたりすることはなく、ズバズバと先へ進む。そのテンポの良さがたまらない。

 数ヶ月前に、知り合いの編集者が3人で飲みに来た。仕事の話をしているようなの
で、席にお邪魔しなかったのだが、会計の時にレジで編集者に「鳴海さん、紹介しま
す。こちら梁さんです」と言われてびっくりした。「梁さん、鳴海さんは梁さんのファ
ンなんですよ」と言ったら、梁さんは人なつっこい笑顔で握手を求めてきた。梁さん
はとても人の良さそうな魅力的な方で、女性にモテモテと聞いていたが、その理由が
すぐに理解できた。

 今日、幼児売買・売春、臓器売買を題材にした「闇の子供たち」(梁石目著 幻冬
舎)を読み始めた。最初の30ページですでにガッチリと心を捕まれている。またし
ばし倒錯の世界を満喫しよう。


5月27日

▼あるピアニスト

 1年ほど前に当店に出演したあるピアニストは、両手に大きな指輪を5〜6個つけ
たままピアノを演奏した。近くで聴いていると、指輪が鍵盤に当たる音がカチカチカ
チカチとずっと鳴りっぱなしで、実に気持ちが悪かった。まるでガイコツの幽霊が歯
をカチカチ鳴らしているような感じだった。

 ピアニストにとってピアノは言うまでもなく大切な楽器であり、鍵盤は音を奏でる
ために無くてはならない命とも言える部分である。そのピアニストは、鍵盤に傷がつ
くかもしれない行為を平然と行えるだけあって、腕前の方は未熟だった。音楽に対し
ての情熱や愛情が全然感じられなかった。その人はピアノは和音を鳴らすための道具、
だと思っているのかもしれない。

 先日出演したピアニストが、わりとごつい指輪を2個、指にはめていたので、かつ
ての人の話をしてみた。すると、この人はこともなげに言った。

「ああ、それはきっと指輪の下の部分に厚みがあったせいでカチカチ鳴ったんですね」

「えっ、じゃああなたのその指輪は……?」 

「ええ、私もやっぱりカチカチ鳴りますよ」

 な〜んじゃそりゃ!? 僕は頭がクラクラした。演奏を聴いていると、以前の人ほ
どではないにしろ、やはり、小さな音がカチカチと鳴っていたし、何だか指輪が邪魔
をして自由に演奏ができないような印象を受けた。演奏レベルは、これじゃプロのジャ
ズピアニストとは認められないな、という感じ。どの曲も、イントロ → テーマ 
→ 少々のアドリブソロ → テーマ → エンディング という構成で、引き込ま
れる要素(素晴らしいソロ)が無く、期待ハズレだった。

 僕が好きな演奏者のタイプは、ほとばしるセンス、きらめくフレーズ・音色、溢れ
出る才能、個性、怒濤のインプロヴィゼーション、等々、要求が多い。そんじょそこ
らの凡才ピアニストでは到底満足できない。これらの要求を満たすプレイヤーなんて
そうそういるものか、とお思いのあなた、日本にも素晴らしいミュージシャンは存在
するのですよ。そして現在、天才的感性を持ち合わせたミュージシャンが続々と、当
店に出演して下さっている。


5月18日

▼BARのJAZZ

 バーのバックグラウンドミュージックはジャズがいい。以前、クラシック、アンビ
エント、フュージョンなどを試したこともあったけど、結論、やはりバーにはジャズ
が似合う。当店は今やジャズライブを行うジャズバーなので、特にライブの合間に流
すBGMには気をつかう。ライブの余韻を壊さないように、その日の演奏のやや延長
線上の音楽を流すこともあるし、場合によってはがらりと雰囲気を変えることもある。
選曲がピタリとハマると雰囲気も盛り上がるけど、コケるとちょっとしょぼくなった
りする。センスが求められる作業である。

