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中東の行く末

2010年7月28日   田中 宇

 今回、この記事を書くにあたって中東情勢を再考したところ「もしかすると、もう中東大戦争は起きないのではないか」という考え方が出てきた。とはいっても、世界的に流れるニュースが、そのような方向性を持っているのではない。

 ニュースの傾向は、むしろ逆に「間もなく米国かイスラエルが、イランを空爆する」という予測があちこちから出続けている。マイケル・ヘイデンCIA元長官は7月25日に「米軍がイランを空爆する可能性が、今までになく高まっている」と述べた。欧米に制裁されてもイランが核開発をやめないので、もう空爆以外手がないからだという。7月11日には、マレーシアのマハティール元首相が「米国がイランを空爆するのは時間の問題だ」と述べた。イランは、制裁されて弱体化したところで米イスラエルの空爆を受けることになるという予測だ。ロシアの専門家も、イラン空爆が近いと言っている。 (U.S. strike on Iran likelier than ever, former CIA chief says) ('US attack on Iran a matter of time') (Russian expert warns of regarding "factors that could lead to a war by the US and its allies against Iran"

 7月24日には、米議会下院が、イスラエルによるイラン空爆を支持する決議を可決した。イスラエルに対して、早く空爆を挙行しろと迫っているかのようだ。その一方で米タイム誌は、イスラエルのネタニヤフ首相が訪米してオバマ大統領を説得した結果、オバマは最近の消極姿勢から転換し、再びイランを空爆する気になったと報じている。米国はイスラエルに、イスラエルは米国に、イラン空爆をやらせたがっている構図が見える。 (House OK's possible Israeli raid on Iran) (Report: Israel convinces Obama to plan for Iran strike

 こうした状況下で私が抱いた疑問は「米イスラエルがイランを空爆するぞと言い出してから何年も経っているのに、イランは何の防空力もつけていないのか?」ということだ。各国の防空力や攻撃力は、軍事機密であり、しかも各国ともウソの情報を流して攪乱するので、イランがイスラエルの空爆を防御できるかどうか、確たる分析はできない。

 しかし、イランが防空力を高めている観はある。最近は特に、トルコが親イスラエルから反イスラエルに転じ、明確にイランを支援する姿勢を見せている。表向きは経済面のみの支援で、イランからトルコを抜けて欧州方面に天然ガスを送るパイプラインの建設を決めたり、両国の国境地帯に経済特区を作る計画を進めたりといった話だが、ひそかにトルコがイランの防空力を高める協力をしている可能性は高い。 (Iran Signs $1.3 Billion Turkey Pipeline Deal) (Turkey to promote closer trade ties with Iran

 また、近年軍事技術を磨いている中国は、政府系企業がイランの油田やガス田の開発に取り組み、すでに中国はイランの石油ガスの最大の輸出先である。米イスラエルがイランを空爆するとしたら、原子力関連の施設だけでなく、油田やガス田、パイプラインなども破壊するだろう。これは中国のエネルギー安全保障にとって脅威である。中国が、イランの防空力強化に協力していても不思議ではない。 (Turkey, China help Iran on fuel supplies after "US bite"

 同じことはロシアにもいえる。ロシアは中国と組んで、6月の国連安保理のイラン制裁決議を骨抜きのものにしたが、その直後からロシアはイランとエネルギー分野での戦略関係を強め、ロシアが長期的にイランのエネルギー開発に協力することが決まった。ロシアは、イランに地対空ミサイルS300を売る話も以前から進めている。 (Iran, Russia drafting energy road map

▼イランと関係強化する非米諸国

 イランは産油国だが、ガソリンの製油能力が低く国内需要を満たせず、輸入に頼っている。このため米議会は、イランに対するガソリン輸出の禁止を決議し、米国企業に対し、イランにガソリンを売った他国の企業と取引することを禁じた。しかし、中国やトルコ、イラクなどの石油会社は、米国の決議を無視してイランにガソリンを売り続けている。困ったのは、中国やトルコの石油会社と取引してきた、米国の石油会社の方である。米国の法律に従うと、米石油会社は中国などの同業者に石油を売れなくなってしまう。 (Oil Smuggling to Iran Embarrassment for Iraq

