中国とアフリカ2012年2月6日 田中 宇1月25-29日、スイスに各国要人が集まって世界経済の全体像を論じる、恒例のダボス会議(世界経済フォーラム)が開かれた。今年は、米欧日の先進諸国経済の行き詰まりが議題だった。世界経済としての解決策の切り札は「新興市場諸国の内需拡大」だ。だが、かんじんの切り札が、ダボス会議に欠席していた。これまでダボス会議に副首相級の高官を派遣することが多かった中国が、今年はずっと格下の次官級しか派遣しなかった。今のダボス会議は、最も必要な中国の要人を欠いたまま行われた。 (Despair in the air at Davos) ダボス会議の日程は、中国人が最重視する旧暦の年末年始(春節)の連休と重なっていた。中国政府は、昨年のうちに「会議の日程を前倒しして、春節と重ならないようにしてほしい」と会議事務局に求めたが容れられなかったので「中国人にとって春節に会議をするのは、欧米人にとってクリスマスに会議をするようなものだ」と捨てぜりふを残し、腹いせ的に欠席した。 (China breaks 30-year tradition with Davos) ダボス会議は昨年までも、毎年1月下旬に開かれてきたが、中国政府が春節との重複に不満を表明したのは、今回が初めてだ。中国は、世界経済にとって中国がこれまでになく必要になった時を見計らって、世界的権威であるダボス会議に、日程をずらせと要求した。来年のダボス会議が春節を外す日程で行われたり、日程がそのままでもダボス会議で中国批判が事実上の禁止行為(タブー)になれば、中国の勝利だ。 (China considering deeper involvement in EFSF) 欧州で開かれるダボス会議は、欧州人の影響が強いが、欧州はユーロ危機で困窮している。中国は、EUのユーロ危機対策の基金であるEFSFに追加の支援金を出すことを検討していると発表した。欧州の要人たちは、中国に感謝している。ユーロ救済を主導するドイツのメルケル首相は、ダボスに来てくれなかった中国の要人たちに会うため、2月2日にわざわざ中国だけを訪れた(日本に寄らなかった)。ダボス会議は、中国好みのものに変質していきそうだ。 (China's Wen Tamps Down Concerns Over Europe Aid) ▼中国の覇権戦略は近くが安定重視、遠くが儲け重視 中国は国際影響力を拡大している。国際影響力のことを覇権というが、中国政府は、自国が覇権を希求していることを認めようとしない。「わが国は覇権に反対する」などと言っている。これは中国政府のイメージ戦略にすぎない。中国政府は、目立たないように、国際的な影響力を拡大する戦略、覇権と認めず覇権を拡大する戦略を歩んでいる。 中国の覇権戦略は二段階になっている。近隣諸国に対する戦略が安定重視である半面、遠くの地域に対する戦略は儲け重視だ。中国は、自国の辺境地域に不安定になりやすい少数民族の地域を抱えている。そのため、周辺諸国の不安定化をできるだけ避ける安定重視策をとっている。北朝鮮、ミャンマー、カンボジア、ラオス、モンゴル、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、パキスタン、ネパールなどが、この範疇に入る。 中国は、周辺諸国が安定するなら、自国だけが周辺諸国を隠然支配するのでなく、ロシアや米国、インドなど、別の大国が同時にその国に影響を及ぼすことを容認する。モンゴルや中央アジア諸国は、中国とロシアの両方の影響下だし、ネパールは中国とインドの影響下だ。また中国は北朝鮮を6カ国協議の体制で安定化する方針だし、米国がミャンマーに接近することも容認している。中国だけの影響下(準国内)でないとダメだと中国が主張しているのは、台湾に対してだけだ。日本、韓国、タイ、フィリピンなどに対しては、安定している限り、中国がやや優位に立つ状況で、表向き対等な関係性を保っている。 遠くの地域に対する中国の戦略は、もっと経済重視だ。石油ガスや鉱物資源の利権をできるだけ安定的に獲得し、中国製品をできるだけ買ってもらう。このやり方が最も如実にあらわれているのが、アフリカに対する中国の戦略だ。 (China dives deep for African roots) ▼アフリカ連合を抱き込む中国 アフリカ諸国は、諸国間の協調組織として「アフリカ連合」を持っており、本部はエチオピアのアジスアベバにある。