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大門小百合の東京日記(2)

変わったのは名ばかり?

2001年8月9日

 日本に戻ってきてあたりを色々と見回してみると、意外と日本が変わっていることに気がついた。

 まずは携帯電話だ。以前から街で見かける若者は携帯電話を持っていたが、戻ってみると電車の車内で電話で話をしている人が少ない。一瞬JRの「車内での携帯通話やめよう」キャンペーンが成功したのかと思ったのだが、見ると若者は一心不乱に携帯電話の上で指を動かしている。話すのではなく、黙ってメールを打ち込んでいるのだと気づいた時には違和感を覚えた。アメリカでも携帯電話は普及しつつあるが、メールをするまでの環境は整っていない。こういう細かいことが普及するのはやはり日本ならではではないだろうか。

 しかし、英字新聞のデスクに復帰する私が何よりも一番心配していたのは、省庁や金融機関の名前が様変わりしていたことだ。日本語でもピンとこない名前がたくさんある上、英語の名前も頭に入れておかなければならない。

街を歩いていると見慣れた看板が変わっていて、まるで違う街のようだ。 デザインや名前が変わっただけで、こんなに雰囲気が変わるものであろうか。そういえば、以前イタリアのローマに行った時、大理石の石像や建造物に色彩を合わせるためか、あの赤と黄色のマクドナルドの看板までもが、白地にグレイの文字のMのマークだった。街の方針にさすがのマクドナルドもトレードマークを変えざろうえなかったのかと思ったものだが、どうもマクドナルドの感じがしなく、不思議な感じがしたのを覚えている。

 さて、まず目についたのは、三井住友銀行だ。以前、太陽神戸三井銀行からさくら銀行に名前が変わった時、銀行の社員の間で、「ださい名前!」という声があがったと聞いている。今回の評判はどうだろう。財閥の名前が二つで、財閥復活という感じもしなくもない。

 この銀行の英語名だが、Sumitomo Mitsui Banking Corp.といって、日本語をひっくり返したものだ。時々合併すると名前を日本語と英語で逆にすることがあるが、合併相手に気を遣ってのことだろうか。日債銀も Aozora Bankになったようだし、覚えることが多くてパンクしそうだ。

そしてなんといっても省庁の名前であきれてしまったのは、総務省だろう。英語だとThe Ministry of Public Management, Home Affairs, Posts and Telecommunications と統合前の省庁全ての名前が残っている。これだけで、記事が長くなってしまって悩ましい。こちらは、合併相手に気を使ってというより、それぞれの省が自分たちの名を残そうと主張した結果という気がする。

 そんなことを考えながら、先日、ある霞ヶ関の役人に「省庁再編後はどうですか」と聞いてみたところ、「中身はたいして変わっていない」という答えが返って来た。次官人事もたすきがけで動いているようだし、二人以上は人事課長ポストをつくることができないので、人事担当参事官とかいう名前で、それぞれの省庁からきた人が、人事を担当したままだそうだ。

「物理的にお互いの省の人事は把握しようがないし、立ち入れない」というお話だったが、いつまでこの状態が続くのだろうか。これでは、省庁再編の効果はしばらく期待できそうにない。

 日本は変わったように見えて、実は見かけだけしか変わっていなかったのだろうか。まずは見かけが変わったことが、変革への第一歩として考えたかったのだが・・・



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