覇権拡大を拒否したEUの人々2004年06月14日00時14分EU各国で行われたEU議会(732議席)選挙の結果が出始めている。EU統合を早く進めることに反対している懐疑派(Euroskeptics)が躍進し、独仏英などではEU統合の促進に積極的な現政権の与党が支持を減らしている。 'Euroskeptics' seen gaining clout http://washingtontimes.com/world/20040609-104134-1501r.htm EUは、米のイラク侵攻で欧米間の仲が悪化して以来、独仏主導で政治統合の加速や覇権の拡大が模索されてきたが、EUの人々は今回の選挙で、そうした覇権拡大に反対する姿勢を見せたと理解できる。今後、EUの覇権拡大はゆっくりとしか進まなくなると予測される。 EUの覇権は拡大するか http://tanakanews.com/e0601EU.htm EUは経済的にアメリカとのつながりが深い。EUがアメリカから政治的に自立しようとしても、経済面ではアメリカと切れることはできない以上、EUの覇権拡大は現実的な戦略ではない。またアメリカに比べてEUは軍事的に弱い。実質的な軍事費は、EUはアメリカの3分の1しかないという指摘もある。覇権力と軍事力は切り離せないものだろうから、EUは軍事費を積み増さない限り、中東や北アフリカなどを包含する地域覇権力になることはできない。EU域内の世論から考えて、そのような軍事費積み増しに賛成する人は少ないだろう。 NATO's Future http://www.bilderberg.org/1999mins.htm#NATO EUの人々は、自らがアメリカに対抗して覇権を拡大することには反対だが、その一方でアメリカとの同盟関係を以前のように親密な状態に戻すことにも抵抗が強い。欧州市民の反米感情は非常に強くなっている。欧州では、ベトナム戦争時に「ベトナム世代」といわれる反米世代が出現したように、一つの世代が丸ごと反米になる「イラク世代」が出てくる可能性がある、と指摘されている。 Rise of an 'Iraq Generation' in Europe? http://www.csmonitor.com/2004/0514/p01s03-woeu.html EUは今後しばらく、アメリカに対抗して覇権を拡大することも、アメリカとの同盟再強化に動くこともできず、方向性の定まらない姿勢を続けるのかもしれない。ただ、今後アメリカの方で自滅する方向性が強まった場合、この限りではない。米中枢では「隠れ自滅派」のネオコンがいまだに強い。 ▼オーストラリアと韓国も オーストラリアでは、野党労働党のマーク・レイサム党首が「政権をとったらイラクから豪軍を撤退させる」と言っていた以前の宣言を撤回し、労働党政権ができたとしても、すでに派兵している豪軍のうち3分の1程度は残留させると発言した。レイサムは今年3月、豪国内世論の反戦・反米意識の強まりを受け、イラクからの撤兵を打ち出して支持率を上昇させていた。 レイサムの退却は一見すると、イラクに関する国連決議が通ってアメリカの威信がやや回復されたからのようも見えるが、多分そうではない。豪州では今秋に総選挙がありそうで、そこで労働党が与党の自由党を破って政権を取る可能性がある。そうなった場合、レイサムが以前の公約どおりに豪軍をイラクから撤退させると、第二次大戦で日本を共通の敵にして以来60年間続いてきたアメリカと豪州の同盟関係が決定的に悪化し、太平洋地域の国際政治状況が変わってしまう。今の豪州には、そこまでの転換を行うつもりはない。スペインに続いて豪州が撤退したら、世界の他国もイラクから撤退する気運が強まり、アメリカのイラク占領が崩壊するかもしれない。 アメリカのブッシュ政権も、イラクの泥沼化によってかなりの窮地に立っており、レイサムが豪首相に就任したからといって「もうオーストラリアは同盟国ではない」などと単独覇権主義的な啖呵を切れる状態でなくなっている。 このような両者の事情をすり合わせた結果、アメリカとしては、豪軍の3分の1程度をイラクに残留させてくれるのなら、レイサムが首相になっても同盟関係を維持します、ということになったのだろう。豪労働党は代表をホワイトハウスに派遣し、レイサムが首相になっても歓迎します、という約束をとりつけている。 White House 'would welcome' PM Latham http://www.theaustralian.news.com.au/common/story_page/0,5744,9835501%255E421,00.html 一方、韓国は、国内政界でもめていたイラクへの追加派兵を実施する方向に動き出した。7-8月ごろに3000人を北イラクに派兵する計画になっている。韓国軍は、米英に続きイラクで3番目に大きな外国軍勢となる。 South Korea to Send 3,000 Troops to Iraq http://english.aljazeera.net/NR/exeres/7D177BFC-4239-4B28-AB84-EF51F4361134.htm これはもしかすると、韓国から米軍を急いで撤退させようとするアメリカを引き止めるために盧武鉉政権が切ったカードなのかもしれない。 タイトル一覧へ | |