●南洋の王国復活はなるか

(97.01.01)

 昨年9月に沖縄で実施された、米軍基地をめぐる住民投票は、江戸時代に鹿児島・島津家の植民地にされて以来、沖縄の人々の主権が日本国と「本土」の人々によって抑圧され続けてきたことに対して、沖縄の人々が今後、どう対応していくかを問うものだったといえる。そして、日本人にとって沖縄と同じように親しみがあるもう一つの南の島でも昨年8月、同じような動きがあった。−−ハワイで実施された、アメリカ合衆国との関係を問い直す住民投票である。

 ハワイの住民投票は、州政府の費用負担で実施された。県が投票を実施した沖縄県の場合と同じである。ハワイの総人口約120万人のうち、約20万人のハワイ人(ポリネシア系)の人々を対象に実施され、その中の成人8万人が有権者となった。設問は「ハワイ人はハワイ人による政府を作る目的で、代議員会を新設すべきか」というもの。投票は郵送で行われ、約3万人の投票者のうち、73%が代議員会の設立に賛成した。

 こうした投票が実施された背景には、ハワイの人々が、アメリカから受けてきた抑圧の歴史がある。ハワイには1000年以上前からポリネシア系のハワイ人が住み、王国を作っていた。18世紀にイギリス人がハワイを「発見」してからは、国際社会に組み込まれ、19世紀にはハワイ王国は立憲君主国として、日本を含む世界各国と外交関係を結んでいた。
 ハワイではアメリカ人やイギリス人など白人がサトウキビ農園を経営するようになったが、彼らのうち17人の有力者は1893年、ハワイ政府がサトウキビの輸出にかけていた関税を撤廃するように求め、拒否されるとアメリカ海軍の支援を受けてハワイ政府を武力で攻撃し、王国を滅亡させ、代わりに白人たちが統治する「ハワイ共和国」を作った。その直前にハワイ王国政府は明治維新で国際社会に仲間入りしたばかりの日本に対して支援を求めてきたが、米国と戦っても勝ち目はないと判断した明治政府は、これを無視した。

 王国が滅亡した5年後、ハワイ共和国はアメリカ合衆国に併合され、米国の植民地となった。この経緯から、王国つぶしは米国政府が白人の農園経営者に働きかけて実現したのではないかと推論できる。
 太平洋戦争の処理が終わった1959年には、住民投票の結果、米国の植民地から州へと変わった。ハワイ人たちによると、この時の投票の選択肢は、植民地の地位にとどまるか、米国の州になるかの二者択一で、米国から独立するという選択肢がなかったため、不完全なものであり民意を表していないという。(この時の住民投票が有効だとすると、昨年の住民投票は実施する必要がなくなってしまうからだ)

 ハワイでは米国領になって以来、アメリカ本土からの入植者が増え、白人が経営する農園で働く労働者として、中国人、日本人、韓国人、フィリピン人などのアジア系移民も増えた。アジア系の人々は、民族的な勤勉=狡猾さにより、白人同様に富を貯えていった一方、ネイティブのハワイ人たちは、こうした変化に取り残され、貧しいままの状態に置かれる場合が多くなった。
 ワシントンポスト(96年8月27日)によると、ハワイにいるホームレスのうち、40%はハワイ人だという。その記事の中であるハワイ人は「ハワイ人は貧乏だから犯罪を起こしやすい、という偏見を持たれている」と述べている。

 こうした後退の歴史にクサビを打ち込んだのが、1993年のハワイ王国転覆100周年記念日に、ハワイ人で初めてハワイ州知事になったジョン・ワイヒ知事が、アメリカ合衆国の旗ではなく、ハワイの旗を掲げたことだった。
 それと前後して、ハワイ州の議会や、ハワイ選出の連邦議員らの運動により、米連邦議会は1893年に米国がハワイ王国を転覆させたことについて正式に陳謝する決議を行い、これを法律にした。
 (日本政府も江華島事件などを起こして李氏朝鮮国を転覆させたことを陳謝すべきだろう。従軍慰安婦問題など、情緒的には重要かもしれないが法的にみると曖昧な問題より、外交的にはっきりした問題から解決していった方がいいと思う。反論のある方は作者までメールをください)

 住民投票は、この流れの延長にある。とはいえ、ハワイと米国の関係が今後、どうなっていくかは、まだ不透明だ。ありうるとされる選択肢は3つで、
(1)アメリカ合衆国から独立し、別の国になる。
(2)プエルトリコのように、米国の一部だが、広範囲な住民の自治を認められた地域になる。
(3)合衆国に残る。−−−−の3つである。

 ハワイ人の主権を取り戻す運動を続ける市民グループの要求の第一の柱は、土地の返還である。ハワイの土地の約半分を占める旧ハワイ王国政府所有地のうち、半分近くは王国滅亡の後、米連邦政府の所有地となっている。パール・ハーバーの米海軍基地の土地などがそれだ。住民グループは、それらの土地をハワイ人の手に戻すよう求めている。
 一方、米連邦から離脱した場合、今まで連邦から受けていた恩恵が失われ、マイナスの方が大きくなるのではないかとの不安を抱くハワイ人も多い。また、白人系や中国系、日本系などの人々も、先行きの不透明さに懸念を持ちながらも、ハワイ人以外の人が急に住みにくくなるような大きな変化はすぐにはおきないとみている人が多い。

 なお、この文章は正月休みにハワイ旅行をすることになったので書いた。旅行に行く前にインターネットを調べたところ、ハワイ独立のホームページを見つけた。この文章の数字などは全てそこに転載されている英文記事から引用した。
ハワイ独立のホームページ(英語)のアドレスは
http://www.aloha.net/nation/hawaii-nation.html

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