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RANDOM DIARY TOUR
鳴海諒一日記 SINCE 6/18.2000



4月30日

▼クラシックなひととき

 最近、オープン直後の時間帯にスカルラッティ・ソナタのCDをかけている。ホロ
ヴィッツの優しいタッチが耳に心地良い。選曲次第ではクラシックもバーに合うと思
う。モーツァルトも店が空いてる静かな時間帯にはピッタリだ。当店ではジャズ・フ
ュージョン界の巨匠、チックコリアのモーツァルト・ピアノ協奏曲を時々かけている。
チックの演奏はクラシックの演奏家とは異なり、オケのみの演奏箇所でもモーツァル
ト風アドリブを随所で弾いている。その自由奔放さが聴いていて楽しく、時々笑いが
こみあげてくる。モーツァルトもきっとこんなふうに即興でバンバン弾いていたんだ
ろうな。

 今日は常連のお客がホロヴィッツのCDを1枚貸してくれた。嬉しい。曲目は僕が
持っているCDと重複しているが、もしかしたら録音年月日が異なるかもしれないの
で、後でチェックしてみよう。

 別の常連客が来店し、女性バーテンダーのSさんにCDを3枚手渡している。ジャ
ケットがちらりと見えた。あっミケランジェリだ。僕は常連客に歩み寄り、CDを見
せてもらった。ミケランジェリのドビュッシーとホロヴィッツのCDだった。もうす
ぐSさんの誕生日なので、彼女にプレゼントしたそうだ。ちょうど他にお客がいなかっ
たので、そのCDからホロヴィッツの超絶技巧曲、ビゼー=ホロヴィッツ編「カルメ
ンの主題による変奏曲」を大音量でかけた。いつ聴いても凄い曲だ。がはははは。笑
いが止まらない。つかの間のクラシックなひとときだった。


4月29日

▼チャレンジ

 オープンの準備中にポリーニのショパン前奏曲集を聴きながら、ふとピアノが弾き
たいという気持ちが沸き上がってきた。小学生の頃に2年間ほど習わされたことがあ
るんだけど、それ以来、ちょっとした鍵盤恐怖症に陥っていた。鍵盤楽器は僕には合
わないんだと、ずっとそう思っていた。だから1人で多重録音をする時は必ずギター
シンセサイザーを使い、MIDIキーボードは埃をかぶっている。

 女性バーテンダーのSさんに「ねえねえ、オレ、ピアノ始めよっかな。急に弾きた
くなった」と言って、無謀にもショパンの前奏曲で弾けそうな曲はないかと探し始め
た。どうせ弾くなら好きな曲じゃなきゃ嫌だ、とは素人の浅はかさ全開なのだが、こ
の歳で基礎からやり直すのは楽しくない。壁にブチ当たったら必要に応じて練習すれ
ばいい。

 弾く気になってCDを聴いたら、またひと味違った聴き方が楽しめた。前奏曲20
番なら超短いし、スローで厳かな感じが弾いた時に心地よさそうだ。Sさんに「20
番に決めた!」と宣言し、妻に電話をかけて前奏曲の譜面を出しておいてくれるよう
頼んだ。妻は、急にどうしたのと驚いていた。

 弾けるまでにはずいぶん時間がかかるだろうけど、新たなことにチャレンジするの
は楽しい。わくわくする。三日坊主だけは何とか避けたい(笑)


4月25日

▼ピルスナーウルケルとキリンビール

 前回配信したメルマガで、ピルスナーウルケルというチェコのビールを「おすすめ」
として掲載した。このビールは日本のビールと同じピルスナータイプなのだが、日本
の大手メーカーの製品とは比べものにならないほど味わい深くて美味いビールである。
それもそのはず、ウルケルは極めて真っ当な原材料と製法で造られており、日本のビー
ルが太刀打ちできるわけがないのだ。あるビール関連の本によると、ウルケルは日本
の標準的なビールと比べると、良質のホップが2〜3倍も多く使われているとのこと。

 このピルスナーウルケルは、キリンビールが輸入販売している。キリンのHPを見
てみると、掲載されている自社製品を含む17種類のビールのうち16種類の製品は、
製品名をクリックすると製品の詳細が表示される。しかし、ウルケルだけは説明画面
が用意されておらず、このHPを訪れた人は、ウルケルがいったいどんなビールなの
かを知ることができないのだ。

