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★ 『あなたの知らないスーパーの裏側徹底検証』を見て 
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                            (2000年8月25日)

 8月8日に放送されたテレビ番組「あなたの知らないスーパーの裏側徹底検証」
(テレビ東京)をビデオに録って最近見たのだが、とてもとても驚いてしまった。こ
んなインチキだらけのスーパーがあったんだ!いったいどのくらい存在しているのだ
ろう。ほんの一部だけなのか。それとも多く存在するのか。皆目わからない。

 こんなにひどいスーパーのことをぜひ皆様にも知っていただきたくて、番組内容を
以下にまとめてみた。スーパーの内情を御存知の方はともかく、御存知ない方はショ
ックを受けるかもしれない。

 この番組ではスーパーの現役店長が、閉店後または開店前に自分が働くスーパー内
で実際に商品を手に取って説明したり、加工現場を見せながら様々なことを暴露する
という形式で進行する。店長は引け目を感じるどころか、むしろ得意げに説明してい
た。

▼生鮮食料品について

 生鮮食料品がその日に売れ残ったときは、リパック(再パック)して次の日も陳列
するのは当たり前。もちろん賞味期限のシールは日付を先へと書き換える。まあ、こ
れぐらいは僕だって予想していたことだが、それは飽くまで序の口である。生鮮食料
品がどのくらいの間、陳列され続けるのかを食材別に記することにする。尚、「→」
の左側の表記は当日、右側は翌日と、矢印を境に1日が経過している。

【豚肉ロース切り身】
 陳列 → 色が変わらなければリパックして陳列。変色した肉は薄く手切りでスラ
イスし「細切り」または「切り落とし」で陳列 → リパック。変色したら挽肉にし
て陳列 → リパック、陳列。

【牛肉】
 陳列 → リパック、陳列。変色した肉はタレ漬けにして売る。タレは発色剤入り
で変色した肉が赤色に戻る。「味付け肉」にするとよく売れる → 肉の上下をひっ
くり返しリパック、陳列 → 油を混ぜて挽肉にして陳列 → リパック、陳列。変
色した肉は「手作りハンバーグ(生)」に加工。加工時、ケチャップを混ぜると肉が
赤くなる → 変色したら「ハンバーグ弁当」のおかずになる。

【シャケ】
 陳列 → リパック、陳列 → 変色してきたらシャケ弁当に回す。店長は「変色
したシャケは適度に熟成していて美味くなる」と笑っていた。

【イカ】
 陳列 → リパック、陳列。変色したら「イカソーメン」に加工、陳列 → 「刺
身盛り合わせ」の1つにする。上手な「刺身盛り合わせ」の盛り方は、例えばマグロ
を1点だけ新鮮なものをメインにし、あとは古いネタを散りばめるのがコツ。

【マグロ(さく)】
 陳列 → リパック、陳列。状態が悪いものはスライスして「お造り」にする →
状態が悪くなったらぶつ切りにして「山かけ」用に。 → 状態が落ちたら、たたい
て「ネギトロ」用にする。

「ぶつ切り」を400円で売っていた場合、1パックから「ネギトロ」用が2パック
できる。1パック350円×2パック=700円にすると、300円儲けが増す。も
ちろん賞味期限は毎日更新する。

 魚、貝類などは悪くなるのが早いので、商品の状態をプロの目で的確に判断しなけ
ればならない。どう見極めるのかというと、熟練したパートのおばさんが臭いを嗅い
で判断する。それだけである。そのパートさんは、リパックした魚介類を「自分では
買わない」「お客さんに買ってほしくない時もある」と言っていた。

 リパックして次の日に売っても、値段を下げると売れ残りだと気付かれてしまうの
で、前日と同じ値段で売る。

【揚げ物(惣菜)】
 前日に売れ残ったコロッケやエビフライは、そのままバシャバシャと水洗いして水
分をよく含ませた後、揚げ直す。水洗いするときれいに揚がり、そして弁当のおかず
(フライ弁当)にする。

【キャベツ】
 何日かそのまま売る。新しいキャベツが入荷したら、残り物は半分にカットして売
る。値段は今までの売値の半額よりも少し高めに設定する。高い方が良いものだと思
って、お客は喜んで買っていくそうだ。

【中国産長ネギ】
 産地を埼玉産に変える。その方が売れるからだ。値段はやや高めの埼玉産と同価格
に設定する。

【茨城産ジャガイモ】
 産地を静岡産に変える。茨城産は仕入れ値1ケース1000円、静岡産は1800
〜2000円なので、倍儲かる。

【中国産スナックエンドウ】
 産地と名前を「福島産サヤエンドウ」に変える。

【カリフォルニア産ブロッコリー】
 産地を長野産に変え、箱も長野産のものに入れ替える。中国産は箱に産地が書いて
ないのでそのまま使える。

【長崎産、福岡産ミカン】
 愛媛産に変える。「お客は愛媛ミカンだと思って喜んで食べてくれる」と店長がの
たまっていた。

 主婦が答えたアンケート結果によると購買意欲をそそる順位は、1)産地 2)鮮
度 3)値段 だった。この心理を巧みに利用してスーパーはインチキをしている。

▼この魚、本当は?