 今度ひさびさにコンテンツを増やそうと思う。題して「JAZZ OF BAR」
(仮)。このCDをかければあら不思議、御家庭がバーに早変わり、的な優れジャズ
CDをちょこちょこ紹介していこうと思っている。


5月13日

▼カホン

 いまカホンという打楽器にハマっている。カホンを初めて見たのは数ヶ月前のテレ
ビ番組だ。ギタリストのチャーが「スモーキー」をドラマーとデュオで演奏していた
のだが、そのドラマーは長方形の木箱(高さ50センチ位)に座って、箱の前面を両
手でリズミカルに叩いている。最初は「ふうん、こんなパーカッションもあるんだ」
と思ったのだが、なんとそのサウンドはドラムスそのものではないか。うっそ〜〜ん!
である。おもわずテレビ画面を食い入るように見つめた。すげえ!すごいぜえ〜! 
一瞬で虜である。これはまさに僕のような手ドラマーにうってつけの楽器ではないか!
でもこの時ドラマーが使用していたカホンは手作り風だったし、だいたいカホンとい
う楽器だということも知らなかったので、まさかこれが市販されているとは思わなかっ
た。

 数週間後、楽器店に用事があって行ったら、なんとあのカホンが陳列されていた。
「あっこれだ!」 僕はカホンに近づき、打面を控えめに叩き始めた。いい音がする。
面白れ〜。すぐさまカホンにまたがり、確かこんな風に叩いてたっけと、リズムを刻
み始めた。おう〜ハマるぜい! カホンは僕のような手ドラマーのために存在する最
適な楽器じゃにゃ〜きゃ! 

ドキチト・タキチト・ドキチト・タタタタ・

タドドド・タツタタ・ドドッド・ザンザン

 えっ? 何だこりゃだって? 叩いたリズムを口述するとこうなるのだ。わかりや
すいように一拍ごとに間に「・」を打ってみた。ま、こんな感じで叩いているうちに
だんだんエキサイトして大音量で叩きまくってしまった。カホン素人でもけっこう叩
けたのが嬉しかった。

 近くで様子をうかがっていた店員が話しかけてきた。「どうですか? カホン、い
い音でしょ」「ホントいいっすね〜」「お客様、バンドやってらっしゃるんですよね」
「いいえ」「でもパーカッション、やってらっしゃるんですよね」「いいえ」「えっ
そうなんですか?」「はい、僕は協調性ないんで、バンドできないんすよ。あはは。
僕はしがない手ドラマーっすから」

 そのカホンはドイツ製で45000円もした。高! でも楽器名がわかりゃ、こっ
ちのもの。帰宅してからウェブで検索して、安いカホン(と練習用小カホン)を手に
入れた。家で叩いてみると、けっこうな音量のデカさで、ドラムセットと大差ない。
ボコンバスンドドンと叩いていたら、相当うるさいらしくて、妻に白い目を向けられ
るようになった。仕方がないので本体はあまり叩かずに、帰宅途中の車の中で練習台
を叩きまくってテクニックを磨いている。

 まあどの楽器もそうだと思うが、カホンを叩くほどに難しさがひしひしとわかって
きた。ああ、ノー天気にボカスカやっていた最初の頃が懐かしい。でもリズムを刻むっ
てのは実に爽快だ。人間のDNAにはリズム情報がしっかりと刻まれているのだろう。
本能がリズムを欲しがっているのがわかる。水分補給ならぬリズム補給だ。

 いつになれば人前で叩けるような自信がつくかわからないが、近い将来、当店に出
演している天才ジャズミュージシャンたちと、遊びでもいいからセッションするのが
プチ夢である。まあ、そこで一発ケチョンケチョンにけなされて、落ち込んで這い上
がるのを十数回繰り返す度量が僕にあれば、立派なカホニストになれるかもしれない。
こう見えても案外ガラスのハートな僕だから、どうなるかは超〜〜謎? みたいな?
と、今日は尻切れトンボな嫌な終わり方をしてみる。(ホント嫌なヤツだ。でしょ?)