 少し前にキリンにメールで問い合わせたところ、「詳細を表示する予定はないそう
です」などと、まるで人ごとのような回答が送られてきた。企業が輸入販売している
製品を宣伝しないなんて、実におかしい。いったい何のために取り扱っているのだろ
うか。

 邪推だが、キリンビールはきっとウルケルの詳細の書きようがないのだろう。「ど
の日本のビール(大手)よりも極めて真っ当な製法で造られた美味しい本物のビール
です」などと書けるはずがない。ウルケルをアピールすることは、その他の製品のク
ビを締めてしまうのに等しいのである。そのため、詳細を載せないことにしたのでは
ないだろうか。

 では、キリンはなぜウルケルを取り扱っているのか。それがイマイチわからない。
他社に販売されて高品質をうたわれて、主力商品の売れ行きが落ちてしまっては困る。
そのため、取り扱いはしているものの、宣伝をせずに飼い殺し」にしているのか。
それとも近い将来本格ビールブームが到来した時のために、今からウルケルを押さえ
て温存しているのだろうか。

 僕はキリンがウルケルを大々的に宣伝を行ったら、この会社をとても見直してしま
うだろう(僕に見直されてもどうってことはないだろうが)。それにしても、ビール
や発泡酒のド派手テレビCMを見ていると、製品のクオリティには一切触れずに製品
の印象(ネーミング)だけを視聴者の脳に焼き付けようとしているのが見え見えで、
なんだか空々しく思える。それはまるで、大切なことから消費者の目をそらせようと
しているかのようだ。

▼ついでに雪印にも一言

 少し前に「雪印は変わります」というCMが流れていた。従業員の誠意溢れる笑顔
を並べて負のイメージを取り払おうという作戦なのだろうが、僕はこのCMを見て、
本当に変わろうとするなら低温殺菌牛乳を造らなきゃだめだ、と思った。消費者に良
い製品を提供したいという牛乳屋のプライドがあるのなら、売れるか売れないかはさ
ておき、低温殺菌牛乳を製造販売することが、牛乳屋の使命であり、雪印が本当に
「変わる」気持ちがあるという証だと思った。

 低温殺菌牛乳はコストは割高だし製造に時間もかかる。高温滅菌牛乳に慣れた消費
者は好まないかもしれない。たぶんこの牛乳は利益を生み出さないだろう。しかし、
本当に変わるというのは、信頼を回復するというのは、大変なことなのだ。しかしま
あ雪印にとっては幸いなことに、牛乳に対してとやかく言う消費者は少ない。結局な
んだかよくわからないアルファベットを並べた名前の新製品を発売してお茶を濁して
いる。この程度のことで「変わります」じゃ、あまり反省していないように見える。
よって我が家と店では、引き続き雪印製品を購入しないつもりだ。雪印よ、一度目に
ものを見せてくれ。

4月24日

▼バイト希望のバカ女

 今日、オーナーの関係者が20歳ぐらいの今風の女の子を伴ってやってきた。この
子は当店でアルバイトをしたいようなのだが、いきなり、何曜日に出ればいいんです
かあ、えっ、うっそ〜、金曜土曜のどっちも出るんですかあ、ウィークデイだけ働こ
うと思ったんですけどお、週に何日働けるんですかあ、とシフトのことばかり聞いて
くる。僕は口があんぐり&アングリーだ!

 おい、バカ女。誰が採用するって言ったんだよ、まぬけ。勝手にどんどん話進めて
んじゃね〜よ。ったくもう、てめ〜が働きたい曜日さえ合えば、採用されると思って
やがって。その自己中なところがすでにアウトなんだよ。一発退場なんだよ。お前な
んかぜって〜採用しね〜。まともなサービス出来っこないじゃん。品性のかけらもな
いくせに姿あらわしてんじゃね〜ぞ。ナメくさりやがって。お前なんか海の藻屑になっ
て消えちまえ。もずくじゃね〜ぞ。


4月23日

▼愛しのホロヴィッツ

 毎日いろいろと書きたいことはあるんだけど、ヘトヘトなだけじゃなくて、いま、
ホロヴィッツに激しく傾倒していて、帰宅後、夜中に国内外のHPを見まくっている。
僕はハマると凄まじく一途な性格なので、他のことをする時間(気持ち)が無い。自
分の思いを吐き出したいという気持ちよりも、吸収したい気持ちの方がはるかに勝っ
てしまっている。まったくホロヴィッツは素晴らしい。その華麗なピアノ演奏は、僕
を毎日とろけさせまくりやがっているに等しいに値する。要は言葉では言い尽くせな
いということだ。