その本部ビルは、中国が建造して寄付した。 (China's scramble for the African Union) アフリカ連合の事務局長はガボン人のジーン・ピンで、彼は中国と現地の混血だ。父親は中国浙江省の温州商人で、1930年代にガボンに移住して商売を初めて成功した人だった。母親は、地元有力者の一族だ。温州商人は、海外移住して商売を成功させるのがうまく「中国のユダヤ人」と呼ばれてきた。ガボンはフランスが旧宗主国で、ジーン・ピンはフランスのソルボンヌ大学を卒業した仏語圏エリートだ。外相など、ガボン政府の閣僚を長く歴任している。 (Jean Ping From Wikipedia) ジーン・ピンは、経歴からすると、中国の傀儡というより、他のアフリカの多数のエリートと同様、フランスの傀儡になるべき人だが、中国としては、中国人との混血である彼が、アフリカ連合の事務局長をしていることが好都合であろう。ピンは最近、任期を満了して再任をめざしたが、南アフリカ出身の対立候補と選挙戦で接戦となり、決着がつかないまま、とりあえず任期を1年延長する裁定が出た。「中国製の投票マシン(の八百長)がうまく機能しなかった」と皮肉を言われている。 (AU extends mandate for Jean Ping) ニューヨークの国連本部の底地の多くを寄贈したロックフェラー家は、CFRなどを通じて、戦後の国際政治をいろいろと動かしてきた。同様に、アジスアベバのアフリカ連合の本部ビルを寄贈した中国は、アフリカの国際政治を今後も隠然と動かし続けるのだろう。 (China puts space-age seal on African role) アフリカ諸国は、06年のサミットを、自分の大陸内でなく、中国の北京で行った。この前後から、中国はアフリカ諸国の経済発展を支援し、道路や鉄道などインフラを整備し、見返りに各地の石油ガスや鉱物の採掘権を得て開発し、産出した石油ガスなどを中国に送っている。中国勢はアフリカに安価な日用品も売り込んでいる。中国のアフリカからの輸入品目の7割がエネルギー関連だ。一昨年以来、中国は世界銀行よりも多くのインフラ整備事業をアフリカでやっている。 中国はアフリカ諸国に対し、政治独裁を変えずに経済自由化だけ進め、政治改革をやらず経済改革だけ大胆にやって高度経済成長を実現した中国自身のやり方をモデルとして奨励していると、欧米勢が指摘している。中国側は「中国モデルなど存在しない。中国のやり方は、他民族で広大な中国にだけ適するもので、アフリカなど他の国々に適用してもうまくいかない」と反論している。しかし実際のところ、アフリカ側は、中国モデルの存在を感じている。中国が「中国モデルなど存在しない」と言い張るのは「覇権を求めない」と言い張るのと同様、現実に対する目くらまし策であり、トウ小平が立案した「50年は世界で目立たないようにしつつ、力を蓄えろ」という戦略に沿っている。 (The myth of the 'China model' in Africa) ▼欧米の失策の穴を埋めて入り込む中国 アフリカは19世紀から欧州の支配下にあり、アフリカ大陸は、英仏独伊ベルギーなどに細かく分断されて植民地支配され、バラバラの小国群として独立した。第二次大戦後、世界的な覇権が欧州(英国)から米国に移る中、米国の(半ば意図的な?)下手糞さも手伝って、欧米のアフリカ運営はうまくいかず、アフリカ諸国は各地で内戦が起こり、貧しく弱い状態を余儀なくされた。米国は1970年代以降、世界に対し、人権問題や独裁政治を理由とした圧力を強め、アフリカの多くの国もその対象とされ、窮乏が続いた。 アフリカの人々は、欧米がアフリカを分割して紛争と貧困の原因を作った後、どうせアフリカは発展できないと言って、成長に結びつく経済支援をしてくれないと考える傾向がある。米国のアフリカ支援の7割は、エイズやマラリア対策の保健分野だ。道路や港湾など、産業インフラ整備の支援が少ない。米国の銀行は、アフリカで事業を計画する米企業に金を貸さない。欧米は「アフリカは大事だ」と言いながら、アフリカに振り向ける外交官や資金を減らす傾向にある。「テロ戦争」に執心する近年の米国は、米軍がアフリカ司令部を新設するなど、関与が軍事部門に偏重している。 (America vs China in Africa) 中国は、こうしたアフリカ人の欧米への不満の穴を埋めるかたちで、数年前からアフリカに対する経済関与を急拡大している。中国は、ガーナでアルミ精錬所、チャドとニジェールで精油所、アンゴラなどでインフラ整備を手がけている。リベリアは、19世紀に奴隷解放運動の一環として米国が支援して建国した国だが、新大統領が道路建設を急拡大したい新大統領が米欧や世界銀行に融資を頼んだところ、軒並み断られた。しかたがないので中国に頼んだところ、すぐに融資を了承された。 工業化はアフリカ諸国にとって独立以来の夢だったが、欧米に頼んでも実現できなかった。それが中国に頼むと、20年の無利子融資などで資金を貸してくれて、インフラ整備も中国企業がやってくれて、すぐに工業化を開始できる。これが今後もずっとうまくいくかどうか不明だが、現時点でアフリカの多くの政府の上層部が、中国の出現に喜んでいることは確かだ。中国は国連安保理の常任理事国なので、国際政治上もアフリカ諸国を守ってやれる。 中国からアフリカへの支援は、この10年に4割増えて1270億ドルになった。米国は横ばいの1130億ドルで、09年に中国は米国を抜き、世界最大のアフリカ支援国となっている。アフリカに対する10年間の投資の増分は、中国が11倍となった半面、米国は2倍にとどまった。 この状況を「中国は、アフリカの独裁で腐敗した政府高官に贈賄し、インフラを整備してやる、国連で守ってやると甘言を吐き、石油ガスや鉱物の利権を悪辣にあさっている」と批判することもできる。米国のクリントン国務長官は「中国がアフリカを植民地化している」と批判した。しかし現実を見ると、アフリカは経済発展することによって、保健衛生や教育水準の分野も改善している。10年で世界で最も経済成長した10カ国のうち6カ国がアフリカだ。欧米がこの数十年間やれなかったアフリカの発展を、中国が実現しているのは確かだ。 (Clinton warns against "new colonialism" in Africa) 中国だけでなく、BRICや新興諸国の多くが、アフリカに対する投資や貿易、援助を増やしている。歴史的にアフリカ東海岸と人的関係が深いインドは、中国に負けないようにアフリカへの経済進出を増やしている。同様にアフリカ東海岸と関係が深い中東アラブ諸国やマレーシアなども、アフリカへの投資を増やしている。 (India must tread carefully in Africa) 従来の欧米のアフリカ関与策は、アフリカ諸国を見下げる傾向があった。だが最近の、中国などBRICや新興諸国によるアフリカ関与策は、もっと対等な視線に基づいている。BRICは、アフリカの代表として南アフリカに参加してもらうことにした。中国がアフリカを支配したいのなら、南アのBRIC加入を反対して潰しただろう。アフリカと他の新興諸国との対等な関係を見ると、貧しい国々にとって、きたるべき多極型の世界が、欧米中心の従来の世界より、良いものになると思える。 (China BRICS up Africa) (私は今回の記事を書くにあたって、昨今の日本人の中国嫌悪の感覚に合わせ、何とか中国をほめないように書こうとしたが、その自分の姿勢に途中で気づき、やめることにした。中国を悪く書かねばならない今の日本の状況は「戦争中」と同質だ。第二次大戦中は言論抑圧が露骨だったが、今はもっと巧妙で、人々はいつの間にか歪曲された国際価値観を植え付けられている。現状は戦時中より深刻だ) 北アフリカのリビアには、油田開発などの要員として3万6千人の中国人が住んでいた。だが、昨年のカダフィ政権の崩壊とともに中国勢は追い出され、3万6千人は命からがら逃げ出した。昨年のリビア戦争は、アフリカにおいて欧米が中国に久々に「勝利」した出来事だったと評されている。 (The war is with China, the battleground Africa) しかし、リビアの新政権では激しいイスラム主義が強く、いずれ新生リビアは欧米と再び対立するだろう。その時、リビア政府から欧米の代わりに招待され、戻ってきて漁夫の利を得るのは、中国勢かもしれない。欧米がリビア戦争で、本当に「勝利」したのかどうか、かなり疑問だ。 (For China, relations with Libya a balancing act) ▼南スーダンの例 最近のアフリカで、中国が国際紛争の調停役になっているのがスーダンと南スーダンの紛争だ。スーダンは昨年7月に住民投票を経て南北に分割され、南スーダンが分離独立した。旧スーダンは産油国だが、全産油量の4分の3を占める油田が南スーダンの領土になった。だが独立後も、南スーダンで産出された原油は、スーダン領内を通って紅海岸のポートスーダン港までパイプラインなどで運んでいた。 南部の分離独立で石油収入が減ったスーダン政府は、南スーダンから1バレルあたり32ドルの原油通行料を徴収しようとした。南スーダンは1バレル1ドル以上出せないと突っぱねたうえ「スーダンが輸送中の原油をくすねている」と非難し返し、対立が激化した。欧米は傍観する傾向だ。南スーダン政府は、収入の98%が原油代金なので、原油を輸出できなくなると財政破綻する。 (South Sudan shuts oil output amid export row with Sudan) 南スーダンの油田開発を主導しているのは中国の国営企業であり、南北スーダンの原油の80%近くを買っているのも中国だ。南北スーダンには、油田開発などのため2万4千人の中国人が滞在している。中国は当初、欧米主導で南スーダンの分離独立を誘発する住民投票に反対していたが、反対し切れないとわかると、分離独立後の南スーダンを支援する戦略に転換した。独立から1カ月後、国連常任理事5カ国の中で初めて南スーダンを訪れたのは、中国の外相だった。 (Chinese prudence vs US recklessness) 旧スーダンの石油は、1980年代に米国の石油会社シェブロンが積極開発したが、その後のスーダン内戦で撤退した。90年代後半以降、オサマ・ビンラディンをかくまったとして米国がスーダン政府を敵視する中で、米国の代わりに中国勢が油田開発に入り、今に至っている。今回、南スーダンで住民投票をやって分離独立させたのは、欧米が100年前からアフリカでやっている分割管理策の最新版だったが、中国が石油で儲けているのだから中国がスーダンの南北紛争を解決しろということになった。 (China: A force for peace in Sudan?) 南スーダンの石油は、北に送るとスーダンを通らねばならないが、南に送ると隣国ケニヤのインド洋の港から出荷できる。南スーダン政府は、原油をケニヤのラム港(Lamu)まで送るパイプラインを建設することを決め、1月下旬にケニヤの同意を得た。 (South Sudan, Kenya Sign Agreement on Oil Pipeline to Lamu) だが南スーダン政府は、今後パイプラインができるまで10カ月かそれ以上の期間、石油を輸出できず、財政破綻に瀕する。この問題を解決するため、中国は、パイプラインが完成するまで、南スーダン政府の財政資金を融資し続けることにした。 (Will China help out the West in Sudan?) ▼南スーダンでの中国と日本 南スーダンからケニアまでの石油パイプラインは、10カ月で完成する計画だ。だが、この計画を甘すぎるという人もいる。パイプラインが通る地域は気象が激しく、地域の諸部族が相互に対立的で地域紛争が頻発しており、パイプラインの建設に2年ぐらいかかるかもしれないと予測する人もいる。 (S.Sudan, Kenya plan pipeline, analysts skeptical) 南スーダンの油田の産油量の先行きに対する懸念もある。南スーダンの分離独立を不可避と見たスーダン政府が、分離独立の前にできるだけ多くの原油を産出しようと過剰採掘をやった結果、油田の枯渇が早まり、2018年ごろには産油量が減り出し、パイプラインを作っても運ぶ石油が減ってしまうと、欧米勢が冷ややかに分析している。 (South Sudan to unveil pipeline plan) スーダンでは先日、中国企業で働く29人の中国人が、反政府ゲリラに誘拐されている。南北スーダンでの中国の石油利権獲得の事業は、かなりリスクが高くなっている。だが同時にいえるのは、中国が各国に進出し、アフリカでの利権事業のノウハウを蓄積しつつあることだ。