先日、ある在日ベトナム人学者の講演会に出席した。講演はベトナムの政治経済の現状についてだったが、話は日本企業のベトナムでの行動に及び、講演者は「日本企業は地元への技術移転に消極的だし、労働者を大切にしない」「日本人ビジネスマンはカラオケや売春などで評判を悪くしている」といった指摘をした。
◆韓国のOECD加盟にマイナス
ベトナム労働省の調べによると、1990年から今年4月までに同国で発生した79件のストライキのうち、40件が韓国企業でおきている。ホーチミン市に進出した靴メーカー「サムヤン」の工場では今年3月、韓国人の現場主任が作業が遅いと従業員を怒り、職場に整列させた15人の頭を半製品の靴で乱打し、2人が入院した。この主任は7月、現地の裁判所で執行猶予つき懲役刑を言い渡されている。
こうした現状の背景には、韓国企業のベトナムへの進出数が多いということもある。だが、韓国の加盟を希望しているOECDの労働組合助言委員会が世界を回って調べたところ、各地で従業員から同じような苦情を聞いたという。韓国企業の責任者はあちこちで、従業員の作業が遅いと言って怒鳴りつけ、結び目をつけた布やゲンコツで殴り、トイレに行く回数を制限していた。残業手当を出さない、最低賃金を守らない、組合結成の動きをつぶすなどのケースも多かった。
また、過酷な行為は中小企業に多く、財閥など大企業は現地との調和を心掛けていることも分かった。韓国だけでなく台湾企業でも問題が多いが、台湾企業は中国大陸や華人の影響力が強い東南アジアへの進出が多く、民族意識を伴う強い反発にまで至るケースは少ない。韓国企業は中近東や南米など、世界各地に進出しているため、それだけ摩擦が多くなるということだ。韓国のOECD加盟は9月に結論が出る見通しだが、海外での企業行動を改善できるかどうかがポイントの一つになりそうだ。
◆日本軍の亡霊
中国南部、広東省の珠海市にある韓国企業「セジン電子」の白黒テレビ工場では、従業員が仕事と関係ない会話をすることが禁止され、それを3回破ったら解雇される。2時間ごとに10分間の休憩があるが、それ以外でトイレに行く場合は監督者の了解が必要だ。
この工場では昨年、何人かが休憩中に居眠りをしているところを韓国人の工場長に見とがめられた。怒った工場長はすぐに100人以上の従業員全員を整列させた後、自分に向かってひざまづかせ、わびを入れさせた。地元の新聞が事件を知り「中国人は再び外国勢力に虐待されている」と見出しをつけた。
この工場長は、従業員の精神を叩き直そうとしたのだろう。その気持ちは日本人には理解できる。従業員を整列させた上で虐待するのは、かつて日本軍の上官が兵隊や占領地の住民に対してやった方法と同じだからだ。
韓国人は日本に長く支配された結果、皮肉なことに大嫌いな日本人とよく似た行動をとるようになっている。しかも日本では戦後の教育により、軍国主義的な行動はタブー視されているが、韓国ではこうした社会的抑制が少ないことが拍車をかける。韓国には今も、軍隊式の従業員管理を続ける企業が多い。
韓国の中小企業は、国内でも外国人の労働者を手荒く扱う。7月のある日、中国人、パキスタン人など数10人がソウルの街頭でデモ行進し「私たちを動物のように扱うな」「韓国の法律は尻抜けだ」といったスローガンを叫んだ。韓国には17万人の外国人労働者がいるが、その多くは労働力不足を補うため、研修生ビザで働いている。
かつては日本にも、海外の工場で従業員を虐待していた企業があっただろうが、最近は悪評は少ない。これも戦争に負けたおかげかもしれない。