 米議会はイランの銀行との金融取引も禁止したが、これもイランの銀行の取引先を、欧米から中国などの銀行に変える効果を生んだだけだ。米国はEUに圧力をかけ、EUにもイラン制裁法を制定させたが、欧米の企業が手放したイランの商権は中露によって貪欲に横取りされる展開となり、欧米勢が困るだけでイランは大して困らず「もう一つの世界経済システム」とも呼ぶべき欧米以外の新興諸国の貿易ネットワークがイランを取り込んで繁盛し、世界経済の多極化を推進する結果となっている。 ('Iran sanctions to hurt foreign firms'

 こうした状況を見て、親米的だったインドやパキスタンなども、米国の脅しを無視してイランとの経済関係を強化する方向に動いている。悔しがっている欧米企業や、迷っている他の国々の企業に対し、イラン政府は「わが国の巨大なガス田を開発しにいらっしゃい。いつでも歓迎しますよ。でも、早く来ないと新興諸国に全部とられてしまいますよ」と誘っている。イランのサウスパース・ガス田は、世界の埋蔵量の8%を占める。 (India ignoring Washington as it woos Iran) (Global Firms Invited to Join Iran Energy Projects

 イランの石油ガス開発に参画する国が増えるほど、それらの国々は、米イスラエルの空爆からイランを守りたいと思うだろう。イラン空爆を挙行する可能性は米国よりイスラエルの方が高いが、イスラエルからイランまでは千キロ近くあり、途中にはイランから地対空ミサイルを輸入して防空力を高めているシリアもある。トルコ上空も通過しうるが、トルコ政府はイスラエル機が領空侵犯したら撃墜すると宣言している。イスラエル空軍機がイランを空爆して無傷で帰還できる可能性は減っている。イスラエル政府が躊躇して空爆を遅らせるほど、空爆の成功率が下がる。米国が本気でやるなら、イランを成功裏に空爆できるが、米政府は親イスラエルのふりをした反イスラエルの傾向があり、イランとの戦争はイスラエルにやらせたい。

 イスラエルは、イランを空爆するなら、成功させねばならない。イスラエルの建国以来60年の国家存続は、周辺のアラブ諸国を軍事力で圧倒し、破壊・威圧して黙らせ、イスラエルを攻撃せぬよう恐怖のどん底に陥れ、敵方を心理的・経済的に骨抜きにすることで成り立ってきた。イスラエルが空爆に失敗したら、それはイランの勝利になる。イスラエルは06年夏のレバノン侵攻でヒズボラを倒せなかったため、その後ヒズボラは政治的に強くなり、今ではレバノン政界を牛耳っている。イスラエルは、この失敗例を繰り返すわけにはいかない。

 だから、もし空爆の成功率が低いなら、イスラエルはイラン空爆をあきらめるはずだ。イスラエルの右派は「隠れ自滅派」なので、失敗するとわかっている軍事侵攻をやりうるが、06年夏の失敗以来、イスラエル政府の中枢は、軍内の右派がクーデター的に侵攻をやらないよう、指揮命令系統を厳しく監視しているはずだ。中露やトルコがイランの石油ガス開発に本格的に取り組み出している今、イランの防空力が急速に高まり、イスラエルがイラン空爆をあきらめた可能性がある。

 イスラエル政府高官らは、イラン空爆を辞さずとさかんに言い続けているが、これはむしろ、実際の空爆ができないことをイラン側に察知されないよう、言葉だけでもさかんに威嚇しておかねばならないという、苦しい次善の策なのかもしれない。

▼3カ月以内にレバノン再戦?

