■ 「 大丈夫ですか? 」
最近、気軽に「大丈夫ですか?」と聞いてくる店員が増殖している。1)コンビニで、袋を2つに分けずに「袋は1つで大丈夫ですか?」
2)本のカバーを断ったら「カバーはつけなくて大丈夫ですか?」
3)商品を袋に入れなくていいと言ったら「テープで大丈夫ですか?」
4)7030円の買い物で1万円出したら「細かい方は大丈夫ですか?」
5)商品説明で「◯◯◯の場合がありますけど大丈夫ですか?」
6)同じ商品を複数買って「商品は5点で大丈夫ですか?」
7)料理の出来上がりが「少々お時間かかりますが大丈夫ですか?」
また、当店のアルバイトも気軽に「大丈夫ですか?」を使う。
a)「明日どうしても休みたいんですけど大丈夫ですか?」
b)仕事の確認で「これはこうして大丈夫ですか?」
c)「いま休憩に行っても大丈夫ですか?」
d)「明日準備中に練習に来ても大丈夫ですか?」
これらは正確には次のように言わなければならない。
1 「袋は1つにさせていただいてもよろしいでしょうか?」
2 いちいち聞き返さず「はい、かしこまりました」
3 「ではテープを貼らせていただきますね」
4 何も聞かずに釣りを2970円渡す。または「30円お持ちでございますか?」
5 「◯◯◯の場合がありますが、よろしいでしょうか?」
6 いちいち点数の確認をしない。または「商品は5点ですね?」
7 「少々お時間がかかってしまうのですがよろしいでしょうか?」
a 「すみません。明日どうしても休みたいんですけどよろしいでしょうか」
b 「これはこうしてよろしいですか?」
c 「いま休憩に行ってもよろしいですか?」
d 「明日準備中に練習に来てもよろしいですか?」
店員が「大丈夫ですか?」と聞いてくる時、さもこちらを気遣っているように聞こえ
るが、その多くは自分の都合をはっきりと言い切ることが出来ないため、相手を気遣
うような言い方をして、言いやすくしているのだ。僕はこれを、自分の都合を通しや
すくするためのごまかしのテクニック、または、自己保身のための言い訳と呼んでい
る。ある本によると、最近の若者は「◯◯◯じゃないですか〜」と物事を相互の常識に仕
立てることにより、その結果、以前の若者たちよりも言いたいことを数多く言ってい
るそうだ。「大丈夫ですか?」に関してもこの手法と同様、自分の都合を、より低い
ダメージで遂行するために、相手に伺いを立てる形式を用いている。本来「大丈夫ですか?」は、人が失敗した、怪我をした、転んだ、倒れた、風邪をひ
いた、体調を崩した、ずぶ濡れになったなど、相手をいたわる時に使用する言葉だろ
う。つまり、めったやたらに使用していい言葉ではないというのが僕の感覚だ。だか
ら買い物ごときであちこちの店員に「大丈夫ですか?」を連発されると、いつも心が
掻き乱され、とても穏やかではいられなくなる。当店ではむやみに「大丈夫ですか?」を使わせていない。従業員が「大丈夫ですか?」
と言う度に「よろしいですか、だろ?」とか、「おまえの都合なのに、いたわるよう
に言うな」と直している。すると従業員は「あっ!そうだ」と気づいて「よろしいで
すか?」と言い直す。こうして少しずつ当店の無意味な「大丈夫ですか?」の回数が減ってゆく。でも完全
にはなくならない。なんたって便利な言葉だから……。巷の店員が「大丈夫ですか?」を使用する頻度は、これからどんどん高まるだろう。
楽に言えて何となく良い感じに聞こえる言葉が世の中にはびこることは、「こちら◯
◯になります」「◯◯でよろしかったでしょうか」「◯◯円からお預かりします」等
が幅広く蔓延したことを見れば、たやすく想像できる。これからいったいどんな不適切な「大丈夫ですか?」を聞くことができるのだろう。
そんなことを楽しみにする以外、心を落ち着ける方法はなさそうだ。
(2006年2月13日)
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