 「銀むつ」「沖ぶり」と表記された魚の切り身をよく目にするが、実はこのような
名前の魚は存在しない。「銀むつ」は「メロ」という魚で、「沖ぶり」は「シルバー」
という魚なのだ。どちらも海外でしか穫れない魚だ。見た目も「むつ」や「ぶり」と
は似ても似つかない。「本当の名前じゃ売れないから変えてんじゃないの?」と卸売
市場の人は言っていた。

 また、「甘ダイ」や「スズキ」などの実在する魚でも、実は海外産の別の魚が使わ
れていることがある。「甘ダイ」は「キングクリップ」という魚、「スズキ」は「ナ
イルパーチ」というアフリカ産の魚が使われている。これは切り身のパックに小さく
表記されていることが多い。

 農林水産省の水産加工課課長に、「実在する魚の名前を使用してもいいのか」と質
問したところ、「これらの魚について十分知識がない(知らない)ので、調査する必
要がある」と言っていた。

▼スーパーの店長たちの座談会

 この番組では何軒かのスーパーの店長が集まって、座談会が行われた。

「そりゃその日に売り切るのにこしたことはないけどねえ」

「もう腐る寸前まで売りますよ。もうヤバイんじゃないのって言っても、まだまだ大
丈夫って売ってる人もいるもんね。上司にバレて怒られてんの(笑)」

「売れ残って捨てるぐらいなら、客の胃袋に落とせ!っていつも言ってるんだ」

「売れ残って破棄するのが一番査定に響くんだよね。(皆が「そうそう」と頷く) 
だから捨てなくていいように頑張っちゃう」

 そこで番組スタッフが「じゃ、消費者は何を信じたらいいんですか?」と質問する
と、一同は皆、黙り込んでしまった。少しして1人の店長が言った。

「消費者は自分の目を信じてもらいたいですね」(一同うんうんと頷く) 

 この自分の目を信じろというのは「スーパーを信じるな」ということか。スーパー
のやっていることを鵜呑みにせず、自分の選択眼を養え、ということなのだろうか。

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 僕は20歳になるまで生魚が食べられなかった。その後、少しずつ食べられるよう
になったのだが、生臭い魚は今でも苦手である。そのせいか、いくつかのスーパーの
魚売場では、鮮度の落ちたような臭いを感知してしまって全く購買意欲が沸かない。
きちんとした魚屋では漂わない臭いが、多くのスーパーでしている。その理由がこの
番組を見てわかった。現に鮮度の落ちた魚がたくさん売場に置いてあるのだ。

 この番組では番組制作の前に、都内近郊418店のスーパーにアンケートをお願い
しようと、各店に直接足を運んで頼んだのだが、アンケート内容が「この店ではリパ
ックをしていますか?」「賞味期限を守っていますか?」等のストレートなものだっ
たため、アンケート用紙を受け取ってくれた店は僅かに33店だった。しかも回答し
てくれた店は更に減ってしまったそうだ。中にはアンケートに「悪意を感じるので回
答できない」と書く店もあった。

 いったい世の中に、今日御紹介した悪いスーパーがどのくらい存在しているのだろ
うか。僕の住まいの周辺を見渡しただけで、数店が頭に浮かんでくる。

 この番組に登場したスーパーの店長は、自分自身の成績のことを考えるばかりで、
お客に良い商品を提供したいなどとは思っていないようだった。「背に腹は変えられ
ない」と言い訳するばかりである。しかし、これはスーパーの経営の仕方に問題があ
るのだろう。結局会社がやらせているようなものだ。

 この番組で紹介されたスーパーは、早めに売り切るための仕入れを行っていない。
総仕入量の10分の1ほどの商品が1日に売れればいいと考えている。「どこのスー
パーもうちと同じだと思いますよ」と店長は言っていた。これは多分、少しでも利益
を増やすために、より安い商品を大量に仕入れているのだろう。それらを日数をかけ
て売っているのだ。

 商品が売れ残るから使い回す。それを客が買い、マズいから行かなくなる。さらに
商品は売れ残り、ますます使い回す。客が減る。悪循環である。

 結局のところ、これらの粗悪な商品を売っているスーパーを生かすも殺すも消費者
次第なのだと思う。スーパーは、1つの店に何から何まで揃っている代わりに、その
「全てが良い状態であるとは限らない」という目で見れば、そのスーパーの粗(あら)
がきっと見えてくる。

 スーパーの店長が言った「自分の目を信じること」。今後はこの言葉を復唱しなが
ら、僕はスーパーを練り歩いてみたい。
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