 ここまで書いたところでニュースを見ると、イランのアハマディネジャド大統領が、私の推論を裏づけるような爆弾発言をしていた。アハマディネジャドは7月27日、イラン政府系のネットメディア「プレスTV」のインタビューで「イランは防御力があるので、米国やイスラエルはイランを直接に攻撃することはできない。代わりに彼らは、イランを威嚇してイスラエルを防御する目的で、今後3カ月以内に、中東のイランの同盟国を少なくとも2つ軍事攻撃することを決め、すでにその準備をしている」と述べた。前後の質問の流れから、この2つの国は、レバノンとシリアであると推測できる。 (Exclusive Press TV interview with Ahmadinejad - Part Two) (Iran: U.S. will likely attack 2 Mideast countries within 3 months

 アハマディネジャドの発言内容が事実であるとしたら、米イスラエルは、イラン自身を空爆するつもりはなく、代わりにレバノンやシリアに侵攻するつもりだということになる。少なくとも、次の戦争はイランからではなくレバノンから始まる。今秋、イランよりレバノンの方が戦争になるとの予測は、最近ほかのところからもいくつか出ている。 (Possible Israeli attack against Lebanon this autumn) (Analyst: Israel's Next War Could Be Lebanon

 レバノンでは、1980年代にイスラエルが軍事占領していた時代に構築したイスラエル諜報機関(モサド)のスパイ網が、昨年から次々と摘発され、約70人が逮捕されている。レバノン軍の幹部や、レバノン政府系の携帯電話・無線通信会社(アルファ社)の経営者や技術者の中に、80年代からのモサドのスパイが多く混じっていることがわかった。イスラエルは06年夏にレバノンを空爆で侵攻し、高速道路や空港、発電所などのインフラを徹底破壊したが、この時にレバノン内のモサドのスパイたちが、どこを空爆すればよいかをイスラエルに伝え、効率的に空爆が行われた。スパイは全くの売国奴だった。 (Second telecom 'Israeli spy' arrested in Lebanon

 イスラエルが最も潰したかったレバノン南部のシーア派武装組織ヒズボラは、通信会社にモサドが入り込んでいることを前から知っていたようで、ヒズボラは公衆回線に頼らず、自前で光ファイバーケーブルを首都ベイルートからレバノン南部の国道沿いなどに張りめぐらせ、これを軍事通信に使っていた。そのため、イスラエル軍はヒズボラをスパイして潰すことが困難で、ヒズボラの組織は2カ月近いイスラエルの空爆に耐えて生き延び、ヒズボラのテレビ放送も途絶えなかった。戦後のレバノンでは、ヒズボラの政治力が強まった。その後、モサドのスパイが入り込むレバノン政府は08年、ヒズボラの通信網を違法だとして取り締まろうとして、ヒズボラと政府との政治対立が強まった。だが結局はヒズボラの方が強くなり、今ではレバノン政府はヒズボラ寄りになり、その流れの中でレバノン当局はモサドのスパイ狩りを09年春から始めた。

▼ハリリを殺したのはシリアではなくイスラエル

 レバノンでは05年にラフィーク・ハリリ元首相が爆弾で暗殺された。米国や、米国の息がかかった国連の調査団は、これを「シリアの諜報機関の犯行」と断定し、国際社会ではシリアを経済制裁せよという声が強まった。しかし5年後の今、レバノンでモサドのスパイが摘発される中で、ハリリを暗殺したのは実はモサドだったという見方が強まっている。シリアがハリリを暗殺したという主張の主たる根拠は、シリアの関係者がレバノンで使っていた携帯電話の通信記録なのだが、携帯電話会社には上層部から技術陣までモサドのスパイが入り込んでおり、通信記録をでっち上げて当局に提出することができる。モサドはレバノンの軍と通信部門に入り込んでおり、当日のハリリの行動もモサドに筒抜けだったはずだ。 (The Hariri Assassination - Israel's Fingerprints Surface

 レバノン政府は最近、国連に対し、イスラエルのスパイ行為を非難する文書を提出した。今後、ハリリ暗殺事件に関するシリアの濡れ衣が晴れ、本当の犯人はイスラエルだったということになるかもしれない。イスラエルとしては、そうなる前にレバノンに侵攻する必要も出てくる。 ('Lebanon to file UN complaint over alleged Israel espionage'

