■ 「 BAR MANが語るサービスの心 」<前半>

 このコラムは初めて講演というものを行った際の原稿です。講演時間は約50分。
この限られた時間内で話すのはサービスの基本が良いだろうと考え、このような内
容になりました。過去の様々なコラムから数多く引用していますが、今まで1つの
テーマに沿って考えをまとめていたものを、今回はそれらを順序よく配しています。
長文のため、前半、後半、と2ページに分割しました。

▼サービス勉強法

 まず最初に、私がどのようにしてサービスを学んできたか、ということをお話し致
します。

 サービスに関しては、幸か不幸か、人から教えてもらったり、指導してもらったと
いう経験が、今までほとんどありません。そこで、巷のレストランやバー、ホテル、
小売店、その他様々な場所で接客をしている人たちが行っているサービスを観察して、
あれこれ考えながら、少しずつ自分に取り入れてきました。主な勉強法はこれだけで
す。

 ですから私のサービスの考え方や、行っているサービスのほとんどは、自分流とい
うことになります。

 もともと人が行っているサービスに大変興味があるので、人の仕事ぶりをよく見て
いるのですが、そうしますと、サービスを行っている人の様々な情報が、自然に目や
耳に飛び込んで来ます。そしてそのサービスから、これは良い、これは悪い、と考え
をめぐらすわけですが、人のサービスを見るときには、いつも大まかに次の4つのこ
とを考えます。

1 この人はやる気がある人かどうか?
2 どのくらい一生懸命働いているか?
3 適格な良い仕事を行おうと努めているか?
4 サービス力はどの程度なのか?

 これらをその人と接している間にチェックして、こちらが受けた印象から相手のサー
ビス力を見極め、そのデータを私の心のデータバンクに入力し、ストックしています。

 とてもサービス力が高くて感謝の気持ちがこもった良いサービスを行う人のデータ
は、すぐに自分のサービスに取り入れますし、サービス力が、普通、またはそれより
低いと感じる人のデータは、これではいけない!私はこうしよう、と反面教師の形で
役立てています。

▼巷のサービスからサービスを学ぶ

 毎日、どこかしらの小売店や飲食店を利用していますが、店員さんに対して、あな
たのサービスは素晴らしい!と、絶賛したくなるような、優れたサービスを行う人に
は、残念ながら、滅多に出会うことができません。

 多くの人は、どこか無感情に、機械的に、漫然と、気を抜いて、しかたなく、だら
しなく、惰性で、のどれかを感じさせる仕事ぶりに見えてしまいます。そんな仕事ぶ
りを見るたびに、

ヲ この人はどうしてもっと一生懸命働かないんだろう?
ヲ どうしてもっと向上しようと努力しないんだろう? 
ヲ なぜ向上しないで平気でいられるんだろう? 

という疑問が、いつもとめどなく沸いてきます。更に、

● この人は仕事に対してどんなふうに考えているんだろう? 
● 何のために今こうして働いているんだろう? 
● この仕事をどうして行きたいんだろう? 

と、あれこれ考え悩みます。そしてこれが1つの大きな疑問につながります。それは、
『 何がこの人の発展を止めているんだろう? 』
ということです。良質のサービスを行おうとしない、もしくは出来ない原因はなんだ
ろう? もしかしたらそれは、その人の考え方によって抑制、もしくは自分自身で抑
圧しているせいなんじゃないだろうか? と考えます。

 巷のサービス業、接客業に従事している方々が、いったいどのような考えに基づい
て働いているのか。また、彼らの心にどのような抑制が効いているのかについて、私
は、良質のサービスを提供しない人々は、大体、次の11通りのどれかの考え方をし
ているのではないかと、予測しています。それは、

【うぬぼれ】
1 私はいつも一生懸命働いている。
2 私のサービス力は高く、私のサービスはかなり良い。
3 私のサービスは優れているので、少々手を抜いてもお客には何の支障も無い。

【楽観的な考え】
4 お客は私の仕事ぶりなど見ていない。だからことさら愛想を良くする必要は無い。
5 私は仕事を教わった先輩や同僚と全く同じように働いているのだからこれでよい。

