イスラエル50周年にみるアメリカとの特別な関係

98年5月2日  田中 宇


 イスラエルは4月30日に、建国50周年を迎えた。ここ1週間ほど、アメリカの大手新聞は、イスラエル関連の特集記事を大量に載せ続けている。

 イスラエルに関係の深い人々がアメリカのマスコミ界の経営を握っているのだから当然ともいえるのだが、アメリカでイスラエルを重視しているのはマスコミだけではない。

 4月30日、独立記念日の式典がエルサレムで開かれたが、外国政府のトップとして参列したのは、アメリカのゴア副大統領ただ一人だった。

 ゴア副大統領式典の挨拶で、「アメリカとイスラエルの結びつきは永遠です。アメリカはイスラエルの独立を最初に承認した国だが、クリントン大統領も私も、それを誇りに思っている」とぶち上げた。ユダヤ教の聖典のフレーズを、いくつもスピーチの中に引用するといったサービスぶりだった。

 ゴア副大統領は、2000年のアメリカ大統領選挙に出馬するとみられているが、今回イスラエルに対してこうした「誓い」を立てたことで、選挙資金を得る可能性が高まり、当選に一歩近づいた、と「ワシントンポスト」の記事(5月2日付け)は書いている。

 イスラエルは現在、パレスチナ占領地からの撤退を渋り、そのことがアラブとの対立関係を深めている。式典では何人もの要人がスピーチしたが、そのことに触れたのは、最後に壇上に立ったワイツマン大統領だけだった。

 ワイツマン氏ははっきりものを言う人として知られ、ネタニヤフ首相の対アラブ強硬姿勢を批判している。ネタニヤフ氏はワイツマン氏を煙たがっているといわれ、ワイツマン氏は大統領だというのに、29日の独立記念前夜祭には招待されなかった。

 またイスラエルでは国民の約6分の1がアラブ系の人々だが、残る大多数を占めるユダヤ系の人々に比べ、社会的な差別を受けている。アメリカの大手紙の特集には、イスラエルを持ち上げる記事に混じって、アラブ系の人々の苦しい生活を描いたものが、各紙とも入っている。

 これは、パレスチナ人との和解を進めるべきだと考える、イスラエルの左派(反ネタニヤフ派)の論調と一致している。

 
田中 宇

 





メインページへ