 今やヒズボラが主導するレバノンは、イスラエルのスパイ網を潰して情報漏洩を防ぐばかりでなく、イランなどから兵器を輸入してレバノン南部の防衛力を強化している。イランから、北イラク(親イランのクルド人がいる地域)とシリアを経由して、レバノンに武器が搬入されているという。北イラクは米軍の占領下だが、米国は武器輸送を黙認している。イランは、シリア経由でレバノンに高精度のレーダーを送り込み、イスラエル国境近くのレバノン南部の山の上に据えた。イランは、イスラエルの軍事行動を察知する能力を高めた。 (Syria posts Iranian radar atop tall Lebanese peak) (Report: Iran-Iraq-Syria Missile Route Revealed

 イスラエルは、レバノン南部に平和維持軍として駐屯する国連軍を使って、ヒズボラの武装状況を探ろうとした。国連軍にはフランス軍が参加しているが、フランスのサルコジ大統領はユダヤ系で、しかも最近スキャンダルで弱っている。在外ユダヤ人の情報を豊富に持っているモサドは、サルコジをスキャンダル情報で脅すことができる(スキャンダルの中には、サルコジがかつてモサドの要員をしていたというものまである)。フランス軍はモサドに協力することになり、国連軍としてレバノン南部の村々に入って武器の取り締まりを強化しようとした(もともと国連軍の任務はヒズボラの武器を取り締まることだったが、近年は空文化していた)。 (Sarkozy Accused of Working for Israeli Intelligence) (Mystery of the lost files in Sarkozy illegal cash payments scandal

 ヒズボラは、フランス軍などの国連軍の行動を阻止し、村々に入って来ようとする国連軍を威嚇して追い出した。国連軍は、レバノン南部をパトロールする際、親ヒズボラの軍勢であるレバノン国軍と一緒に行動することを、レバノン政府から義務づけられた。ここでもイスラエルの諜報活動はヒズボラに封じ込められている。その上で、ヒズボラはレバノン南部でイスラエルを迎撃する軍事的な準備を進めている。 (MESS Report / UNIFIL losing power as Hezbollah expands deployment

 イランのアハマディネジャドは7月初め、シリアのアサド大統領ら同盟国の首脳を誘って南レバノンを訪問しようと提案した。これは、イランの傘下にいるヒズボラが、レバノンを主導する政治勢力に成長し、イスラエルの諜報力を潰して強くなっていることを世界に宣伝するための訪問計画だろう。アハマディネジャドは、イスラエル国境から数十キロのレバノン南部のパレスチナ難民キャンプなどを訪問し「イスラエルは近いうちに必ず潰れる」と宣言するつもりかもしれない。 (Ahmadinehad ready for his first close-up to Lebanese-Israel border

 アハマディネジャドが本当にレバノン南部を訪問するとは限らないが、こうした状況は、イスラエルとヒズボラ(とその背後のイラン)の優劣が逆転し、ヒズボラの方からイスラエルを攻撃できるようになってきたことを示している。すでに中東和平が事実上不可能になっているイスラエルは、座して国家的な死を待つか、それとも無謀な戦争に打って出るかという、悲惨な選択肢の前に立たされている。

 アハマディネジャドは、プレスTVのインタビューで、レバノンとシリアがイスラエルと戦争になっても、それがイランに波及することはないといっている。しかし、これはかなり楽観的な見方だ。イスラエルが自国の存続をかけて戦争するなら、米国も巻き込んで、何としてもイランを破壊しようとするはずだ。

 英国のシンクタンクは、イランとイスラエルが戦争になったら、非常に長く広範囲な戦争となると予測している。空爆だけでなく、地上戦になるということだろう。原油は高騰するし、イランとの関係を強化した中国、ロシア、トルコなどは、国連などの場で、米国との対立を深めるだろう。米国は、朝鮮半島や台湾などをめぐる中国との対立を同時に強めるかもしれず、そうなると中国が米国を潰すために米国債やドルを下落させる可能性が出てくる。中東大戦争は、米国の金融危機再発と連動しうる。 ('Attack on Iran would start long war'