カホン工房アルコのホームページはこちらをクリック!(ここで買ったのら〜)
SampleSoundをクリックすると、声が、 遅れて、 聞こえるよ、 じゃなくて、
カホンのサウンドを聴くことができるよ。

5月12日

▼最悪の応募者

 先日、アルバイト面接史上、最悪の応募者がやってきた。その人は36歳の女性で、
エキゾチックな雰囲気の美人だった。僕が当店の説明を始めようとしたら、その言葉
を遮って、彼女が伏せ目がちに言った。

「最初にお話ししたいのですが、私は一生懸命働いて、優れた良いサービスができる
ようになりたいと考えています。でも、あの、でも、あの……」

「でも、どうしました?」

「わたし、わたし、接客はしたくないんです! お客さんとお話しするのが嫌なんで
す! 特に男の人とは絶対に喋りたくありません!」

 なんだそりゃ? カッチーン! おもわず「じゃ、これで面接を終わります」と言
おうかと思った。でもこの接客を拒否している女性が、いったいなぜ接客の宝庫=バー
で働こうと思ったのかが知りたくて、僕は言葉を飲み込んだ。

 なぜ接客が嫌なんですか? どうしてバーで働こうと思ったんですか? 良いサー
ビスはお客様に接することで成立するんですが、あなたの考える優れたサービスって
何ですか? と、いろいろ聞いてみたが、彼女はおろおろするばかりで、僕を納得さ
せる説明はできなかった。

 結局、「バーで働こうと思った自分が間違いでした」と言い残して、この女性は帰っ
て行った。う〜む、わけがわからん。今まで接客が嫌だなんていう“終わってる”人
を面接したことないし、そんな人が来るとも思っていなかったから、もの凄く驚いて
しまった。

 その日、常連の精神科医のお客様が来たので、どういうことでしょう?と尋ねたら、
社会に対して甘えがある。そんな甘ったれた人間の話なんか聞いちゃダメだ。すぐ追
い返さなきゃ。ちょっと美人だとすぐ話を聞いちゃうんだからな、まったくもう!と
怒られた。(アナタナゼ、ワタシヲオコル??) 


5月11日

▼演奏者の応募

 ときどきミュージシャンから「当店に出演させてほしい」と電話がかかってくる。
どのようにしたらよいかと聞かれるので、デモテープ、プロフィール、写真を送って
いただき、お願いしたい場合、こちらから連絡をする、という由を伝える。すると
「わかりました、では送らせていただきます」と、すんなり答える人は意外にも少な
く、多くの人は、どんな内容の曲がよいか、とか、何曲ぐらい入れればよいか、とい
ろいろ聞いて来る。

 当店は積極的に新人ミュージシャンを発掘しているわけではないので(むしろ消極
的)、ついつい「えっとそれはお任せ致します」と答えてしまう。つまり、アピール
方法を見る(聴く)のもオーディションのうち、だと思っているのだ。

 「曲は2曲ぐらいでいいですよね」と言う人もいる。「えっとそれはお任せ致しま
す」と答える。すると「もっと多い方がいいんですか?」とちょっとムッとされたり
する。そんな言い方をされると僕もちょっと本音が出たりして(笑)、「曲数が多く
てもお願いしないこともありますし、少なくてもお願いする場合もあります。つまり
僕が聴かせていただいて、お願いしたいかどうか、ということが全てなので、内容に
関しては全てお任せ致します」と言う。

 デモを聴くと、多くの場合、へなへなになる。歌や演奏がひどいのは論外だが、ピ
アニストのデモなのに、ピアノソロがあんまり出てこない、なんてのもある。全編、
他の楽器の演奏が幅をきかせているのだ。どう評価せいっちゅーんじゃい!

