インドとパキスタンを仲裁する中国2010年7月15日 田中 宇7月3日から5日まで、インドの国家安全保障顧問をしているシブ・シャンカール・メノンが、シン首相の特使として中国を訪問した。メノンは7月4日、中国の楊潔チ外相と長時間会議をした後、5日に温家宝首相と会談してシン首相の親書を渡した。中国では通常、訪中した外国要人と、同じ地位にいる中国側の担当者が会談する。本来、温家宝が出てくるのは、シン首相自身が訪中した時だ。中国はメノンに破格の厚遇をしたことになる。印中は、国境紛争を解決するための会議の再開や、印中合同軍事演習の実施などを決めたと報じられている。 (Wen Jiabao, Shivshankar Menon discuss new ideas to take Sino-India ties forward) メノンが帰国すると、翌日の7月6日には、パキスタンからザルダリ大統領が北京にやってきた。ザルダリの訪中も、自国と中国の全般的な関係の好転が目的で、ひどい電力不足で毎日18時間も停電しているパキスタンで中国が原子力発電所を増設する件や、新疆ウイグル自治区の分離独立派の拠点となっているパキスタンの中国国境沿いで中パ合同の「テロリスト退治」をやる件、中国の新疆からアラビア海岸のパキスタンのグワダル港までパイプラインや鉄道を建設する件などが話し合われたとされている。ザルダリは、経済破綻しているパキスタンに中国からの投資を呼び込もうと、中国の銀行界や産業界、防衛関係者などと面談した。 (Hu, Zardari team against terror) ザルダリが訪中する前には、6月17日から22日まで、パキスタン軍のトップであるキヤニ陸軍参謀長が、人民解放軍の招待で中国を訪問した。キヤニと中国軍幹部は、相互の軍事協力について話し合った。軍のキヤニは、政争で議会に権限を次々と削がれている大統領のザルダリより大きな権力を握っているともいえる人物だ。 (Pakistan army chief embarks on China visit) キヤニが帰国した直後の6月24日、中国政府は、中国とパキスタンの「テロ対策」の合同軍事演習「友諠2010」を、7月3日から9日まで寧夏回族自治区(回族はイスラム教徒)で行うことを発表した。中国当局は同日、新疆ウイグル自治区で分離独立派の10人を「テロリスト」として検挙している。中パ合同軍事演習が行われた時期はちょうど、昨年7月5日に新疆のウルムチで暴動が発生してから1周年にあたっていた。中パ合同演習は、中国が金欠のパキスタンを開発投資で釣ってウイグル弾圧に協力させたと、反中国派から批判されている。 (感受“友諠-2010”) (China, Pakistan conduct 3rd exercises) ▼右派の反発を避け隠密に中国に接近するインド しかし、中パだけでなくインド、アフガニスタンも含めた全体の大きな地平で眺め直すと、印パのメノン、ザルダリ、キヤニが相次いで中国を訪問したことは、中国がウイグル弾圧のためパキスタンを巻き込むだけの話ではなくなる。 (Shivshankar Menon arrives in China as PM's special envoy) インド首相特使のメノンが訪中した7月3日は、ちょうど寧夏で中パの軍事演習が始まった日である。中国が計画している新疆からパキスタンへの鉄道とパイプラインは、インドが領有権を主張するパキスタン実効支配下のカシミールを通る。インドのマスコミは、中国の鉄道計画について「インドにとって大きな脅威だ」と反対している。ふつうに考えれば、中パ軍事演習の開始日にメノンが訪中するのはおかしい。インド政府は、何か別の計算に基づいてメノンを中国に送り出したことになる。メノンはインドの元駐中国大使で、中国語が堪能だ。メノンは中国を批判するためでなく、印中協調を深めるために訪中した感じだ。 (PakiSTAN - CHINA Kashgar Gwadar railway line would give Beijing a window on the Persian Gulf) 6月に書いた記事「中国が核廃絶する日」で紹介したが、4月末にブータンで開かれた南アジア諸国サミットに、中国と米国の外務次官級の代表がオブザーバーとして参加した(ブータンのサミットでは、印パの外相会談も行われた)。