★ またキレた ヌーヴォー編

11月17日ボジョレーヌーヴォー解禁!昨年に引き続き、一般小売店に並ばないノンフィ
ルタータイプを仕入れた。当店には解禁前日に商品が届いたので、16日に禁断のプレ
解禁。

16日夕方にワインメーカー営業マンが来店。

「前日にヌーヴォーが入荷したら、どの店も今日プレ解禁しちゃうんじゃないの?」

僕が尋ねると、営業マンは、

「いえいえいえいえ!!!」

手を車のワイパーのように大きく激しく大袈裟に振った。

「そのかぶりの振り方、今日の会社の朝礼でみんなで練習しなかった?営業部長がこ
うやるんだ〜ってお手本を見せて、みんなが後に続いて振ってたりして(笑)それは
そうと、うちは今日どうしても飲みたいっていうお客さんにこっそり出しちゃおっか
なぁ。もうおたくらもぶっちゃけ、1日2日前にもう飲んでるんでしょ?」

「いえいえいえいえ!!!ほんっとに飲んでないですよ!(急に小声で)でもそのへ
んは鳴海さんの御判断にお任せしますので、そういうお客様には出しちゃって下さい」

「あら、言い切っちゃったね(笑)いいの?出しちゃうよ」

「ええ、どうぞ」

「じゃ、やっちゃおっかな。どうせ17日に解禁っていうのはフランスの法律だもん
ね」

で、めでたくプレ解禁。この日はグラス、ボトル共によく出た。総数12本。

昨日、この営業マンが当店と取引している酒屋さんの中堅クラスの人と当店営業中に
やってきた。何でももう4軒目とかで、けっこうヘロヘロだ。いちおう飲みの名目は、
ヌーヴォーの売れ行きチェックということだった。二人でヌーヴォーを2杯ずつ飲み、
会計をすませて立ち上がった時にそれは起こった。

身長が190センチはあろうかというワインメーカーの巨人営業マンが、今後ともよろ
しくお願いしますと言いながら僕に握手を求めてきた。僕が手を差し出すと、彼は慢
心の力を込めて僕の手を握りしめた。その力は親愛の情を込めたガッチリ握手という
度合いを500%ほど超え、まるで僕の手を握りつぶしにかかっているような不快な強さ
だった。掌が砕けそうな衝撃を覚えた。

「いてぇ!何すんだよ!!」

僕は慌てて自分の手を引っこ抜いた。どんな文句を言ってやろうと思ったが、よし、
相手のダメージが一番大きいのはきっとオヤジチックな叱り方だろうと瞬間的に判断
し、巨人に言った。

「何だ君は!痛いじゃないか!まったくもう無礼だな。それは体育会系の先輩が後輩
にやる握手だろ!ふざけるんじゃないよ!何だと思ってんだよ!いい加減にしてくれ!
まったく君は無礼だな!」

無礼だなという言葉が気に入って2回使ってしまった。さて、二人はビビってペコペ
コ謝り出した。酒屋さんがおろおろと

「僕の握手はソフトですから」

そう言って手を差し出したが、僕は握手を拒否。

「握手は目上が差し出すもんなんじゃないの? んもう、お客様としては今日はあり
がとうございました!じゃ!」

僕はその場を後にした。

オヤジチックな叱り方を生まれて初めてやってみたけど、こいつはなかなか奥が深い
ぜぃ。怒ってる感じがよく出るし、威圧感もあってなかなかよろしい。よおし、もっ
とよく練り上げて、今度また試してみようっと。



<追記>-----------------------------------------------

この巨人男に今年のヌーヴォーの出来を聞いたら、「今年は正真正銘、当たり年です
よ!」と言っていた。

「毎年毎年当たり年って言うから、そう言われるとかえって信用できないなぁ。それ
に今年は当たり年に加えて、さらに正真正銘なんて言葉が加わってるし。僕は正真正
銘という言葉自体にいま疑心暗鬼な気分だ〜(笑)」

そう言うと巨人は首をかしげてこう言った。

「いやぁ、ホントはどうなんですかね〜(ヌーヴォーの出来)」

えっ?こらこら、君は飲んでても今は仕事中じゃないか。カミングアウトするなよぉ。

                             (2005年11月20日)




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