【甘え】
6 自分の体調や機嫌が悪い時は、サービスが落ちても仕方ない。

【不真面目】
7 先輩や同僚が一生懸命働かないので、自分だけ一生懸命働く気がしない。
8 一生懸命働くと疲れるから、ずっと一生懸命働くのは無理だ。

【敵意】
9 お客が途切れずにやって来て頭にくる。報復措置として少し冷たくしてやりたい。

【責任転嫁】
10 お客の態度が悪いから、私の態度も悪くなる。

【不適格】
11 お客にどう思われても別に気にならない。仕事は生活の手段だ。

 という11通りです。以上の、うぬぼれ、楽観的な考え、甘え、不真面目さ、敵意、
責任転嫁、不適格、という自分の心の中に潜んでいる気持ちが、先ほど申し上げた、
どこか無感情に、機械的に、漫然と、気を抜いて、しかたなく、だらしなく、惰性で、
のどれかの要素を、そのサービスからうかがい知ることができます。

 実は、誰でもこの11通りの中に、該当する項目があるでしょう。仕事が出来る人、
出来ない人のレベルは違っても、たいていこのどれかに当てはまるものがあると思い
ます。私もそうです。ですから話していても、自分の耳が痛いです。逆にこれらのど
れにも該当しないという人がいたら、その方は要注意です。

 サービス力の高くない人は、自分のちょっとした接客や、自分の行っているサービ
スが、お客様にまさか良く思われていないとは、夢にも思っていないでしょうし、ま
た、自分の仕事に対する気持ちが、どんどん流れ出ていて、それがお客様に伝わって
いるとは、考えたこともないと思います。

 そんな低レベルのサービスを受けるお客様は大変です。お金を払って不愉快な思い
をしたり、気分の悪い思いにさせられるのです。しかし大抵のお客様は、そんな嫌な
目にあっても、ジッと我慢をして、不満をおくびにも出さずに耐えています。もし不
愉快な気持ちを少し表現したとしても、せいぜい無愛想な感じにするだけで、何も言
いません。心の中で「この人は良くないなぁ」と思っているだけでしょう。

 お客様にどんなことを思われていても、サービス力の高くない人にはお客様の不満
は何も伝わりません。涼しい顔で「無愛想なお客だったなぁ」と思って、たいてい終
わりです。

 なぜ多くの人は、現在、自分が行っているサービスが、どの程度のレベルなのかを
きちんと把握したり、これではいけない!と自己反省して、サービス向上を願って懸
命に努力しようとしないのでしょうか? 

 それは、その人がお客様に映る自分自身の存在の大きさに気がついていないからで
しょう。自分の接客によってお客様にどのような影響を与えてしまうのか? 一生懸
命働けばどのような素晴らしいことが待ち受けているのか? それがわかれば、おの
ずと努力するようになるはずです。しかしそのためには、サービスの心をきちんと勉
強し、習得しなければなりません。

 では私たちはお客様にどのようなサービスを提供すべきなのでしょうか? 

▼バーにおけるサービスと心

 バーにおける私たちの務めは、お客様に自分が働く店を気に入っていただき、他店
よりも大きな満足感を味わっていただくことです。そのためには、お客様が当店を選
んで下さったその勘をまず絶対にハズレにしないという意志を強く持つこと。そして、
お客様を敬い、自分の労力を惜しまずに、いつでも最大限の力を発揮して、お客様に
映る自分の姿を十分意識しながら、良い笑顔で、全力で応対、接客を行うこと。

 そしてお客様に「今日はこの店を選んで良かった」と思っていただけるよう、また、
今日の御来店がいつまでも思い出に残るような素晴らしいひとときであるようにと、
心から願ってお客様に尽くすことです。

 この考え方はバーに限ったことではなく、あらゆる接客業に適応します。こういう
ことはサービス関連の本や、業務マニュアルなどにもよく書かれているかもしれませ
んので、いま申し上げた、このサービスを行う上で最も大切な考え方を聞いた皆様の
中には、そんなありきたりなことなどわかっていると、少々がっかり、もしくはうん
ざりされた方がいらっしゃるかもしれません。