その後、米中の2人は北京で、米中戦略対話の一環として、南アジアに関する米中対話を行った。これを見てインドなどでは、米国が中国に、印パ間の仲裁をやらせようとしているという警戒感が出た。 (中国が核廃絶する日) そして今回、インドの首相特使と、パキスタンの大統領が相次いで中国を訪問した。7月15日には、インドとパキスタンの外相が、08年のムンバイテロ事件以来中断していた印パの和平交渉を再開している。中国は、印パの代表を相次いで訪中させ、和平交渉の前に印パの間の主張の調整をしたのではないか。インドは右派が中国を敵視しているので、首相が訪中すると右派の反発が強まる。だからシン首相ではなくメノン特使が首相の親書を持って訪中しれたのだろう。 (India and Pakistan to Revive Peace Process) メノンが中国から帰国した数日後の7月10日、インドのラオ外相が、インド北部のダラムサラにある亡命チベット政府に行き、ダライラマと会談した。会談の内容は発表されておらず「中国がカシミールに鉄道を通すなど、パキスタンに接近しすぎているので、インド政府はダライラマと会うことで中国を牽制した」と分析するインドのメディアもある。しかしインド外相が中国を牽制するためにダライラマに会ったのなら、中国は会談を非難する声明を出すはずだ。中国は今年初めから、チベットや台湾など中国の中核的国益を侵害する者を許さないという、以前より強硬な姿勢を明らかにしている。 (Why the Foreign Secretary met the Dalai Lama) しかも、中国の温家宝はインドのメノンと会談した際に「中国とインドは、双方の中核的国益を尊重して助け合うことにした」と述べている。インドが絡む中国の中核的国益といえば、第一にチベット問題だ。インドがダライラマに同調して中国を敵視することはやらず、むしろインドがダライラマを説得して中国に従わせるような方向が、温家宝とメノンの会談で確認された。メノン訪中後にインド外相がダライラマに会いに行ったのは、中国を牽制するためではなく、逆にダライラマを中国に従わせるためだったと考えられる。インド政府がダライラマとの会談の内容を発表しないのは、インド国内の右派の反発を恐れてのことだろう。 (Pakistan as China's force-muliplier against India) ▼米国はこっそり中国に印パ和解を仲裁させる 今年4-5月の南アジアサミットから米中戦略対話にかけての動きを見ると、中国が印パの交渉を仲裁するのは、米国に頼まれてやっていることであると感じられる。しかも米国は隠密に中国に頼み、中国も隠密に印パの仲を取り持っている。米国のやり方は「隠れ多極主義」的だ。しかしなぜ、米国が自分で印パを仲裁せず、こっそり中国に頼むのか。 それはおそらく、米政府が印パの和解を仲裁しようとすると、米英の軍産複合体が印パの軍事衝突を誘発したり、米英諜報機関の創造物である「アルカイダ」がテロをやったりして、米政府の印パ仲裁策を妨害するからだ。中国が隠密に仲裁している今回でさえ、印パが和解に動くとともに、パキスタンのスーフィ寺院での爆破テロや、インドのカシミールの暴動など、和解を阻止するかのような出来事が相次いでいる。 (Kashmir violence could strain India -Paki talks : Experts) かつて90年代末、当時のクリントン政権が印パ仲裁を試みたが、それを阻害するかのようにパキスタンのシャリフ政権が崩壊していき、結局パキスタン軍のトップにいたムシャラフ統合参謀本部議長が99年にクーデターで政権を奪取し、独裁制を敷いてパキスタンを何とか安定させた。だが、01年の911事件とその後のテロ戦争で、再びパキスタンは不安定化になった。 クリントン政権下で米国主導の和解が試みられたがうまくいかず、次のブッシュ政権で無茶苦茶な過激策をとって自滅し、その一方で米国は中国に問題解決を押しつける隠れ多極主義策を展開したのは、印パ問題だけでなく、北朝鮮問題にも共通している。 