これは将来的に、中国にとって大きな資産となりうる。 (China warns of security risks in Sudan) こんなところで、意外な助っ人として登場するのが、わが日本の企業である。トヨタ自動車のグループ企業である豊田通商が、南スーダンからケニアまでの石油パイプラインの実現可能性調査(フィージビリティ・スタディ)を手がけている。 (Kenya, South Sudan to form team for oil pipeline project) フランスの石油会社トタールも、このパイプライン建設の受注を検討している。豊田通商とトタールの合弁で、パイプライン建設を受注する可能性がある。豊田通商は、パイプラインを建設した後、20年間運営して投資を回収した後、南スーダン政府に引き渡すBOT方式での事業を考えていると報じられている。 (South Sudan seeks alternative pipeline to beat hitches) 中国は国家として南北スーダンで資源の利権あさりをやっているのに対し、日本は国家としてそのような意志がない。南スーダン政府は、パイプラインを日本政府よりトヨタ自動車に頼んだ方が良いと考えたのかもしれない。南スーダンには自衛隊が入っており、道路建設などインフラ整備事業も手がけている。それは見返りを求めない純粋な援助だ。日本は南スーダンで油田の利権を持っていない。南スーダンの油田の利権を持ってるのは、中国のほか、マレーシア、インドの国営石油会社だ。日本勢も頼めば入れてもらえたと思うが、日本政府は対米従属の国是が邪魔をするのか、欧米勢が入っていないスーダンの石油利権に手を出したがらない。 (S. Sudan encourages oil advances despite violence) 日本政府は、国外での石油利権の獲得に非常に消極的だ。南北スーダンにいろいろ支援しながら、利権を何も求めない。アフガニスタンでも、日本は長いこと最大の援助国だったが、何の利権も希求しない。アフガンで最初の石油開発の利権は先日、中国の国営企業が受注しており、日本勢は入っていない。アフガンの未採掘の巨大な鉄鉱山の開発は、インド企業が受注した。米欧軍が苦労して統治してきたアフガンの利権が、米欧でなく中国やインドの企業に気前よく与えられるのが、多極化する今の世界の現実であり、隠れ多極主義的な馬鹿馬鹿しさだ。 (China wins $700 million Afghan oil and gas deal. Why didn't the US bid?) 米政府の財政難を受け、在日米軍の海兵隊8千人が、沖縄からグアムやハワイなどに出ていくことが決まった。思いやり予算用の水増し幽霊部員をのぞいた実数として、8千人は駐日海兵隊のほぼ全員に相当する。米軍は、目くらましをかましつつ、日本から出ていっている。日本が対米従属を続けられなくなる日が近づいている。 (官僚が隠す沖縄海兵隊グアム全移転) 日本がやっている「見返りを求めない国際支援」は、米国が覇権を永続し、日本の対米従属が続くことを前提とした国策だ。米国が覇権を持ち、世界の石油ガス利権を管理する状況が続くなら、日本はイメージだけ美しく、地元の人々に感謝される「見返りなしの国際支援」を続けられる。だが米国は数年前から、世界の石油ガス利権を支配しきれず、あちこちの利権が、中国、ロシアからマレーシアまでの新興市場諸国の手に握られるようになっている。 (反米諸国に移る石油利権) 世界の利権多極化の動きは、不可逆になりつつある。日本人が、自分らの支援事業の美徳に酔いしれていると、数年内に米国の覇権がもっと崩れ、日本が対米従属できなくなったとき、日本は何のエネルギー利権も世界に持てないまま、馬鹿高い値段のスポット買いをせねばならなくなる。日本は利権あさりをしないので、中国と異なり、国際的な利権運用ノウハウも身につかない。日本は「多極化キリギリス」になり、中国やロシアに土下座して石油ガスを分けてもらわねばならなくなる。もちろん、前にも書いたように、寒い冬を暖房なしで、暑い夏を冷房なしですごす「清貧」に1億人が永遠に徹する根性があるなら、それも日本人の生き方として素晴らしいと思うが。
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