 私自身、本などでこういうことを読むと、「それはそうだけど、こんな理想論を聞
いたって、手法が的確じゃなかったら、良いサービスなんてなかなかできるもんじゃ
ないよ」と、少々しらけます(笑)

 しかし私が今ほど申し上げたことは、サービスを行う上で最も重要なことなのです。
この考えを、実際にいつでも心を込めて、やる気を失わずに、実践し続けることは至
難の業です。苦行に近いといっても過言ではないかもしれません。

 当店のお客様は会社員の方々が多いのですが、お客様は昼間、懸命に働き、その大
変なお仕事を終えて、くつろぎや安らぎのひとときを求めて、数あるバーの中から当
店を選んでお越し下さるわけです。そんなお客様に、心からの感謝の気持ちを表し、
お客様に、今日のお仕事を忘れて楽しいひとときを過ごしていただけるようにと願い
ながら働いています。

 もちろんバーですから、酒やカクテルが美味しくなければ何にもなりません。カク
テルはもちろんのこと、水割りやソーダ割りにもできるだけ気を使い、他店より絶対
に美味しい味わいを楽しんでいただけるようにと努力しております。

 バーでもレストランでもそうですが、我々従業員よりもお客様の方が、圧倒的に数
多くの店を訪れています。それはつまり、お客様の方が、多くの店のカクテルの味や、
従業員のサービスの良し悪しを御存じなわけです。

 ですから私たちが手を抜いたり、気を抜いたりすれば、それがお客様に伝わって、
他店と比べて優劣をつけられます。また、お客様にそんなことを気にさせてしまって
は、大切なくつろぎのひとときに水を差すことになってしまいます。もう二度と当店
にお越しいただけないかもしれません。ですからいつでも気を抜かないように、注意
しなければなりません。

 先ほど「お客様に大きな満足感を味わっていただくことを願って」と申し上げまし
たが、この満足感について、私の考え方をお話し致します。

 お客様の中には、一流のサービスや、最高のサービスを御存じの方が必ずいらっしゃ
るはずです。その方に当店で満足していただきたい、と考えるのは、実は大それた非
常におこがましいことだと思っています。ではどのような気持ちで働いているかとい
いますと、

「私には一流のサービスが行える技量など持ち合わせておりませんが、お客様に楽し
んでいただけるよう、懸命に努力致します。お客様にとって私のサービスは、もしか
すると気配りの足りない、物足りないサービスに映るかもしれませんが、精一杯頑張
りますので、どうか許して下さいますようお願い申し上げます」 という気持ちです。

 お客様を敬い、いつも傲らずに謙虚に努力すれば、その気持ちは必ずお客様に伝わ
るはずだと信じています。私よりはるかにサービスのことがわかっているお客様に、
私のサービスは悪くない、と評価していただければ、サービスをやや気にする方には
「納得」していただける可能性が、また、あまりサービスのことを気にされない方に
は「大満足」していただける可能性が増すことになります。

 私は「自分のサービスはかなり良い」と思った時点で、サービスの向上が、そこで
ストップしてしまうのではないかと不安になります。毎日、サービスの向上を願って
励んでいれば、少しずつレベルは上がっていくでしょう。しかし、少し良くなっても
その実力はいつも1で、自分の標準です。早く2になりたい、3になりたい、もっと
良くなりたいと願って努力し続ける気持ちが、レベルアップしていくために非常に大
切だと考えています。

 なんだか仰々しく聖人のような考え方を申し上げてしまいましたが、私は、普段
は別に真面目でもありませんし、善人でもありません。また、特に人に優しいわけで
もありませんし、あまり人の気持ちを考えているわけでもありません。

 ではなぜサービスに対してこのような考え方を持っているかといいますと、自分は
真面目じゃないから真面目に働かなければならない、善人じゃないから人に良くしな
ければならない、あまり人の気持ちを考えないからよく考えなければならない、人に
優しくないから優しくならなければならない、という、自分に足りない部分、いたら
ない部分を改善するためにも努力している、ということもあるような気がします。