クリントン政権は末期の00年秋にオルブライト国務長官を平壌に派遣したが時間切れとなり、次のブッシュは先制攻撃で北朝鮮を政権転覆させると言いつつ、実際には中国に6カ国協議をやらせ、今や北朝鮮は経済面主導で中国の傘下に入っている。米国は北朝鮮問題でも、中国への主導権移譲を隠密にやっており、ほとんどの人は、米国が意図的に中国に主導権を渡したことに気づいていない。 (◆代替わり劇を使って国策を転換する北朝鮮) 米国だけでなく中国までもが隠密にことを進めている理由は、その方が米英中心主義の勢力に気づかれにくく、妨害されにくいからだろう。上海協力機構やBRICといった、中国が積極参加する多極型の国際組織は、自分たちの影響力を小さく見せようとしている。世界の多極化は隠然と進んでいる。いずれ米国覇権の崩壊感が急増した後、多極型の世界が(一気に、もしくは少しずつ)顕在化していくだろう。 米国はパキスタンの安定化に中国が協力することを歓迎しているが、その一方で米国は、パキスタンがNPTに加盟せず核兵器を持ったことを理由に、中国がパキスタンに原発を建てることに批判的だ。米国は、自国がインドに原子力技術を与えたことを棚に上げている(インドもNPTに加盟せず核兵器を持った)。こうした状況も、パキスタンをめぐる状況で米国と中国が味方なのか敵なのかわからなくする、隠れ多極主義的な煙幕の一つと考えられる。 (Why China struck N-deal with Pak 4 days after Indo-US deal) ▼NATO撤退後を見据える中国のアフガン戦略 インドとパキスタンの和解には、アフガニスタン情勢が密接に絡んでいる。01年の911事件以来の米国のテロ戦争で、パキスタンは「米国の南アジア戦略の実行部隊としての米国の同盟国」から「テロリスト(アルカイダやタリバン)をかくまう問題のある国」に転落した。インドはこの尻馬に乗って「パキスタンがテロリストを育成してインドを攻撃させている限り、パキスタンとは和解交渉しない」という立場をとり、この傾向は08年11月のムンバイテロ事件によって増大した。 911後のインドは、日韓(対北朝鮮)やイスラエル(対イラク、イラン)と同様、米国の忠実な同盟国として振る舞うことで、テロ戦争の枠組みを使って、敵国に対し有利な立場に立った。インドは、米国の威を借りてパキスタンを非難し続けた。それでも03-06年ごろには、再び印パ間で和平の機運が高まった。08年には印パの和平が、調印の一歩手前まで進んでいたと指摘されている。しかし、パキスタン統合の要だった独裁者のムシャラフ大統領が08年8月に辞任し、同年11月にムンバイテロが起きるに及んで、印パ和解は再び不可能になった。 (カシミールでも始まるロードマップ) ムンバイテロは、パキスタンに訓練されたイスラム主義テロリストの犯行ではなく、インドのヒンドゥ過激派が、インド国内の宗教対立を扇動する目的で、イスラム主義者の犯行を装い、イスラエルの諜報機関の協力も得て挙行した可能性が高い。つまりムンバイテロにはインド側の自作自演色があるのだが、これは米当局が911の自作自演色を隠しているのと同じ構図だ。この構図自体、インドが米イスラエルの戦略に従っていることを示している。(韓国が今年3月末の天安艦の沈没事件で、米軍にそそのかされて北朝鮮に罪をなすりつけたのも、同じ構図の中にある) (ムンバイテロの背景) インドは、昨年までの日本政府と同様、テロ戦争による米国の世界支配が長期的に続くと考え、その尻馬に乗って、パキスタンを非難してきた。しかし今、米国のアフガン占領の敗色が濃くなり、NATOがアフガン撤退を検討する事態となっている。来年7月に米軍のアフガン撤退を開始するオバマの構想は本気だろう。アフガンのカルザイ政権は、タリバンと和解して連立政権を作るか、もしくはタリバンに倒されるしかない。カルザイは最近、タリバンの事実上の創設者であるパキスタンに接近することで、NATO撤退後の政治的生き残りを模索している。 NATOがアフガン撤退したら、欧米からパキスタンへの支援も激減するだろう。