 もの凄いフリージャズな曲(を含んだデモ)を送ってくるピアニストもいる。キャ
キャキャキャキャイーン、キャキャキュキュズズズンババーンピピンなんて聴かせて、
どう評価せいっちゅーんじゃい!

 何ヶ月も前にデモを送ったんですけど、ちゃんと聴いていただけたんでしょうか!、
と半怒りで電話をかけてくる人もいる。で、一度チャンスを下さい!と怒られた。い
ちおうデモを聴き返したが、演奏がやはり非常に凡庸でつまらなかった。残念!

 この前アッタマきたのは、ピアニストの応募で「そちらはどのように演奏を行って
いるんですか? コンセプトは何ですか? 演奏場所はどのへんですか?」と矢継ぎ
早に聞いてくるのだ。声がおっさんチックだし、ちょっと偉そうなので、もしかした
ら大物ピアニストの危険性もある。で、ちょびっとだけ丁寧に答えていたのだが、次
の質問でキレた。

「出演料はいくらですか?」 ブチッ!

「えっと、それはこちらが出演のお願いをさせていただく時に申し上げる話で、今は
お答えしかねますが!」

「あっそれはそうですね。はいはいわかりました。えーと、では、そちらの店はどん
な雰囲気なんですか?」 ブチッ!

「あの〜、一度お越しいただいて御覧いただければ一目瞭然なので、ライブの日にい
らっしゃってみてはいかがですか? 申し訳ないんですけどいま営業中で忙しいので
失礼します」ガチャン! 

 家に帰ってからこのピアニストのHPを見たら、スケジュールはすっかすかだった。
これでよくあんな強気になれるな〜と不思議に思ったが、ああ、こんなだからすっか
すかなのかもしれない。結局、この人はデモを送ってこなかったけど、逆に、どんな
演奏をする人なのか、ちょっと聴いてみたかったな。残念!


5月5日

▼気絶

 いやあ今年のゴールデンウィークは混んだ混んだ。毎日へとへとで、パソコンを前
にして気絶する(眠ってしまう)日々だった。以前は今よりも「眠い〜〜!」という
兆候があったのに、近頃は「目が疲れたなあ」と思って少しして気絶である。そのま
ま2〜3時間寝てしまう。まったく危険きわまりない。こんなことならすぐにベッド
で寝ればよかったと、毎日後悔するのに、でもまた寝ない。気絶する。寝ない。気絶
する、の繰り返しで、いいかげん自分が嫌になる。いっそのこと気絶ニストを目指そ
う。

▼猫ひろし

 先日、たけしの誰でもピカソ(テレビ東京)に出演していたワハハ本舗所属のお笑
い芸人、猫ひろしの芸を見て心底驚いた。噂では知っていたが、実際に見るのは初め
てだ。いやはやめちゃめちゃ面白いではないか! 

 彼の持ち芸は「ギャグ100連発」で、一見するとオチも何もないネタを次から次
へと猛スピードで繰り出す新しいスタイルだ。その凄まじさは正に“紙一重”で、こ
の面白さがわからない多くの人々は、猫ひろしは紙一重のあっち側の人だと思うかも
しれない。

 彼のそのネタは、本人の中ではきちんと筋が通っているそうだ。今のところ、僕に
はその全てを理解することは不可能だが(でもわからないから面白い)、ネタのオチ、
ネタとネタとの関連性、なぜその順番なのかを考えるのが非常に楽しい。こんな考え
なければわからない(考えてもわからないものも含む)笑いの手法があったなんて、
とても刺激的だし、幼少の頃からお笑い番組を熱心に見続けてきた僕にとっては、か
なり衝撃的だ。

 猫ひろしは今のところほとんどテレビでは見かけないが、そのうち100連発ネタ
から流行語が生まれ、大ブレイクするかもしれない。すると芸の傾向が変わることも
あるだろうから、その前に、寄席やライブに足を運んで猫ひろしの100連発を十分
に浴びておきたい。