 いま「ホロヴィッツの夕べ」という本を夢中になって読んでいる。この本は、ホロ
ヴィッツの晩年に親交のあった著者によるもので、ホロヴィッツの人間性、曲の解釈、
様々な音楽家への意見や交友録などがてんこ盛りで綴られていて、1ページごとに驚
かされっぱなしなのだ。それはもう面白すぎて怖いくらいだ。本書でホロヴィッツは、
ショスタコーヴィチ、ラフマニノフ、ルービンシュタイン、トスカニーニ、ショパン、
リスト、モーツァルト、シューベルト、シューマンなどなど、多くの偉人たちに対す
る想い(や裏話)を数多く語っている。この本は2800円だけど、こんなに面白す
ぎてタメになるのに、こんなに安くていいのだろうかと唖然とし、毎日幸福感に包ま
れっぱなしなのだ。

 最近聴きまくっているトスカニーニ=ホロヴィッツの「チャイコフスキー・ピアノ
協奏曲1番」は、凄すぎて感動しまくりである。もの凄くテンションの高い名盤だと
思う。1941年に録られたこの演奏のCDが、なんとたったの1000円なのだ。
ああ、なんて良い時代なんだろう。僕はこの演奏から毎日多大な活力を授かっている。
当分他の演奏家の演奏は聴きたくない。


4月22日

▼ひさびさのゴ〜〜〜〜〜ル!!

 今週は毎日誰かしら風邪で休んでしまったうえ、何故か毎日めちゃ混みで、ずっと
バリバリ働き続けた。でも人数が欠けた時こそ、オレの出番がやってきたぜええと気
合いが入る。絶対にお客様に迷惑をかけないようにと全員で(若干名だが)炎となっ
て働いたので、特に問題は起こらなかった。新人バイトが毎日規則正しくグラスを1
個ずつ落として割ってくれた程度だ(バーロー!)。

 バリバリ飛ばしまくったせいか、さずがに今日は疲れがたまってヘトヘトだ。あっ
そういえば今日のセリエAの試合にヒデ(中田)がひさびさスタメン出場したんだっ
けと、帰宅してすぐ、ビデオに録ってた「セリエA速報」を見た。ななななななんと、
ヒデが385日ぶりにゴ〜〜〜〜〜ル!! 今期初得点をあげた! 思わずテレビの
前でガッツポ〜〜〜ズ!! やったやった! たちまち疲れが吹っ飛んだぜ。

 試合前の21日、ヒデの日記にはこう記されていた。

「俺にとってもシーズン最後の大事な時期に、自分のポジションを確保できるかどう
かの大事な試合になると思う。もちろん、今後も外国人枠の問題等は変わることがな
いだろうが、もし、この試合で俺が大活躍でもしてしまったら、監督としては俺を外
すのが難しくなってくる。内容も本当はもちろん大事だが、ここ最近言っているよう
に、この試合は、徹底的に結果にこだわっていきたいと思う。」

 ヒデは結果にこだわり、そしてキッチリと結果を出した。5試合振りの出場、9試
合振りのスタメンというハンデをものともせず、ヒデは執念で戦い、そして敵ゴール
を奪った。実に華麗なボレーシュートだった。

 ヒデがセンターライン手前から右前方のカフーに超ロングパスを繰り出し、そのま
まゴール前まで走り込み、カフーからのパスをダイレクトで右隅へゴ〜〜ル! 自分
でチャンスを作って自分で決めた。お見事! いつもポーカーフェイスのヒデが、両
手を上げて喜んでいる。その姿を見て、僕もいっそう嬉くなった。

 ヒデは結果を出したが、来週のラツィオとのローマダービーに出場出来るかといえ
ば、そうでもない。この日イエローカード累積のために試合に出られなかったローマ
の星トッティが戻ってくるので、きっとまた出番は無い。せいぜいベンチに入れる程
度だろう。しかし、来期に必ずや移籍するであろうヒデの価値は、今日の試合で更に
高騰した。ガゼッタ紙の寸評では、「この日マークしたヒデの得点は、今シーズンの
セリエAのベストゴールのひとつとして数えられそうだ。トッティの控えにしておく
のはもったいないということを自身のプレーで訴えた」として、10点満点中の7点
という高評点がつけられた。

 移籍先の噂は、パルマ、フィオレンティーナ、スペイン、プレミアなど様々だが、
ヒデは今やイタリアで最も優れた選手の1人という評価を得ている。きっと自分が望
んでいるチームへ移籍することが可能だろう。唯一の問題は、現在在籍しているロー
マがヒデの実力をトッティの控えとして温存し、移籍を阻むことだけだ。ヒデのこと
を考えて、快く送り出してあげてね、センシ会長!