 逆にもし、もうイスラエルがイランやレバノンと戦争する気がなく、中東大戦争が回避されるのであれば、イラン、トルコ、シリア、レバノンは、米軍が撤退しつつあるイラクをも取り込んで、石油ガスを活用して経済発展する地域になっていくだろう。イランとトルコは、北方のロシアも入れて3大国で、コーカサス(グルジア、アゼルバイジャン、アルメニア)をも安定化していくだろう。その東方の中央アジアやアフガニスタンでは、イラン、ロシア、中国、インド・パキスタンによる長期的な安定策が組まれつつあり、NATOのアフガン撤退を待っている。これらはいずれも、米英中心の従来体制に代わる多極型の世界体制であり、イランはその中で重要な役割を果たし、地域の安定化と発展に貢献することになる。

▼南方ではムバラクの死が転機になる

 イスラエルは、レバノン、シリア、イラン、イラクといった「北方戦線」とは別に、ガザ、西岸、エジプト、ヨルダンといった「南方戦線」も抱えている。南方で起こりつつある新たな懸念は、エジプトのムバラク大統領が死にそうなのではないかということだ。現在82歳のムバラクは、07年に議会で演説中に倒れ、その後は息子のガマル・ムバラクを後継者にしようとしたが、自分の与党内ですら反対が強く、後継者が定まらないまま、7月初旬から「パリで手術を受けた」「公務を欠席している」「健在ぶりを示すため、パレードやテレビに出てきたが、顔色が悪く、かなりやせている」といった「もうすぐ死にそう」という話が再び渦巻いている。 (Egypt New fears for Mubarak's health during last-minute Paris trip

 ムバラクがあと何年生きるかわからないが、彼が死んだら、その後誰がエジプトの大統領になるにせよ、最有力の野党であるイスラム同胞団に対する弾圧をゆるめざるを得ない。エジプト国民はかなりイスラムに目覚めており、いずれイスラム同胞団が政権をとるか、もしくは前IAEA事務局長で大統領選への出馬を表明したエルバラダイのような次期指導者とイスラム同胞団が連携する政治体制となる。ガザのハマスは同胞団の弟分なので、エジプトで同胞団が政権に入ると、エジプトとガザは一体化する。エジプトと戦争する余力がないイスラエルは、ガザをエジプトにあげてしまうだろう。

 実は、ガザをエジプトにあげてしまうことは、イスラエルのシャロン元首相が05年からのガザ撤退でやろうとしたことだ。シャロンはガザのユダヤ人入植地の撤退を実現したものの、国内右派に猛反対された挙げ句、脳卒中になって手当が遅れ、植物人間にされた。シャロンの時代には、まだムバラクが元気だったので、エジプトにガザのハマスを抑制させ、イスラエルの安全を守るシナリオが描けた。しかしムバラクの死後、同胞団がガザを乗っ取るとなると、それはイスラエルにとって脅威の急増となる。 (イスラエルの清算

 エジプトがイスラム主義化すると、人口の半分以上がパレスチナ系で、エジプトよりずっと小さいヨルダンでも、イスラム主義が強まることは確実で、ヨルダンは政権転覆されてハマス・同胞団系の政府となり、王室は米国への亡命を余儀なくされるかもしれない(隣国サウジアラビアの王政はイスラム色を強めて延命するだろう)。イスラム主義国になったヨルダンの次の目標は、西岸をイスラエルから奪還することになる。西岸のユダヤ人右派入植者たちは、イスラエル政府が和平を決意しても無視して最後まで戦うだろう。イスラエルは、北方戦線で戦争しなくても、南方戦線での戦争回避が難しい。その間に米国が財政破綻すれば、米国から資金をもぎ取って国家運営してきたイスラエルの立場はさらに苦しくなる。

 中東は、全体がイスラム主義化し、米国が完全撤退し、イスラエルが消滅した上で安定していくのではないかと、私は予測するようになっている。



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