 また、普段、どの店を利用しても、そこで働く従業員の応対にあまり心配りを感じ
ないことが多いと思うのは、きっと私だけではなく、多くのお客様も同じように思っ
ていることでしょう。当店では、お客様が他店で感じる疑問や不満をいっさい払拭し
て、ゆったりとおくつろぎいたたけるようにと、願う気持ちがあるからこそ、努力す
ることができるのではないかと思います。

 私がこの仕事に従事していて幸せだなと感じるところは、他の人の良くないと感じ
ているサービス部分を改善して、これが正しいと思うサービスを、実際にお客様に提
供できるという点です。

 サービス業に携わっていないお客様は、巷のあちらこちらの店で不満を覚えても、
その気持ちを払拭したり解消したりする手立てがありません。簡単にいうと「やられっ
ぱなし」「やられ損」です。しかし、私にはサービスを実際に行えるというありがた
い手段がありますから、自分の考えるサービスをお客様に提供できるということに、
素直に大きな喜びを感じています。

 また、サービスに対するお客様からの反応は瞬時に返ってきますので、そのサービ
スの善し悪しの結果もすぐにわかります。私のサービスがお客様に受け入れられて喜
んでいただけた時は、本当に嬉しいですし、もっともっと喜んでいただけるように頑
張ろうと、やる気が沸き上がってくるのを感じます。サービス業は私にとって、大変
やりがいのある仕事だと思っております。

 では次に、当店におけるサービス指導について、少しお話したいと思います。

▼当店のサービス指導法

 当店の従業員に対するサービス指導は、アルバイトの面接の時から始まります。当
店ではどのようなサービスを行っているか、どのような気持ちで働いてもらいたいか
を、きちんと理解してもらうために、今ほど申し上げた私の考えるサービスの心、気
持ちについて、応募者にきっちりと話します。

 バー業務自体や良質のサービスをお客様に提供することが、いかに大変なことかと
か、お客様の話しのお相手をする重要さ、大変さも話し、バー業務は華やかで楽しい
部分はそれほど多いわけではなく、言うなれば、終わりのない自己修練の細い道を、
常に向上心を持って進み続ける、そういう仕事なんだということを、時間をかけて説
明します。

 応募者のほとんどは、バーテンダーが志望で、カウンター業務、特にカクテルが作
れるようになりたくて応募してきます。そこで私がサービス論をぶちまけるわけです
から、応募者は皆、恐れおののいて体が固まります。しかし、どの人も今までこのよ
うなサービスの話を聞いたことがないらしく、とても一生懸命、興味を持って聞いて
くれます。そしてほとんどの人が、やってみよう、やってみたいと共感してくれます。
こちらは、そういうやる気のある人の中から、適性や可能性を見て採用しています。

 新人アルバイトが当店に入店してまず驚くことは、在籍している他の従業員が、自
分を惜しまずに一生懸命、働いていることです。他の飲食店で働いた経験がある人は、
今まで働いていた店と比較することができるので、なおさら驚きます。そして一生懸
命働くことがどういうことなのか、その断片を知るのです。

 新人に業務内容の説明とその手順を教えた後、お客様の心に届く良い挨拶の仕方や、
良い笑顔の表現の仕方を教えます。が、最初は言われた通りに発したり表現すること
が全くできず、皆、落ち込みます。

 働き始めたばかりで、最初からあれこれ全部できるようになるというのは、もちろ
ん期待もしていませんし、無理だとは思いますが、こちらも営業中ですので、新人だ
からといって、行えないままにしておくわけにはいきません。後ほど説明させていた
だく、正しい挨拶の発し方を再び練習し、少々乱暴ですが、無理矢理でも行ってもら
います。

 サービス力の高くない人は、ちょっとずつ良くなってくれればいいからね、なんて
言うと、本当にちょっとずつでいいんだと、甘んじて動きが鈍くなってしまうことが
多いので、当店では、もう既に本番中なんだから、すぐにできるようになりなさいと、
いくらかの負荷をかけて、新人のレベルをマイナスからゼロに引き上げていきます。