4月16日

▼幻滅(やってらんね〜)

 毎日どこかしらで買い物をし、店員と接触するわけだが、その中でかなり多くの店
員が一生懸命働かないのを目にする度に、人に幻滅する日々が続いている(ってゆ〜
か時々キレそ〜)。全く何も考えていない人も多いし、自分は一生懸命働いているつ
もりの人も多い(わかってね〜)。多くの人が無意識に自分を制限し、向上すること
を自ら拒んでいる(やる気ね〜)。

 自分より気がつくお客様に満足してもらうために、サービス向上を目指して努力し
なければ、と考えている人はどのくらいいるのだろうか(めったにいね〜)。また、
自分のサービスは至らない点が多いに違いないから、せめて笑顔で一生懸命働かなけ
れば、と頑張っている人はどのくらいいるのだろうか(ほとんどいね〜)。みんな下
の中か、下の下のサービスをし続けて、甘んじていられるのはなぜだろう(向いてね
〜)。なぜ自分の仕事に責任を持とうと思わないんだろう(最初からね〜)。

 接客技術がなくても一生懸命働いていれば、その気持ちは何かしら必ず相手に伝わ
るものだ(聞いとけボケ〜)。もし伝わらないというのなら、その程度の一生懸命は
一生懸命とは呼べない代物なのだ(心に響けボケ〜)。「いらっしゃいませ」「あり
がとうございました」も、ろくすっぽ満足に言えなくても、ちゃんと働き続けられて
いいなあ(喜べボケ〜)。うちならやる気が表に出ない人は、間違いなくクビだ(キ
ビシ〜!少しいたわってあげて! ←←← 誰だよてめ〜)


4月15日

▼イメージとのギャップ

 先日、4年ほど前から来店されている女性のお客と初めて話をした。この方はいつ
も女性と2名で来店されるのだが、従業員に会話を求めていないので、こちらも必要
最小限の言葉に感謝の意を込めるだけにとどめていた。

 ある時、その方のお友達が深酔いしてしまった時に、お2人と話す機会に恵まれ、
以前から面識があったせいもあって、僕は少し気さくに話をした。すると、女性が僕
に抱いていたイメージと全然かけ離れていたようで、とても驚かれてしまった。会話
をすごく楽しんでは下さっているものの、僕が爆笑ギャグを連発するような人間だと
は夢にも思わなかったようだ。「もっと真面目な人だと思ってました」を連発されて
しまった。

 4年もの間、真っ当な接客をしているのだから、真面目だと思ってくれていいと思
うのだが、僕に対するイメージとのギャップは相当なものだったようだ。まあ、僕の
普段の仕事ぶりしか見なければ、お笑い系の部分は知る由もないだろう。いつも冗談
なんて言わないような顔して働いてるからなあ。でも結果的にそのお客の来店頻度が
増えたから、めでたしめでたし。


4月14日

▼メルマガを配信した

 ひさびさにメルマガを配信した。3ヶ月振りだ。読者のほとんどが飲んでいる高温
滅菌牛乳を批判的に書いたので、苦情や読者登録解除の嵐かと思ってたのに、クレー
ムも来ないし、読者もほとんど減ってない。あまり反応が無いのでちょっと拍子抜け
している。読んでなかったりして。


4月9日

▼カーコンビニクラブよありがとう

 先日、カーコンビニクラブでケチがついて車の修理をキャンセルしてしまったので、
今日は自動車修理工場巡りをして“見積もり大会”(ああ面倒くさい)を行う予定だっ
たのだが、一軒目の対応があまりにも良かったので、すぐそこに決めてしまった。

 この工場へは数年前に一度、原チャリにぶつけられた時に修理に出したことがあっ
た。その時はとても満足できる仕上がりだったのに、うっかりそのことを忘れて今回、
カーコンビニに依頼してしまったのだ。ホント馬鹿だよなあ。