4月30日

▼よろしくど〜ぞ

 25日の日記の最後に「よろしくど〜ぞ〜」と書いた。これはとても便利な言葉だ。

 当店の出入り業者数名は、帰る時に必ず「よろしくど〜ぞ〜」と言って立ち去る。
その時のこの言葉は「さようなら」「失礼します」のニュアンスで言っている。近所
の書店の店員は、商品を渡しながら「よろしくど〜ぞ」と言う。これは「またよろし
くお願いします」というニュアンスで使用している。

 僕は接客中、そろそろその場を立ち去ろうと思った時、「よろしくどうぞ」と言う
ことがある。この場合は「ではどうぞごゆっくり」というニュアンスである。この言
葉を発すると、どのお客様も皆「あっ、どうも」と言って、面白いくらい会話があっ
さり終わる。まるで魔法の言葉のようだ。

 「よろしくどうぞ」は、きちんとしたサービスを行う際や、通常の接客時に使用す
るのは憚ってしまう。でも、いろんなニュアンスが感じられる言葉だけに、他にも様々
な使い方ができるのではないかと思う。可能性を感じる言葉だ。

 今、よろしくどうぞが熱い!(僕の中で)


4月27日

▼ラジオに出演した

 先日、FM番組に出演した。僕の本を読んだ番組スタッフの方からお声がかかった
のだ。もう普通のおっさんに戻って(HP中退の意)ずいぶん時間が経つので、どう
したもんか悩んだが、こんな機会は滅多にあるものではないし、何事も経験だ、おり
ゃーっ!と、勢いで引き受けてしまった。

 あらかじめいただいた番組進行台本に書いてある様々な質問を読んで、こりゃヤバ
イ!と悩んでしまった。なぜなら、台本にはバーを訪れたお客のマナーに関する質問
が数多く書いてあったからだ。

 お客様にああしてほしい、こうしてほしいという希望は確かにあるけれど、それは
僕の希望であって、お客様がそうしなければならないということではない。僕に言え
るのは「他のお客様に迷惑をかけずに楽しいひとときを過ごしてほしい」ということ
だけである。ということは、いろいろ質問されても同じように答えることになり、僕
は完全にアホだと思われてしまうだろう。

 当日、パーソナリティの女優のKさんと打ち合わせをしている時に、僕は彼女に
「全然面白いことが言えそうにないんですけど」と打ち明けた。Kさんは一瞬困った
ような表情になったが、「大丈夫ですよ。いろんなことを聞きますから」とにっこり
微笑み、僕がリラックスするように気遣ってくれた。
 
 で、本番はどうだったかというと、Kさんがとても乗せ上手な方だったので、僕は
いろんなことを(余計なことまで)ベラベラベラと喋ってしまった。緊張していたせ
いで、妙にハイテンションになってしまった。30分番組で約50分くらい録音した
ので、上手く編集されていい感じのトークになってくれることを願う。そのうち番組
を録音したテープが送られてくるそうだが、ちょっと聞くのが怖いなあ。

 この番組は5月3日夕方に、東北(ニンニクで有名な)のとある地方でオンエアさ
れるそうだ。



4月25日

▼再開

 更新をサボりにサボって、なんともう1年が過ぎてしまった。最後に日記を更新し
たのが昨年4月23日だから、今日で丸1年と2日ぶりだ。

 皆様お元気ですか? 私は元気です。この1年、いろんなことがありました。あん
なことこんなこと、そんなこともあったっけ。って、何のことか全然わかりませんね、
てへへ。

 こんなにサボってたのに、いったい何しに戻って来たのかというと、ゆるやかにま
た再開してみようかな、と思ったわけです。このサイトを訪れる方が激減した現状は、
これは隅っこの方で、あーでもないこーでもないとグダグダ言うのが好き(&得意?)
な僕にはうってつけではないかしらん、と思った次第です。と、こんな単純な理由で
はないのですが、まあ再開します。よろしくど〜ぞ〜。






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