 やり方は強引でも、少し無理をさせないと、人はなかなか仕事ができるようになり
ません。レベルが上がれば、アルバイト本人のためになるのはもちろんですが、いろ
いろなことができるようになってくれば、本人の自信にもつながります。そこで当店
では、わりと容赦なく体育会系のノリで、ビシビシしごいています。どんなことを言っ
て、しごいているかは、とてもこの場では言えません(笑) 

 最近の若い人はキツく言ったり教えたりすると、すぐにやめちゃうからあまりキツ
く言えない、という話を聞きますが、そんなことはありません。どんなに優しく教え
ても、辞めてしまう人はいますし、厳しくしても辞めない人は辞めません。要は、こ
ちらの教育方針、教育内容が相手に正しいということが伝われば、若い人がどうのと
いうことにはならないと思います。

 それ以外のサービス教育については、これは後でお話ししますが、毎日同じように
使ってる多くの決まり文句を、どう言ったらいいとか、テキパキ働けるように仕事を
急かすとか、全力で働けるように負荷をかけるとか、サービスは常にお客様との一発
勝負であると気合いを入れるとか、しごいてばっかりなんですけど(笑)まあ本人の
仕事ぶりを見ながら、必要に応じて教えています。

 また、サービスの意味をわかりやすく説明するのも効果的です。例えば、
「君の接客が素晴らしければ、あのカップルの女性は男性に、この人はとっても雰囲
気のいい店へ連れて来てくれた。ちゃんといい店を知ってるセンスのいい人なんだ、っ
て思って、恋が上手く行くかもしれない。君の接客が悪かったら、男性に、この人は
店を選ぶセンスがないのね、幻滅しちゃう、って恋が実らないかもしれないよ。この
恋が実るかどうかは、君のサービスにかかってるかもしれない。どうかこの恋が実り
ますようにって思って、丁寧に接客するんだよ」
と教えます。こういう教え方をすると、説明がわかりやすいせいか、みんな気合いを
入れて頑張ります。恋の力は偉大だな、と思う瞬間です(笑)

 また、人は面白いもので、まあこれは面白い話じゃないんですけど、仕事を覚えて
ひととおり出来るようになると、心が落ち着いてしまって、精神的なサービス力が少
し落ちるか、または停滞してしまいます。

 巷の店員さんを見ていてもそうですが、働き始めたばかりの時は、挨拶の言い方は
つたないですけど、一生懸命言おうとするその気持ちや、その人のやる気が、声から
こちらに伝わってきます。しかし、しばらくすると、以前のような声の張りや、つや
がなくなってきて、残念ながら、「自分が楽に言えて、お客に言わなければならない、
毎日の決まり文句」に変化してしまいます。

 当店もこれと同様です。従業員は仕事に慣れて心を落ち着けて働けるようになると、
サービスが沈滞を始めます。お客様に常に見られているという気持ちが希薄になり、
挨拶や感謝の言葉は、次第にただの決まり文句として発するようになって、心が感じ
られなくなってきます。また、動きも接客態度もなんとなく「張りが」失われ、一生
懸命さが薄まって、感謝の気持ち以外の本人の情報が、少しずつ外に漏れ出しはじめ
ます。

 そうなるとまた再教育です。お客様に伝えるのは感謝の気持ちだけでいい、とか、
ひとつひとつの全てに心を込めて全力を出しきらないと、その気持ちはお客様には伝
わらず、またサービス力も上がっていかない、ということを説明します。

 人は物理的な仕事ができるようになるに従って、精神的サービス力が途中で止まる
か、物理的仕事をクロスして落ちてゆきます。せっかく仕事がスムーズにこなせるよ
うになり、さらに良いサービスが行える土台ができあがったのに、サービス力が一緒
に上がっていかないなんて、勿体ないなぁと思います。なぜ精神的サービスを一緒に
高めていくことができないんだろう、と不思議に思います。

 これには様々な理由が考えられますが、大きな理由の1つに、自分がお客様からど
のように見られていて、どう思われているかということ、つまり、お客様に映ってい
る自分の姿をきちんと意識していないために、もっとサービス力を向上させなければ
いけない、という気持ちが希薄になってしまうためではないかと思います。

                               (後半へ続く)




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