 この工場では社長が直接車を見て、すぐに「ああ、これなら5万くらいで3日で直
しますよ」とあっさり見積った。カーコンビニがうだうだとこちらの足下を見ながら
の値段交渉の末に出した65000円をはるかに下回っている。僕はこういう一発ド
カン価格が大好きだ。思わず「じゃ、お願いします」と即依頼してしまった。社長の
良さげな人柄といい、見積もりの速さといい、僕の好みにピッタリだ。これだよこれ。

「修理に出している間、代車が必要なので、借りられる時に合わせて来ます」と言っ
たら、社長は「いつでもいいですよ。代車いっぱいありますから。今置いて行きます
か」と言う。超嬉しい! カーコンビニよ、ありがとう。貴店のおかげで、喜びが倍
増したよ。


4月6日

▼断片的音楽談義

 最近、ショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」にハマっ
ていて、例によって様々な演奏家の演奏を聴き比べている。今までに聴いたのは、

ロヴィッツ
、アルゲリッチ、ダンタイソン、スルタノフ、ケンプ、ルービンシュタイ
ン。現在のところ、ホロヴィッツとアルゲリッチが超お気に入りだ。2人の演奏はテ
ンションが高く音の洪水となって迫り来る。聴いていてワクワクドキドキする。

 ホロヴィッツの演奏は1945年に録音されたものだが、モノラルだろうが音が悪
かろうが、そんなことは全く気にならない。ただただ素晴らしいの一語に尽きる。さ
すが20世紀最大のヴィルトゥオーゾだ。

 アンダンテ・スピアナートが入っているショパン名演奏集(BMGジャパン・24
47円・2枚組)はどの曲も凄い演奏だ。僕はいまホロヴィッツにメロメロである。
大胆で繊細で華麗で個性的なプレイは、凄すぎて時々ゲラゲラ笑い転げてしまうほど
だ。マエストロにして時に芸人臭くてサービス精神旺盛なところがとても好きだ。

 どの曲でもそうだが、演奏家によって曲の解釈がまるで異なる場合があり、自分の
好みの演奏じゃないと、その曲自体も好きになれなかったりする。しばらくして自分
の琴線に触れる演奏を聴いて、遅ればせながらその曲を好きになることがしばしばあ
る。最近ではキーシンのショパン・前奏曲集を聴いてぶっ飛んだばかりだ。全くすげ
え演奏だった。前奏曲は1曲1曲が数十秒から数分と短いため、これを大迫力で弾か
れると、どの曲も一層短く感じ、まるでエンディング特集を聴いているようで面白い。
しかし曲の時間は短くても、その中身はめちゃめちゃ濃いから、1曲ごとに大満足し
てしまう。

 20年もの間、フュージョンだけにどっぷり浸かってきたのだが、ここ数年はあま
り積極的に聴けなくなってきた。何を聴いてもつまらない。この間ひさびさに、デニ
スチェンバース(Ds)が暴れまくる
「CAB2」というCDを購入し、嬉々として聴き
まくっているが、これは別に新しいタイプの音楽ではなく、トムコスター(Kb)を
彷彿とさせる90年代前半のハードコアフュージョンだ。スローナンバーが1曲も含
まれていないのが新鮮で、メンバー全員がアマチュアに戻ったかの如く強烈なバトル
を繰り広げている。

 「CAB2」もいいけれど、今はクラシックが猛烈に刺激的で心地よく、僕の精神を解
きほぐしてくれている。通勤時、車の中では毎日、ホロヴィッツの
スカルラッティ
ソナタを聴いているのだが、これがとても心に染みる。ホロヴィッツは本当に素晴ら
しい。

 年を重ねるごとに、嗜好が変化してきた。おばあちゃんが好むような昔ながらのお
菓子を好んで食べるようになったし、食事のおかずの味付けも素材そのものの味わい
を好むようになった。下手をすると何の味付けもしていない野菜をそのまま食べたり
している。ただのジジイへまっしぐらに突進しているようで、何だか少し怖いぞ。


4月3日

▼休日の出来事

 昨日今日の休日は所用のため、両日朝7時起きという普段の僕の生活パターンから
は考えられないほど早起きをして出かけた。おかげでこの2日間はとても長かった。

 昨日は用事を済ませた後、某天ぷら屋で食事をした。いつもは1階のカウンター席
を利用しているのだが、この日はあいにく満席で、2階のテーブル席に案内された。
テーブルでゆったりと過ごせるのはよかったが、ホール係の若者(推定22歳)が無
愛想なうえ料理人との私語が耐えず、とても不愉快な思いをした。天ぷらも気合いが
入っておらず、美味しくなかった。

