★ 洋酒メーカー営業マン再び

昨日の午後、某ワインメーカーよりセールスの電話がかかってきた。相手の女性はめ
ちゃめちゃ滑舌が悪く、その上、受話器に口をくっつけて喋っているようで、何を言っ
ているのか全くわからない。

「う゛ぁだしどぼの会しゃぼ、カダログう゛ぉお持ぢしゅで、商品ぼ説べいさせべい
だだぎだいどでどぅが」

「すみません。声が割れていて聞き取りにくいのですが」

「失でいしゅましば。う゛ぁだしどぼのがい社ぼ〜〜(以下同文)」

「すみません!何をおっしゃっているのか全く聞き取れません」

「ずびばぜん。ばだ後べお電ばしゅます(ガチャ)」

夕方また同じ女性から、同じ内容の電話がかかってきた。さっきよりはまだマシになっ
ていたが、相変わらず何を言っているのかよくわからない。そのうち、これほど滑舌
が悪い人にセールスをやらせているメーカーって何なのさ!と不信感を覚え、うちは
結構ですと電話を切ってしまった。

最近、洋酒メーカー各社の売上が芳しくないらしく(と大手メーカー営業マンが言っ
ていた)、今までうちに顔を見せなかったメーカー各社もセールスに来るようになっ
た。先日、初めて来店した営業マンは、とんでもない事を言うヤツらだった。

「当店の商品をお取り扱いいただきましてありがとうございます。こちらの取り引き
されてる酒屋さんはどちらでしょうか? あっさようでございますか。今度そちらの
酒屋さんとは別に、当社と直接取引させていただこうと思いまして。こちらの店の販
売実績を教えていただいて、その実績に合わせてお値段を考えさせていただきますの
で」

なんだとカッチ〜〜〜ン!! 

やいやいやいやいやい〜!! 

うちが取引している酒屋にメーカーが横入りして、
直接取引しようってぇのは、どういうことだ!! 

大体てめえの会社が輸入してるウィスキーの定価は、

ディスカウント酒屋で売ってる並行品の2.5倍もするじゃねーか! 

なめんなよ! ざけんなよ! 

ちょっとやそっと値引いたって太刀打ちなんかできねーだろ! 

こちとら、おまえらの給料出すために仕入れてんじゃねーんだぞ!

おまけにうちの販売実績に合わせた値段をつけるだと? 

ずいぶん大きく出るじゃねーか。

うちはお宅に取引させてもらう立場だっつーのか?

ふざけたことぬかすな!

とっとと帰りやがれ、へっくしょい、こんちくしょーめ!

さきおととい来やがれってんだバーロー!

もちろん相手にこんな言い方はしないんだけど、心の中ではこんな感じだ。と書くと、
営業マンには大したことを言ってないように思うだろう。でも言い方はちょっと違う
けど、上の江戸弁仕立てのセリフは、実は全部相手に言っている。その上、実際はも
うちょっとひどいことを言っていたりするから僕って怖い人だわん。うふっ。可愛い
子ぶっても、もう遅いか。

5年前に「洋酒メーカーの営業マン」というコラムを会社名入りで書いた。この当時、
僕はメールマガジンを発行していて、これを4500人の読者に配信した。その後、この
コラムはマイクロソフト社のMSNジャーナルに掲載され、数万人の目に触れた。読ん
だ方々から感想メールが百通ちかく舞い込んだ。その中に僕への批判は1通もなかっ
た。洋酒メーカーはまだそんなことをやってるのか、驚いた、という内容ばかりだっ
た。

その後、当店を訪れる営業マンは激減した。書かれた相手は僕が書いたとわかるから
だろう。しばらく期間をおいてから、営業マンたちはまた当店にやって来るようにな
り、僕が書いたようなことをする人はいなくなった。つまり多少はまともになった。
で、ここへきてまた上記のようなザマだ。全くもってとほほのほ、である。

先日やってきた大手メーカー営業マン(部長クラス)は真っ当だった。要点をかいつ
まんで整然と説明し、さりげなく本音も打ち明けたりする。うまい!早い! こうで
なくちゃな。これが営業ってもんだろう。この人とは10分ほどササーーッと話してこ
ちらの望みを高速で伝えた。彼はすぐさま理解し、すぐに対応すると約束してくれた。

他社の営業マンもぜひ彼の営業手法を学んでほしいと思った。しかしひとつ問題点が
あるとすれば、他社の人々は彼の仕事を見るチャンスがないということだ。だって他
社の営業マンは敵なんだもの。手法を明かすはずがない。残念。無念。

                            (2005年11月13日)



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