だが、パキスタンは以前から経済面で中国に頼る傾向が強い。欧米が捨てた後のパキスタンを救うのは中国である。パキスタンだけでなく、カルザイのアフガンも、経済面で中国に助けてもらいたいと考えている。すでに、中国政府系の鉱山会社が、アフガンにある世界最大級の未開発の銅鉱山の開発権を買い取っている。 (As US fights, China spends to gain Afghan foothold) 中国は、アフガンを安定化し、経済発展させて、そこに開発投資して儲けようと考えているが、その際の軍事面の実働部隊は、中国軍ではなく、パキスタン軍である。NATOが撤退色を強める中、タリバンの創設者であるパキスタン軍は、カルザイとタリバンを和解させ、連立政権を作ってパキスタンを安定化しようとしているが、この戦略は中国の希望でもある。中国軍がパキスタン軍を招待して7月3日からった軍事演習「友諠2010」も、ウイグル平定だけが目的ではなく、中国がパキスタン軍との連携を深め、アフガニスタンの安定化に役立てようとする意図が感じられる。 (Analysts Say Pakistan Is Beijing's Window on Afghanistan) ▼上海機構で印パが和解する多極型新世界秩序 NATOのアフガン撤退は、南アジアにおける米国の覇権の撤収になる。そして代わりに出現するのが、中国がパキスタンと組んでアフガンを影響下に入れ、中央アジア諸国やイランまでが、経済主導で中国の傘下に入る構図である。中央アジアはロシアの影響圏でもあるが、中国とロシアは数年前からユーラシア広域の利権調整をやっており、もう根本的な対立は存在しない。マスコミでは、中露が覇権争いしているかのような構図が描かれることがあるが、その多くは隠れ多極主義的な煙幕である。 こうした「多極型新世界秩序」の中で、インドは、対米従属の姿勢をとっている限り、居場所がない(日本も同様)。この10年ほど、パキスタンは崩壊寸前の準失敗国家であり、高度経済成長するインドの方がはるかに優勢だった。しかし、NATOのアフガン撤退とともに、インドの優勢は揺らぎだす。中国がパキスタンやアフガンに中国型経済発展のノウハウと資金を提供して何年かすると、パキスタンは政治的に安定し、経済成長を開始するかもしれない。インドとしては、そうなる前に、パキスタンが劣勢のうちに、早くパキスタンと和解しておいた方が良いということになる。すでにカシミールなど印パ間の諸問題の多くは、解決の道筋について印パで合意ができている。 そもそも、冷戦終結後のインドが、パキスタンや中国を敵視する戦略を持ったのは、圧倒的な単独覇権国だった米国に付き従っているのが得策だという考え方からだ。NATOがアフガンから撤退したら、米国は南アジアの覇権国ではなくなっていき、インドがパキスタンや中国を敵視する利益も失われる。実は米イスラエル諜報機関のやらせである「アルカイダ」のテロも、米軍が南アジアから出ていけば、しだいに減っていく(米国が出ていく前後、一時的にテロが増えるだろうが)。 すでに中国はインドに対して「パキスタンと和解するなら仲裁しますよ」と誘っている。米国はそのうち南アジアからいなくなるのだから、いつまでも米国覇権への従属に固執せず、中国と一緒に南アジアを安定、発展させて儲けましょうというわけだ。この誘いに乗ったのがメノンの訪中であり、印パ外相会談だ。米国のホルブルック特使も「インドは、今後のアフガン和平策に大きく貢献できるはずだ」と述べている。これはインドに「中国やパキスタンと和解して、NATO撤退後の多極型のアフガン安定化に貢献してください」と言っているようなものだ。 (India can play important role in Afghanistan: Holbrooke) インド政界では、まだ対米従属の右派が強いが、シン首相ら政府中枢は、中国の仲裁によるパキスタンとの和解を進めることが得策と考えている。7月15日にパキスタンの首都イスラマバードで開かれる印パ外相会談は、表向きは目立った前進が発表されないかもしれないが、非公式の場では、すでに印パ間でかなり具体的な和解策が議論されている可能性が高い。 (Pakistan, India poised to set peace agenda today) 中国が事実上主催する上海協力機構には、インド、パキスタン、アフガニスタン、イランがオブザーバー参加している。今年6月の年次総会の前に、インド、パキスタン、アフガンが正式な加盟国に昇格するのではないかとの見方がインドなどで出てきたが、今年は昇格は見送られた。イランのアハマディネジャド大統領は、上海万博訪問の名目で訪中し、中国政府に「上海機構に正式加盟させてくれ」と頼んだが、イラン問題で米国との直接対決を避けたい中国は「もう少し待ってくれ」と今年の加盟を断った。 (Setback for Iran at SCO) しかし今後、NATOのアフガン撤退が決まり、印パの和解が進んだら、印パとアフガンは、上海機構の正式な加盟国になるだろう。印パ和解とアフガン再建は、NATOや米国ではなく、上海機構やBRICが解決するテーマとなる(イランの上海機構への加盟はイスラエルの絡みがあるので別の話になるが、イランもいずれ加盟するだろう)。 インドが中国と本格的に和解したら、今計画されている新疆(カシュガル)からパキスタンへの鉄道だけでなく、チベット(ラサ)からネパールを経由してインドに至る鉄道も敷設されるだろう。 (SCO is to admit new members) ▼中パに国権を譲渡するカルザイ すでにアフガンの大半の山村は、昼間にNATO軍がパトロールできても、夜間はタリバン系の勢力が支配するという、ベトナム戦争末期的な、半分陥落した状況にある。山国のアフガンは陸路の出口が限られている。NATOのアフガン撤退は、タリバンと不戦の約束を確立してからでないと、崩壊的な大敗走になる。だから英独など欧州諸国や、あとに残されるカルザイは、NATOとタリバンの和解交渉を早く進めたい。 だが、NATOを主導する米国は、政界内でアフガン撤退に反対する右派が強い。オバマ政権は、タリバンとの戦争を続行しながら裏で交渉するという、どっちつかずの対応をしている。欧州では厭戦気運が強まり、米国の撤退決断やNATOの全体合意を待たずに自国軍だけ撤退すべきだという声が各国政界で強まっている。タリバンは、時間が経つほどNATOの足取りが乱れ、自分たちが優勢になると知っているので、米国が公式に和解したいと言わない限り、和解交渉の席に着かないという態度だ。カルザイはもともと米国の傀儡なので、タリバンは、カルザイが和解しようと接近してきても、本腰を入れて対応していない。カルザイは、あせりを強めている。 (The US must choose to talk or fight the Taliban) カルザイがいくらあせっても、米国はタリバンとの和解を決心せず、どっちつかずな態度をとっている。しかもオバマは、来年7月にアフガン撤退を開始すると決めている。生き残りに必死なカルザイはやけくそになり、米国から与えられたアフガンの統治権を次々とパキスタンに渡す代わりに、パキスタン軍にタリバンとの話を付けてもらおうとしている。アフガン軍の軍事訓練をパキスタン軍が請け負う話も進んでいる。 (Afghanistan begins circumambulating Pakistan ) カルザイは最終的に(来年か再来年?)タリバンに政権転覆され亡命して終わるかもしれないが、そのころには、アフガンの国権はパキスタンと、その背後にいる中国の手中に落ち、タリバン・パキスタン・中国が、中国と仲の良いロシアやイランの協力も得ながらアフガン統治をしていくことになる。米国がもたもたしている間に、アフガンの利権は棚ボタ的、火事場泥棒的に、どんどん中国の側に移転されている。米国は何千億ドルもアフガン占領につぎ込んだのに、嫌われ者になって出ていくだけだ(イラクがすでにこの構図だ)。隠れ多極主義として見ると、これは米国による意図的な多極化策である。このような大転換を目の当たりにしたインドが、パキスタンや中国との和解を考えるのは当然といえる。
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