国際ニュース解説が本になりました

1999年2月15日  田中 宇

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 私は最近、これまでに執筆した記事をもとに、本をまとめました。「神々の崩壊」というタイトルで、2月12日に東京の風雲舎という出版社から出されました。(税込み1680円)

 私のメール配信を長く受信していらっしゃる読者は「神々の崩壊」というタイトルに見覚えがあると思います。これはもともと昨年10月、アメリカのヘッジファンドLTCMの崩壊を機に書いた、国際金融問題に関する3部作の通しタイトルでした。

 ここで私は、ロシアの「市場経済化」と、金融の先物化・国際化という、冷戦後の世界にとって重要な二つの試みが、98年の夏に相次いで破綻の危機に陥ったことを解説し、冷戦後のひとつの時代が終わろうとしている、と書きました。

 ここでいう「神々」とは、世界で最も重要なヘッジファンドの一つだったLTCMを作った天才トレーダーやノーベル賞経済学者、IMFやFRB(アメリカの中央銀行にあたる機関)、アメリカ財務省などを動かしているアメリカの金融権力者たちを指していました。

 この3部作を配信した後、風雲舎から出版のお誘いがあり、どんな本を作れるか検討しているうちに、そうした「神々の崩壊」は、アメリカだけで起きているわけではない、というに気づきました。

 市場化、民営化、自由化、「人権」「民主主義」「環境」重視など、冷戦後の世界システムは、アメリカが1980年代に発明し、90年代に入って一気に世界へと広がったものですが、97年の東南アジア通貨危機あたりを境に、世界各地でこの新システムの機能不全や停止が相次ぎました。

 「神々の崩壊」というキーワードは、アメリカの金融についてだけでなく、ここ1-2年、世界各地で起きている混乱について解説するためにも使えるのではないか。そのような視点で読んでみると、筆者がこれまでに配信した記事のかなりの部分が、いろいろな「神々」や「神話」の崩壊を説明していることに気づきました。それらをまとめれば、冷戦後の世界を俯瞰する一冊の本になると思い、出版することになったわけです。

 以下は、本の目次です。

第1章:神々の崩壊・・・欧米金融機関の挫折
第2章:世界の動きをどう読むか・・・主観的に記事を書くという視点
第3章:失われた規範を回復できないロシア・・・出口の見えない混乱
第4章:難所にきた中国の改革・・・「希望の星」朱鎔基のジレンマ
第5章:「成長神話」以後のアジア・・・吹き出した「市場経済化」の矛盾
第6章:アメリカによる「中東和平」という構図の崩壊・・・行き詰まった「オスロ合意」
第7章:科学技術という名の信仰・・・科学を装う理論の横行
第8章:変わりゆくアメリカの政策・・・神々の休息

 2章と8章は、この本のために新たに書き下ろしたものです。2章では、国際情勢について書き始めるに至った経緯や、どうやって記事を書いているか、といったことを解説しています。その他の章は、これまでにメール配信した記事をもとに構成しています。

 本の購入は、お近くの書店へどうぞ。税込み1680円です。

 インターネット上では、風雲舎のサイトからお申し込みができます。





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