 通常、こんな時はクレームをつけたりせず、2度と行かないことで店の衰退を願う
のだが、この店は嫌いじゃないので、一応店主に説明しておいた。しかし、悪しき従
業員はその店を映す鑑である。稚拙な従業員がいる店は、結局、そこに店の体質が表
れている可能性がある。この店からはしばらく距離を置いた方が良さそうだ。

 気分直しに紀伊国屋書店へ行く。思わず出版されたばかりの「Fuckin' Blue Film」
(藤森直子著)を探してしまう。この本はSM嬢のNAOさんが書いた本で、僕はネッ
ト通販で購入してすでに読んでいるのだが、この良質の本の扱いが知りたかったのだ。

 「Fuckin' Blue Film」は田口ランディさんコーナーに1冊だけちょこんと置いてあっ
た。ランディさんがこの本の解説を書いておられるためだろうか。何冊かあったら平
積み範囲を増やそう(他の平積みされている本の上に並べる)と思ったのだが残念だ。
でも僕が小癪な真似をしなくても売れているようなので安心した。

 それにしても「Fuckin' Blue Film」はめちゃめちゃ面白い。SMクラブにやって
来るM男たちの性癖がたまらない。皆、普段は決して見せない姿をSMクラブで思いっ
切り露わにする。様々な生活環境やトラウマから倒錯の世界に安らぎを感じているの
だろうかと想像すると、変態という一語で片づけるのは憚ってしまう。ある種、普通
の人を超越しているのかもしれない。普通じゃないから変態、理解できないから変態
という短絡的な考え方は、それこそが普通すぎてつまらない。

 まずい天ぷらを食べたせいで胸やけがした。従業員への怒りのむかつきと胃のむか
つきで、ダブルむかつきだ。2倍損をしたような気になる。

 今日は叙々苑游玄亭で焼肉会席を食べた。この店は昨年大改装をしてバブリーな時
代を彷彿とさせるような絢爛豪華な内装を施している。改装後初めて訪れたのだが、
昨日の某胸やけ天ぷら屋と雲泥の差の良質のサービスを受けた。まあ細かい点を気に
すればキリがないが、この店はかなり厳しい従業員教育をしているのだろう。かなり
快適に食事することができた。

 游玄亭のウリは何といっても各テーブルが仕切られて個室になっていることだ。他
の客や従業員を気にせずに食事に集中できる。これが僕にとってはとても嬉しい。い
つものように嫌なものを目や耳に入れないように気を配る必要がないからだ。

 游玄亭のランチは超お得である。小鉢前菜四品、叙々苑サラダ、キムチ盛、焼物
(上カルビ・ネギタン塩・海老)、ライス、スープ、コーヒー、季節のフルーツが出
て、2500円である。通常、上カルビが1人前で2600円なのだが、それ以下の
値段でお腹いっぱいになってしまう。改装後、料理内容もサービスもより良くなった。

 フレンチレストランなどでは、コースの値段と1品料理1皿の値段が同じぐらいな
ので、コースを注文した客を見下してサービスを落とすギャルソンが存在するが、こ
こ游玄亭ではそんなことはない。お得なランチを気に入ってもらい、今度はぜひ夜も
来店してほしいという前向きな気持ちが伝わってくる。まあ、本当は店の建っている
場所柄、いろんなお客が来るから手を抜けない、というのが本音なのだろうが、でも
どちらにしてもサービスが良いのだからオッケーだ。

 せっかく気分良く食事ができたのに、夜になって、明日車を修理に出す予約をして
いたカーコンビニクラブから修理延期願いの電話がかかってきて、また気分が悪くなっ
た。

 先週から予約をしていたのに、前日になって突然、代車の都合がつかなくなったの
で、修理日を2日間待ってほしいというのだ。こちらは他の修理車が1台も無いこと
を確認して明日の予約にしたのだ。それなのに3台ある代車が全て都合が悪いという
のでは、到底納得いかない。そのうえ「こちらも一生懸命何とかしようとしているん
です」とか、「正直言って御用意できない状況」というバカ女の不用意な言葉に逆な
でられ、不信感がつのってキャンセルしてしまった。あ〜あ、また来週の休日にふり
だしからやり直しだ。あちこちの修理会社へ行かずにカーコンビニクラブなどで安易
に決めたのが悪かった。今度は慎重に行動しよう。


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